鍛冶・裁縫・魔法の話
「カナタさん、少しいいですか?」
ケイタ君にいきなり声をかけられる。
「うん? 何かあったの?」
「いえ、グラフェンの再現に成功したんですけど、カーボンナノチューブは手応えも無いんです。どうすればいいと思いますか?」
「え? もうグラフェンが作れるようになったの? あ、ごめんごめん、えっとね、ケイタ君はカーボンナノチューブの作成方法はわかる?」
「うろ覚えですが、プラズマを使うんだったと・・・」
「うん、その方法もあったと思うよ。俺もそこまで詳しく覚えてないんだよね」
「では、そこまで拘らなくてもいいのではないかと・・・鉄の間にグラフェンを入れると強くなるのは解っているので、武器防具も十分じゃないですか?」
「うん、それはそうなんだけど、目標があるんだよね」
「目標ですか? なんらかに使うことになると?」
「うまくいけばね。だから頑張ってみてよ・・・そして後で教えて、グラフェンの作り方」
「解りました、カーボンナノチューブを作ることができたら目標も教えて下さいね」
「了解」
◇◆◇
「アヤコさん、いいですか?」
洋服を作成中のアヤコさんに声をかける。
「なんだい?」
アヤコさんは、手を止めて会話に応じてくれた。
「ゴムって見つかってないんですよね?」
「あぁ、見つかって無いと思うよ。この国に出回っていないだけってこともあるかもしれないけどね」
「では、代用品みたいな物ってないんですか?」
「ラネアクロウラーの魔糸、あぁ糸なんだけどね、クリエイションエンチャントってのが付けられるらしいんだよ」
「え? どんな物なんですか?」
「火に強くしたり、伸縮性UPしたりするみたいだね」
「素材の時にかけるんですか?」
「そこまで詳しく聞いてないよ、今度ミズキちゃんと一緒に来てみなよ」
「はい、お邪魔しますね」
◇◆◇
「すみません、カナタさん」
コノミさんが、意を決したように話しかけてくる。
「コノミさん、ミズキさんどうしたの?」
「やっぱり気になるので聞きたいんですけど」
コノミさんの表情はかなり真剣だ。
「え? 何を?」
俺なんかやったかな?
「何でイメージ魔法を作ったんですか? いえ、何故イメージ魔法が作れるとわかってたんですか? 魔法を習って他の魔法を作るのが普通な気がするんですけど」
あぁ、なるほどそういうことか。
「あぁ、えっとね、作れると思っていたわけじゃないよ。ただ、出来たら便利だから試してもらっただけ」
「え? そうなんですか? でも・・・」
「本当に出来なければ、魔法を習って新しい魔法を作るようにしたと思うよ。
でもさ、何も試さないでこの世界の魔法しか作り出せないって考えるのは、考えに広がりが無いと思わない? 魔法を習ってしまうと考え方が固まっちゃうでしょ? だから、一応やってみてもらったってこと。
まぁ、マジッククリエイションがあるのに、何で俺らがこの世界の理に沿う必要があるのか・・・とも思ったからだけどね」
「理ですか?」
「そうそう、魔法覚えられるところまで行って習う方が冒険っぽいけどさ、その冒険中に死ぬかも
しれないでしょ? しかも、ちゃんと習えるという保証も無い」
「それはそうですね」
「でしょ? だから、根本的なところから作っちゃえばいい。その力を折角貰ったんだからさ」
「でも、作れない物もありますけど・・・」
ミズキさんは、申し訳なさそうに言う。
「そうだね、魔力が大量に必要になるから仕方ないでしょ。しかも、死んでも生き返る魔法がありますって言われても、作って欲しいとは思わないから、無くてよかったとも言えるんじゃない?
でも作る時に、魔法に関する知識をある程度理解したほうが使い勝手がいい魔法が作れるから、この世界の知識も取り込んだ方がいいと思うんだ・・・俺らの持っている科学に、この世界の知識を混ぜれば新しい魔法が出来るはずなんだし」
「そうですね、色々試してみたいです」
ミズキさんは、手をギュッと握り、私燃えていますってポーズをする。
「えっと、もう直ぐ雷の魔法ができそうなんでしょ?」
「たぶんそろそろかと・・・」
「雷は使い勝手がいいから欲しいんだよね、麻痺とかにも使えるんでしょ?」
「はい、使えると思います」
「じゃあ、少しだけ雷の知識を」
「何ですか?」
「雷は、空から落ちるものと、空と地面両方から出るもの、地面から空に出るものがあるんだ」
「え? 雷は空から落ちるだけじゃないんですか?」
コノミさんは驚いたように言う。
「うん。結局雷は、電位差によって出来る物だから色々あるんだよ。でも、魔法の知識として消化するといいものが出来そうでしょ?」
「はい、ありがとうございます」
ミズキさんは深く頭を下げる。
「はい、難しいと言う事を理解しました」
コノミさんは頷く。
「ははは、じゃあ一緒に頑張ろう」