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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
54/406

第38話 土下座って、この世界にもあるんだね

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7/7 改稿あり 加筆あり

「急ですまんな、ユカも呼んできて貰えるか?」

 フランソワーズ様は、頷きながら言う。


「はい、解りました」


 珍しいな、フランソワーズ様が、ユカさんに用事だなんて。たまに話すくらいの仲じゃなかったっけ?

 ユカさんのところに行き、事情を話しフランソワーズ様のところへ戻る。


「お待たせしました、連れてきましたよ」


「お待たせしました」

 ユカさんは、ぺこりと礼をする。


「ああ、すまん、早速だが用事と言うのはな・・・単刀直入に言うと父上に会って欲しいんだ」


「お父上と言いますと・・・大将軍様ですか? 何かありましたか?」


「そうだ・・・でな、父上が病気なのは知っているか?」


「いえ、どの様なご病気で?」


「死病だ」

 フランソワーズ様は、おでこを押さえ首を横に振りながら言う。


「死病! そんな!」

 ユカさんは、驚いたまま固まっている。


「ユカさん、知っているんですか? どの様な病気なんですか?」


「回復魔法も解毒魔法も効かない、かかればほとんど死んでしまう。そういう病気・・・症状自体は肺炎に近いんだけど、なんで感染するかは余りわかっていないものみたいなの」

 ユカさんは、こちらを向き言う。


「死病に治療薬とかは無いんですか? もしくは緩和剤とか・・・」


「えっと、見たことは無いけど・・・」

 ユカさんは、首を横に振り答える。


「もちろん、治療薬はあるぞ。ただ治るかどうかは運しだいだな」

 フランソワーズ様は腕を組み頷きながら言う。


「どの様な治療薬なんでしょうか? 手に入るものなんですか?」

 ユカさんは、聞きながらフランソワーズ様に近づいていく。


「落ち着け、治療薬の材料となる光茸はエルフの都で作られておる。先程言った様に、効果に開きがあってな・・・治らない事もあるんだ」

 フランソワーズ様が、ユカさんの肩を掴みながら言う。


「今、薬はこの国に無いんですか?」


「お抱えの研究者がほんの少し持っている可能性が無いとは言えないが、正直解らん」


「そうなんですか・・・もしかしたらですが、薬を見たら何かで代用できる物を思いつく可能性が無いとは言えません。一度持っている方とお会いしてみてもいいですか?」


「うむ、早急に連絡を取っておこう・・・でだな、先程の続きだが、回復魔法を父上に掛けてくれぬか?」


「それは構いません、ですが、フランソワーズ様も回復魔法の使い手では?」


「そうだ・・・だが、私の魔法では体力回復させることが精一杯なのだ・・・ユカは治療院で聖女と呼ばれているだろう? その回復魔法は死病の進行を押しとどめる・・・その噂を聞いて・・・たのむ」


「もちろん、それは構いません。しかし、こちらも1つお願いがあるのですが・・・」


「うむ、何でも言ってくれ。出来る限りの手を尽くそう」


「ありがとうございます。治療院を新しくすることは出来ませんか?」


「出来るが、時間がかかるぞ? しかも、それはユカの利益にならないだろう? いいのか?」


「構いません。治療院が汚れていると、他の病気の感染にも繋がりますので、綺麗にしたいと思っていましたので」


「欲が無いな・・・解った! 逃げた貴族の馬鹿共の屋敷を接収して金はある! 早急に新しい治療院を建てよう」


「ありがとうございます」


「今夜はもう遅い、明日迎えを出す。待っててくれ」


「はい、かしこまりました」

 俺は、置いてきぼり感が否めないが、一応返事をする。


「はい、解りました」

 ユカさんは、力強く頷きながら言う。


 次の日の朝、ショウマ君と朝錬に向かうため一緒に外に出ると、2人が正座をしていた。

 1人は料理長、もう1人は見たことの無い男だった。


「お・・・おはよう・・・ございます」


「タダシ殿に弟子入りをさせてください」

 料理長が土下座をしながら言う。


「いえ、私をタダシ殿の弟子にしてください」

 もう1人の男も言いながら、土下座をする・・・この世界にも土下座あったのね・・・


「お前は帰れ! 副料理長のお前が料理長をついで王宮料理を作れ!」

 料理長は、土下座をしながら副料理長のほうを少しだけ向き言う。


「何を言うんですか! あなたが帰ってください! 料理長の責任を果たしてください!」

 副料理長も、土下座をしながら料理長の方を少しだけ向き言う。


「ふざけるな! 私はもう辞表を出したんだ! お前が抜けたら他のやつらが困るだろう!」


「そちらこそふざけないで下さい! 料理長だったんですから皆を導くのは当たり前でしょう!」


 土下座をしながら言い争ってる二人を見て、あっけに取られてしまった・・・


「カナタさん、タダシさん呼んできます」

 ケイタ君が、いつの間にか後ろにおり声をかけられる。


「ごめん、お願い」

 人間、急な出来事に遭遇すると思考が完全に止まるもんだね・・・


「何だお前ら! 儂は弟子など取らん! 帰れ帰れ!」

 タダシさんは、来るなり直ぐにシッシと手を振って言う。


「何故なんですか! そこまでの腕をお持ちなのに何故ですか! 弟子にしてくれるまで、ここを動きません!」

 料理長は、地面に頭をこすりながら言う。


「お願いします! 私では、あのような料理など考え付きもしませんでした! どうか弟子に!」

 副料理長も、地面に頭をこすりつけながら言う。


 うわぁ・・・大変そうだなぁ・・・本当にめんどくさそうな顔してるね、タダシさん。


「すまん、カナタ、何とかなんねぇか? ここにいられると邪魔だ」

 タダシさんは頭に片手を置きながら言う。


「そうですねぇ・・・弟子ではなく、休みの日に習いに来るっていうのはどうでしょう? タダシさんの用事優先になるとは思いますが、何も教わらないよりは有益でしょうし」


「あぁ、料理の補助に来てくれるって言うなら、邪魔にはならねぇし、ありがてぇな」


「「本当ですか! ありがとうございます!」」

 2人が、また地面に頭をこすり付ける。


「タダシさん、一応条件として、お城での料理を優先するって言うのは付けた方がいいかもしれないですね」


「ああ、そうだな。他のやつに仕事を押し付けてここに来られても困るしな」


「「お任せください! 我らとて料理人! 料理するときはいつも全力です!」」

 息ぴったりだね、仲良いんだろうな。


 朝食の準備を少し手伝い調味料を少し分けて貰えると、大喜びで2人は帰っていった。


 朝ご飯を食べて、Lvをあげて(Lv13.Lv12)ギルドに行きお金を受け取る(101600レティア。端数はサービス)。詳細は面倒なので省き、リョウタロウさんに預けておく。

 その足で屋敷に帰ると、昨日ジャガイモモドキの事を教えてくれた人が居た・・・てか遠巻きに農民の人全員居るような・・・


「昨日は、本当にありがとうございました」

 男は、いきなり土下座し始めた・・・遠巻きで見ている人も走ってきて同じように土下座し始める。


「いや、大丈夫だよ。困ったときは助け合いってね」


「あの、いきなりですが、子供を・・・子供だけでも皆さんの奴隷にしていただきたいのですが・・・」

 男が言う・・・男のみならず、全員土下座をしている。


「ハァ? えっと、何? 奴隷にって解ってていってるの?」


「はい、私どもは誰に買われても仕方がないですが、子供だけは良い人に買っていただきたく・・・お願いいたします」


「え~と・・・どうしよう・・・う~ん」


「今すぐじゃなくてもいいのです。奴隷に落ちるまでもう少し時間があります。どうかお願いいたします」


「解りました、考えてみます・・・ですが、助けられるかは解りませんし、助けられる可能性の方が低いと思ってください」


「はい、ありがとうございます」


「あと、話し方が丁寧だけど何で?」


「私ですか?」


「そうそう、普通は丁寧に話すのなんて難しいんじゃないの?」


「私は・・・商家の生まれでして・・・騙され家が没落し・・・」


「計算は? 何処までできる?」


「出納帳の記載まで出来ますが・・・何故ですか?」


「それを教えることは出来る? ある程度の人にでもいいけど」


「はい、出来ますが・・・」


「うん、光が見えた! よし、フランソワーズ様と交渉してみる!」


「はぁ・・・」


「あとさ、名前教えて」


「ラスタと申します」


 昨日の片付けと、借りてきた物を返しに行ったり、折角集まったからといって、タダシさんがイモモチを作り振舞ったりと、ゆっくり時間が過ぎていく。

 そこに馬車が現れた。俺とユカさんを迎えに来たようだ。

 中から執事さんが出てきて恭しく礼をする。


「今話題の聖女様と従者の方をお連れすることができ、大変光栄に思います」

 執事さんは、ユカさんを見て言う。


 あ・・・俺って従者なのか・・・ちょっと面白い。


「いえ、この・・・」

 ユカさんは、慌てながら訂正しようとする。


「ありがとうございます! そのように言って頂き大変嬉しく思います」

 俺は、ユカさんの声を遮るように、ちょっと大きな声で返す。


 ユカさんから何で? って顔をされたが、気にしないでおこう。

 ユカを手放しで大絶賛する会話をして、城に着く・・・外国の観光をしているようで面白い・・・おのぼりさんのようにキョロキョロしてしまう。


 執事さんに案内されながら、奥の一室に到着する。

「ここでございます。どうかよろしくお願いいたします」

 執事さんは、言ってからお辞儀をする。


「はい、出来る限り頑張ってみます」

 ユカさんは、拳を作って笑顔で言う。


 執事さんは、ノックをして「失礼します」といい、扉を開けた。

 俺たちが中に入ると、ベッドに横になっている身なりの良い獣人の人と、その人の手を握りながら歌っているフランソワーズ様の姿を確認できた。


「来たか! 早々にすまんが、頼めるか?」

 フランソワーズ様は、今にも泣きそうな顔でユカさんに言う。


「ええ、もちろん・・・カナタさん、手伝ってくれますよね? ねぇ!」

 ユカさんは、睨みながら俺に言う。


 うわぁ・・・めっちゃ怒っていらっしゃる・・・怖いんですけど・・・


「はい! ご命令とあれば!」

 俺はとっさに敬礼をする。


「本当にいい加減にしないと怒りますよ!」

 ユカさんは、じろっと見ながら言う。


「ごめんなさい、もちろん手伝うよ。回復を重ねればいいの?」


「うん、全体的に回復して貰って、私が細部をやるから」


「了解、早速やっちゃおうか」


「ちょっと待ってくれ! カナタも使えるのか? 回復魔法を・・・」

 フランソワーズ様は驚きの声を上げる。


「う~ん・・・そうですね、ユカさんほどは使えませんが」

 ここまで来て嘘をつくのも忍びないので、正直に答える。


「何てことだ・・・回復魔法の使い手が2人も・・・どうなって・・・」

 フランソワーズ様は、頭を押さえながら椅子に座ってしまった。


「内緒でお願いしますね」

 俺は一応口止めを頼む。


「おいそれと言えぬよ。では、たのむ」


 寝ている人の右手と左手を持ち、回復をさせる・・・回復魔法は少し練習していたが難しく、良い練習になりそうだななんて・・・不謹慎かな。

 顔色が良くなり、苦しそうな息遣いじゃなくなるが、根本的な回復は出来てはいないだろう・・・


「顔色が戻った・・・治ったのか?」

 フランソワーズ様は、ユカさんに聞く。


「いえ、体力が少し回復し、内臓類の疲労なども軽減していますが、根本的には治っていません」

 ユカさんは、説明をする。


「そ、そうなのか・・・ここまでの回復は初めて見た・・・しかも無詠唱とは・・・なんて魔法なのだ」


「現状維持が精一杯ですが、もしかすると意識が戻る可能性もあります」

 ユカさんが、安心させるように言う。


「そうか・・・そうか・・・2日も寝ているのだ。ありがとう・・・本当にありがとう」

 フランソワーズ様は、今にも泣きそうな顔をしている・・・全部治せる魔法を、いつかは創って貰おう。


「治療院を建て直す以外の褒美は、何か無いか? ここまで回復すると思っていなかった、その侘びもこめて送りたい」


「実はお願いがございます」


 さて、お願いを聞いてもらえるかな?

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