第32話 木工と骨細工
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6/23 改稿あり 加筆あり
翌朝、ショウマ君、タクミ君、ケイタ君と朝の運動をしている。
リョウタロウさんは、朝が弱いのか起きて来なかった・・・強制している事ではないのでそっとしておく。
その時、ほぼ常連のフランソワーズ様がやってきた。
「おはよう! 皆で訓練か! 訓練するのに、良い朝だな!」
昨日の夜に、俺が木工を教えて貰っていた時にも、この屋敷に食事に来たらしい・・・
いや、ポンプの試作の方に顔だそうよ・・・
と言うか、フランソワーズ様1人で来ること多くない? 何でだろう?
移動速度が速くて、グロスさんを置いてきちゃってるのかな? まぁ、結局後でグロスさんが来るんだしいっか。
そんな事を考えながらフランソワーズ様を見ると、布袋を持ってきていた。
「おはようございます・・・その袋は何ですか?」
「これか? なんと砂糖だ! 果物もあるぞ!」
「え? 何故ですか? 何かありましたっけ?」
「これがあれば、甘いお菓子・・・ではなく、皆が助かるのであろう?」
完全にお菓子目当てじゃん・・・まぁ助かるのは事実だけど。
「ええ、助かります。フランソワーズ様も美味しい物が食べれますね」
「ああ、今から何が食べれ・・・ゴホン。魔力を入れてくれている者への差し入れだ!」
ここまで通うのなら、ここに住めばいいんじゃない? 美人が増えるのは大歓迎ですし・・・とは言えないけどね。
「ありがとうございます。タダシさん、ヨシさんに渡していただいてもいいですか?」
「もちろんだ! 朝のメニューが気に・・・ゴホンゴホン、直接会って労った方が喜ばれるだろうしな」
朝食はフランソワーズ様リクエストの焼き餃子(昨日の晩御飯で残った焼いていない物を冷蔵庫に入れてあった)と、コーンミール(コーンを砕いて粉状にしたもの)で作ったイングリッシュマフィンと、コーンポタージュスープだった。
本当は水餃子スープにする予定だったが、砂糖を持ってきてもらったのでリクエストに答えたらしい。
俺はどちらも好きだからいいけどね。
食事も終わり少しゆっくりしている時にふと思い出す。
そうだ! 今なら、色々質問できるんじゃない? 錬金の事聞いてみるか。
「すみませんフランソワーズ様、錬金って何ですか?」
「そうだな、錬金は魔道具を作り出す技術だな」
フランソワーズ様は、腕を組みながら言う。
「魔道具を作り出すとは、例えばどの様な事をするのですか?」
「一度見てみた方が早いんじゃないのか? 工房を紹介しよう」
「ありがとうございます。でしたら、ポンプの試作も終わっていますので本日なんていかがでしょうか?」
「終わっていたのか! では錬金の工房へ案内してから、ポンプの試作を見に行くとしよう。グロスは人を呼んでおいてくれ」
「はい、お願いします」
「かしこまりました」
グロスさんは、執事のような礼をして屋敷から出て行く。
炊き出しにタダシさん、ヨシさん、針子にアヤコさん、コノミさん、治療院にユカさん、ショウマ君、鍛冶にケイタ君、タクミ君、錬金にアカネさん、ミズキさん、リョウタロウさんが行くことに決まった。
イサオさんは、出かけるところがあるといっていた・・・何処だろう? 変な事はしないで欲しい。
先に協会に行きLvを上げる(Lv7,Lv6)。
一度錬金の工房に挨拶に行き、どの様な事をやっているのかを聞いたりしてから木工所へ行く。
錬金は、ちゃんと習っていないので詳しくはないが、魔術回路を生成したり、魔石の力を宝石に移し魔晶石を作ったり、その魔晶石に魔術回路を埋め込み魔道具のコア作り出す職業だった。
錬金という名前は、魔力や大気中にある魔素(魔物の素になる物って意味らしい)を使い、貴金属を作れないかと言う試みがされたことで付いたらしい・・・どの世界でも考えることは同じだな・・・
アカネさんは錬金の心を持っているので筋がいいらしく、教えて貰うことが決まった。
他の二人はついでっぽい・・・
フランソワーズ様の紹介だということで教えて貰うことをごり押ししようと思ったのだが、取り越し苦労だったね、いいことだ。
木工所に行くと、グロスさんと人の良さそうな大型の牛の獣人? おじいちゃんと兵士が2人とミミリさんが、ポンプの確認をしているところだった。
「またせたな! どうだ? 使えそうか?」
「おお、これは、フランソワーズ様。このポンプというものは素晴らしいですね! 体格や力の劣る者、老若男女の全て使えそうです」
牛のおじいちゃんは、恭しく礼をしてから言う。
「やはりそうか! うむ、鍛冶師は明日到着する予定だったな?」
フランソワーズ様は、腕を組みながら言う。
「はい、斥候からの情報でそのように」
「作成依頼を出すようにしておいてくれ」
「はっ、お受けいたしました・・・彼が開発者ですか?」
牛のおじいちゃんは、恭しく礼をし、こちらを見る。
「ああ、すまん、紹介がまだだったな。開発者のカナタだ」
フランソワーズ様は、そう言うと俺の肩をトンと叩く。
「カナタと申します、以後お見知りおきを」
出来る限り丁寧に礼をして言う。
「はっはっは、こんな老いぼれに畏まらずともよい。儂はオルトウス・ザルツサーレという。このような有益な物を作れる天才に出会えた事を幸運に思うぞ」
牛のおじいちゃんは、笑いながら言う。
「もったいなきお言葉。生活が少しでも楽になる物が出来たことを嬉しく思います」
「はっはっは、若いのに対したものだ。わしのことはオルトウスと呼んでくれ」
オルトウス様は、俺の肩をばしばし叩きながら言う。
「はい、オルトウス様」
「ミミリも良くやってくれた。報酬は後ほど持ってこさせよう」
フランソワーズ様が、傍にいたミミリさんを見つけて言う。
「ひゃい! あびがとうごひゃいます!」
ミミリさんは、機敏な動きで頭を下げる・・・すっごいカミカミだな・・・
その後は、ポンプの試作を兵士の人が運んでくれ、オルトウス様、フランソワーズ様の2人は上に報告に行くといって出て行った。
「カナタさんって、貴族様ではないんだよね?」
ミミリさんが急に聞いてきた。
「何を言っているんですか師匠。俺は庶民ですよ、日々生きることで精一杯です」
「そうだよね、物怖じもしてないし、言葉遣いが丁寧だったから貴族様かと思っちゃった」
「昔商人をやっていたのでそのせいですよ」
「そうなんだ~・・・多才なんだね・・・木工も覚えるの早いし・・・なんかなぁ・・・自信なくなるよ」
「今は商人をやっていないので、多才ではないんですよ」
「うん・・・今の自分に出来る事をやっていくしかないよね! あ・・・カナタさん」
「何ですか?」
「骨細工に興味ない?」
「興味ありますよ、教えて貰えるのですか?」
「私は教えられないよ。仲のいい友達がね、鏃を骨細工で作ってるんだ。こんなに覚えが早いなら骨細工も覚えてみない?」
「いいのですか? 報酬とか払っていませんけど・・・」
「昨日教えながら矢を作ったでしょ? 鏃が足らなくなっちゃったから、一緒に出来ればいいかなって」
「それはありがたいです。ぜひお願いします」
「じゃあ、呼んでくるね! 休憩でもしてて~」
そう言って、工房を走って出て行った・・・やっぱり走り方もかわいいなぁ。
昨日教えて貰った事を頭の中で反復しながら待っていると、ロップイヤーの兎の獣人の女性が来た。
「お待たせしましたカナタさん、紹介します。ヒリスちゃんです」
ミミリさんは、兎の獣人の人の手を引っ張って言う。
「ども」
ヒリスさんは、片手を軽く挙げて言う。
「よろしくお願いします、カナタです」
「骨細工は人気がないけどいいの?」
「教えていただけるのなら、喜んで」
「鍛冶の素材への加工、錬金素材への加工が主なもので、アクセサリーも出来るけど人気はあんまり無いんだよね・・・素材にするだけだから脚光を浴びないの。だから骨細工師は人が少ないのよ・・・」
「なるほど、しかし、素材がなければ武器なども出来ない。土台になる仕事ってことですね、すばらしい」
「うふふふ、そうなのよ! 嬉しいこと言ってくれるじゃない。きっちり教えてあげるから覚悟してね」
骨細工は、モンスターや部位などにより武器・錬金・鏃に加工しやすい、加工しにくいなどがあり、かなり難しい。
ギフトの学習がなければ、覚えられたかどうかも解らない・・・予備知識が無さ過ぎる。
骨の加工といえば、判子・麻雀の牌・鼈甲などが有名だが、作り方など知らない。
知らない知識を、教えてくれるなら覚えたい。
全部覚えておけば他の物にも応用できる可能性もあるので、覚えておいて損は無いはず。
今日も結局、昼も食べずに夜まで集中して作業してしまった・・・おなか減ったなぁ・・・
この日を抜かして3日間、皆生産系の勉強をすることとなる。加工技術をかなり身に付ける事が出来た・・・ただ、知識はまだまだなのでちょくちょく来て仕事を手伝うのですって言われたな。
しかし、ラネアストクロウラーが目撃されたとのことで修行は一時中断することに。
Lvも上げていたのでLv10,Lv9となった。
夕食でラネアストクロウラーを狩りに行くことを話し合っていたが、イサオさんがとんでもない発言をする・・・