第36話 パーティ準備
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7/2 改稿あり 加筆あり
夕食時にフランソワーズ様がいつものようにやってきた。
「来たのか、フラン嬢ちゃん、トンカツでも食べるか? 食事が出来上がるまで暇だろう」
タダシさんが、フランソワーズ様に気軽に声をかけている。
フラン嬢ちゃんって・・・いつの間に仲良くなってるの・・・びっくりだよ!
「いいのか? いつもはつまみ食いとかさせてくれぬのに・・・」
フランソワーズ様は、前のめりになりながら、うれしそうな顔をしている。
「ああ、その代わり頼みがあってな」
タダシさんは、顎を触りながら言う。
「何でも言ってくれ! 新鮮な卵か? 砂糖か? 胡椒か? 何でも持ってくるぞ!」
フランソワーズ様は、腰に手を当てて頷きながら言う。
あぁ、最近の調味料の充実は、この人の食欲のせいだったのか・・・まったく・・・
「グロスを1日貸してくれないか? 明日パーティーすることにしたんだが、一気に作れないのでな・・・新作の料理も作る予定だぞ、しかもお土産もつける! どうだ? たのむ」
タダシさんは、両手を合わせ拝むようなポーズをとる。
「明日はたまたま騎士達の視察しか入っておりません。私が居なくても滞りないと思われますし、新作の料理やお土産が貰えるなら、手伝いに来てもいいかと・・・」
グロスさんが、フランソワーズ様に言うと礼をする。
「グロスが言うなら間違いは無いだろう。しかし、新作は美味いのか? どの様な物なのだ? 試作は無いのか? 美味かったらそれもお土産に入れてくれるのか? どうなのだ?」
フランソワーズ様がまくし立てる。
うわぁ・・・本気で料理なくては生きていけない状態なのかも・・・
「まぁ待て待て。そう言うと思ってな、セントバードを先に解体してもらって、肉を少し持ってきたんだ。美味いと聞いてな」
「何! セントバードを倒したのか! カナタ! 皆無事か?」
フランソワーズ様がこちらを向く。
「はい、皆怪我も無く無事に帰ってきました」
俺は言ってから礼をする。
「そうか、ラネアクロウラーが好物だからたまに現れるんだが、人も襲うし弓が効かない厄介な相手なのだ。倒せたのなら問題ない!」
フランソワーズ様は、頷きながら言う。
「アルとエルって頭に付くやつの方が美味いといわれたから、明日のお土産はそれだ!」
タダシさんは、肉を出しながら言う。
「何! いいのか? なかなか食べられる物ではない! 肉が焦げていても美味いといわれる高級品だ! グロス、明日は頼んだぞ!」
フランソワーズ様は、テーブルをバンッと叩き、大きな声で言う。
「はっ! 承りました! 私にもお土産は・・・」
グロスさんは言ってから礼をし、タダシさんの方をちらりと見る。
「あ・・・あぁ、かなり多めに渡すから安心してくれ。あと、明日のパーティーは誰でも参加してくれて構わないから、そこで食べて、お土産を持って帰るのがいいんじゃないのか?」
タダシさんは、気おされたように言う。
「タダシ殿がそう言われるのであれば、参加させていただきます」
グロスさんが言ってからタダシさんへ礼をする。
「待て! アル・エルセントバードの肉は出さぬ方がよい。
妙なやからに絡まれるかも知れぬのでな・・・嫉妬は恐ろしいぞ。
食材もいろいろな物をこちらでも用意し、セントバードも大将軍の差し入れという事にしておいた方がいいだろう。
カナタ、グロスいいか?」
「はい、戻り次第手配いたします」
グロスさんは言ってから礼をする。
えっと・・・大将軍? 城? どうなってるの? 最近夜遅くに帰ってきてたから会話がわかりません・・・でも、特に問題は無いだろうし。
「はい、こちらも問題はありません」
「そうか・・・じゃあ、城の方にも土産などを持って帰るか?」
タダシさんが、顎を触りながら言う。
「そうしてくれると助かる・・・・少し料理長に食べさせるか! 最近城で食事をしなかったから泣き付いてきてうっとうしかったのだ」
フランソワーズ様が腕を組んで名案とばかりに頷く。
「前も言ったが、宮仕えはしないからな。無理な勧誘するなら、もう料理は作らないぞ」
タダシさんが、言う。
「勇者を目指しているといえば大丈夫だ。それでも駄目なら私の客人と言ってくれ。ただ・・・調理法など、どうしてもと言うのであれば教えてくれるのだろう?」
フランソワーズ様は、笑顔で言う。
「まぁ、そのくらいならいいさ。明日は頼んだぞ」
タダシさんが、エプロンをしながら言う。
夕食はから揚げだった。しかも・・・かなり大量の・・・山盛りってこういうことを言うんだね・・・
肉は柔らかくジューシーで肉汁が甘い・・・こんなに美味いから揚げ、食べたことがない。
凄い量だったのに全部無くなり、お土産として調理済みの物を持って帰って行った。
鍛冶組と錬金組に頼んで、油で揚げる専用の魔道具(箱型で油を熱することが出来、油きりのところまで付いてる)を作って貰っていたらしい・・・
まだ1人で作れないので師匠との合作だといっていた。
しかも魔鉄製の物で、埃を被っていた魔力炉を出して貰ってインゴットから生成したと言っていた・・・
費用は、タダシさんに金貨2枚渡してあったからそこから出したようだ。
鍛冶組の2人は魔力が多く、魔力炉を稼動させられるので、獣人の鍛冶師の人から優先的に技を仕込まれているそうだ・・・すごいね。
魔力炉に魔力を注入する仕事だけでかなりの金額を稼いだらしく、いろいろな物を試作している。例えばクナイの様な物など・・・ロマンを感じる。
後でタダシさんに聞いたのだが、フランソワーズ様は大将軍の娘で、王様の姪だった・・・なんてこった・・・しかも、料理長として城に来ないかって誘われたといっていた・・・サクッと断ったらしい。
それにしても、何でそんな人が冒険者のような事をしていたのか・・・謎だ・・・
グロスさんのマジックバッグは、ギフトのマジックバッグ化だった。
しかも、時間制御術式が組み込んであるらしい。時間の経過が1ヶ月で10秒ほどだと言っていたので、かなり凄い物だと思う・・・組み込んだのは、やはりパルメント殿だという・・・早く会いたいな。
特にやることも無いので、風呂入って寝よう。
朝はいつも通り朝錬をして朝食を取り、Lvを上げ(Lv12.Lv11)解体場へ向かう。
「おはよう、終わってるんだが片付けを先にしてもいいか?」
エミルさんが、疲れきった表情をして言う。
「はい、大丈夫です」
外に出て数分位待つと呼びに来た。
「おまたせ、久しぶりの大仕事だった! しかも、夜は肉をただでご馳走してくれるんだろ? 良い日だ!」
エミルさんは、う~っと背伸びをしてから言う。
「お疲れ様です。食事会は楽しみにしていてください。では夜に~」
「ああ、査定はまだだから後でギルドに行ってくれ」
「はい、解りました」
グロスさんに解体した素材を運んで貰い、俺とリョウタロウさんは木工の倉庫へ。
「ミミリ師匠! いますか~?」
「お帰りなさい、魔物の討伐どうでしたか?」
ミミリさんは、首をかしげながら聞いてくる。
「バッチリでしたよ~、で・・・お願いがあるんですけど」
「何ですか? 愛の告白ですか?」
ミミリさんは、ニヤニヤしながら聞いてくる。
俺がいつも適当なことばかり言ってたから、俺色に染まっちゃったか?
「そうしたいのは山々ですが、違うんです・・・テーブルと椅子を貸して貰えないかと思って。テーブルと椅子は木の板とかで良いんですけど、あとは食器も欲しいですね」
「そうしたいのならそうすればいいじゃないですか! もう! すごいがんばって考えたのに、サラッと受け流さないで下さい!」
「はっはっは、すみません、いいですか?」
「構いませんよ、でも何に使うのですか?」
「夜にパーティーをするんです。ミミリさんも来て貰えませんか?」
「ダンスとか踊れませんよ・・・」
「そうですか・・・残念です・・・冗談はさておき、食事会なんですよ。パンとお酒は持ってきてもらって、メインの肉料理を出そうかと思っています。タダで」
「お肉! タダ! 行きます! 夜ですね!」
「ヒリスさんにも来て欲しいんですけど・・・朝早くは起きてないですよね・・・」
「間違いなく寝てますね」
「言っておいて貰ってもいいですか?」
「任せてください。お肉がタダで食べられるって言ったら確実に行きますから~」
「じゃあ、お任せします。どの木材を貸してくれます? あと、アイテムバッグを持ってる仲間も一緒に木材置き場へ行っていいですか?」
「構いませんよ~、こっちです~」
リョウタロウさんと一緒に木製の大皿を買い、板材を借りてお屋敷に戻る。
「土台は土魔法で作っちゃいますか。圧縮すれば硬くなりますし」
「それが楽ですね、周りから見えないように壁になりますのでお願いします」
リョウタロウさんは、木材を出し壁になりながら言う。
「了解です、壁お願いします」
魔法でサックリ会場の準備も終わる・・・魔法って本当に便利。
「カナタ君、ちょっといいかしら?」
ヨシさんが、急に声をかけてきた。
「はい、もちろんいいですよ」
「あのね、炊き出しも一緒にいいかしら?」
「構いませんけど、何かあったんですか?」
「農民の人たちなんだけどね、この秋で奴隷になっちゃうかもしれないらしくてね。せめて食事だけでも美味しい物をって思って・・・」
「了解しました。一緒に行って呼んできますか?」
「うん、ありがとう。一緒に行きましょう」
門の前の所の炊き出しに人が群がっている・・・
「何人居るんですか?」
「40人位よ。材料のストックもあるから大丈夫だと思うの」
「農奴の方って、炊き出しだけじゃ足らないですよね? 何か食べてるんですか?」
「聞いた話だと家畜の餌って言ってたんだけど・・・牧草かしら?」
「くず野菜とかですかね? それとも新しい野菜とか?」
「そう言われると気になるわね、誘ったら見てみましょう」
炊き出しのお手伝いさんを含め全員に声をかけて、1人の男性に何を食べているのか見せて貰った。