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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
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第35話 初めて絡まれる

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます

 振り向くとそこには、出て行ったイサオさんがいた。


「ああ、イサオさん、こんばんは」

 そう言って、頭を下げる。


「また低ランクの依頼をこつこつやってたのか? チッくだらねぇな」

 イサオさんは、腕を組んで見下すように見てくる。


 顔が赤いってことは、酒を飲んでるんだろう・・・生温いエールなんて飲めるか! って言ってたのに・・・


「そうですね、今日は食材を取りに行ってましたよ」


「おうおう、それはいいことで・・・まぁせいぜい頑張れよ、リーダー様」


 喋ってる間に酒場の方から2人イサオさんの後ろに歩み寄ってきた。

 1人は人族の男性で、さわやか風イケメンで見下したような感じを受ける。

 もう1人も人族だが女性で、綺麗系だが、ニヤニヤしながらこちらを見てくるので魅力は感じない。


「おう、イサオ、こいつらが元のPTメンバーか?」

 男は、ニヤニヤしながらイサオさんに話し掛ける。


「おう、お飯事クランの方々さ」

 イサオさんが、ニヤリとしながら言う。


「ぎゃははは、弱そー! 見るからに貧弱だし、最大戦力のイサオが抜けちゃったから大変なんじゃない? ぎゃははは」

 女は、大声で笑いながら言う。


 えっと、このタイミングでテンプレ発動? いや・・・要りませんけど。


「おいおい、本当の事言うなって、可愛そうだろ~」

 男は、ニヤニヤしながら見下すように言う。


「あぁん! やんぞゴルァ!」

 ショウマ君が、そう言いながらギフトの圧力を発動してしまった。


雑談していたほかの冒険者達も、雑談をピタリと止め、こちらをうかがう。

「ヒィ」

 女は、数歩下がる。


「ショウマ君! 抑えて! こんな雑魚に、手札を見せない!」

 直ぐにショウマの近くに行き、肩に手を置き小声で話しかける。


「あぁん? 馬鹿にされたんだぞ、ぶち殺す!」

 真っ直ぐにイサオさんたちを睨み、近寄ろうとする。


「待って、赤ん坊位の相手に全力を出すのはかっこ悪いでしょ」

 あぁ、怖いよ・・・本能的に【勝てない、逃げろ】って言われてる気がするよ。


「はぁ? 年上のおっさんだぞ? ぶっ殺す!」


「違う! 強さの話。向こうは相手にならな過ぎる・・・人殺しは極力避けたい」


 色々と複雑そうな顔をしていたが、声の大きさを戻し、ギフトの圧力もOFFにして、


「くそ! あ~! 解った! 先帰ってるぜ」


「うん了解、ありがとう。後で畑手伝ってもらうかもだからね」


「おう、解った」

 ショウマくんはそのまま、外に出て行った。


「いや~すみません、驚かせてしまって」

 後頭部に手を当てて、軽く謝る。


「チッ、そんなことよりお前ら、こんなところ辞めてこっちに来ないか? 好きに出来るぞ? なぁ!」

 イサオさんは一瞬で持ち直し、ニヤニヤしながら女性陣を見る・・・これが嫌悪感を感じる目なのか・・・初めて見るな。


「うん、そうだな! それが良い! イサオさえいれば勇者にでもなれるからな!」

 男は、イサオさんに同調する。


「そ・・・そうだね! なんたって魔法を4属性も使えて、回復魔法まで使えるんだから! こんな凄い魔法使い見たこと無いよ! しかも、3日間でオークを22匹も倒したのよ! 22匹! 最高よ!」

 女も、かろうじて持ち直し、同調する。


「おっと自己紹介がまだだったな、俺はランク8のPT炎蛇のリーダー、火の魔法戦士クルトだ」

 クルトと名乗った男は、ニヤニヤしながら言う。


「私は風の魔法戦士ヴィストよ、よろしく新人さん」

 ヴィストと名乗った女は、投げキッスをしてくる


 日本人の感覚からすると魔法戦士ってやっぱり恥ずかしい響きなんだな・・・なんでだろう? 魔法戦士ってこれから名乗る可能性もあるからなれないとだよなぁ・・・


「さて、イサオを蔑ろにしてたのはリーダーの責任なんだから、リーダー以外の他の人が入るのは歓迎だぞ! 全員入るならクランにしなきゃだな!」

 クルトさんが、俺を指差しながら言う。


「そうね! イサオの愛人位にはしてあげるわよ! ぎゃははは」

 ヴィストさんが、腰に手を当てながら言う。


「一つお尋ねしますけど、あなた達のいた席の横の地面に座ってる獣人の女の子がいますけど、彼女は?」


 チラッと見ただけで確信はないが、奴隷に見える・・・黒っぽい首輪をしていたし、ほぼ間違いはないだろう。


「あれは荷物運びの奴隷だが、なんだ?」

 クルトさんが答える。


「いえ、荷物運びなら男性の方がいいのではないですか?」


「ふぅ、おいおい同じ男なんだ解るだろ?」

 クルトさんは、ニヤニヤしながら、やれやれってポーズを取る。


 グッ・・・あぁ・・・殺すかこいつ。


「手伝いますか?」

 ケイタ君が一瞬にして近づき、何の感情もこもっていないような低い声で一言。


 ただ、ショウマ君を怒っておいて、喧嘩を吹っかけるようなことは出来ない・・・我慢だ。

 女性陣は、非難の目で相手の3人を見ている。


「いや、犯罪者になってしまう、我慢だ・・・我慢しよう」


「そうですか・・・解りました」

 ケイタ君は、めがねをクイッとしながら言う。


「皆さんは解体のところに行き、欲しい素材を言ってください。後で俺も行きます」


 横を通り抜けて外に出ようとしたが、クルトが道を塞いでしまった。


「そこの杖持ってるのと、胸がでかいの待て! こっちへ来い、いい思いができるぞ!」

 クルトさんが、ニヤニヤしながら言う。


「そこのイケメンも来なさいよ、色々教えてあげるわよ」

 ヴィストさんが、ケイタ君を見ながら言う。


「嫌がっているので勧誘はおやめください」


「はぁ? 嫌がるわけ無いだろ? もう8級で将来有望なんだぜ? しかも、本人に直接聞いてるんだ邪魔をするなよ、使えないリーダーさん」

 クルトさんが、やれやれという顔をして言う。


「これだから不細工は嫌いなのよ、オークとでも結婚したら?」 

 ヴィストさんが、俺を指差しながらいう。


「はぁ・・・不細工なのはわかっています。嫌がっています。勧誘をやめてください」


「あぁ!? 能無しリーダーの代わりに可愛がってやろうってんだ、何も問題ないだろ?」

 クルトさんが、俺につかみかかろうと近づいてくる。


「失礼する! 聖女様ではありませんか?」

 いきなりクルトさんの背後から、知らない人の声がかかる。


「くそ! 取り込み中だ! 消えろ!」

 そんなクルトさんを無視して、力で押しのけユカさんの前に跪く。


「命を助けていただいた、ブロードです。このような所で会えるとは女神レティアのお導き、感謝に耐えません」

 ブロードさんは、跪きながら丁寧に言う・・・ブロードさんは、どこかの世紀末風な恰好と風貌の人族の男だった。


「てめぇ! 邪魔だって言ってんだろ! 消えろって言ってんだろ!」

 クルトさんは、ブロードさんに掴みかかろうとする。


 ブロードさんは本当に無駄の少ない動きでクルトさんの腕を締め上げ、短剣をのど元に当てながら言う。


「さて、聖女様の許可さえもらえれば殺しますが、どういたしますか?」

 ブロードさんは、ユカさんを見ながら、さらりと怖い事を言ってのける。


「だ・・・駄目です、やめてください」

 ユカさんは、驚いていたが声を絞り出した。


「はっはっは、さすがお優しいですね、ただ他の冒険者達もやる気満々のようですよ」

 ブロードさんは腕を離して、短剣をしまいながらユカさんに言う。


「聖女様! 救っていただいた恩を今こそ!」

 酒を飲んでいた冒険者が、武器を持ってこちらに向かってくる。


「我こそ恩を返すのだ! 手柄を独り占めするな!」

 その他も皆武器を持ち、今にも襲い掛かろうとしている。


「止めて下さい! 喧嘩しないで下さい!」

 ユカさんは、驚きながら大声で止める。


「はい! 仰せの通りに」

 立ち上がって、冒険者たちは一斉にユカさんにお辞儀する・・・傍から見ると怖い・・・


「帰るぞ! 分が悪い」

 クルトが足早に出口に向かう。


「ああ、解ってる」

 イサオさんも、そう言い後に付いて行く。


 荷物を持たずに、サッと外に出て行こうとしてしまう。

 お会計は? 荷物は? なんて事を考えていたが、奴隷と言われた女の子がお会計をし全員の荷物を持って出て行った。


「皆さん、ありがとうございます。おかげで助かりました」

 俺は、冒険者の皆さんに頭を下げる。


「いえ、聖女様がいなければ命は無かったので、この位なんてことはないです」

 ブロードさん達は、口々にユカさんへの感謝を言う。


「あ! 皆さん! 何故酒場に? 1週間は暴飲暴食禁止で、禁酒禁煙だと言いましたよね?」

 ユカさんは、気が付いたように言う。


「はっはっは、エールはお水と同じですよ、聖女様」

 冒険者たちが全員笑いながら目をそらす。


「みなさん・・・元気が有り余ってるみたいですね、明日はお掃除手伝ってくれますよね?」


「はっはっは」

 冒険者たちの大爆笑が起こる。


「笑ってごまかさない! いいですね?」

 ユカさんは気持ちのいい位の笑顔だが、背景に般若でも背負っているのかって程の迫力だった・・・怖い・・・


「皆さん、ちょっと相談なんですけど、明日パーティー開きませんか?」

 俺は仲間のほうをむき言う。


「いつも突然だな・・・ただ、お礼を兼ねて開くって言うなら賛成だ」

 タダシさんは、頭を触りながら言う。


「お酒飲んでもこんなに元気だし、平気だと思うから賛成です」

 ユカさんも、小さいため息を吐きながら言う。


 みんなに聞くと特に反対意見は無く、明日パーティーを開くことにした。

 タダシさんヨシさんの2人では、こんな大勢の料理は一気に作ることができないが、それを何とかできる当てがあるらしい・・・任せよう。

 外で行うパーティーにするつもりなので、テーブルと椅子はミミリさんに相談すれば平気だろう。


「明日の今頃、家で食事をご馳走しますので来て下さい。酒とパンだけは持参してくださいね」

 酒場にいる冒険者と、受付や職員全員に向けて言う。


 皆タダでご飯が食べられると言って大喜びしている。


「皆も、呼びたい人を誘ってくださいね」

 俺は仲間のほうを見て言う。


 準備も必要なので用事はさっさと終わらしちゃおう・・・先ずは解体か。

 早速解体場に向かう。


 エミルさんに解体を頼むと呆れられたのは言うまでも無い・・・

 アルセントバード・エルセントバードの骨と羽、セントバード1羽の骨と羽、魔石は全部、肉はトウグとラネアクロウラーの物以外回収したいというと、どんだけ食べるんだと言われたが、明日パーティーをすると言ったら喜んでいた。

 高ランクの魔物らしいので、周りに言わないで欲しいと言うと、ギルドで喋れる情報が制限されてるから絶対喋らないと言っていた。

 喋ると首になっちゃうらしい。


 解体は急いで行うから明日の朝に来て見てくれといっていた・・・徹夜しないことを祈ろう・・・

 タダシさんだけ、解体を少し見ていくといって残っていた。


 日がまだ出ていたため、出来るだけこっそりと畑を魔法で耕す。

 腐葉土を土の量に対して三分の一位混ぜ込む位で、土は大丈夫だそうなので取ってきた物を植えていく。

 枯れちゃってもまた取って来ればいいし、草木の心を持っている2人に任せとけば何とでもなる気がするけどね。


 イサオさんが1日でこんなに変わってしまうとは・・・何もせずただ貰っただけの力ってのは恐ろしいな・・・他にも理由があるのかもしれないけど・・・

小説家になろう勝手にランキングと言うのを見つけ登録してみました

どうなるのか解りませんが、押してみていただけると幸いです

よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
[一言] 町中の抜刀は頭大丈夫レベルだけど、ヘタに下手に出るのも頭大丈夫レベル。
2021/02/03 19:14 退会済み
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