第40話 死病
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7/11 改稿あり 加筆あり
移動したところは、壁に囲まれた倉庫のような場所だった。
「ここが研究室だ。死病の研究をしているのだが・・・結果は・・・な」
フランソワーズ様は、うな垂れながら言う。
「研究されて、まだ30年と聞いています。まだ始まったばかりと言えますよ、多くの事柄を見ないといけませんし」
「うむ、そうだな、他国では300年近くも研究されているのに結果がでぬのだ。解っておる」
「え? 研究されて最長300年なんですか? そんなに研究していて、原因すら解っていないと?」
ユカさんは、首をかしげながら言う。
「すまぬな、詳しくは中の者に聞いてくれ」
フランソワーズ様は、研究室を指差して言う。
「はい、解りました」
中に入ると、大きな鍋に良く解らない物を入れて、大きな棒でかき回している・・・
完全に魔女がかき混ぜている大鍋その物だった・・・薬草学とかじゃないの・・・?
「イッヒッヒッヒ、イイーヒッヒッヒッヒ」
男が鍋をかき回しながら言う。
「あの・・・魔女ですね」
ユカさんがつぶやくように言う。
「そうだね、魔女だね」
恰好やしぐさは魔女そのものなのだが、見るからに男だった。
「ごほん、おい! ファウスト! 聖女ユカを連れてきたぞ!」
フランソワーズ様が大声で男を呼ぶ。
「なんですと! 何処におられますか?」
「えっと、私がユカですけど・・・」
ユカさんは、恐る恐る手を上げながら言う・・・かなり怯えている様に見える。
「フォー! スバラスィイィ!! ヨロシクオネガイシマッス!」
ファウストさんは、ジャンプしたりクルクル回ったりしながら片言で話してくる・・・しかし・・・なんで片言?
「よろしくお願いします、ファウストさん」
俺は、言ってから礼をする。
「はい。聖女殿は、特殊な回復魔法が出来るとお聞きしたのですが、どの様な物ですか?」
ファウストさんは、保護服代わりに着ていたローブを脱ぎながらたずねてくる。
演技だったのか? 良く解らない人だなぁ・・・ユカさんはビックリする位引いてるから俺が話すか・・・
「そうですね、魔法の仕組みを全部理解しているわけではないので話すのは難しいですが、ソングスペルの無詠唱版に回復力を高めた感じのものです」
「それでも完全回復は無理だったと?」
「そうですね、無理でした」
「なるほど、もしかすると・・・」
「原因について聞いてもよろしいですか?」
「ああ、すまんすまん。えっとな・・・魔物の武器や唾液・血液などから呪いが生まれるのではないかと考えている」
「へ? 呪いですか?」
「そう・・・呪いですよ。どんなに調べても原因不明、回復魔法や回復の魔道具でも駄目・・・となると呪いの一種であると私は考えているのです!」
「解呪のようなものは無いのですか?」
「あります! ですが、効きませんでした・・・武器などの解呪は出来るのに・・・」
「あの・・・呪いではないと思います」
ユカさんは、俺の後ろから少し顔を出して言う。
「それは何故ですか!」
ファウストさんは、ユカさんの方へ手のひらを出して言う。
いちいち動きが大きくオーバーだな・・・見ているだけで疲れそう・・・
「ヒッ・・・えっと、魔力の流れが乱れていますし抵抗しているようにも見えます。なのでウイルスの一種だと思いますけど・・・」
ユカさんは、驚きながらも言う。
「何ですか? ウィルスとは?」
ファウストさんは、いきなり変な動きでもっと近づいてくる。
「ヒッ・・・あ、あの目には・・・見えないほど小さい・・・」
かなりオドオドして声が小さくなってるな・・・
「ユカさん、俺が説明しますよ。補足箇所があればお願いします」
「はい、お願いします」
ユカさんは、ほっとしたように言う。
「えっとですね、ウイルスなんですけど、目に見えない本当に小さい生き物のことです。これは体内に入ると体調不良を起こします」
「そのウイルスは、体内に侵入すると私たち自身の細胞・・・体を使って増殖してしまうのです・・・それの副作用で体調が悪くなります」
ユカさんはすかさず補足を入れる。
「なんと! なんとぉお! 目に見えないものをどの様に調べたのです! 何を以てそう言いきれるんですか!」
「回復魔法の際に汚れを落としたり、綺麗にする魔法を使っていませんよね?」
「はい、そのような手間などしなくても回復できますので」
「その汚れについてるのが、人に悪さをする細菌やウイルスです。
えっと今回は、細菌についての説明は省きますが、出来るだけ解りやすくウイルスがどのような物か説明しますね。
例えば、風邪を引いて頭が痛くなったり気持ち悪くなったりすることがあると思います。それが、ウイルスが悪さをしている証拠なのです」
「どうやって! どうやって調べればいいんですか!? そのウィルスは見えないのでしょう!」
「それは・・・」
ユカさんは言いよどむ。
「えっと、武器の呪いを解けるとすれば、呪いを鑑定する方法があるんですよね?」
「ありますよ? 何をそんな」
「その方に見て貰いましたか?」
「各種の武器の心がある方でも人間の鑑定などできません。治療の心がある方ならばあるいは・・・」
「そうですか・・・ならば、ユカさんに従うべきでしょう。治療の心を持っているのですから」
「な・・・なんですと・・・どうやって・・・いえ、何をしたら・・・」
「それはたゆまぬ努力と、人を思う心があってこそですよ・・・ さて本題ですが、死病を治せる薬はここにありますか?」
「余計な穿鑿するなど・・・失礼しました。今ここにはありません」
「そうですか・・・ですが、ファウストさんは薬に精通する方なんですよね?」
「はい、薬の心を40歳になり取ることができましたので・・・この国では高ランクの薬師だと自負しております」
「それは良かった。薬の知識が乏しかったもので、教えていただける人を探しておりました。様々な病の治療のためにお願いします」
「あの、私にも教えて下さいお願いします」
ユカさんもゆっくり手を上げて言う。
「魔法があれば薬などいらないのではないですか? 他国の治療師などは口々にそう言いますよ」
ファウストさんは、苦い表情をしながら言う。
「なるほど・・・しかし、魔法は万能じゃない。魔力がなくなれば使えないですし、何らかの副作用が出る可能性も否定できません。
薬も副作用はあるでしょうが、両方の良い所をうまく使いこなすことが出来れば、全く新しい治療が出来ると考えています。いかがでしょうか?」
「新しい治療・・・すぅぅばぁぁぁらぁぁすぃぃぃぃ! はぁはぁ・・・私でよければお教えいたします。いえ、是非よろしくお願いします」
「「(こちらこそ)よろしくお願いします」」
俺とユカさんは、言ってから礼をする。
色々あったけど、薬草のことなどを明日の午後から学ぶことができるようだ。
午前中は採取などがあるらしく、丁寧に謝られたが、特に異論は無い。
しかも、ファンタジーだからポーションとかあるかもしれないし、一度作ってみたい!
用事が終わり、屋敷に戻って皆に今日の事を伝えようと思うが、一度ミミリさんに屋根の相談をしておこう。
ユカさんとフランソワーズ様に木工所に行って来ると言い、別れた。
「ミミリさ~ん、いますか~?」
「はいはいは~い、どちらさ・・・あ、カナタさんじゃないですか、どうしたんですか?」
「家の屋根に使う木材が欲しいんですけどありますか?」
「もちろん、ありますよ~、どの位欲しいんですか?」
「あ・・・設計図描いてないや・・・・どうしよう・・・」
「何軒分作るんですか?」
「今のところ、8軒分です」
「え? 壁とかはどうなってるんですか? いつの間に建てたんですか?」
「いえ、今から建てる予定ですよ。農奴の方を雇ったので簡易的な住居を建てようと思いまして」
「う~ん・・・余りオススメしませんよ、人を雇うのは大変ですし」
「タダシさんの料理を売るためのお手伝いのようなものですよ」
「え!? 出店するんですか? 何処に? メニューは? から揚げはあるんですか? どうなんですか?」
真顔でずんずん近づいてくるミミリさんはかなり怖い・・・目の奥が燃えている。
「いえ、まだ決まっていませんよ。フライドポテトとか簡単なものを最初は出そうかと」
「なるほど! 美味しかったですもんね、出店したら教えて下さいね」
「はい、解りました。それで屋根の木材は・・・?」
「多めに取っておきますよ、と言うより・・・売るほど余ってますので買ってください」
「はい、どの位かわかったら相談しますね」
「はいは~い、1番弟子の頼みですから!」
「それは心強い! ありがとうございます師匠」
「まさか・・・3日で追いつかれるとは思いませんでしたけどね・・・必死に子供の頃から頑張ってたのに・・・」
「大丈夫ですよ、知識では全く勝てませんから」
「むぅ」
「では、また来ますね~」
家に戻り、コノミさんに家の設計図を描いてもらえないか頼むと、城が書きあがった・・・おい!
一応1DKで、風呂トイレなしにして貰って、トイレは外に作ることに。テーブルなんかもあった方が良いかもしれないし、ベッドも欲しいよね。簡単なスノコベッドでいいと思うし、扉は引き戸にして・・・
なんだかんだで結構良い家の設計図が出来上がった。
皆で一気に今夜作ってしまおうと話し、物色して見つけた予定地でもある井戸の近くに、大きさなどを棒で書いてみたら良い感じだった。
真っ暗になってから、一気に建てて、細かい部分は明日やることにしておいた。
最近本当に忙しいな・・・休みがほしいよ・・・