第336話
途中までしか書いておりませんが、投稿させていただきます。
活動報告を読んでいただけますように、お願い申し上げます。
――side アヤコ――
私は夢を見た、過去の夢を。
別になんて事のない普通の暮らしの夢、息子は反抗期で大変だけど幸せな暮らし。
この世界に来て絶対に家に帰ると誓ったのに…ここは違う世界だと頭では分かっていたはずなのに…日本の価値観はここでは使えないと解ってたはずなのに…
人を助けるのは簡単、人を救うのは難しい…か、カナタ君は何をどこまで考えているんだろうねぇ。
はぁ、結局あたしは何をしたかったんだろうねぇ。
――side カナタ――
俺は亜矢子さんの部屋の前に来ている。
知る必要もない事だったのかも知れない事を付きつけ、追い詰めて倒れてしまった…いや、倒してしまったアヤコさんは怒ってるかもしれない。
怒るだけならまだいい、修復できないくらいに俺の事を嫌っているかも知れない…そう考えるとノックが出来ない、扉の前で立ち止まってしまう。
俺が暴走した時に止めてくれる戦力が多い方がいいと自分の事しか考えずにやってしまった。
こんな時にすら自分が許しを貰って楽になりたいと考えている自分に嫌気がさす。
どうすればいい? 謝った方が良いのか? それとも嫌われる事を受け入れて、それでも共に進むように努力するか…俺はどうしたいんだ?
いや、もしかしたらもう起き上がれないとか…うつ病になってるとか…あぁ、くそ!
よし、行ってやる! …ふぅ、あぁぁぁどうすればいいんだ…
扉の前で考え進む事も何も出来ず考え込んでいると、不意に扉が開いた。
俺とアヤコさんは、顔を見合わせると驚いた顔をし「あ」と二人同時に声がでた。
驚くほど長い数秒の沈黙を経て、同時に二人は頭を下げながら言う。
「すみませんでした」「ごめんなさい」
「「え?」」
ほぼ二人同時に顔を上げると驚いた顔が…何故か二人とも笑ってしまっていた。
少しして笑い声が収まると二人揃って苦笑する。
「アヤコさん、本当にすみませんでした」
「あたしの方こそ、ごめんなさい」
「いろいろ考えたんですが、現状では何をとやかく言ってもいい訳にしかなりませんから、とにかくすみませんでした」
「いいんだよ、間違った事は一つも言っていないだろう?」
「はい、間違った事は言ってません」
現状で分かっている事だけじゃなく、憶測も含まれてはいたけど当たってたからまぁ間違ってないといえる…気がする。
「しかし、自分の親を見捨てたとなったら二人が大人になった時に悪影響があるんじゃないかい?」
「それは考えていました。あの母親しだいではありますが、駆けずり回ってお金を工面し子供を買い取ろうとした時は仕事を裏から斡旋しようと思っています。教会や下手な所に頼んで武力で何とかしようとした時は、最後でしょうね」
「仕方がないんだね?」
「ええ…ですが、最後と言っても怪我させたりなんだりはしないので安心して下さい」
「わかったよ」
「最後に、アヤコさん。壁を越えたりはしてませんか?」
「ん? 確認してみるよ」
アヤコさんはマジックバッグの中から冒険者ギルドカードを出し確認する。
「越えて無いね、残念だけど」
「そうですか」
非常に残念だが、仕方がない。やはり人が用意した…現状を利用して人為的に誘導しただけでは壁を越えられないって事なのかもしれないな。
アヤコさんと一緒にダイニングへ移動する。
「今日から、カナタは謹慎とする」
俺は正座させられ、タダシさんからの言葉を聞いていた。
「謹慎は何日くらいですか?」
「そうだな、イサオが戻ってくるまで…と言う所だな。話し合いはカナタが行くんだろ?」
「はい、そのつもりです。タダシさんやリョウさんだと優しすぎますし、ケイタ君だと理論づめで怒らせかねないですし、他の人だと…まぁ難しいでしょうから」
そんなこんなで、謹慎となりウルフローナ国へ様子を見に行く事になった。
いつもならリョウさんが付いてきてくれるのに、何故かコノミちゃんが付いて来る事になった。