第4話 初めての野営
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6/5改稿、加筆あり
食事が終わり緊張していた気持ちが緩んだのか、目をこすったり、欠伸をしたり、眠そうにしている者も居る。
「今日は、もう休みましょうか~」
皆一様に、了解の返事が返ってきた。
「あ! あの! えっと・・・女子高生の君!・・・ごめん、待って待って!」
2人が立ち止まりこちらを見る。
「あのね、まず、ごめんなさい、名前忘れちゃってさ・・・ははは・・」
「あたしは~笹塚 茜衣だけど~、何? 何かあったの~?」
「え? えっと、お、岡本です」
「2人に質問なんだけど、着替え持ってたりする? スカートだと何かと不便じゃない?」
「あ~、あたしは持ってるから、へ~き」
「あの、すみません、持っていません」
岡本 好未さんは、深々と頭を下げた。
「いや、謝る必要は無いんだけどさ、ジャージの下だけ貸そうか? 動くときに、スカートのままだとさ・・ね?」
「で・・でも・・その・・あの・・・えっと・・」
「じゃあ使ってね、はいどうぞ」
半ば無理やり渡すが受け取ってくれた。
俯きながらだけど小さい声で「ありがとうございます」と聞こえた。
その後も、かなりの時間、雑談が続く。
う~ん・・・日本と時差があるような気がするから、出来れば早めに寝たほうがいいと思うんだよなぁ・・・
でもまぁ、仲良くなったほうが、後後動きやすいかな・・・そんな事を考えてた。
「私が見張り番をやりますので、皆さん寝ちゃってください、何か問題が起きたらすぐ起こしますのでお願いしますね」
俺は手を上げ、皆に向かって言う。
「見張りは私がやりますよ、榊原さんは寝てください」
田中 良太郎さんが、バッと立ち上がり軽く手を上げる。
「本当に駄目になったら代わってもらいますよ、そのときは起こしますので、よろしくお願いします」
その後も押し問答が続くが、結局、俺が引き受けることになった。
寝る場所は、バスの中は女性、外は男性となった・・・着替えとか見られたくないだろうしね。
案の定、三沢 伊三雄さんが文句を言っていた。
寝床に移動しても、会話が少し続いたが、1人寝ると皆疲れていたため直ぐに反応が無くなった。
バスの外の男性陣は、最初からあった枯葉と持ってきた枯葉を混ぜ、その上に新聞紙を敷き寝ている。
・・・三沢 伊三雄さん以外の皆は、特に文句もなく寝ている。寝心地はそこまで悪くないようだ。
「携帯など光るものは極力使わないでください、虫や獣の的になりますので・・・焚き火を消しますよ~では、皆さんおやすみなさい」
一応小声で、皆に注意喚起をし、焚き火を消す。
焚き火を消した後、空を見上げると、光り輝く星空があった。
「すごいな・・・月みたいなのは見えないけど、結構明るいもんだな」
そう呟きながらしばらくの間、立ち止まって見ていた。
あぁ、そうか・・・星の位置とか勉強しておけばよかった・・・そうすれば、ここが地球じゃないことが皆に証明できたのにな。
洞窟内に戻るとすでに寝息が聞こえる・・・暇になるな・・・
あれ? そういえば、何で俺がリーダーみたいになってるんだろう?
う~ん、変だな・・・明日皆に相談して、リーダー決めよう・・・それがいい!
そうだ! この白竹でお箸作れないかな? カッターで切れるかな? やってみるか!
出来る限り静かに、白竹の1番根元にある割れた部分を、切り取る事が出来ないかやってみる。
硬いな! 何だこりゃ? まぁ、切れないことは無いが時間がかかりすぎるかな。
朝まで時間はたっぷりあるし、見張りながらやってみよう。
2時間ほど頑張ってみたが、そこまで切れてない・・・やっぱり無理か~・・・
力を入れたら切断出来そうだけど、大きな音が出ちゃいそうだし、変な力の掛け方するとカッターの刃が折れちゃうだろうな・・・
う~んと、他にやらなくちゃいけないことを考えてみるか。
1.食料の採取 ドングリ、食べられそうな野草・果物・魚、居たら嬉しいな、イノシシ・鳥など取れるかわかんないけど。
2.調味料の確保 塩・・・山っぽいけどあるのか?
3.水を飲めるようにする 沸騰させたい、竹の筒の作成しだいだな。
4.現在地の確認 敵が居るのか、知的生命体が居るのか、どちらにしろ友好的なのかどうかだな。
5.帰還の方法を探す 今のところは無理だな。
要するにもう手詰まりか・・・現状を改善できても前進は難しい。
ああ! もう! 異世界転移なら、異能力とか魔法とか、なんかあってもいいんじゃね?
一応魔法撃てるかも知れないから、いろんな呪文を唱えて見るか・・・全て失敗・・・ああ、分かってた、分かっていたさ! 色々言ってみましたよ! 小声だったとしても恥ずかしいんじゃボケ~!
まったくもう、魔法も出ないし! ここに召喚した人はどこにいるんだよ! テンプレの女王様はどこ? 神様は? 女神様は~? どこにいるんだよ~!
あああ~! 本当に何が原因でここに来ちゃったんだ? 何かヒントがあってもいいだろ~!
うとうとしたら、眠気覚ましに運動したり、白竹を切れないかもう1度やってみたりしながら、時間が過ぎていく。
ようやく朝か、ものすっごい眠いな・・・あぁ眠い、誰か起きないかな?
そう思っていると洞窟の方からガサゴソ音がする。背伸びをしながら牧野 有華さんがバスからでてきた。
外は明るくなってきているが、まだ寝てる人も多そうなので、小声であいさつする。
「おはようございます、朝早いですね~」
「おはようございます、あまり眠れなかったんです・・・」
牧野さんは、言いながら、背伸びをしてゆっくり近づいてくる。
なんか可愛いしぐさだなぁ。
あれは! ヤバイ! 巨乳だ! 急いで目線をそらし外を見る。
「あの・・・榊原さん、見張り代わりますから寝ていいですよ」
牧野さんは、こちらを見て、笑顔で言ってくれる・・・まぶしい笑顔だねぇ。
「そうですねぇ、あと1人起きたらそうしますよ、さすがに女性1人じゃ危ないと思うので」
「そうですね、日本じゃないんですもんね・・・家に帰れますかね?」
「あぁ、気が付いていたんですね、ここが日本じゃないって・・・まぁ、帰れますよ! とは言えないですね・・・ここが何処なのかすら解らないので、情報が少なすぎます」
「ふふ、帰れますよ! 一緒に帰りましょう! とかいうと思っていたのに」
「はは、何処の熱血主人公なんですか・・・熱血でもないですし、主人公ってキャラでもないですよ・・・どっちかって言うと、モブキャラですよ、俺は」
「モブキャラ? なんですかそれ?」
「物語の脇役キャラですね。名前すらないキャラクターのことですよ」
「こんなに色んなこと知っているのに? 榊原さんなら、脇役は無いですよ。女の子全員で少し話したんですけど、皆が、榊原さんのことをリーダーだと思っていますよ・・・もちろん私もですよ」
牧野さんは、そう言いながら笑っている・・・俺は、苦笑するしかなかった。
簡単な世間話をしていると、数人起きてきた・・・とりあえず、トイレに行きたい・・・
「朝ごはんなんですけど、ドングリ食べてみませんか? 昨日食べてみましたが、今朝まで食あたりなど無いので大丈夫だと思いますし、見渡す限りいっぱい落ちてますから」
皆異論が無いようで、キャベツそのまま1枚とドングリ焼きにメニューは決まった。
手分けしてドングリを拾ってもらい、小枝に火をつける。
ドングリにカッターで穴を開け、アルミホイルに包んでいく。
アルミホイルを使うが、使用しても捨てないで貰うように言っておいた・・・後から起きた人にも伝えておこう。
アルミホイルを使わずに焼く方法を試したいが、あとでだな・・・
「今日は、食料の確保を中心に周囲の確認をしたいですね、昨日のようにやらなきゃいけないと思うことを言っておきます、他に思いついたら相談しましょう、では言います。
1.1日火を消さないようにするので 火の番
2.ドングリや野草を集める 食糧確保
3.水を沸騰させたりして、飲めるようにする 器が必要かと
4.塩があれば欲しいですね
5.現在地の確認
以上だと思うんですけど、どうでしょうか?」
皆、頷いたり「うん」「いいと思う」と了承の返事が返ってくる。
全員が起きるのを待って・・・そんな事を考えてると、最後の人が起きてきた。
思ってたより早く起きたな・・・環境が変わってるから仕方ないか。
ドングリを焚き火の中に入れ焼きあがるのを待っている間に、後から起きた人にも今日やっておきたい事の説明をしておいた。