第3話 初めての食事
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6/4改稿、加筆あり
「次は水の確保ですね、水の音が聞こえるんでたぶん近くにあります。探してみましょう。あと生水なので沸騰させたいので焚き火と、鍋か器がほしいですね。
この白竹を加工できるといいんですけど、刃物が・・・ないんですよね・・・
あ! そうだ! カッターとか持ってないかな? えっと、佐藤君だったよね?」
「え? ひゃい! あ・・・ありますよ・・・たしかこの辺に・・・」
佐藤 匠君は、いきなり呼ばれてビクッとしたが、かばんの中のカッターを渡してくれた。
「おお! ありがとう助かるよ。これで箸も作れるかもだね! あとは・・・ビニール袋かペットボトルの空容器があればいいけど、誰か持っていませんか?」
「ゴミ袋なら、あたしが持ってるさね」
斉藤さんが買い物袋の中からゴミ袋を出す。
「斉藤さん、本当に貰っても良いんですか?」
「いいよ、使い道は無いからね。ほら、とんな!」
「ありがとうございます。よし、これに水を汲んでおいて緊急用の飲み水にしましょう。もちろん水は毎日変えましょうね」
2人との会話中に、五十嵐 渉真・中山 敬太・田中 良太郎の3人が水を探しに行きたいと言って、立候補してくれた。
ここで拒否するのもへんなので、お願いすることになりゴミ袋を渡す・・・何があるか解らないので、気を付けるように言っておく。
「あ! あとさ、折れてる大き目の枝とか使えそうなものが有ったら取ってきて。入り口の目隠しとか薪に使いたいから」
3人は頷き「わかった」と言い、水を探しに洞窟を出る。
「えっとね、佐藤君、悪いんだけど一緒に白竹を取りに行かない? バスが当たって折れてたヤツ・・・1人じゃきつそうだしさ」
「で・・・でも、危ないし3人が帰ってきてからでも・・・」
「そうなんだけどさ、外がさっきよりも暗くなってきてるから、急いで目隠ししちゃわないと、肉食獣が来ちゃうかもだし・・・」
そういうと、佐藤 匠君が、どうすれば良いのか分からないのか、おどおどし始める。
「私が、一緒に行きます」
いきなり別方向から声がかかったため、少しびっくりする。
「びっくりした・・・えっと、片岡さんだったよね? 白竹は重いかも知れないけど本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です!」
力強く頷く。
「うん、じゃあ行こっか・・・あ! そうだった。乾いている葉っぱと小枝がもっと欲しいので、他の皆さんは、この洞窟の近くでまき集めをお願いします」
そう言うと、小声で話しながら2人で進んでいく・・・
「榊原さん・・・ここがどこだと思いますか?」
「ん~・・・どこかと言われても解らないよ・・・憶測でもいいの?」
片岡 瑞稀さんはこちらを見て、頷く。
「そうだな~突拍子も無い意見かもしれないけど・・・ここは、異世界だと思ってるよ」
「え? 何でですか? 何か根拠はあるんですか?」
「一応ね・・・そこらへんに居る虫・・・見た?」
片岡 瑞稀さんは首を横に振る。
「あ! いた! ほら! あそこ! 木に張り付いてるヤツ! ほらほら、あそこ! 見える?」
俺はそう言うと、木にとまっているカナブンのような虫を指差す。
片岡 瑞稀さんは、虫を見つけると驚きながら「おおきい」とだけ呟くように言う。
「ね、ね。でかいでしょ? たぶんだけど20cm位あると思うから、地球だと自分の重さで動けないんじゃないかな? ・・・しかもさ、あんなに大きいのに飛ぶんだよ? あの虫」
俺の言った言葉を聞き片岡 瑞稀さんは、目を見開いて虫を見て立ち止まってしまった・・・
「ほらほら、動いて。ちゃんと皆にも後で話すつもりだからさ。ただね、今話してしまうと色々とやばそうだから、先にやれることをやっちゃおう」
その後は何も無く、バスがぶつかり、根元から折れてしまった白竹を、引きずりながら2本持ち帰った。
洞窟に帰ってみると、入り口の前に小枝が山になっていて、その近くに葉が付いたままの大きめの枝があった。
そこを避けたところに白竹を置き、洞窟の中に顔を出す。
「皆さん、戻りました」
「お! 戻ったな! すぐ近くに、すっげーきれいな湧き水が流れてるところがあったぜ! ただ、ビニールが破けそうだったから、こんなもんしか汲んで無いんだけどよ」
ゴミ袋には三分の一位の綺麗な水が入っていた。
「おお! 水の問題は解決かな? 本当にありがとう、そこにある白竹の枝にビニールを掛けといて貰っていいかな? あとは、夕方になったしお腹も空いちゃったんで、そろそろご飯にしたいんですが・・・ご飯って、どうしましょうか? 今から探索も無理だし・・・」
皆が少しうな垂れる・・・
「ほら、俯くんじゃ無いよ! 食べ物は少ないけどあるから、皆で分けて食べるかい?」
「本当にいいんですか? 何から何まで貰っちゃってすみません・・・そして、ありがとうございます。それでですね、すみません・・・食べ物って何があるんでしょうか? 皆で食べてしまっても良い物だけでいいので教えてもらえませんかね?」
「あいよ、解ったさね・・・そうだね~、荷物全部言うと、豚肉・キャベツ・もやし・カップめん・ラップ・アルミホイル・ゴミ袋、あとはバッグだね」
「今言ってもらった物は、全部使ってもいいんですか?」
「ああ、バッグ以外ならいいよ、残しておいても腐って食べられなくなるだけだしね、そんな勿体無い事は出来ないよ・・・助けが来るまでは、生き残らなくちゃいけないからねぇ」
「そうですね! 皆で生き残りましょう! 早速ですが、腐りそうなものから先に使っちゃったほうがいいですよね? やっぱり豚肉からかな? あの・・・すみません、三沢さん、ライター貸していただけませんか? タバコ吸うのは、三沢さんしかいないようですので・・・」
「あん? チッ・・・ほらよ!」
意外なほど簡単に渡されちょっと驚く。
「すみません、ありがとうございます。佐藤君、悪いんだけどノートとか数枚貰えないかな?」
そう言いながら、佐藤 匠君に、目線を飛ばすと「どぞ」と言いノートを1冊渡してくる。
「ありがとう、助かるよ」
「榊原さん、新聞紙がバスの中にありましたが、そちらを使用したほうが良いのではないですか? 新聞紙のほうが良く燃えますし」
中山 敬太君が、バスを指差しながら言う。
「いや、乾いた枯葉も多いし、小枝もこんなにいっぱいあるから、火をつけるのは簡単だと思う。新聞紙は寝る時の毛布代わりにしたいからね」
「なるほど、解りました」
「じゃあ、分担をして、火起こしと洞窟の目隠しやりましょうか」
目隠しは葉が付いた木の大きな枝を入り口まで引きずって持って行き、その枝の上に重なるように白竹を上に置いただけの簡単な目隠しなのだが、外から見たらそこまで違和感が無い・・・と思いたい。
火起こしをするために、洞窟の入り口近くで、石を組んでると話しかけられる。
「火を起こすんなら、洞窟の中でやればいいんじゃねぇか?」
五十嵐 渉真君が、洞窟を指差しながら言う。
「いやいや、洞窟の中で火をつけると、火が上手く燃えなくなったりして一酸化中毒になっちゃうかもしれないよ? あ! そうだ! 手が空いているならさ、薄い石で大きいのがあったら持ってきて貰っても良いかな? 良い?」
五十嵐 渉真君は、頷き探し始める。
その間に組んだ石の間に、枯葉・細い木・中位の木の順に置き火をおこす。思いのほかすんなり付き、火が一気に燃え上がり、かなり大きな炎になって少し驚いた。
平べったくていい感じの石を、五十嵐 渉真君が見つけてくれ、渡してくれた。
その石を火の中に直接入れ、爆発してもいいように空気穴以外を少し大きい石でふさいで置くと、洞窟の中に戻った。
「すみません、真田さん、料理人だったと言ってましたよね? 今ある材料で何かいい料理ありませんか?」
「そうだな・・・野菜炒めが1番楽だが、フライパンなどは無いしな、水は少しあっても鍋もない、どうするんだ?」
「えっと、ペットボトルを直接火にかけても沸騰手前までは大丈夫なはずですよ、あと準備しているのは石の鉄板ですね、薄い石は火に入れてあるのでもう使えるようになってると思いますよ・・・石が破裂する可能性もありますが・・・」
「そうか、朴葉焼きの原理か、なるほどな・・・そうだな、ホイル焼きはどうだ? アルミホイルの中に13人分に小分けにした材料と水を入れて、カップめんの味噌で味付けすりゃええじゃろ、麺も一緒に茹るがこの際仕方ないだろう・・・アルミホイルが直火だと燃えてしまう事があるが、まぁ石の鉄板の上に乗せられれば火は通るだろう」
「なるほど、ホイル焼きですか・・・火にかけている石を上に置きますので、作っていただいてもいいですか? 水は、自分の持ってるペットボトルのを使っちゃってください」
「おう! わかった、佳おまえも手伝え」
「はい、あなた」
外に出て石を見てみると、上に置いた少し大きな石が2つに割れていた。
だが、中に入れた石は割れなかった・・・よく割れなかった、ナイスな石だ! と心の中で褒めておいた。
箸のことを忘れてしまって大変だったが、白竹の枝で何とかなった・・・
特に問題も起こらずに、食事が済んだ・・そして、火の中から1つのアルミホイルを出す。
「ん? なんだそりゃ?」
「白竹の実、どんぐりみたいだから、食べられるかと思ってさ」
「どんぐりって食べれるのか?」
「かなり昔は食べてたんだよ~、今でもパンとかに使われたりしてるしね。種類によっては灰汁がすごいんだ・・・灰汁が無ければ食べられるはずだよ」
カッターで悪戦苦闘しながら、皮をむき渋皮を取って食べてみる。
「え? あれ? おいしい・・・胡桃っぽい味、食べれるよ! これ!」
これでちょっとは食料調達が楽になるな・・・水の消費量が増えそうだけど・・・
そう思いながら食事を終える。
白竹の実:形はでっかいどんぐり、味は胡桃に似ている。 灰汁は出ないのでフライパンで焼いて食べることも可能。 でっかい山胡桃を想像してもらえばいいかもしれない。
虹のスカラベ:木に止まっていたでっかいカナブン。 ある地域で甲殻が宝石のように扱われているが、その地域以外では特に価値は無い。 捕まえようとすると反撃してくる。