第335話
作者が、退会処分になります。 読んでいただけました事を、心より感謝いたします。
アヤコさんの魔力が溢れている感じがするが、違和感を覚える。
いつもとなんかが違う? 魔力が刺々しくないと言うか…これだけ魔力がもれたんだから、皆も動き出す可能性があるけど、どうだろう?
暴れてたりなんらかが起こってる感じはしないし音もして無いし…まぁいいや、話を進めよう。
「私はあなたのような人は、絶対に買いませんね。しかし、働いて稼げば良いのでは無いですか?」
「どうやって働けって言うの? 街にはろくな仕事が無いじゃない」
「それは人族の街の事でしょう? 人族の街で無いなら獣人の街に行けば良いんじゃないですか? 獣人の街は、歩いてすぐですし」
「人が獣に助けを求める!? そんな事出来るわけないだろ! 頭がいかれてるんじゃないか?」
「ぷっ、あっはっはっはっは、いや~面白い。いかれてる? なんですか? そんなゴミほどのプライドを持っているんですね。
自分の子供を…娘を売るより、プライドをかなぐり捨てて頭を地面に擦りつけて泥水をすすって苦しくても進んでいく姿を見せるのが親じゃないんですか?
俺の母親は病気になり痛みで自分で歩けなくなっりましたが、誰にも迷惑を掛けたくないと這ってでも自分の事は自分でしようとしていましたよ。それを見て、俺も最後まで人に迷惑をかけないで生きて生きたいと考えています。
あなたはどうでしょう? 自分のプライドを守る為に娘を犠牲にしているだけに見えるのですが?
それとも…ただ楽に金も食事も手に入れられるから娘を差し出してるんですか? そっちの方がよっぽどの屑だと思いますが?」
「うるさい! お前に何がわかる! 産まれながらにスラムで暮らし、ゴミを漁り何とか生きてきたんだ。 どうせ、お前は産まれながらに良いギフトを貰い、その才能で金を稼いだんだろう! そんな奴にとやかく言われる筋合いなど無い!」
ここで自分が嘘をついていたと全面的に認めてどうするんだ…認めるなら最初の方がいいだろう…
「はぁ…言っておきますが、3年前まで青銅貨1枚すらもっていなかったんですよ。そして俺達は違う土地で産まれたから、一般民でもなんでもない。
誰も知り合いがおらず、信用も無く職も住むところも無かった。
確かに運が良かったのもありますが、努力してここまで来たんだと胸を張って言えます。
あなたのように妬みで、いいギフトを貰ったから成功したんだだろうと言う奴もいました。だからなんでしょう?
産まれながらに持っている物は神から贈り物で、途中で貰った物は全ての者達から簒奪したとでも言うんですか?
俺が相応に努力をしなかったと? 今まで学んだ知識を使い、人の話を聞き努力し積み上げた繋がりを手繰り、時には金を使いどれだけ…どれだけバランスを取って過ごしているか解らないんでしょうね。
成功したのはただの才能だと? 才能があっても延ばさなければ成功なんてしませんよ?
奥さん、あなたは今まで何の努力をしてきたんでしょうか?」
「うるさい! うるさい! うるさーい! 嘘をつくな! 口では誰でも言える!」
「今この場で嘘をついても俺に何の利益も無いんです。もう一度聞きますよ。あなたは何の努力をしたんですか?
モンスターを狩る為に体を鍛えた? 商人になるために数字や文字の勉強をした? 生きていくために時間を使い仕事をしてお金を稼いだ? 何一つとしてやっているように見えませんけど?
まさか、娘を高く売りこむためにドレスやアクセサリーにお金を使っている事を努力と言わないですよね?」
顔を真っ赤にした奥さんはスープの皿やスプーン、椅子などなどをこちらに向かって投げてきた。
俺は自分で出した皿やスプーンなどをキャッチして亜空間収納にしまいながら、自分の物じゃない投げられてくる物を避け打ち落としていく。
投げる物が無くなると、走って俺を殴りに来たので足払いをして転ばせると奥さんは動かなくなる。
「娘がどうしても戻りたいと言った場合に帰す事を約束しますよ。もちろん、娘がこの街に滞在している期間にお金を持ってきても返してあげます。さて、反論があれば聞きますが?」
奥さんは突っ伏したまま動く気配がない。これ以上何かをいうのは駄目な気がするのでそのまま外に出ようとする。
あれ? アヤコさんはどうしたんだろう? まぁ魔力がもれた事で皆もこっちに向かっているし大丈夫だとはおもうけど…
外では、アヤコさんが体育座りをして嗚咽を漏らし、娘二人は泣いているアヤコさんの周りでオロオロしていた。
えっと…これはどうなったんだろう? 頭の中が疑問符で一杯になりながら3人に近づいていく。
「えっと、これはどうしたの?」
娘二人は顔を見合わせてから首を横に降る。本当に何でそうなったのか解っていないのだろう。
「アヤコさん、魔力が漏れてますよ。とりあえず、自己封印をして下さい」
はぁ…全く動く気配が無い。こう言う時どうすれば良いんだろう?
魔力の漏れをどうにかする為に魔素強制支配をアヤコさんに巻きつけたカーボンナノチューブを伝って展開する。
人一人分の範囲の展開とか今の俺では逆に魔力消費が大きくなるだけだ。
もう少し魔力操作を練習しなきゃいけないんだろうけど魔法での細かい作業は苦手なんだよなぁ。
そんな事を考えていると、ケイタ君が一番に向かってきてくれている。
「カナタさん、何があったんですか?」
「あぁ、奴隷になった子の親が返せって言ってきたから、真実を話してこんな感じ?」
「意味不明ですよ…とにかく移動した方がいいと思います。スラムの住人も、じきに集まってきますよ」
ケイタ君が少女二人の手を引き、俺がアヤコさんをおぶって屋敷に向かって歩いていく通信機で皆にも家に集まるように言う。
「この! 馬鹿もんが!」
タダシさんは俺の説明を聞くなり大声で怒る。
「ごめんなさい」
俺は、正座をして皆の前で頭を下げる…要は土下座だ。
「奴隷の件は聞いていたが…まさか、壁を越えさせるために策を練っているとはおもわなかったぞ! 怒りで壁を越えた時にどれほど危険だったか自分が一番身に沁みているのだろう!?」
「仰る通りでございます」
「全く、反省しているのかどうかも解らん…ユカ、アヤコはどうなんだ?」
「塞ぎこんでいるだけで、特に異常はないので大丈夫だと思います」
ユカさんは言う。
当のアヤコさんは、ベットに寝かされていると言っていた。
睡眠草をアロマオイルにして焚いて無理やり寝かせている様だ。
「だ、そうだ。しかし、精神を追い詰めればどうなるか…戻ってこなかった時にはどうするんだ?」
「本当に申し訳ありませんでした。次からもっと考えて行動します」
その後も愚痴愚痴と怒られ、足が異常に痺れて感覚が無くなった。
精神の壁を越えるには精神を追い詰めなければならない。
しかし、精神の壁を越えられなければ…放棄、いや自殺か?
今考えると危ない事をしていたと思う。精神的に操られていた? まぁその可能性も捨て切れないが…可能性として十分理解してやっていたから、操られていたと言うのはおかしいか。
どうなるかは明日の朝になってみないと解らない。
駄目だった場合は、スキルのコネクトを試すしかないんだろうな…相手の精神というか記憶の断片を覗いてしまうからあまり使いたくないんだよなぁ。
相手が隠したい事も何もかも見えてしまったら、恨まれるどころじゃすまなさそうだし。
今気にしても仕方ないか…明日になってから考えるとしよう。
ダンジョンに潜る前に、武器や防具の新調をしちゃわなくちゃなぁ。
アベリア(ウルフローナ冒険者ギルド長エミエミの弟子で斥候や盗賊職)さんとフランさんは、ダンジョンで仲良くしてるのかなぁ…早く行きたいなぁ…




