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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
64/406

第46話 交渉の準備

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます


7/27 改稿あり 加筆あり

「今回のウェーブはきつかったと言っていましたよね? それで、防具にガタが来ていたりしてませんか?」


「うむ、武器や防具の買い替えの話も出ているが、何かあったのか?」


「少し見ていただきたい防具があるんです。えっと、ケイタ君、タクミ君、前にグラフェン入りの籠手を作ったでしょ? 親方が作った目標の物と練習で作った物、今もある?」


「え? ありますけど・・・どうしたんですか?」

 タクミ君が首をかしげて言う。


「ごめん、両方持ってきてもらって良いかな?」


 籠手を二つ持ってきてもらう。そして打刻を確認し、練習用に作った籠手こてを見た。


「俺には打刻がなければ区別がつかないな・・・中のグラフェンは同じ物?」


「はいそうです。同じ物になりますよ、形状再生と衝撃吸収の二つが付加されています」

 タクミ君が言う。


「うん、魔鉄には付加魔法はかけていないんでしょ?」


「はい、練習なのでそのままですよ」


「うん、いい感じだね・・・では、フランソワーズ様、一度外に出ていただいても良いですか?」


「うむ、構わんが・・・その籠手が凄い物なのか? 外に出る前に、少し見ても良いか?」

 フランソワーズ様がいぶかしげな表情で見る。


「どうぞ、持ってみてください」


「魔鉄にしては軽いな。そのグラ・・って言うのが、凄い素材なのか?」


「ええ、計算ではダイヤモンドに匹敵する硬さですよ」


「なんだと! まことか! そんなに硬いのにこんなに軽いと? 信じられんな・・・」


「試すためにもまずは外に出ましょう」


 籠手を一回返して貰って、みんなで外に出る。


「それではフランソワーズ様、これを剣で切ってみていただけますか?」


「構わんが、私の剣は魔剣だぞ? 耐えられるのか?」


「それもそうですね・・・では、鉄の大剣で一度試してみましょう」


 鉄の大剣をタクミ君に持ってきてもらい、フランソワーズ様に渡す。


「ふむ、古いが手入れはされているようだ。では、行くぞ?」

 フランソワーズ様が、木の幹にくくり付けた籠手に横なぎの一線を放つ。

 ガキン! と言う音が鳴り、剣が止まる。フランソワーズ様が籠手を見て感嘆の声を出す。


「おお! 魔鉄の部分は少し凹んでいるが貫通していない! 凄いな! 身体強化使ってみても良いか?」


「はい、好きなだけ試してみてください」


 鉄の剣→魔鉄の剣→魔剣と3つの剣で試した。驚くのは結果だ。

 身体強化や魔力を込めて切れ味をあまり上げていない魔剣の攻撃でも、表面の魔鉄は大きく削られたが、中のグラフェンは僅かにしか損傷していなかった・・・しかも、時間が経つとふさがっていく。


「下手をするとダマスカスと同等か、それ以上かもしれん」


「しかも、中の装甲は見ての通り魔力を込めると修復されます」


「そうなると、ダンジョン産の防具と同等と言えなくもないのか・・・

うむ、魔剣を持つ者か、高位の魔獣と対決しなければ、怪我も少なくなる・・・

これは革命といってもいい! 凄いな! いくらで売る予定だ?

しかし、われら獣人も使えるように、魔力を込めるのを何とかできないか?」


「そうですね・・・アカネさん、ミズキさん、後付で魔晶石からのエネルギー供給装置って付けられない?」


「う~ん、使い捨てで良いなら出来ない事は無いと思う~。でも~やって見なきゃ解んな~い」

 アカネさんは、考えるそぶりを見せながら言う。


「そう? それじゃあ、やってみて貰って良い? 練習用の籠手渡しとくからさ」


「おっけ~、やってみる~」


「フランソワーズ様、籠手だけじゃなく、すね当て、もも当て、胸当てなどもいかがでしょうか?」


「うむ、たのむ。明日の朝に装備主任を来させよう。これだけの品だ、高値を期待していてくれ」

 フランソワーズ様は、ニヤリと笑って言う。


「ありがとうございます。明日来る方にお願いをしても良いですか? ちゃんと相談しますので」


「構わんだろう、本人が良いと言えばいいさ」


「ありがとうございます」


「では、戻るとしよう。また明日に」

 そう言うと、フランソワーズは城に帰っていく。


「えっと、今からですが、畑を一気に使えるようにしませんか? リスクはありますが、効率は良いので」


「そりゃかまわねぇが・・・そういや、屋台置くのは屋敷前で良いか? 他に良い場所があれば言ってくれ」

 タダシさんが顎を触りながら言う。


「俺も屋敷前にしようと思っていましたよ。畑の石を砂利のように敷こうかと思ってました」


「小さい砂利にしてくれよ、大きいのだとボコボコしちまいそうだ」


「はい、了解しました」


 屋敷より遠い所を中心に、一気に畑を使えるようにしていく。

 小さい区切りがついていたが、大体同じ大きさになるように区画分けもしておいた。


「魔力切れです。リョウタロウさん、腐葉土を畑に撒くことは出来ますか?」


「はい、大丈夫です。砂利運びしかしてないので腐葉土を畑に撒くだけなら問題ないです」

 リョウタロウさんは、頷きながら言う。


「ミズキさん、腐葉土を混ぜるのは出来ますか?」


「はい、撒いてもらえれば、すき込みは問題ないです」

 ミズキさんは、頷きながら言う。


「じゃあ、2人にお願いします。他の皆さんは戻っていただいてOKです」


 魔力の回復をしながら、周囲の警戒をしておく。

 それにしても、魔法って何回見ても凄いな・・・一気に全部終わっていく。


「耕せたところは全部混ぜ終わったね。戻りましょうか」


「はい、それとカナタさんにお金渡したいんですけど・・・明日一緒にギルドに行って貰って良いですか?」


「そういえば忘れてました。なんか・・・もとの世界に居た時よりも忙しい・・・」


「そうですよね、リーダーですもんね・・・鍛冶師達の借金は大丈夫なんですか?」


「今のところ成功率は7割って所ですね。商人が思っていた通りの人間なら、間違いないはずですよ」


「頑張ってください、応援しか出来ませんけど」


「ありがとうございます。まぁ失敗しても、大金が手に入りますので借金の主になることくらいは可能ですよ。やるだけやってみます」


 その夜、ボタンと彫刻を全部終わらせることができ、後は組み立てをアヤコさんに頼むだけになり、満足しながら眠りについた。

 朝になり、扉を叩く音で目が覚めた。


「は~い、おはよう」


「珍しいな、カナタさんが寝坊なんて」


「え? 朝練の時間?」


「ああ、下で待ってるぞ」


「ごめん、すぐ行くね」


 久々に朝寝坊をしてしまったらしい・・・最後の寝坊は新人の頃だな・・・懐かしい。

 朝練をして、食事を取りにダイニングへ。


「おう、カナタ寝坊か?」

 タダシさんが、ニヤリと笑って言う。


「そうです。気が付いたら朝練の時間に」


「がはっはっは、お前さんも人間だったんだな」


「れっきとした人間ですよ! 朝ごはんは何ですか?」


「ミネストローネにトーストだ。ベーコン作ったんだが食べてみるか?」


「はい、お願いします」


 食事を終えると、アヤコさんに髪留めのリボンと彫刻したプレートの取り付けを頼み、一瞬で出来上がるのを見て驚いた。


「ほら、終わったよ」

 アヤコさんは、髪留めを差し出してくれる。


「ありがとうございます。こんなに早く出来るもんなの? 凄すぎる」


「師匠だけですよ! 師匠はダントツですよ、早すぎて参考にすらなりません」

 コノミさんは、自慢げに言う。


「へぇ~凄いね、裁縫のエキスパートだね」


「やめとくれ、ギフトのおかげさね。ちゃっちゃと協会に行くよ」

 アヤコさんは、恥ずかしそうに手を振って言う。


 行動はおばちゃんなのだが、見た目が若い。恥ずかしがっている姿は何となく可愛く見えるな。


 協会に行きLvを上げ(Lv17.Lv16)、ギルドに行きお金を預ける。キリが良くなるように預けて、少し手元に残した。

 今日の朝方に装備主任が来る予定なので、来るのを待つ。

 他の人は、思い思いのところに向かって出かけていってしまった。


「ケイタ君、タクミ君、お願いがあるんだけど良い?」


「何ですか?」

 ケイタ君は、眼鏡をクイッとしながら言う。


「えっと・・・交渉の時はネムガさんに、余計な事を喋って欲しくないんだよね。出来る限り無言でいてほしいんだけど、お願いできたりする?」


「解りました。今から行って来ますが大丈夫ですか?」


「う~ん、まぁ下手は打たないようにするよ。ネムガさんの事お願いね、あと、帰ってきたら商人の情報教えてね。調べてあるんでしょう?」


「解りました。お話しします」


 2人は親方ネムガの元に向かっていく・・・

 しばらくすると、玄関の鐘の音と声が響いてきた。


「たのも~!」

 た・・・たのもうって道場破りか? いや、装備主任が来たんだな。


「はい、お待たせしました」


 玄関を開けるとそこには、タレ犬耳の獣人がいた・・・線が細いから女性か?


「フランソワーズ様より、面白い装備があるとお伺いしました」


「はい、ありますよ、私はカナタと申します。お見知りおきを」


「失礼した。わた・・・僕は、装備主任のエルディア・・・エルと言います。エルとお呼びください」


「はい、ではエル様、この籠手がオススメしたい物ですよ」


「はい・・・その前に様は付けないで下さい・・・エルと呼び捨てにしていただきたいです・・・籠手を持ってみても良いですか?」


「はい、どうぞ。昨日性能テストをしたので少し傷がついていますが」


「止め具は布ですか、作りはシンプルですが・・・なんです? これ? クリエイションマジック? ですか? 見たことないですけど、どのような効果があるんですか?」


「手に取るだけで防具が解るんですか? 凄いですね、どんなギフトなんですか?」


「防具の心です。ただ、作ったりするのは余り得意じゃないので、簡単に言うと皮や金属で作った防具の詳細が解ります。私では能力が足りず、それだけのギフトになってしまってるんです」


「凄い! 羨ましいですよ! あぁ・・・すみません、話がそれましたね。

 えっと、防具の能力ですが、攻撃されたときの衝撃を吸収する。少し壊れた位なら芯に入っているものだけですが、再生する。この2つです」


「え? 再生? そ・・・そんな物あるんですか?・・・まさか・・・本当ですか?」


「傷から見える、黒いところだけが再生しますよ。昨日フランソワーズ様に魔剣で切って貰ったんですが、塞がっていますよね?」


「え? そんな・・・ダンジョンで見つけたものですか? いくら付ければいいのか見当も付きません・・・どうすれば・・・」


「それなんですが、お願いを聞いていただければ安く出来ますよ、どうですか?」


「本当ですか!? それは構いませんが、でも、お願いって何でしょうか?」


「簡単ですよ、鍛冶場での交渉を私に任せてもらう。契約のタイミングも任せてもらう。出来る限り喋らないことです」


「それは構いませんが・・・どのくらい安くなるんですか?」


「うまくいけば、魔鉄の装備と同じ位になるはずですよ、良いですか?」


「そんなに! お任せします」


 これで交渉の準備がほぼ終わった。上手くいくといいが。

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