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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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第319話

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

「随分とあっさり話を終わらせましたね? 何か企んでるんですか?」

 ユカさんがこちらを見ながら言う。


「企んでるなんて失礼な。食事の配布の約束を取り付け、オカエビの危険性の周知が出来たんだから合格点だと思ったから引いたんです。お陰で今夜は勝手に食事を配布してくれるはずだよ」


「本当に配布してくれると思いますか? あの元締めさんは隠し事をしているように思えて信用し切れてないんですけど」


「ああ、あの人は元締めじゃないだろうね。たぶん、最初に呼びに来た少女が元締めだと思うけどどう思う?」


「え? 前も道案内してくれた子ですよ? 隠れて指示を出している元締めがだとしたら、目の前に現れる事自体おかしくないですか?」


「隠れているんじゃなくって、隠されているんだと思いますよ。今回あった元締めモドキと秘書っぽい女性に」


「それなら…いえ、ますます出て来るのはおかしくないですか?」


「たぶんなんですけど、俺達を直接見てみたいとかじゃないですか? 良くあるじゃないですか直接見てから人となりを確認しておきたいとか何とか。まぁ、俺の勘違いと言う線もありますからね。少女を遠巻きに守っていた護衛が一番強そうだったというだけですし」


「集中してないように見えて良く見てますね。普段の話もそのくらい集中してくれると助かるんですけど?」


「はっはっは、善処いたします。というか、なんか作業してる時は勘弁して下さい。二つの事を同時にできるほど優れてませんから」


「はぁ…作業を一旦やめるとか出来るんじゃないですか? カナタさんっていっつも作業してますよね?」


「最近作ってるのは趣味の物だから大丈夫だと思うけど」


 このような小言をチクチクと聞きながら屋敷に向って歩いていく。その時に通信機から着信音が響いてくる。


「急にすみません、ナリッシュ君達がダンジョンより戻ってきたようです。コンタクトを取るので又連絡します。通信終了」

 リョウさんからの一斉通信だった。


 一斉通信で皆が喋ってしまうとしっちゃかめっちゃかになってしまう為、通信終了の言葉があるまで喋らないようにしている。


「元気でやってるみたいだな」「ようやく帰ってきやがったか」「カリッシュちゃんに新作渡さないと」


 皆がごちゃごちゃと話し始める。何を話しているのか良く解らん。


「ナリッシュ君、帰って来たみたいですね」

 ユカさんが嬉しそうに言う。


「そうですね、ようやく帰ってきましたね。でも、すぐに会いに行く事はできなさそうですよ」


「え? なんでですか?」


「もう少しいくと、こちらの事を見ていた集団と会う事になるみたいですから」


「え? え? どういう事ですか? レティア教ですか?」


「たぶんそうですけど、違う可能性もあります。というかユカさん、索敵本当に苦手ですね。もうちょっと頑張んないと不意打ちされますよ」


「解ってはいるんですけど、どうも人を探るのとか苦手なんですよね」


「いや、人だけじゃなく魔物を探るのも苦手でしょう。もう少し何とかしないと駄目だって解っているでしょ?」


「それは解ってますけど、どんなにやっても目で見ないで感じるなんて解らない物は解らないんです」


「感じる訳じゃなくて、聞き取って理解するって感じなんですって。ブラインドサッカーとかやったじゃないですか」


「私はやってないんですけど」


「あれ? そうでしたっけ?」


「そうですよ。怪我をするとか何とか言われて結局やらせて貰えて無かったですし、組手もモンステラじゃあんまりさせて貰えなくなったじゃないですか」


「そういえば、そんなんでしたね。まぁ、ミスティの星では全力で戦ってるんですから誤差とも言えるんじゃないですか?」


「それは…そうかもしれませんが」


「おっと、接触して来るみたいですよ」


 俺達の目の前に修道服に近いローブの男が数人立ちはだかった。いやいや、こういう時は女性の修道士が来るべきじゃないのか?

 もう少しテンプレを重視して欲しい物だ。現実にそんな事を言ってもしょうがないと言えるけど。


「失礼いたします。あなたが、聖女と言われているユカ殿ですか?」


「そのように呼ばれてしまっているユカですが、アナタはどなたですか?」


「私は、レティア教で侍祭をしておりますカマイと申します。一緒に教会まで来ていただけますか?」


 ユカさんはチラッとこちらを見る。俺は軽く頷く。


「もちろん行かせていただきます。ですが、カナタさん…クランマスターも一緒にいいですか?」


「はい、護衛の方も何方でも一緒においで下さい」


 侍祭カマイさんの後を追って人族の街を進んでいく。道中に他の人たちの紹介もしてもらえたが、教会に属する者だという紹介だった。名前覚えられなさそうだな

 人族の街は相も変わらず未だに街の中は汚いし臭い。

 進んでいくと結構大きな建物に向っていくのが解る。なぜか、近づくに連れて子供が増えてくる。


「カマイ兄ちゃん、そいつら誰だ?」

 目の前の少年が声を掛けてくる。


「こら、お客様に失礼ですよ。お二人とも失礼しました」


 ユカさんは手を振りながら「大丈夫です」と言う。


「いえいえ、子供は元気なのが一番です。それにしても、人族の子供が多いですね」


 そう、人族の子供が多く獣人の子供の姿は見えない。


「ええ、孤児院をやっていますので申し訳ありません」


 孤児院ね。では、何故孤児院に獣人の子供達がいないんだ? もうちょっとマシな事を言って欲しい物だ。


「そうですか。しかし、人族の子供の姿しか見えませんが?」


「そうです! やはりそう思われますよね! 教会を作るなら冒険者ギルドがある中央区かスラムに作るべきだったのです。

 ここでは人族の街ですから、人族の子しか入る事が出来ないのです。昔は行き来がここまで厳重じゃなかったので大丈夫だった見たいなのですが、今では入ってもらう事すら出来ません。本当に悲しい事です」


 あれ? 思ったよりまともな意見だな。

 もしかして、上は駄目だけど下は頑張っているってパターンか? そうなると、敵か味方かがあやふやになってどうするべきか迷うんだよなぁ。


「あ、申し訳ありません。興奮してしまいました」

 カマイさんは咄嗟に頭を下げる。


「いえいえ、そんな理由があったとは知らずに、こちらこそ失礼いたしました」


 教会の前で他の人も含め少し話したが、やはりカマイさんはいい人のようだ。

 スラムの子供達に渡してくれるように、元締めの所へ寄付してもらった食料を渡しに行ってくれてたりもしていたらしい。

 元締めは最初に会うつもりがなかったようだが、粘り勝ちをしたそうだ。

 そして食料の寄付は、商店や農家を回って集めた物だそうだ。


「教会の寄付金の他に、食料までお願いしているので私は嫌われてしまってるんですけどね。はっはっは」

 カマイさんは照れたような困ったような笑いをしていた。


 あぁ、本当にどうすりゃいいんだ? こういうまともな人は必要だから居て欲しい。

 だが、レティア教の黒い噂だけを鵜呑みにすると排除しないといけないと思っちゃうんだよなぁ。

 あくまで噂だし、話し合ってから決めればいいか。

 カマイさんに別れを告げ教会の中へと入る。教会と言っても大きな建物で、扉の上にシンボルとして剣と翼のマークが飾られている。

 案内に来た女性はゆったりとしたローブ(トゥニカ)に髪の毛を全く出していない頭巾だった。

 イメージしてた修道女に近いモノがある。だが、ローブは体のラインを出したする物にするべきだ!

 そんな事を考えながら歩いていくと、重厚そうな扉の前で止まる。

 面倒な事になるだろうな。でも、やるしかないか。

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