第314話
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チョコレートは知っての通り種を食べる。
汚れを落とすのも大変だし、カカオニブを溶かすのもかなり大変だし正直作りたいと思わない。
しかし、今はその話は置いておく。
「カカオの話は後で話します。 それよりも、折角買ってきたんだし飲みましょうよ。 アカネちゃんもその様子じゃまだ飲んでないんでしょ?」
「そりゃそうだよ~。 だって~、ここに出した3個しかなかったから~、皆に見せてからって~」
「そっか、ありがとう。 でも折角だし、買ってきた3人に最初に飲んでもらった方がいいと思うんだけど、皆はどう思う?」
「あ、カナタさん。 チョコレートドリンクって」
「リョウさん! 良いんですよ。 買ってきたのは3人ですから、最初に飲んでもらいましょう」
リョウさんが言おうとした事を遮り、首を横に振りながら言う。
駄目だよ、リョウさん。 こんな面白いイベント潰しちゃ。
そう思いながら椅子から立ち上がり、3人にテーブルに置いてあったチョコレートドリンクを手渡していく。
「さぁ、どうぞ」
俺に促されて3人は乾杯と言い、チョコレートドリンクを口に入れる。
「「ぶふぅぅぅ」」
アカネちゃんとコノミちゃんは同時に俺に向ってチョコレートドリンクを噴出した。
何故、俺に向って吹きかけるんだよ! 二人同時に吹いてくるなんて、逃げ場なんてないじゃないか!
女子高生からチョコレートドリンク吹きかけられるのはご褒美って言う人もいるかもしれないけど、俺にそんな性癖はない。 魔法の風で防げば周りに被害が出るし、ちゃんと逃げ道くらい作っておけば良かった。
そんな考えと共に全身、特に顔にチョコレートドリンクを受ける。
「うぇ~、苦~い! 超苦~い! 何これ~、くっそ不味いんですけど~」
アカネちゃんは舌を出し顔を歪めて言う。
「うくぅぅ、泥ですよ! ただの泥ですよ! 何なんですかこれ!」
コノミちゃんは顔をしかめてオーバーアクションをしながら言う。
「何なんです? ただただ苦くて、なんか粒々が入ってましたけど」
ユカさんが渋い顔をしてチョコレートドリンクを見ながら言う。
その後、俺が苦いことを知ってて飲ませたと3人から文句を言われる事になった。
もう少しでご飯だと言う事で、ゴーレムに床掃除をさせて俺はお風呂へ直行。
余談だがユカさんは、俺が嬉しそうな顔をしてたから警戒してちょっとしかチョコレートドリンクを飲んでいなかったようだ。
いかんいかん、ポーカーフェイスを鍛えないと。
そんなこんなで楽しい夕食を終え、皆で話し合いをする。
「そんなわけで、冒険者ギルドは腐ってやがった」
ショウマ君が擬音を多めに冒険者ギルドであった事を話した。
簡単に言うと、獣人の少年少女の奴隷が酷い目にあってた。
獣人に対する偏見や差別が凄くて、依頼の受付や受注すらして貰えない事も多い。
ケイタ君の補足で、獣人は冒険者の足手まといとされている事が解った。
獣人は魔力量が少ないので基本前衛になるのだが、前衛としても半人前以下という認識のようだ。
後衛の魔術師は戦闘で魔法を使うので魔力を温存しなければならず、野営中の水は前衛が出す事が決まっているという事らしい。
獣人の前衛は1ℓの水を出せればいい方なので、確かに野営には向かない。
それを差し引いても、前衛としての能力は高いと思うが一般の認識としてはそうなっているようだ。
「確かに人族の探索者ギルドでも凄かったです。 何とか出来れば良いのですが」
リョウさんの言葉で、俺に視線が集まる。
おいおい、俺は青い猫型ロボットじゃないんだから見たって何にも出て来ないよ?
「ケイタ君なら、どうする?」
俺はケイタ君に話を振ってみる。
「奴隷を買い取るのが早いですね。 ただ売る売らないは相手次第になってしまいますが、大金を積めば売って貰えると思います」
当たり障りのない回答と言える。
「それも一つの案として有効だと思う。 しかし、相手に金を渡してしまえば又奴隷を買って同じことをするでしょ? しかも、大金ならなおさら」
「お金で買わずに相手から奪うってことですか?」
「奪うんじゃないよ。 ちゃんと譲ってもらうんだよ」
「そんなことが出来るんですか?」
「ヒントはコルネット・タルーンだよ。 商売って言うのは物を売るだけじゃない。 時間や空間、感情ですら商売にしてしまう」
ケイタ君がハッと気が付く。
「まさか、今回もギャンブルで巻き上げるんですか?」
「そう! 正解! 腕に自信がある冒険者にケイタ君扮する`右の´と対決してもらう。 さて、ケイタ君ならどうやって冒険者と対決させ、奴隷を手に入れる?」
「こちらはお金、冒険者は奴隷をかけて勝負するのが一番早いです。 ですが、一体一では強くてとても勝てないと広まってしまいますのでギリギリの勝負を演出する。 いえ、ショウマにそこまでのことは出来ません。 それならば、複数対一にするのがいい。 しかし、この方法ではいない人から奴隷を渡してもらう事が出来なくなる可能性もありますね。
ただ、これならば全員は無理かもしれませんが、ある程度なら助けられるかもしれない。 今の所の最良と言えそうですね」
ケイタ君は腕を組んでブツブツと呟き、その後一度だけ頷く。
俺はこちらを見て居るケイタ君に頷き続きを促す意味で掌を出す。
「僕が考えた作戦は、ショウマを倒せれば参加者全員に賞金を渡す、参加費用は奴隷とするのはどうでしょうか? 参加費用として渡した奴隷の人数分の賞金を渡すのもいいと思います」
「うん、いいと思う。 要らない奴隷を渡されても獣人国の各国に送ってもいいし、塩の迷宮で使ってもいいしね」
作戦の詳細を練って、色々と準備をする。 準備と言ってもアイテムがちゃんと揃っているかどうか確認する程度だが。
資金は十分にある。 俺のポケットマネーだけでも十分なのだが、皆からのカンパを貰った。
助けたいと思っているのは、俺だけじゃないってことだ。
次の日、コルネット・タルーンを操り人族の街を商店中心に確認する。
コルネットは人族のエリアで売買をしていないので、物価はまだ高いままだ。
行商出店エリアの一角を借りて、リサーチした値段を参考にして販売を始める。
店員はタダシさんとヨシさんとミスティとコノミちゃんと4人で、全員帆布のローブを着て目元にマスクをして変装している。
護衛と言う名目で戦闘用ゴーレムを2体ミスティに渡してある。 ミスティなら自分を含めた3体なら同時に操れるから警備も万全だ。
コルネットは、俺とショウマ君の2人を連れて冒険者ギルドへ。
中は思ったよりも綺麗に片付いており、冒険者の姿もチラホラしか見えない。 奴隷は壁際の一箇所に集められているのか。
しかし、残って酒を飲んでいる冒険者達はどれも強そうに見えない。 横暴で暴力的で自信過剰って所は合格だと思うんだけど。
おっとヤバイ、立ち止まって冒険者達を確認しちゃった。
「左の(カナタ)、何かありましたか?」
「いえ、立ち止まってしまい申し訳ありません」
「行きますよ」
「はっ」
これ1人でやってるのって恥ずかしい気がしてくるな。
コルネットを操り冒険者ギルドの受付に行く。
「すみません、お尋ねしたい事があります」
「はい、何でしょうか?」
受付嬢は笑顔で受け答える。
「今いる中で一番強い冒険者さんは何方ですか?」
「あちらにいる4級冒険者の方が今いる中では一番強いですね。 もっとも、英雄であるイサオ殿がこの都市の最強の方ですが」
「なるほど、そうですか。 もう1つお聞きしたいのですが、顔の広い冒険者の方はいますか?」
「え? 何があったんでしょうか?」
「変な意味ではなく新しく商店を構えようかと考えていまして、その宣伝に一役買って貰うのがいいかと」
「なるほど、そう言う事だったんですね。 でしたら、あちらの一人で飲んでいる方が一番顔が広いです。 ここでは情報屋や広報と呼ばれているんです」
「そうですか。 ありがとうございます」
話し終えたコルネットは酒場のカウンターへ。