第330話
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ショウマ君も二人も動かない。ショウマ君は、構えを解いてただ立っているだけなのにだ。
そのままの強さでも驚いていたのに、魔法でさらに身体強化されれば策を考えなければ絶対に勝てないとは思う。
だが、策など一瞬で思いつく物なのだろうか? 思いつくなら是非にそのコツを聞いて見たい。
「おい! こうなったら腕輪を外すぞ!」
シールド持ちが八斬刀持ちに向けて叫ぶ。
「了解だ! いくぞ!」
左手につけていた腕輪を外す。そう、みた事のある腕輪を外した。
あれって、エルフの国でモリスさん(パルメントの父)に渡された腕輪にだよな? と言う事は、神の使徒とかそう言うのか?
モリスさんにちゃんと話しを聞いておけば良かったと後悔するな。
そんな事を考えながらみていると、二人からかなりの魔力が溢れ出ている事が解る。
ショウマ君は、特に何をするでもなく二人を見ている。
ショウマ君は悪い癖が出てるみたいだな…
はぁ、特撮ヒーローモノじゃないんだから、変身を待ってあげるとか何を考えているのか解らないよ。
呆れながら戦闘を見守っていると、二人はショウマ君に向かって駆けて行く。
先程の倍ほどの速度が出ている様に見える…ギフトって効果は一定だったはずなんだけど、どう言う事だ?
まさか! 身体強化の上のギフトを持っているって事なのか? 是非とも教えて貰いたい!
ショウマ君が防戦一方で何とか躱し防御し、一発も貰っていないのが奇跡だと思うほどだ。
こりゃ防御が崩れるのも時間の問題だな。
シールド持ちの一転突破の突きが炸裂する。体制を崩しかけたショウマ君は十手をクロスさせて受ける。
ショウマ君が吹き飛ぶ方向に八斬刀を持ちが待ち構え、殴りつけてくる。これはどう考えても避けられない。
しかも、十手で真正面から受けたとしたら破壊されて、もろに受ける事になるだろう。
ショウマ君は、クロスした十手を斜めに構えて受け流す事にしたようだ。力や早さを総合すれば受け流せなくも無いかな?
やはり無理だったらしく、受け流す事が出来ずに肩に八斬刀が当たり大きな音が鳴り響く。
逆立ちのように起き上がり、無理やり蹴り飛ばし相手と距離を取る。
攻撃が当たった所は、鎧がひしゃげ凹んだようだ。怪我は全くしていないのが見て解るからいいだろう。
しかしケイタ君との約束で、一発でも相手の攻撃が当たったら一ヶ月間最低一時間の勉強を追加する約束が発動したようだ。
ショウマ君は十手をマジックバッグにしまい、空手のオーソドックスな構えを取る。
ふむ、封印を解いて力ずくで終わらせるよりも、自分の技を試す方を選んだって訳か。ショウマ君らしいと言えばらしいな。
八斬刀持ちが、一気に近づき大振りの一撃を放つ。ショウマ君が構えを変えた事に苛立った様だ。
攻撃をかわし小手返しで投げ、追撃に向かうがシールド持ちに邪魔をされ追撃は失敗。
ショウマ君は、そのままシールド持ちと交戦している。
距離のあるうちは槍を巧みに使い翻弄し、距離が短くなれば槍を短く持ち器用に攻撃をしている。
どちらかと言うと、棍の使い方に近いな。それも、ショウマ君に教えてもらった使い方に似ている。
全く同じって訳ではなく、ギフトの動きも加わっているのでタクミ君や俺の動きに近い気がする。
だがショウマ君の動きが加わってるのは間違いない。
どうなってる? ショウマ君の師匠がこっちの世界出身? もしくは、元勇者だった?
そんな事を考えてると、八斬刀持ちが戦闘に参加する。
先程までガンガン攻めていたショウマ君だが、二人からの同時攻撃では防御に徹する事が多く押され気味になっていく。
やはり二対一の戦闘では手数が足らないようだ。しかし時間が経つにつれ段々と後ろに下がらずに対応し始める。
おいおい、死角になって見えない攻撃も避け始めてるけどどうなってんだよ?
ショウマ君は真後ろからの八斬刀からの攻撃を回転をして逸らし、逆にカウンターを放っている。
シールド持ちの攻撃も完全に把握し、簡単な攻撃で弾いて逸らし躱している。
負けた冒険者達が治療を終え、ぞろぞろと観覧席に集まり始める。
魔力の波動で気絶しないのかと思ったが、ショウマ君との戦闘である程度戦えるPTだけが見に来ている様だ。
三人での戦いは傍から見てても驚く事のようで、誰も一言も発していない。
シールド持ちと八斬刀持ちが同じタイミングで戦闘域から下がる。
「世界は広いと言う事か。腕輪での鍛錬をやめて戦闘に集中していたというのに、仕留めるどころかギリギリの攻防…ここまで出来る者が、まだ残っているとは思わなかった」
シールド持ちは、にやりと笑いながら言う。
「そうか? 俺より強い奴なんてごろごろいるぞ?」
ショウマ君はいつも通りの口調で喋る。
あぁ、ショウマ君の会話が普通に変わっちゃった。面倒なことにならなければ良いけど。
「貴様の名はなんと言う?」
八斬刀持ちが、ショウマ君に問いかける。
「あ~…今は言えない。勝っても負けても教えるから楽しみにしておけ」
一応名前を言わない位の理性はあったのか。
「ふむ、事情があるって事か。ならば、すぐに勝たせて貰うとしよう」
シールド持ちが自分の武器をしまい、取り出したのは身の丈ほどの大きな盾が二つ。
盾の端の部分は鋭い刃物のようになっており、攻撃も防御もかねている事が一目で解る。
八斬刀持ちも武器をしまい、肘まである大型の小手と膝まである脛当てのような物を装着する。格闘主体にするって事か? 八斬刀をしまったし、格闘使いと呼ぼう。
二人の武器は、金色よりやや黄色く淡く光っている物で見た事の無い素材で出来ている。
何となくだけど、あれオリハルコンっぽくない? やばいんじゃないのかな?
「武器を持ち変える時間を貰い感謝する。だが、手加減はしない」
「上等だ! さっさと来い!」
「いかせて貰う!」
シールド持ちは言いながら、地面へ盾を突き立てる。
すると、ショウマ君の足元から土の棘が生えショウマ君はギリギリで後ろに飛び避ける。
そこに格闘使いが一瞬で距離を詰める。さっきよりも断然速い!
ショウマ君も近づいているのに気が付いたようで、ストーンアローを放ち対応する。
しかし、ストーンアローを一瞬で撃ち落とされ足止めにもならなかった。
格闘使いがショウマ君に鋭い蹴りをいれる。ショウマ君は腕をクロスして蹴りを受け吹き飛ばされる。
着地点付近にシールド持ちが待ち構え、地面に土の棘が現れる。
流石にヤバイと思ったのかショウマ君が風減速をはかる。それを見越していたかのごとく、格闘使いの追撃で、背中に拳が当たり地面の一番尖った棘に勢いよく突っ込みそうになる。
だがショウマ君は体を捻り棘の直撃を避け棘を蹴り他の棘も避けようとするが、シールド持ちが既に近くに飛んでおりシールドの一撃をモロに喰らい、剣山のようになっている棘へ落ちそうになる。
その瞬間、馬鹿でかい魔力が溢れ地面を強制的に元にもどす。
ショウマ君も自分で解除できる封印を解除したようだ。と言っても、最大値の一割程度と言う所のようだが。
魔力に当たり、観戦していたPT達の半数は気絶しないまでも恐怖に慄いている。
最後に戦ったPT以外は、武器の柄を持ちなんとか何とか逃げ出さずにいると言う所だろう。
それにしても、そんな中で卒業生達は全員平然として動いている事に驚きを覚える。
封印前は俺達の魔力がずっと漏れ続けたいた訳だし、その魔力を浴び続けていたから魔力当たりは平気と言うより慣れていると言う感じなのだろう。
卒業生達に気絶した人を救護室に運んでもらうように頼み、勝負の行方を見守る。
雨、もう本当に要らないので降らないでください。
片付けの手伝いが進みません。マジでやめて!