第324話
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気絶したラクチェさんとピエッリさんを起こし、簡単に会話する。
何度か試して見たが、結局何度も気絶してしまった。結界の効果時間が過ぎ魔道具が砕け散る。
結界の魔道具もそんなに量がないのに勿体無い事をした。
やっぱりマジックハウスに移動して奥の部屋を使用すれば良かった。
マジックハウスは外界から隔離されていて、中の部屋もある程度隔離されている。その為に革細工などをすると臭いが抜けなくて結構大変だったりするが。
まぁ、その為にムスカリ司教達は気絶しないで済んでいた訳だ。
しかし、セードルフやメイド執事達は魔力で気絶したりしないから慣れて来るとは思う。
「いやぁ、参った参った。魔力で気絶するなど久々だ」
ラクチェさんが、がははと笑いながら言う。
「こちらこそ、すみません。魔力の拡散と言うか漏れ? を防ぐのが苦手でクランの誰も出来ないので封印してるんです」
魔力を体内で循環させ外に出さないようにするのが俺達十二人は本当に苦手だ。魔力修行でやろうとしても大きすぎて漏れてるか良く解らない。
色々と試して見たが無理だったので、結局魔道具で魔力を小さくしてから循環させる方法を選んだ。
鍛錬になるので結果的には良い事だと思う。
「きっちり魔力を制御できる奴なんて魔力量の少ない獣人だけだろ? 気にすることはない。しかし、どうするべきか」
「方法がないわけではないですが、直接見なくても良いですか?」
「良く解らんが、直接見なけりゃ解らんだろ? 遠見の鏡でもあれば別だが」
なんか、結構色々な魔道具があるもんだな。暇になったら色々探し回るのも良いかもしれないな。
「遠見の鏡って簡単に買えるんですか?」
「いや、龍神皇国の国宝だったはずだ。で、どうするんだ?」
「こうするんです」
俺は記憶の水晶(エルフの里で貰った)を取り出して映像を再生させる。
そこでは、ラクチェさんとピエッリさんが倒れてる隣で俺とタクミ君が金属の加工をしている映像が流れる。
何度見ても自分の声って変に聞こえるんだよなぁ。
「こりゃあ…」
ラクチェさんがそれだけ言うと映像に釘付けになっている。
映像が終わり、ラクチェさんが何も言わない。
「こんな感じで武器などを製造しています。かなり練習したのでほぼイメージ通りに作る事が出来ますが、燃費の悪いオリジナルの魔法で俺達以外に使用出来る人は居ないと言い切れます」
「そうなのか!? 良かった、本当に良かった」
こんな魔法が使えたら鍛冶師など要らなくなってしまうからな。
生活の糧が無くなる事は、かなりきついだろうな。
「武器がこんなに簡単に作れてしまえば、戦争時にどれだけの人の命が失われる事か…我々ドワーフは武器の値段を上げる事で管理しているが、お前さん達はどうなんだ?」
「あぁ、なるほど。俺達の武器は売ってませんよ。渡している武器も最高で魔鉄までとしています」
あぁ、そう言う事か。下衆な想像しちゃって申し訳ないな。
「なんだと!? 真魔鉄以外にも作れるのか!? 何が、何が加工出来る? まさか、オリハルコンも加工できるのか!?」
しん魔鉄? 新魔鉄? 真魔鉄? いや、神魔鉄って線もある。なんだろ?
「さぁ? どこまで加工出来るのか試した事ないですが、オリハルコン位なら加工出来るかもしれません」
話を聞くと真なる魔鉄らしい。真と付くと必要のない不純物が極限まで取り除かれた加工物との事だった。
オリハルコンは今は持っていないらしいので加工を試す事は出来なかった。
話の流れで、ドワーフの国へいけばオリハルコンの加工を見せてくれると約束してくれたので嬉しい誤算だ。
ダマスカスのインゴットや武器も見てもらったが、やはり真ダマスカスらしい。
「本当にすまん。試すような真似をしたことを謝罪する」
「いえ、先程から気にしないでくださいと言ってるじゃないですか。見てみなければ解らない事なども多いですし、オリハルコンの加工方法を見せてもらえるだけで得ですから」
「本当に助かる。失礼ついでにだが、真ダマスカスのインゴットを売れるだけで良いから売ってくれないか?」
「その位なら構いませんよ…あ! 真ダマスカスのインゴットを他にも売っちゃってました。あっちゃー、やっぱり拙かったりしますか?」
「大丈夫だ。真ダマスカスのインゴットを普通に加工すれば、普通のダマスカスよりも強く切れ味の良い武器になる程度だ。真なる武器にするためには特殊な魔力炉が必要だ…いや、必要だったと言うべきか」
必要だった…まぁ、俺達の武器も真ダマスカスだと言う事だしな。
「なるほど、特殊な魔力炉ってのは大量の魔力を貯蔵し魔力を放出できる魔力炉ってことですか。確かにウルフローナで俺達が使った事のあるのは旧型の魔力炉ですね。一定の魔力以上入らず放出も出来ない微妙な奴です」
「ん? その言い方だと何を使っているんだ? 後学のため、お前さん達はどんな物を使ってるのか聞かせてもらって良いか?」
「ええっと、ただの壷ですよ。魔力炉の性能を上げようと思って作ってみた事があるんですが、魔力炉自体が融けてちゃんと動かなかったんです」
「は? 壷? ただの壷だと? あの、粘土で作った壷か?」
「いえ、土だけで作った壷ですよ。土って魔力を込めれば込めるほど固くなりますから」
言いながら壷をカウンターの上に出す。
「ぷはっ! がっはっはっは。いや、すまん。ここまで出鱈目な奴らにあったのは初めてだ」
ラクチェさんは、壷を見ると大声で笑い出した。
「あのなぁ、クランマスターカナタ殿。一流の土魔導師が固めた土はこんなに固くないんだぞ? 精々石程度の固さだ。なのに、この壷は叩くと金属音に近い音がしやがる。余り人に言わん方が良いと思うぞ」
ピエッリさんが壷を確認してため息を吐きながら言う。
「早々聞かれる事もないでしょうから大丈夫だと思いますよ。こっちも質問です、特殊な魔力炉の素材は何ですか?」
「ああ、アダマンタイトとアポイタカラとヒヒイロカネ、ドラゴンの素材などで出来ている。殆どはアダマンタイトだが、魔力線や魔晶石、魔法陣も特殊に作られているらしく詳しくは解らん」
「めんどくさそうな素材が多いですね。すぐには作れなさそうですね」
「お前さん達ならアダマンタイトだけでなんとでもなるんじゃないか? アダマンタイトは魔力が殆ど漏れず魔力に晒されるほど固くなる特性があるからな」
ああ、なるほど壷のバージョンアップをすれば何とかなるってことかな?
「ここのダンジョンでもアダマンタイトが少量採取されてるから何とかなるだろう」
ラクチェさんは、がははと笑いながら言う。
「話も一段落したみたいなので、そろそろインテリジェンスウェポンの話をしても良いですか?」
隣に立っていたタクミ君がおずおずと手を上げて言う。
あ、すっかり忘れてた。当初の目的はインテリジェンスウェポンだった。
「すまんすまん、すっかり忘れておった。ちょっと待っててくれ」
ラクチェさんは奥に向い、金属製のケースを持って戻ってきた。
俺の目の前にケースを置くと開く。ケースの中身は折れている剣だった。
「最初に説明しておくぞ。見て解る通り折れてしまっている。刀身も見つかってないから復活も出来ん。
ただ、防衛機能だけは健在のようでそのまま溶かすと自爆するようになっているらしい。
一度完全破壊して素材に変えると言う意見もあったんだが、何となく勿体無い気がして研究材料として貰ったんだが…もう、さっぱり解らん。
使い手を見つけ、研究の協力と引き換えに渡そうと思ってたんだ」
ただで貰えそうだけど研究するのに時間の拘束とかどうなんだろう? まぁ、起動して見ないとなんとも言えないか。