第30話 情報収集のすり合わせ
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「あ! 褒美で砂糖貰えば良かった!」
「そうだな、あと昆布と鰹節も欲しいな」
タダシさんが、腕を組みながら言う。
「あと、甘いフルーツも欲しいわね」
ヨシさんが、手を頬に当てながら言う。
「錬金が何なのか~、聞いて欲しかったし~」
アカネさんが、髪をいじりながら言う。
「う~ん、そう考えてみると、色々忘れてますね~」
色々忘れてたことが発覚するも、ここに来て1週間も過ぎていないのに成果だけを見たら出来すぎだ。
「リョウタロウさん、マジックバッグの容量ってどんな物ですか?」
「えっとですね、少しずつ増やしているのでバスケットコート2面位ですね、高さは3mです」
リョウタロウは、腕を組みながら考え事をしている形のまま言う。
「え? マジックバッグの容量って増やせるんですか?」
「はい、増やせますよ? 使い方とかは、なんとなく分かるんです」
「へぇ~そうなんですか・・・あれ? そんなに大きいってことは、もしかしてバスを回収にいけます?」
「はい、そうですね! 回収できますよ、マジックバッグに入れてしまえば重さは感じませんし」
「じゃあ、最低でもLv10超えた位でいきましょうか、安全のために」
「そうですね、いたずらとかされてなきゃいいですけど・・・」
そんな話をしていると、ユカさんから不意に呼ばれる。
「あのさ、カナタさん」
「はいはい? なんでしょう?」
「回復魔法使っちゃ駄目かな?」
「治療院でですか?」
「うん、衛生面もよくは無かったし、魔法が使えれば助けられる患者さんが多いと思うし、駄目かな?」
「使ってもいいですよ、ただし、皆さんもそうですが、出かける際は最低2人1組で出かけてください。いい人が多そうですけど何かあってからでは遅いので」
「ありがとう、出来るのに黙ってるのって辛くてね」
そう言いながら苦笑するユカを見て、医療に携わる人なんだなって思った。
「これから外出ても遅くなってしまうだけなので、低ランクの依頼の消化でもしちゃいましょうか」
そう言ってからLvを上げに行く(Lv5.Lv4)。
掃除や荷物の整理などの誰でも出来そうな依頼を精力的にこなしていく。
この日は特に何も無く、夕方には皆帰ってきた。
「ユカさん、治療院どうですか?」
「うん・・・魔法の凄さを実感した・・・」
ユカさんは、渋い顔をしながら言う。
「どんな感じだったんですか?」
「治療の心でなんとなく何処が悪いとかが解るんだけど、そこを魔眼で魔力の流れをよーく見ると、滞っているのが解ったの。それを回復魔法で癒したら・・・奇跡って・・・・」
「なるほど、神様に祭り上げられたとかですか?」
「近いかも・・・レティア様の眷属で聖女様とか言われたし。レティアって女神様だったよね?」
「はい、そうですね、一躍有名人ですか?」
「うん・・・それでね、無くなった腕を治せるかとか、この持病はとか始まっちゃってさ」
「うわぁ・・・大変でしたね」
「治せるなら治してあげたいけどさ、無理でしょそんなの・・・」
「今のところは無理ですね、では明日も治療院に?」
「いや、明日は来れないって言ってあるから・・・魔法使うんじゃなかったかなぁ・・・ふぅ・・・」
「それでも、何人か治療が終わって帰ったのでしょう? なら、やって良かったんじゃないですか? 自己満足かもしれませんが」
「うん、それもそうか~・・・苦しんでる姿を、見ていられなかったしね・・・ありがとう、ちょっとすっきりした」
「いえいえ、お役に立てて光栄です、聖女様」
椅子から立ち上がり、執事のように礼をする。
「もう! からかって!」
ユカさんは、手を振って、怒ってますよのポーズをしている。
あっはっはと笑いながら移動し、他の人の事も聞いていく。
「アヤコさん、どうですか?」
「特に変わったことはないよ。全て手縫いだから時間がかかってしょうがないって感じだね」
「足踏みミシンが欲しいですね」
「その前に自動織機だけど、色々問題が有りそうだからやめておいたほうが無難だろうね」
「産業革命ですか・・・まぁ、秘密工場でも作れたらやります?」
「がっはっは、男の子だね~、そういうのも良いかも知れないね」
アヤコさんは、笑いながら机をたたく。
「染色、刺繍、レースなんかはどの程度ですか?」
「染色は、まぁまぁって所だね、刺繍は難しくない物なら出来る人もいる。
レースは技術自体無いみたいだよ。あと、下着はドロワーズっぽいものがかろうじてある程度、ブラジャーどころかコルセットも貴族の人のみの文化なのか見ていないよ。
庶民は重ね着をするか布を巻いてるって言ってたね、情報としてはこんなところだよ」
聞きたいこと全部話してくれるとは・・・助かるね。
「ありがとうございます。下着とかレースなどを使ったアクセサリーなどあったら爆発的に売れそうですね」
「そうだね、あとラネアクロウラーの繊維の糸への方法も聞いてきたよ」
おお! 流石に仕事が速いな! リーダーやってくれればいいのに・・・
「それは、ありがとうございます。それさえ解れば洋服の作成も出来そうですしね」
針金があるかどうかなんだよな、後で聞いてみるか。
「この粉を入れて煮るって言ってたんだが、これって重曹じゃないかと思って貰って来たんだよ」
「重曹ですか? う~ん・・・タダシさんにも見て貰いましょうか」
「そうだね、よーく見ていると、なんとなくそう感じるけど、それだけじゃ合ってるか解らないもんだね。それじゃあ、見て貰ってくるよ」
「よろしくお願いします」
針金の事を聞くために、部屋でゆっくりしているタクミ君のところへ向かい、扉をノックして声をかける。
「ごめん、タクミ君聞きたいことがあるんだけど」
「な・・・なんでしょうか」
自分の得意分野意外だとまだ喋るのが得意じゃないのかな? まぁ、いきなり部屋に訪ねられても驚くか。
男一人だと何かをしている可能性もあるしね。
そう考えてると扉が開き、「どぞ」と言われて中に入る。
「急にごめんね、本当にちょっとした事聞きたいだけなんだ」
「はぁ、何でしょう?」
「えっとさ、針金ってある? 鍛冶場とかにあるかなって思ってさ」
「針金ですか? う~ん・・・そういえば見ないですね、鋼線も見ていませんし」
「そっか~、作ることは出来そう?」
「やり方を知っている程度ですので、作れないと思います・・・機械でやっているものですし」
「そっか、難しいのか~・・・魔法で何とかならないかな?」
「機械の仕事はわかりますので、再現できる魔法があれば・・・って所だと思います」
「そっか~、今度やってみよっか、鍛冶士の人が帰ってきたら聞いてみよっか、その方が上手くできるかもだしね」
「はい、もうそろそろ鍛治士の人が来るそうなので、鍛冶を教えて貰えるように頼んでみました。えっと、今日はケイタさんと一緒に、仲良くなった研ぎ師の人に武器の手入れなど教えて貰って楽しかったです」
「いいねいいね、研ぎをやったのか~今度教えてね、鍛冶も出来ればお願いね~」
「はい! 解りました」
やはり、自分の好きなものだと饒舌に話せるのか。そこまで好きなことがあるってことはいいな。
そのままダイニングに戻ると、アヤコさんが話しかけてくる。
「カナタ君、この粉やっぱり、重曹だったよ」
アヤコさんは、革袋に入っている粉を見せながら言う。
「おお! 重曹あったんですね~、お菓子も作れ・・・・砂糖がないんでしたね」
「洋服を洗うのに使えるよ! 汚れも綺麗になるしね」
「そうなんですか~、かなり助かりますね。石鹸もそんなに良い物じゃないですからね~」
「早速、洗い物があったら出しておくれ、お風呂の残り湯で洗っちまうからね」
「そんなに量があるんですか?」
「多めに貰って来といたんだ。たぶん2回位洗濯したら終わりだろうね」
「そうですか、重曹ってどこかで買えるんですか?」
「薬師のところに売っているみたいだね。まだ開いてるかもしれないよ」
「じゃあ、急いで買いに行きましょうか」
石鹸があるのだから、重曹があってもおかしくは無いんだけど、何故薬なんだ?
石鹸と同じくくりじゃないのか? それとも別の用途で? 解らん・・・
俺とアヤコさんは、戸締りの準備をしていたお店に駆け込んだ。
時間がなかったので詳しくは聞けなかったが、手を消毒したり身体を拭くときに使ったりしているらしい。
商店で重曹自体を置いてないのは、買われないからじゃないかって事だった。
使い方が解らない重曹を使うより、使い方の解っている石鹸を使った方が良いってことだ。
まぁ、重曹の使い方なんて俺も詳しく知らないし・・・強いてあげるなら、キッチンの汚れ落しくらいしか使ったことは無い。
重曹があったって事は、苛性ソーダもあるはず! 手作り石鹸を作れる日も近い・・・気がする。