第39話 農地を借りる
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「遠慮せずに言ってくれ、何が欲しいのだ?」
フランソワーズ様は、聞いてくる。
「えっとですね、実は、農奴の方たちをうちで雇おうかと思っています。そこで問題になるのが借金です。いくら借金あるのか解りません。払えるのなら払いますが、支払いを待って貰う事は可能ですか?」
「借金を消すのではなく、遅延の願いか・・・はっはっは」
フランソワーズ様は笑い始めてしまった。
「変ですかね? あ! それと農地は春まで使わないと聞きましたが、それもお借りしてよろしいですか?」
「解った、父上の回復を継続してくれるなら、借金の主をカナタに変え、農地も再来年の春まで貸し与えよう」
「え? それでは、こちらに有利な条件過ぎるのでは? 大将軍様の回復は、友人としての頼みと思い継続する予定でしたし、農地は、大切な収入源なのでは?」
「いや、かまわんさ。農地は踏み荒らされ石が混じっている。全部使えるようになるには、来年、いや再来年までかかるかもしれん。それを耕して貰えるのならこちらにも利益があろう?
しかも、ユカのおかげで冒険者も回復し、魔糸の採取にも間に合ったのだ。収入と言えば予定よりも断然多く入る。しかも、逃げた馬鹿貴族の接収が終わり財政は潤っている。どうだ?」
フランソワーズ様は、腕を組み頷きながら言う。
なるほど、良く見ているな。ただの食いしん坊だと思ってて、ごめんなさい。
「ありがとうございます。農地は全て使ってしまってもいいのですか?」
「うむ、出来るのならどのような形にしても良い・・・ただ、道だけは開墾しないでくれ」
フランソワーズ様は、笑顔で言う。
「もちろんです、ありがとうございます」
「あと、頼まれていた薬師との面会だが、用事が少しあるらしく会うのに時間がかかるとの事だ・・・少々屋敷で待っていてくれぬか?」
「はい、解りました。あとこの籠はタダシさんからの差し入れです。グロスさんの分はこちらの籠ですので」
「おお! いつもすまないと伝えておいてくれ」
フランソワーズ様は、籠に抱きつきながら言う。
「はい、分かりました」
こうして会話が終わり、訪問日程を話し合った。ここまで回復できるのなら2日に1回で構わないとのことだった。
しかも、定期的に回復させるなら1人で大丈夫との事。
木型に狼の紋章が入った物を渡して貰う。これを見せるとフリーパスで入れるらしい・・・俺たちは信用されているって事だと思うが・・・危なくないのか?
「タダシさん、ヨシさん、畑を再来年の春までタダで借りれたんですけど、何を植えたら良いか教えて貰って良いですか?」
「あぁ、どのくらいの広さなんだ? 植えたいものは多くあるが・・・」
タダシさんは、顎を触りながら言う。
「えっとですね、外に出て見える畑全部です」
「はぁ? 何を言っているんだ? 全部借りたら他の人はどうするんだ?」
「結局奴隷になるのは避けられないみたいで、全員引き取りました」
「おいおい・・・ペットじゃないんだぞ! そんな簡単に!」
「仰る事はもっともです。ですが・・・聞くところによれば全員バラバラに売られるそうです。家族が、ですよ・・・」
「だが・・・どうするんだ? 8家族もいるんだぞ? 一生面倒見るのか?」
「それについては考えがあります。まず、畑仕事を仕込み、ジャガイモを大々的に植えます。次に屋台をしようかと思っていますよ。フライドポテトやポップコーンなどを販売すれば、ある程度は稼げると思いますよ」
「売れる保証は無いだろう? 商売は簡単じゃないんだぞ?」
「今日、外に出ました? 料理屋を開かないのか? ってみんなに聞かれるんですよ? パーティーで食事した人なら、少し高くても買いに来ますよ。あと店番の教育は、農民の人の中に商家生まれの人が居たので、その人に習って貰おうと思っています」
「計算済みか・・・解った、儂だって曾孫よりも小さい子を奴隷になどしたくは無いしな」
「畑の開墾作業は、夜中にこっそりやっちゃおうと思いまして・・・もちろん、1人でも時間があれば、こっそりやっちゃってもいいですからね」
「それじゃあ、種芋の準備が必要ね。リョウタロウ君とまた行って来るわ」
ヨシさんが、手をポンとたたき言う。
「はい、お願いしますね」
「もちろん、他の種も植えていいのでしょう?」
ヨシさんが、聞いてくる。
「はい、もちろんです。植える物とかは2人に任せますよ。手伝いほしかったら言って下さいね」
こうして、食料の確保作戦が始まる。
開墾作業で必要なものは、篩・腐葉土・石灰・水・種か・・・
篩は木工で作った方がいいかな? 石を廃棄する場所も考えておかないと・・・考え始めると結構大変かもだな。
まぁ、種植えや水遣り、畑の管理はみんなに任せるとして・・・あれ? みんなに話してないや! 一旦出るか。
「まだ、農民の誰にも話して無かったので、農民の方に挨拶に行って来ます。その後連れてきてもいいですか?」
「ああ、解った。簡単な料理を作って待ってるぞ」
やばいな・・・名前忘れちゃったな、どうしよう・・・まぁ、そこらへんの人に聞けばいっか。
(奴隷の種類によって枷が変わる。借金奴隷は腕輪、犯罪奴隷は首輪が主で奴隷紋と呼ばれる刺青のような物もある。奴隷紋は高価なため乗り物などに使われる魔物の隷属に使われるのが一般的)
外に出ると畑を少し歩く・・・人影を発見し近づく。
「あの、すみません、農奴の方ですか?」
「ひゃい!」
女の人は、ビクッとしながら反応する。
「ごめんね、ビックリさせちゃった? あそこの屋敷の者なんだけどさ、皆に屋敷に集まって欲しいんだけど、誰に言えばいいか解る?」
「あんの料理出して貰った? 屋敷か?」
「そうそう、どうすれば良い?」
「わだす、ラスタに言ってくる・・・いい?」
「うん、じゃあ頼むね、屋敷の外で待ってるから」
「うん」
女の人は走ってどこかに行ってしまった・・・少しなまってるように聞こえたな? 何でだろう? 今まではそんな事無かったのに。
屋敷の外でそんな事を考えていると、皆がこちらに駆けてくる。
「お待たせ、しました、皆に何の、ようですか?」
ラスタは、息を切らせながら言う。
「集まってもらってありがとう。実はね、俺がみんなの雇い主になりましたってことで、挨拶に」
「はい? どういうことですか? すみません、お手を煩わせますが、一から説明していただいてもいいでしょうか? 余りに唐突で・・・」
「えっとね、奴隷に落ちるのはもう決まっていたでしょ?」
「はい、決まっています」
「それで、交渉して皆を俺の奴隷にして貰いました」
「え?・・・主様ですか! 申し訳ありません」
皆一斉に土下座する・・・今日は土下座デーか・・・道行く人が見てるから止めて欲しい。
「はい、立って~。でね、皆には店の手伝いや畑仕事をやって貰おうと思っています。あと家族はバラバラにする気はないからね」
「良かった」「一緒にいられるね」など、嬉しそうな声と泣き声が混じって聞こえてくる。
「ありがとうございます・・・発言をお許しいただけますか?」
「メンドイから、許しを請わなくていいからね。今からずっといつでも発言してね。俺が間違った際には、ちゃんと言って欲しい。それでいいかな?」
「そんな・・・滅相も無い」
「それで何?」
「はい、畑は荒れていますし、直ぐに使えるようにするのは・・・」
「そうだね、そこでやって欲しいことがあるんだけど」
「何でしょうか? 何でも仰ってください」
「皆に読み書きと計算を教えてあげて。出来るでしょ?」
「え? あ! はい、畏まりました」
「あとね、新しく皆さんの家を作るにしても時間がかかるので、屋敷に泊まってもらおうと思っています。いいですか?」
衝撃的な一言だったのか、皆こっちを見てぽかんとしている・・・なんか変な事言ったか?
「そ・・・それはご勘弁を・・・屋根さえあればいいので、お願いいたします」
「泊まった方が楽じゃない? 理由は?」
「大変恐れ多く、大将軍様の家になど入れんません」
ラスタが言うと土下座してくる・・・慌てて皆も土下座する。
そういうものなの? 良く分からないもんだな。
「はい、立って立って。分かったよ、家が建て終わるまでどうするかな・・・」
「今はまだ夏です。家がなくても穴を掘り、雨さえしのげれば何とかなります」
「それでいいのならそれで。一応今までいた穴を見せてもらえる?」
「はい、構いません」
「その前に、タダシさんが皆に料理を作ってくれてるはずだから貰ってくるね」
貰って来たものは冷凍コロッケを揚げた物だった。
(食材を氷魔法で凍らせ、食材を魔鉄の箱に入れて取り出し口以外を氷で囲む簡易冷凍庫で保存していた物)
皆に振る舞うと美味しそうに食べていた。
今まで住んでいたと言う穴に案内してもらい、中を見てみると1m位掘って上にゴザ? のような物が乗っているだけのものだった・・・寝れればいいそうだ。
これならアースウォールで四方を塞ぎ、合板で屋根にした方がましなんじゃないのか?
8軒分か、今の魔力ならどうとでもなるか。
「仮住まいを用意するから、明日にもう一度来てくれるかな?」
「しかし・・・いえ、はい、畏まりました」
屋敷に戻ると、フランソワーズ様とユカさんが待っててくれていた。
「もう大丈夫か? いくぞ!」
「お待たせしてしまったみたいで、申し訳ありません、お願いします」
最近・・・忙しいな・・・用事は重なるって言うし、まだゆっくりするには時間がかかりそう・・・