第43話 女性への贈り物
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オークを倒した後、ロープと木の枝を使ってオークを逆さづりにして、簡単に血抜きをしながら皆のところに戻り、タダシさんに話しかける。
「オークの回収の前に、完全に血抜きしちゃいますか?」
「いや、簡単に血抜きしたらマジックバッグに入れて、完全に抜くのは後でいいだろう。解体を頼んじまった方が早いし、上手いしな」
タダシさんは、顎を触りながら答える。
「了解です。簡単にだけ血抜きしちゃいますね。あと、繭のほうも回収しますよね? アヤコさん」
「ああ、そうだね、その糸は色がまばらで見た目は悪いけど、色を簡単に染め直せば色々使えるだろうし回収したいね」
アヤコさんは、頷きながら言う。
「了解しました。じゃあ、切ってみますね」
繭を切ると、どろどろの液体が入っている・・・気持ち悪い・・・
「回収しますね。あと、向こうの方にゴブリン居ますがどうしますか?」
リョウタロウさんはそう言い、特に嫌な顔をせずに回収する。
「この近くにはゴブリンのみですか?」
「1番近いのはゴブリン3匹で、あっちのほうはトウグが30位ですかね?・・・オオトウグも居ます。その奥にはオーク3匹ですね。その奥にもオーク2匹がいます。あとは解らないのもいますけど遠いですね」
「じゃあ、数が多いトウグに行ってみましょうか」
「了解です」
トウグの群れに向かっていく・・・オオトウグ2、トウグ30くらいで唸り合っていた。
「縄張り争いですかね?」
「そのようですね」
「カナタさん左、リョウタロウさん右など、PTごとに分かれてサンダーで行動不能にしてはどうでしょうか?」
ケイタ君が、眼鏡をクイッとしながら言う。
「うん、それでいこう。じゃあ、3、2、1」
「「サンダー」」
いっせいに魔法を発動する・・・一瞬光ると、すでに動くものはなくなっていた。
「あっちゃー、威力強すぎたね、放置する?」
「オオトウグは損傷なさそうですよ」
リョウタロウさんは、オオトウグを見ながら言う。
「これ傷がないぞ! 大丈夫そうなのだけ引っ張り出すか?」
ショウマ君は、重なってるトウグから1匹引っ張りながら言う。
「そうだね、駄目っぽいのは魔石だけ回収して燃やしちゃおう」
オオトウグ×2とトウグ×8は損傷が少なく、売れそうなのでしまって貰い、他は穴を掘り燃やして埋めた。
「オークってこの奥なんでしたっけ?」
「そうですが、時間がギリギリですけど、大丈夫ですか?」
リョウタロウさんは、太陽の角度を見ながら言う。
「でも、折角なんで倒しましょう。良いですか?」
「あぁ、食料が増えるのはありがたいことだ! 急いでやっちまおう!」
タダシさんが、ニヤリと笑いながら言う。
少し進むとオークが5匹、近くにはトウグの物と思われる死骸が転がっていた。
「アイスアローで良いですか?」
皆頷き、反論は無いようだ。
「いきますよ? 3・2・1」
「「「アイスアロー」」」
特に何も無く5匹のオークは倒れる。
「回収しだい急いで帰りましょうか」
「トウグの魔石も回収しますか?」
リョウタロウさんが、無残に引き千切られたトウグを指差し言う。
「そうしましょうか」
直ぐに回収し、街に移動する。
「じゃあ、ギルドへ行って報告しましょうか~」
そのままギルドに向かう。
「いらっしゃいませ、カナタさん。報告ですか?」
セネラさんが、笑顔で対応してくれる。
「はい、お願いします」
「また、多いですね・・・解体倉庫はお使いになりますか?」
「はい、お願いします。エミルさんは居ますか?」
「はい。では1人ずつカードをお願いします・・・11級、12級になりました。おめでとうございます。もう少しでダンジョンにいけますね」
「10級からなんですか?」
「そうです。見習い冒険者から新人冒険者に上がる区切りになります。まぁ・・・皆様ですと軽く見積もっても中級冒険者クラスですけど・・・」
「じゃあ、新人です! ってまだ言えるんですね~」
「言えますけど、自分の力を過小評価する方は少ないですよ?」
「冒険者らしい事をまだしてませんので、いいんですよ」
「皆さんが冒険者じゃなければ、だれが冒険者なんですか! ふぅ・・・まぁいいです。また報酬は一緒にでいいですか?」
「はい、お願いします」
「あの~・・・カナタさん、時間が・・・」
ユカさんに後ろから声をかけられる。
「おっと、そうでした。リョウタロウさん、お弁当貰っていいですか?」
「はい、これですね。タダシさんと解体に行くので、2人は行ってもいいですよ」
リョウタロウさんは、籠を出し言う。
「はい、すみません、ありがとうございます。後はお願いします」
ユカさんと俺は、出来る限り急いでファウストさんの所へ向かう。
「来られましたね! 今日もポーションを作りますよ~」
ファウストさんは、手を大きく広げて言う・・・オーバーなアクションに慣れてきたな。
「昨日も作りましたけど、在庫とか大丈夫なんですか?」
「全部売れましたよ! 最初の頃の物は売ることは出来ませんでしたが、後半で作ったものは誰が見ても高品質ですので、高値で売れました! すばらすぃぃぃ!」
「あの、他の薬も作ってみたいのですけど、難しいのですか?」
ユカさんが、軽く手を上げて言う。
「いえ、かなり簡単ですよ」
「え? そうなんですか?」
「ええ、例えば一般的な解毒薬ですが、この解毒草を干して粉末にして、お湯に入れれば出来上がりです。粉末の量が少ないと効果がなかったりしますが、多くても問題ありません。もっとも、特殊な毒であれば解毒草の種類が変わったり、複数の種類が必要になったりしますが」
「では、ポーションが1番難しいと?」
「そんな事はありませんよ、もっと難しいレシピはありますが、素材の入手が難しい物や毒薬ですよ。毒薬はもう少し後の方がいいのでは?」
「毒薬は、いりません! 使いませんので!」
ユカさんは、首を振って言う。
「いえ、毒薬も教えて貰いましょう」
「え? 何でですか? 殺すための薬なんて・・・」
「その毒を知らなければ解毒薬なんて作れない、そうですよね?」
「素晴らしい、その通りです! 治すも殺すも表裏一体、それこそ薬!」
ファウストさんは、くるくる回りながら言う。
「そうですね、解っていたことだったんですが、忘れていたみたいです。お願いします」
ユカさんは、頭を下げながら言う。
「頭を上げてください。最初誰でも通る道です・・・・では、最初はポーションを作り、後は解毒薬と毒薬をお教えします!」
「「(はい)お願いします」」
「その前に、食事を頂いても?」
「はい、その大きい方がファウストさんのです。ご家族の分もあるので全部は食べないで下さいね」
「素晴らしい! ありがとうございます」
食事を取り、夜遅くまで薬の知識を学んだ・・・やはり、覚えるスピードは異常な位早いようだ。
屋敷に帰り、軽い食事をするためにダイニングに入ると、手紙があった。使っていない部屋に出来上がった洋服が置いてあるようだ・・・作るの早くない?
織機は作ってあったし、糸も煮るだけで出来るといっていたが・・・凄いな。
欲しいと言っていたボタンも作っちゃわないとな。
髪留めも置いてあるとの事。本当に助かる・・・
木工と骨細工の二人に、最初はバレッタを送ろうと思ったが、金具がまったく解らない。くちばしクリップのにしてもよかったのだが、大きめの細工をしたかったのでゴムにすることにした。
デザインはコノミさんに頼んだのだが、ゴムの上にリボンが付いていて、リボンの真ん中に細工したものが付く物だった。2人とも髪が長く、無理やりリボンで縛っているのを見ていたから、髪留めと櫛にした。
喜んでくれればいいが・・・
女性へのプレゼントは、基本的にアクセサリーは避けるべきってのは解っているが、一応試験なので大丈夫だろう。
木材は、出来るだけ薄い色の物にして、木材で作っているのが解った方がいいだろう。細工するのは縦2cm横3cmの楕円形、デザインは、サクラとリスにしている。
この世界には桜があるか解らないし、買った物などではなく俺が作った物だと安易に解る。
櫛にも同じデザインを掘り込むつもりだ。
細かい加工技術が無ければ作れないし、木で出来た櫛は見たことがないからちょうど良い。
骨細工は、グランドタートルと言われている亀の甲羅を、盾にしている時に出た端材を貰い、削り出して見ると鼈甲が出た。かなり綺麗なオレンジ色で質も良さそうだ。
廃材のところにいっぱいあったから、少し貰っておこう。誰かのプレゼントにも使えそうだし。
その鼈甲で、似たようなデザインの髪留めと櫛を作る。
デザインで違うところと言えば、リスがロップイヤーの兎になっているところだろう。
鼈甲は、この世界では使われていない物だ。骨細工と認めて貰えるか解らないが、まぁ平気だろう。
どの世界に行っても女性への贈り物には気を使うもんだな・・・ギフトで贈り物のセンスがあったら欲しかったよ・・・ほんとに・・・