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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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第309話

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

 俺とショウマ君は、いつもの服ではない全身を被うフルプレートメイルを着て商人ゴーレムのコルネット・タルーンを動かしながら門に並ぶ。

 周りの人も冒険者と思われる人も一様にこちらをチラチラと見ていく、つまり驚くほど目立っている。

 それもそのはず、約10トンもの重さに耐えられる幌馬車が10台も並んでいるのだから。

 この幌馬車は、ドラ〇エごっこをした時の物や練習で作った物が多数で外見が統一されていないのが玉に瑕だ。


 何故こんな事をしているかと言うと、餌として宣伝する為だ。

 食料を持っている商人が狙われやすいと言うのなら大々的に宣伝して、盗賊に襲ってもらおうと考えたのだ。

 俺とショウマ君、御者として借りてきた人以外護衛全員ゴーレムなので普通に動かす分には大変ではないのだが、ゴーレムの背を小さく作ってあるので威厳のようなものがなく話し掛けられやすいみたいだ。

 しかし、ゴーレムは喋れない。 話しかけられてもそっけない態度しか取れないので、御者の人が何とか話に割り込んで会話しているのも見受けられる。 すみません、頑張って下さい。


「なぁ、カナタさん。 めちゃくちゃ目立ってないか?」


「そりゃあ、かなり噂を流してもらったんだもん。 目立たなきゃ失敗だよ」


「噂って言うと、兵士や使用人達に食べ物を一杯運んでくる商人が午後に到着するって街民に言う奴だっけか。 そこまで歓迎するなら、貴族門で通してくれりゃ良いのに」


「歓迎はしてくれるだろうけど、商人をいちいち貴族門に通さないでしょ。 さぁ、門に到着するよ」


「ああ、了解。 俺は基本的に黙ってりゃ良いんだろ?」


「普通に話しかけた時だけ反応してくれれば良いから。 じゃ、通信切断」


 ショウマ君がサムズアップして答える。


 城に卸した食料を半分街へ流そうとしていたようだが、俺が止めた。

 卸した食料の量でも数ヶ月は何とかなるだろうが、戦争が本当に起こった場合に備え燻製などの保存食にしておいて貰う。

 生鮮食品も多くあるが、兵士に配っても良いし孤児院に配っても良いから特に問題はないはずだ。

 そして街に売りに行く代わりに兵士や使用人に噂を流してもらった。

 ヘデラ侯爵が桜グループと言う大商店と取引をしているコルネットと言う大商人を呼び寄せたと言う噂だ。

 コルネットの商隊が通ると人々が止まりチラチラとこちらを見てくる。


 そして、アスター(迎えに来た執事)さんのお願いで街一番と言われている食料品店へとやってきた。


「店主殿、私はコルネット・タルーンと言う商人です。 食料品が少なくなり困っていると言う事で、大量の食料を持ってまいりましたが買われますか?」


「へ、へい! おねがいしやす。 な、中へどうぞ」

 店主は何度も頭を下げながら言う。


「では、お邪魔するとしましょう。 お前達、着いてきなさい」

 コルネットを操り俺とショウマ君を一緒に入るように促す。


 俺とショウマ君は無言で頭を下げ、コルネットの後を追う。

 現在のコルネットは有線で俺が操っている。 ゴーレムの動きだと何となく動きがぎこちないからだ。

 応接室のようなところへ通され、長いすにコルネットを座らせ俺とショウマ君は後ろに立つ。


「早速ですが、こちらをご覧ください」


「こ、これは?」


「持ってきた商品の一覧及び金額になります。 多くの店舗を回りますので時間を掛けない為のアイディアです」


「そ、そそそそうですか」

 店主は紙を受け取り眺めると、途端に目を見開き俺と紙を交互に何度も見る。


「安い。 と言いたいという所ですか」


「へ、へい、最近の相場はご存知では?」


「それはもちろんですよ。 我々商人にとって情報と言うのはどれだけ大切なものかご存知でしょう?」


「なら、なしてですか?」


「ウルフローナ王家、スノードロップ侯爵、ソメイヨシノ、桜グループなどからの依頼ですから、見返りも相当なものとなるでしょう。 ですので、お気になさらず」


 店主はダンジョンからの物資が来た時用にお金を貯めていたようだ。 かなり大量な発注で少し驚いたが、足らなくなれば亜空間収納から出せば良いだろう。


「店主殿、最後にお願いがあります。 食料の値段は余り高くせず一般の方も買える金額への設定をして下さい」


「わかっちょります」


 他の商店も多く回り商品をどんどん売っていった。 それでも多くの食料が余ったので孤児院などに無料で配ったりした。

 それでもまだまだ余ったので冒険者達に炊き出しを行い、明日の昼過ぎくらいにここを出発しダンジョン都市へ向う事を告げた。

 冒険者達は喜び勇んでダンジョン都市に向う。 多くの者達が食料が届くのだと大々的に言いふらすだろう。

 盗賊方の準備は厳しい事になるだろうが、計画を立てているのだとしたら止めざるを得ない。 そうなると人をかき集め、何とか阻止しようとするだろう。

 最後に領主の屋敷に馬車ごと入り、終了とする。


 ここまで来て問題が1つ、卒業生達だ。

 ただの盗賊なら不可抗力で殺してしまっても、まだなんとかなる。

 しかし、今回は出来る限り生かして捕らえたい。 さて、どうしたものか。

 考えても考えがまとまらず、生徒たちと一番長い時間一緒に過ごしたショウマ君と亀の甲より年の功でタダシさんヨシさんに来てもらった。


「カナタさん、奴らはこの世界で生きていくんだ。 自分で決めるのが一番じゃないのか? 今盗賊と対峙しなくてもいつか対峙しなくちゃ駄目になるわけだし」


「ああ、儂もショウマの意見に賛成だ。 この世界では成人してんだ。 自分でこの先も決めていく為にも、自分で参加するかどうか決めるのが良い」


「自分で決めると言うところは賛成。 だけど、今すぐに盗賊と戦わせる必要はないと思うわ。 捕らえた盗賊を移動式檻に入れたり監視したりさせるのが良いと思うの」


「やっぱりそう思いますか。 じゃあ、自分で決めさせると言うところは決定して、盗賊と戦う前衛、盗賊の攻撃を防御すると共に捕まえた盗賊を移動式檻に移動させる中衛、盗賊からの攻撃の防御と共に捕らえた盗賊を監視管理する後衛、あとは不参加と言うように分類しましょう。

 最後に護衛のミッションは達成と言うところで良いと思いますか? 俺的には達成で良いと思いますけど、どうでしょうか?」


「まだ未達成で良いんじゃないか? 何らかのアクシデントがある事もあるってことで」


 ショウマ君の意見を聞いて驚いた。 ちゃんと皆の事を考えこれから先に起こりえる事を体験させても良いと言ってくれた事に。

 ショウマ君も、大人になってきたんだな。


「儂も未達成が良いと思う。 食料が少ないこの街に来た時、他の班と共同してオークを遠くに狩に行ったりしているから、合格ラインを少し下げるってのが良いかと思う。 旧合格ラインに達していた者達には別に何か与えるってのが妥当じゃないか?」


「私も未達成に賛成。 追加報酬は出来れば消え物であげるのが良いと思う。 不公平感が少しは薄れると思うし」


「了解です。 それなら、調味料セットでも渡しましょうか。 それよりもケーキとか生菓子の方が良いと思いますか?」


「私は生菓子の方が良いと思うわ。 調味料セットだとずっと取って置いちゃう子もいる気がしない?」


「じゃあ、生菓子にします。 どれを渡すかはヨシさんに任せます」


 その後卒業生達を集め話し合いを行った。 生産職メインの冒険者はやはり後衛を希望する事が多かった。

 他の卒業生の一番人気は前衛、盗賊を捕まえ引き渡せば報奨金が払われるからだと思うが心配していたのが馬鹿らしい。

 後衛は生産職メインなので護衛のゴーレムを調整しておこう。

 リョウタロウさんからの連絡でライナが手伝ってくれると言うし、盗賊を包囲網も大丈夫だろう。

 しかし、俺の想像以上の妨害される事もあるだろうし、ない頭を振り絞って色々と準備をしておこう。

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