第33話 糸の回収作戦
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サクサク進まず、まわり道をすることが多いですが
面白いと思っていただけるように頑張ってまいります
ブックマーク・評価 本当にありがとうございます
6/23 改稿あり 加筆あり
夕方の早い時間に仕事を切り上げて、話し合いが行われた。
「皆さん、知っている方もいると思うのですが、ラネアクロウラーが目撃されたみたいなので、試しに狩りに行きたいと思うのですがいいですか?」
「もちろんだ、街道を塞がれれば食材も滞る。それは避けたいしな」
タダシさんが、頷きながら言う。
「私もOKです。治療も一段落してるし、あとは、身体の欠損を直す魔法が出来ればって感じだし、最近教えて貰った軟膏の傷薬も作ってあるから治療院は大丈夫だと思います」
ユカさんが言う。
「錬金がちょっと面白くなってきたとこなんだけど~、練習で使う魔石欲しいし~逆に行きた~い」
アカネさんが髪の毛をいじりながら言う。
「魔糸を取って洋服作りたいです! ぜひ行きましょう!」
コノミさんが手を上げて言う。
「そうだね、コノミちゃんの言うとおり魔糸が欲しいね。手触りが良ければ下着も作れるしね」
アヤコさんが腕を組みながら言う。
「魔糸を切れる鋏も、試作したので後でお渡ししますよ」
ケイタ君が、めがねをクイッとさせながら言う。
「仕事が速いね、助かるよ」
アヤコさんが言う。
特に反論も無く、出発が決定しそうな時。
「俺は、行かない」
イサオさんが、立ち上がり言う。
「え? 何でですか?」
「俺はもう、このクランを抜けて他のPTにはいる予定だ」
イサオさんが腕を組み言う。
「そ・・・そうですか・・・解りました、無理に入って貰ってても意味ないですしね」
「前にクラン運営の費用を取っただろう? それを返せ!」
手のひらを前に出して言う。
「解りました。ただ装備は返して貰いますからね」
「ふざけるな! 俺の装備だろう! 何でお前に返さなきゃなんねぇんだ!?」
イサオさんは、テーブルを一叩きし、こちらを指差して言う。
「クランで買った装備です。しかも俺が稼いだお金で買ったんですよ? 貸していた装備をあげるわけないじゃないですか」
「ちっ守銭奴め! くそ! 金はきっちり渡せ、いいな」
「もちろんです。今出て行きますか?」
「ああ、さっさとこの御飯事クランから出てってやるよ」
出て行くものを止めることは出来ないので、色をつけて2万レティアをイサオさんに渡し、洋服と下着、バッグ、ゴブリンから取ったハルバードを餞別に渡す。
一言「じゃあな」と言い、出て行った・・・鍵管理登録も抹消しておいた。
ここ数日で街の賑わいが戻ってきている。
人が帰ってきたのかポツポツと商店も開き始め、ホテル? 民宿? も開いていたので路頭に迷うことは無いだろう。
「良かったのですか? 行かせてしまって」
リョウタロウさんが心配そうにこちらを見ながら言う。
「仕方ないですよ、自分の道を自分で決めるのは当たり前ですから。何かあったときには泣き付いてくるんじゃないですか? その時は助けてあげましょう」
「そうですね、そうしましょうか」
重い空気になると思ったが、特に空気が重くなることなく、今まで習ったことやこれから習うことなど皆で話しあっていた。
最近は、一緒に住んでいるのにみんなの時間はバラバラで、全員集まるのは久しぶりかもしれないな・・・そんな事を思っていた。
珍しくフランソワーズ様が夕食に現れなかったので驚いたが、明日は早く出発するので早めに寝ることに。
翌朝、早起きをしてダイニングへ向かうと、
「おはようカナタ、いい朝だな」
朝食を食べているフランソワーズ様を見つけた・・・
少し話すと、昨夜は遅くまで色々やっていたので来れなかったが、料理が恋しくなり余り寝られなかったそうだ。
何処の食いしん坊キャラだよ・・・
「ラネア討伐に行くのか?」
フランソワーズ様が、急に話しかけてきた。
「はい、そのつもりです」
「そうか、助かる。特徴とかは聞いているな?」
「はい、全部把握済みです」
「そうか、気をつけて行って来るのだぞ」
そんな会話をしていると、グロスさんが駆け込んできて連行されていった・・・かなりしょんぼりしていた。
グロスさんに、今日のお昼用に作っていたトルティーヤを4人前ほどお土産に渡して、「仕事を片付けたら渡してあげてください」と言っておいたので大丈夫だろう。
協会に行きLvを上げLv11、Lv10となって、ようやく全員二桁台になった。
12人になったおかげで、PT分けは簡単になり早速出発することに。
ここで、ミズキさんから重大発表があった。
「身体強化魔法が完成しました」
ミズキさんは、腰に手を当ててドヤ顔で言う。
「へ? 今、作ったの・・・?」
「はい、今です」
PT分けをしている間に作ったらしい・・・この子どんどん駄目な方向に向かってる気がするんだけど・・・魔法中心の生活をまだ続けてるみたいだし・・・まぁ便利になったってことはいいことだ。
前に作った身体強化魔法は身体への負担が大きすぎて、練習ぐらいにしか使えなかった。
身体の負担が大きすぎて、長時間使うと筋肉痛で動けなくなってしまう。
その身体強化魔法に、回復魔法を混ぜて作った物が今回の身体強化魔法らしい。
闇魔法の身体強化、光魔法の回復、この2つを混ぜて新しい魔法を作るなんて、本当に突拍子も無い集団になったもんだね・・・
この世界にも魔術師2人による複合魔法は存在するが、相反する属性の魔法を混ぜることができるなんて思わないだろう。
門を出て外に行ってから、皆で魔力の使い方など教えて貰うことにした。
「では、ユカさんいいですか?」
ミズキさんは杖を構えて言う。
少し前だけど、杖は飾りですって言ってなかったっけ? 何で構えたの?
「いいですよ、任せてください」
ユカさんは、じっとミズキさんを見ながら言う。
全員に一度かけて貰うと、前回と同じく保持に自分の魔力が必要なのは変わらないが、保持する時の魔力消費が倍になった感覚だった。
保持自体は魔力をそこまで必要としないので特に問題は無いだろう。
全員一度魔法を切ってから、お互いに身体強化魔法を掛け合い、使用感覚を確認していく・・・特になんて事もなく全員習得する事が出来た。
身体能力上昇を持っているケイタ君、ショウマ君(最近上昇になったらしい)に聞いてみると、ギフトに似ている感覚らしいが、ちょっと違うと言っていた。
感覚によるものなので、詳しくは説明できないらしいが・・・
早速、ラネアクロウラーを見かけた場所に行ってみると、5匹はまだ繭になっていなかった。
成体のラネアスパイダーが2匹護衛のように近くに居る。
クロウラーが高さ1.3m位で、スパイダーは2m位に見える・・・結構でかいね。
ラネアクロウラーの繊維のとり方は、糸を吐いているときに糸を巻いていくといった手順らしい。
クロウラーは、糸を吐いているときは襲ってこないし、糸を全部吐き出したら体力切れで死んでしまうらしいので、討伐しなくてもいいらしい。
しかし、繭になってしまうと、中のクロウラーが溶けて糸が茶色くなってしまうので、価値が下がるし手触りもごわごわしてしまう事があるので注意と言っていた。
クロウラー5匹にスパイダー2匹が護衛についている。それが1つのグループとのことだ。
5匹のクロウラーはいっせいに糸を吐き始めるので、そこが狙い目だという。
ただ、倒す時には火を使ってはいけない。魔糸は余り燃えないが、一度燃えると消すのが大変らしい・・・山火事になることもあるとか・・・
しかも、スパイダーは食用らしい・・・珍味だということだ・・・タランチュラも素揚げして食べると蟹っぽい味みたいなので、食べられるのは解るが・・・食べたいとは思わない・・・
見た目が、本当にでっかい蜘蛛なんだもん・・・良くわからない紫色の涎も出てるし・・・気持ち悪い・・・
「リョウタロウさん、試したいことがあるんですけどいいですか?」
「え?・・・ええ、もちろんです。何をするんですか?」
リョウタロウさんは、急に声をかけられて驚いていた。
「マジックバッグって、中に入れるとき吸い取るって言ってましたよね?」
「ええ、掃除機で吸い取る感覚ですよ。吸い取る速度も変えられますし、それがどうかしましたか?」
「最高ですね! クロウラーが糸を出した時に糸の先端をマジックバッグに入れたら、全部吸えるんじゃないかと考えているんです」
「よく思いつきますね・・・解りました、やってみましょう」
女性はクロウラーに近づくのが嫌らしく、スパイダーの討伐をすることになった。
糸を吐き出すのを待ち、蜘蛛1匹に3人で魔法を一斉に放ち殲滅し、その隙に糸をマジックバッグに入れる手はずになっている・・・糸の回収、うまくいけばいいが・・・
少しすると、糸が吐き出され始める。戦闘開始だ。
スパイダーに石の矢が一斉に突き刺さる・・・思っているよりもグロイ・・・体液撒き散らしながら動かなくなる・・・
糸の回収は、サックリ成功するが・・・回収するのが大変だった・・・
何かをして大変だったわけではなく、思っていたよりも長い時間魔糸が吐き出されるため、途中で飽きて暇つぶしが大変だった・・・
かなりの魔糸を回収できたことと、クロウラー5匹、スパイダー2匹を回収できたので十分な成果といえる。
大量に出てきた時にも対応できることが解ったのが、一番の収穫だね。