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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
42/406

第31話 ポンプの試作

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます


6/22 改稿あり 加筆あり

 訪問は突然に訪れる物・・・いや、普通は無いからね!


「カナタ! 何処にいるカナタ! 聞きたいことがある!」


 フランソワーズ様が、いきなり玄関の中に入り、大声で叫びながらこちらに向かってくる・・・

 廊下に出ると、直ぐそこに来ていた。


「いらっしゃいませ、フランソワーズ様。何でしょうか?」


 今日の晩御飯を、味噌煮込みうどんにする! いや、土鍋がないから味噌うどんだ。

 日本食を食べたくなったので、味噌を皆で発酵させていた。

 交代しながら頑張って・・・ようやく若いがそれなりの味になったため、麺を茹でようとしたところにやってきた・・・

 恐ろしくいいタイミングである。


「すまん、食事中だったか」


「いえ、もう直ぐ出来上がると思いますが、一緒にいかがですか?」

 麺の量をあらかじめかなり多く作って貰ってて、良かった~・・・


「ん? 私の分もあるのか? いや・・・う~ん・・・いただこう」

 フランソワーズ様は一瞬考えるそぶりをしたが、すぐに席に着いた。


「はい。すみません、タダシさん1人前追加で~」


「ああ、聞こえてるよ! 大盛りだな、任せとけ!」

 キッチンから大きな声が響いてくる。


「えっと、フランソワーズ様、何かあったのですか?」


「ああ、そうだったな・・・ポンプなんだが、弁の部分の説明を試作する者達にもして欲しくてな、一度一緒に来てもらいたいのだ」


「それは構いませんが、試作までもう漕ぎ着けたのですか?」


「何を言う! 大発明だぞ! 獣人の我らにとって魔力を使わずに簡単に水を汲めるなど夢のような物ではないか! 設計図で有用だとわかれば直ぐにでも始めるのは当たり前だ!」


「そ・・・そうですか、でしたら食事後一緒に行きましょう」


「うむ、たのむ・・・して、夕飯は何が出るのだ?」

 フランソワーズ様は、目をキラキラさせて聞いてくる。


「えっとですね、うどんと言う食べ物ですね。味噌という調味料で作った麺料理でございます」


「そうか・・・肉ではないのか・・・しかし、楽しみだ」


 程なくして、味噌うどんが出される。


「あいよ、お待たせ。出汁が鶏がらしかなかったんでラーメンのスープみたいになっちまったが、まぁ、食ってみてくれ」

 タダシさんは、うどんを置きながら言う。


「ありがとうございます。あと、フランソワーズ様にはフォークをお願いします」


「そうだったな、今もって来る」


 鶏がらで取った味噌ラーメンを思い出させるスープだが、中に入っているのはまぎれも無いうどん。

 野菜多めだが、ちゃんとオークの肉も入っている。


「これがうどんか? スープにしか見えないな、う~ん、食べてみれば美味いか解るな!」

 フランソワーズ様は、うどんをよーく確認しながら言う。


「そうですね、いっただっきま~す」


 流石にすするのは難しいらしく、パスタのように軽く巻いてから食べていた。


「うま・・・美味い! うどんだったか? シンプルな見た目なのに奥が深い味わいだ・・・この麺も柔らかいのに歯ごたえがある。新しい食材か? このスープも濁っているのにくどくなく、いくらでも食べれる美味さだ・・・」


「麺は、売っている物と同じ小麦ですよ。スープは調味料のみ開発した物です」


「何? なんと言うことだ・・・店で売っている小麦と同じと・・・このように美味い食べ方をわれらは知らずに生きてきたのか・・・」


 ずいぶん、大げさだな・・・この世界の料理は、味付けは塩ぐらい(ハーブ等はあります)しかないから、そう感じたのも仕方がないことなのかもだけど。


「いつでも食べに来ていただいていいですよ。狩りをして新しい食材が手に入れば、新しい料理が食べれるかもしれませんし」


「何! 新しい食材か! くっ! 狩りに行きたいが・・・公務がある・・・そうか! 誰かに代わって貰い・・・いや、だめだ・・・しかし・・・」

 フランソワーズ様は、ぶつぶつ言いながら考え事をしているようだ。


 うわぁ・・・胃袋つかまれちゃった感じかな? お願い事があったらお願いしやすいからいいけどね。


「さめちまうぞ、御代わりもあるから言ってくれ」

 タダシさんが言う。


「まことか! しばし待ってくれ」


 結局2杯お代わりして、3杯目を頼んだところでグロスさんが来た・・・来なかったらまだ食べてただろうな・・・名残惜しそうにしていたし。


 グロスさんにも1杯渡し、2人が食べ終わってから一緒に倉庫のような場所に移動した。


「誰かおらぬか! 開発者のカナタを連れて戻ったぞ!」

 扉を開け倉庫内に響き渡るほどの大声で叫ぶ・・・声大きいですよ・・・

 たたたっと小さい女の子が走ってくる。


「お・・・お帰りなさいませ、フランソワーズ様。この方が開発者の方ですか?」

 小さい女の子はリスの獣人で、動きがいちいち可愛い。


「そうだ! 名はカナタという面白い男だ。すまぬが、用があり戻らねばならん、たのんだ」

 フランソワーズ様はそう言うと、グロスさんを引き連れて足早に帰って行った。


「あの、ミミリです。試作品作成チームのリーダーをしています。よろしくお願いします」

 おお! こんな小さい子がリーダーなのか・・・木工といえば大工・・・ゴツイ人のイメージだったんだけどな・・・


「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 そう言い頭を下げる。


「えっと、早速ですが、弁の制作方法・作用などについて教えていただきたいのですが」


「もちろんです。どの部分がわからないのか教えていただいても?」


「はい、こちらへお願いします」

 ミミリさんに、そう言われ後ろを付いていく。


 ついて行った先では、テーブルの所で数人作業をしていた。その中心に俺たちが書いた設計図があった。


 そこで色々と解説していく・・・弁の構造の理解もされていないので、弁の事を中心に教えていったが、初めての技術なのだろう、目をキラキラさせながら解らないところを聞いてくる。

何となくは解ったのだろうが、まだ理解はしていないようだった。

 今日はもう遅いため試作の作業はいったん停止し、明日にもう一度来て試作を手伝うことにした。


 次の日の朝、いつもの様にショウマ君に空手を教えて貰うが、今日はケイタ君、タクミ君、リョウタロウさんも一緒だ。

 ご飯ができたとのことなので、手ぬぐいに水を含ませ汗を掻いた身体を拭く。


 朝ごはんは、パンと昨日の味噌スープにワンタンを入れたものだった。

 ワンタンの皮は茹でる前のうどんの残りで、肉にねぎを入れて簡単な下味をつけたシンプルな物だった。

 シンプルだろうとうまいものは美味い・・・ご飯が恋しいけどね。


 食べ終わったらLvを上げる(Lv6,Lv5)。

 みんなに断りを入れて、早速ポンプの作業場へ。


「おはようございます、お早いですね」


「おはようございます。ミミリさんの方が早いじゃないですか」


「この工房を預かる身なので!」

 胸をそらしながらドヤ顔をしてくる・・・可愛いな、子供にしか見えないけど。


「弁の試作なんですが、蝶番ちょうつがいを使うのはどうですか?」


「最初はそうしたんですが、開きっぱなしになってしまって・・・」


「1番簡単なのはこれ以上開かないように紐をかけるか、後の所にストッパーをつけることです。百聞は一見にしかず、やってみましょう」


「ひゃくぶん? いっけん? 何ですか? いえ、まぁいいです。やってみましょう!」


 弁の完成は簡単に終わり、試作品第1号も完成した。

 しかし、弁の部分より水が多く漏れてしまって吸う量が少ない・・・蝶番に木材をつけて弁にしたため、ふたの部分が斜めになり、アナを完全にふさげていないのが原因だ。


「そうだ! ふたの部分に布をつけられませんか?」

 この世界でゴムはまだ見つかっていないと思うので考えた結果、布でも代用できるのでは? と思った。

 こうして、木製ではあるがこの世界最初のポンプが完成した。

 外の井戸で試すと、問題が無く水が汲めることが解った。

 しかし、木での製造のため直ぐに腐食してしまうだろう・・・そんな事を抜きにして試作品製作者全員で喜ぶ。

 出来上がった試作品は、明日フランソワーズ様が来るらしいのでその時に渡すそうだ。


「ちょっと大きいので台に乗らないとレバーに届かないですが、軽い力で水を汲めますよ、凄い! 楽しい!」

 ミミリさんは、水を汲みながら楽しそうに言う。

 周りが水浸しなんで、そろそろやめたほうがいいんじゃ・・・と思ったが口には出さなかった。


「それは良かったです。ただ耐久性を考えるとやはり鉄などで作るのがいいのでしょうね」


「そうですね、水に浸かったままだと木が腐っちゃいますね」


「そうだ! 木工を教えて貰えませんか?」


「え? 急になんですか? 木工をですか? 構いませんけど・・・木工で主に作るものは杖(魔力回路後入れタイプ)・弓・矢・家ですよ? 地味なんですけどいいですか?」


「いいですよ! 色々習ってみたいと思っていましたので渡りに船です」


「解りました! 木工の心を持っているミミリに習うのですから半端は許しませんよ! ビシビシいくのです!」


「はい、師匠! よろしくお願いします」


「師匠・・・なんていい響き・・・師匠についてくるのです!」


 その後食事も取らずに、夜まで木工を教えて貰った。

 飲み込みが早すぎて気持ち悪いといわれたのは・・・別の話。


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