第323話
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スラムではなく冒険者ギルドのある中央区を通って帰る事にしたは良いが、ユカさんが結構酔っ払っていてフラフラしている。
やっぱり最短距離のスラムを通って帰れば良かったかもしれないな。
でも、ナリッシュ君に会いたいし…あ、やっぱり無理っぽい。仕方なく、ユカさんをおんぶして家路に着く。
回復魔法で治しても良いけど、折角ムスカリ司教と仲良くなって楽しく飲んだんだから残しておきたい。たぶんユカさんもそう思って回復魔法を使わないのだろう。
屋敷に着いて、ユカさんを残っていたアヤコさんにお願いをして俺はミスティ星へ。
ミスティ星ではタダシさんとヨシさんがいた。
これから俺は二人に怒られるだろう、下手したら愛想を尽かされる可能性もある。はぁ、そう考えるだけでも話したくなくなる。
二人を一旦呼び、俺の計画を聞いてもらう。
「そうか。それはのちのち良い方向に行くんだろう? なら儂は何も言わん」
話を聞いたタダシさんの反応はこんなもんだった。
「いつもよりあっさりしているから何かを考えているとは思ってたけど、そう言う事だったのね。やり過ぎないように気をつければ大丈夫よ。ちゃんと秘密も守るわ」
ヨシさんはそう言って微笑む。
「正直、ホッとしました。二人に怒られると思ってましたから」
「内緒にしていたら怒ってたと思うわよ? でも、理由も納得できるし時間も限られているもの」
全部話し終えて、屋敷に戻るとタクミ君が戻ってきていた。
「あれ? タクミ君、今日は早いね」
「ようやく戻ってきましたね、カナタさん」
「え? 俺になんか用事?」
「インテリジェンスウェポンです! インテリジェンスウェポンが見つかったんです! 一緒に見に行って貰って良いですか?」
「え? 別にお金あるんだし買っちゃっても良いと思うけど」
「偽者の可能性もありますし、買うためにはインテリジェンスウェポンを起動させなければいけないみたいなんです。あと、ナリッシュ君達の事を知っている人たちだったんですよ」
「ふーん、それで俺に見て貰いたいの? 武器関係は俺よりもタクミ君の方が詳しいでしょ?」
「そうかもしれないけすけど、僕では起動できなかったんです。魔力を流しても何の反応も無くて、ケイタも呼んで調べてもらったんですけど、カナタさんを呼んだ方が良いという結論になったんです」
「何故に俺? 変なロックでもあったとか?」
「僕の構造解析では変な所は見当たらなかったんですが、ケイタが構造解析したらカナタさんを呼ぶように言ったんです」
どういう事だ? なんで俺を呼ぶ必要がある? ケイタ君が何らかの物に当たって俺を呼ぶしかないと結論付けたのだろう…あぁ解らんな、行って見るしかないか。
「それで、ケイタ君は?」
「リョウタロウさんの手伝いに行ってますよ? ナリッシュ君達は後でここに来るって、一斉送信されてましたけど見てないんですか?」
「見てないな。最近は携帯とかあんまり見なかったからなぁ」
「カナタさんって携帯とかあんまり見ないですよね? なんでですか?」
「ああ、若い頃に鳴り止まないほど引っ切り無しにメールが来てたけど、面倒になって全員と距離おいてから携帯に縛られないようになっちゃったんだよね。携帯に縛られて生活していた反動みたいな感じかな?」
「何があったんですか?」
「まぁ、それはおいて置いて。今からその武器屋に行く?」
「はい! 明日はコロシアムの最終調整をするんですよね?」
「うん、コロシアムの本体はミスティ星にあるから土地を均して置くだけだからそこまで時間かからないとは思うけど、何処に置くかの問題があるんだよねぇ。スラムの奥側に作ろうと思っているけど大丈夫かは解らないんだよねぇ」
「スラムの代表者みたいな人にお願いすれば良いんじゃないですか? テンプレなら代表者みたいな人はいますし」
「代表者と言うか元締めって呼ばれてる人はいたよ。 あ!! シャガ(エルフの里で酷い扱いを受けていた奴隷の一人)達に明日一緒に来てもらえるように言わなくちゃいけなかったんだった」
「シャガ君ならライナさんと一緒に防具を見に行ってるはずですよ? ちょっと遠回りすれば革の防具のお店も行けなくはないですし、居なければ居そうな所も知ってますので」
「それじゃあ防具の店に最初の案内よろしくね。タクミ君の心当たりにも居なかったら明日の朝に探すから」
獣人区の革の防具店に行き、やはり発見出来ずにタクミ君の心当たりまで案内してもらいシャガ達を見つけた。と言うか、空き地を皆で借りて調理している。
宿屋で調理場を借りるよりも皆で空き地を借りた方が安いらしい。この空き地を買ってバーベキュー場の様にしても良いかもしれない。
ここは民家や宿から少し離れた鍛冶場の近くで、なんらかが燃えても燃え広がる事はないだろう。
時間もあまりないし、それもこれも全部終わってから考えるとしよう。
「ここです! 良かった、まだ開いてる。早速行きましょう」
「あいよ、了解」
中に入るとドワーフが二人がカウンターに座って酒盛りをしていた。
タクミ君がドワーフの二人に話しかけ、俺は促されるまま挨拶をする。
「ふむ、お前さんがクランマスターか。聞いてたのよりも普通だな…もっとやばそうな奴が来ると思ってたんだがな」
俺はタクミ君をじろっと見る。タクミ君は手を頭の後ろに当てあははと笑う。
はぁ、別の誰にどう言われても良いけどね。
「これは土産です」
取り出すのはブランデーやウィスキーを取り出す。王への献上品用のガラス製の入れ物と切子ガラスのコップも取り出す。
ウィスキーのボトルやコップをドワーフの二人は感嘆の声をあげながら見ている。
「ナリッシュ君達の武器をメンテしてくれてたそうで、助かりました」
「あん? お前さんを助けたつもりはないが?」
カウンターの奥に居るドワーフが聞いて来る。
「あの三人は教え子ですし、武器を渡したのも俺達です。武器のことは武器を良く知る鍛冶師に見てもらいたかったので」
「なんだ、そんなことか。それよりも飲んで良いのか?」
「ええ、それはもちろん」
カウンターの奥に居るドワーフとカウンターの手前で箱に座っているドワーフが酒盛りを始める。
乾杯の時の会話を聞いたら、カウンター手前で飲んでいるドワーフが師匠のようだ。
「ふぅ、良い酒だ。俺はラクチェって言うしがない鍛冶師だ。お前さんがクランマスターのカナタか?」
店の名前と違うしピエッリさんってのはカウンターの奥のドワーフかな?
獣人の国やエルフの国だとクランのリーダーって呼び方だったけど、人族の国やドワーフの国だとクランマスターなのか? まぁ、どっちでも意味が通じるから良いけど。
酒のお代わりを追加しながら世間話をする。やはり、カウンターの奥に居るのがピエッリさんだった。
「ほほぅ、魔法で金属を操ると? 見せてくれるか?」
「秘匿している訳ではないので、やりますけど…大丈夫かな?」
「大丈夫とはどういう事だ? 危険な方法なのか?」
「俺かタクミ君の封印…魔力を解放しなければいけないんです。解放は簡単に出来ますが、魔力が強すぎて近くにいる人が気絶したりするみたいで」
「はぁ? それなら心配いらん。こう見えても4級冒険者だ。やってみてくれ」
俺とタクミ君が話し合い、タクミ君が封印を解除する事となった。と言っても、自分で解除できる12%までだ。
封印は自分以外の11人が均等に8%づつ、自分自身が12%の封印をして居る。ほぼ100%の封印だが、全部を封印する事など出来ないので漏れ出した魔力で普段は生活をしている。
そして、自分以外の解除法は封印を施した本人以外には解らないようにしているので暴走してもある程度の防波堤になってくれるはずだ。
タクミ君が今回解除するのは自己封印のみ解除するので、問題ないだろう。
結界の魔道具を起動し、武器屋全体を隔離し魔力を解放してもらう。これで、魔力が外に漏れる事もないはずだ。
結局、ラクチェさんもピエッリさんも近くでの解放で気絶してしまった…言わんこっちゃない。