第329話
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驚くほど順調に相手の武器を逸らし弾き、どんどん相手を倒していく。
ショウマ君は武器の扱いが雑で、こんなに綺麗な戦闘なんてできなかったはず。
ここ一ヶ月ほど、ショウマ君と全力戦闘の順番が来なかっただけで驚くほど成長を遂げたんだなぁ。
感慨深く見ていると、ある程度強いPTが残って戦闘も終盤にさしかかる。
一番近くにいるPTに向かってショウマ君が走り出す。
それに気付いたPTリーダーが叫び隊列を整える。
ほぅ、ショウマ君が接近しきる前に整え終わる事が出来るってことはそれなりに連携が取れたPTってことだな。お手並み拝見。
ボウガンを持った斥候のような男が矢を放ち、後衛の魔法使いが呪文を唱え始め、リーダーを含む前衛の二人が槍をかまえる。
ショウマ君は十手を振るい矢を弾き、そのまま真っ直ぐ進んでいく。
前衛の二人が近づくショウマ君に突きでは無く二人が同時に槍を振っている。同時に振るっているにもかかわらず、仲間の動きを邪魔していない。
ショウマ君は武器で逸らし弾き進んでいる…明らかに速度は落ちているのだが、進んでいる。
斥候はその様子を見ると、ボウガンに矢を番えるとショウマ君の真横へ移動開始する。
流石にショウマ君もこのクラスのPTと戦うのに十手1本では無理だろう。そう、ショウマ君は終盤まで右手の十手のみで戦闘をしている。
前衛の二人は、少しずつ下がりながら攻撃している。明らかに紙一重で躱す事が増え来ているな。
魔法使いが呪文を唱え終わったようで、ファイヤーボールがショウマ君に迫る。
ショウマ君はたまらず後ろに飛び退く、その瞬間に斥候から矢が放たれる。その矢を手で掴み地面に投げる。
十手を左手に持ち変え、マジックバッグに右手を突っ込み十手をもう1本取り出す。
相手のリーダーは驚愕の表情をしている仲間を鼓舞し、戦意をなんとか維持する。
流石に両手に武器を持ったショウマ君が相手だと、もうすぐ終わりかな。
先程と同じく前衛が槍を振るうが、逆に槍の穂先に十手の一撃が入る。
ほぼ二人同時に槍を地面に落としてしまい、前衛の二人は後ろに飛び退く。
そこで、腰に佩いていたロングソードを抜いて構える。
しかし、槍を落とされた事で手が痺れてしまっているのか上手く握れていないように見える。
その隙をショウマ君が見逃すはずも無い。一気に距離を詰め攻撃しようとしたその時、斥候の矢が死角から放たれる。
ショウマ君は矢を無視し加速、二人の前衛を通り越して矢をやり過ごす。
と言うか、剣を持っている二人の間をわざわざ通り抜けるか? 矢も無効化出来たし、剣も掠っていない。
前衛2人を無視して魔道師に向かって走る。詠唱している魔道師は驚きながらも魔法を完成させる。
放たれた魔法をかわし、魔道師を首トンで気絶させる。
放たれた魔法は、ショウマ君を追っていた前衛二人を掠めるが直撃はしなかった。
仲間二人にギリギリ当たらない所を狙って撃っていたのだろう、ちょっと感心するな。
地面に魔法が当たり炎が一瞬広がる。熱が一瞬伝わってきたので結構な威力だったのだろう。
そんな事を思案している内に前衛二人が倒され、斥候を追い詰めていた。
斥候の投げナイフを、武器を仕舞ったショウマ君は掴み回収しながら進んでいる。
面白がって回収していると言える…最終的に返すんだから回収しても意味はないだろう。
投げナイフを地面に投げ捨て、斥候の突かれたナイフを躱して一本背負いをお見舞いして斥候は動かなくなった。
追撃で、拳を顔面に突きつけようとすると「参った」の宣言がされた。
残っていたPTは、さきほどのPTよりも弱いようで思ったよりもあっさりと戦闘が終了する。
最後にフード付きのダボッとした外套を被っている二人組みが残った。いや、ショウマ君が最後に残したと言った方が正しいだろう。
立ち位振る舞いから一番強いと思う二人を意図的に残したのだろう。
ショウマ君が二人の前に立つと二人組みの片方が手を前に出して、喋り始めた。
流石にこの距離では聞こえないので、カーボンナノチューブを延ばして聞いてみる。
「単刀直入に聞く、その技はどこで覚えた?」
「師匠に叩きこまれた」
ショウマ君は出来る限り言葉少なく言う。
「その師匠の名は?」
「真柳八雪」
ショウマ君がそう言うと、話していた方とは違う方が走り出し襲いかかってきた。
「嘘を言うな!! 始祖様の名を語るとは万死に値する」
ショウマ君が距離を取り躱す。
しそ? 始祖って事なのか? ショウマ君の師匠が? どうなってるんだ?
「出すぎるな! 倒せば話を聞く事も出来る!」
襲いかかって来た方が舌打ちをすると、相方の所へ戻る。
2人は外套を脱ぐと、持っていた武器をマジックバッグにしまい違う武器を取り出し始める。
マジックバッグを持っていたのか…出回っていないと言ってたけど二人とも持ってるし、あるところにはあるんだな。
話をした方はラーテルの獣人のようで大きな長方形の盾とパルチザンを構える。
いきなり襲ってきた方はクズリの獣人で、八斬刀を二本持ち構えている。
盾を持つラーテルの獣人が走り、ショウマ君に襲いかかる。初撃は槍の一撃ではなく盾を振り回したシールドバッシュだ。
見ている俺ですら虚を突かれたのでショウマ君も驚いているだろう。
シールドをかがんで避けると、シールドの上から八斬刀を持った方が降りてきて切りかかる。
つまり、シールドバッシュは目隠しのおとりだと言う事だ。上手いな。
ショウマ君は地面を転がり避け、飛び退いて距離を取る。八斬刀持ちはすかさず距離を詰め鋭い猛攻を仕掛ける。
シールド持ちは回りこもうとしているが、ショウマ君が避ける方向を変えたりして挟み撃ちだけは逃れている。
今までの敵とは別格の強さ、無理をせず攻撃、防御の切り替えがスムーズで円の動きを使って無駄な動きをそいでいる。
確かにショウマ君の格闘の動きと似ている…源流が同じと言う感じなのか? 何故?
強さだけを見ればショウマ君が勝つのは決まっている。しかし、相手に大怪我を負わせる事が前提となる。
自己判断でギフトの使用や魔法の使用、リミッターを解除してもいいとなってるし大丈夫だろう。
シールド持ちの槍の大振りな攻撃が地面に炸裂すると、両者距離を取る。
「正直、ここまでやるとは思っていなかった」
シールド持ちが構えを崩さぬまま喋る。
「同意見だ」
ショウマ君が隙無く構えて言う。
「仕方ない本気を出すとしよう。いくぞ!」
二人とも先程よりも数段はやい、身体強化のギフトを使用したようだ。
ショウマ君も身体強化のギフトを使用し、同じような攻防が始まる。
二人は最初こそ驚き動きを硬くしたが、すぐに元の綺麗な連携が始まった。
二人の動きがまた止まり、ショウマ君は相手から挟まれない位置で止まる。
「その動き、おまえも獣人であったか。ならば、聞かせて貰いたい。奴隷とはいえ、こんな大人数を集め何をさせるつもりだ?」
シールド持ちはショウマ君を見ながら言う。
「助ける」
「は? 助けると? 何故助けられる?」
「終わったら、教えてやるよ! 身体強化」
ギフトと魔法の身体強化をかけ、驚くようなスピードでシールド持ちに迫る。
シールド持ちは驚愕の表情で盾を構え、攻撃を防ぐがそのまま吹き飛ばされる。
八斬刀持ちがショウマ君に攻撃を仕掛けるが、全て躱され腹を蹴られて吹き飛ぶ。
吹き飛んだのを確認すると、ショウマ君は追撃せずに腕を組んで立ち上がるのを待っている。
二人は、何事も無かったかのように立ち上がるが仕掛けて来ないところを見ると普通に行ったら勝てないと察したようだ。
さて、二人はどうやってショウマ君に攻撃をするのか見物だな。