第308話
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「お待たせ。 開発はどんな感じ?」
「良い感じですよ。 ただ通信機を主体にしていますので、その間PT会話とか出来ませんが」
「それは仕方ないよ。 ちょと試してみて良い?」
「どうぞ」
現在開発しているものは、スピーカー。 ただのスピーカーではなくボイスチェンジャー機能が付いているものだ。
どこぞの名探偵のようにチャンネルで声が変わるとかそんな機能は付いていない。
コノミちゃんとタクミ君が付けるべきだと主張していたが、そんな物を開発している時間がない。
しかも、何番が誰の声か忘れて咄嗟に使えない可能性もあるし。
スピーカーを手に持ち、スピーカーと通信機をリンクさせイヤホンマイクで話してみる。
「あーあー、どう? 声変わってる?」
「もうちょっとそれっぽく話してもらって良いですか? ある程度変わっている事くらいしか分かりません」
「ほっほっほ、どうですか? 私のコレクションは」
「良い感じです、カナタさん。 コレクション云々は意味不明ですが、怪しい商人と言う感じが伝わってきます」
「そうでしょう、そうでしょう。 商人は信用が第一ですから」
「何かあった時用に予備も作っておきますので一旦返して下さい」
通信機とスピーカーのリンクを切り、手に持っていたスピーカーを渡す。
「うん、良い感じだね。 じゃあ、俺はゴーレムを作成しなきゃね」
「お願いします。 僕は、第3者が敵だった場合に備えて保険として色々作っておきます。 と言っても、コノミさんやアカネさんに頼りきりですが」
「大元考えているんだし、良いでしょ。 2人は結構楽しそうだし。 じゃあ、後は任せた」
俺がこれから作るもの、それはゴーレム。 ただのゴーレムではなく人間にかなり近くした人形ゴーレムの商人、ドラ〇エ4の〇ルネコ・タルーンさんだ。
転んだらクリティカルとかそういう性能も付けたいが、そんな時間はないから今回はあきらめよう。
商人のゴーレムは今後も使う可能性もあるのでミスティゴーレムのようにしっかり作る事にしている。
既にゴーレム職人と言っても良いほどのゴーレムを作っているので目分量でも綺麗に作れる・・・顔以外は・・・
頑張って絵を書いてみたり、石像を作ってみたりしたが未だに上手くならない。
コノミちゃんには画伯の才能があると言われて笑われたっけ・・・まぁ、下書きの紙があれば同じように作れるんだし問題はないはず。
この機会にパーツだけ何種類か作っておくかな。 いや、ただ作るだけなんて勿体無いか。
決め打ちで何種類かのゴーレムを作っておこう、戦闘メイドゴーレムとか戦闘執事ゴーレムとか。
あとは、店員ゴーレムも欲しいかな、服はアヤコさんにまた頼むとしよう。
何体かの顔無しゴーレムを作り、アヤコさんに服をコノミちゃんに顔をタクミ君に隠し武器をお願いした。
しかし、自ら考え喋る事はしないので何とかしたいんだがどうするのが良いのかね。
ケイタ君、タクミ君、アカネちゃん、コノミちゃんがいる工房へ訪れる。
「自ら思考するゴーレムですか? 知識の蓄積で人に近い反応をさせる事は可能ですが、人と同じようにするには僕の知識が足りません。 人の脳の構造はある程度把握していますが、脳だけで精神が構成されているかは未だに解っていませんし(以下略) つまりですね、人と同じ処理能力の物が作れたとしても精神までは作れないと言う事です」
5割くらい解らなかった。
「人間に近しい物は出来なくは無いと言う事で良いのかな?」
「その通りです。 しかし、人の行動などを教えるのにもかなりの時間が必要になると思いますので直ぐに出来る物じゃないですよ」
「そっか。 諦めるしかないかな」
「あの、インテリジェンスウェポンとか意識を持っているアイテムを探せば良いんじゃないですか? ファンタジーのような世界なんですし」
タクミ君がおずおずと手を上げて言葉を発する。
「「それだ!」」
俺とケイタ君の声が揃った。
◇◆ リョウタロウ。
冒険者ギルドのマスターはそれだけ言うと護衛を引き連れて二階へ戻って行った。
冒険者ギルド内で呆然と立ち尽くす冒険者達、見ていても仕方がないと話しかける。
「すみません、ブレイブソードのライナを知りませんか?」
声を掛けたリョウタロウに冒険者達の視線が集まる。
「あれ? あなたは、ソメイヨシノの方ですか?」
1人の冒険者が人垣の中から出て来る。
リョウタロウは見た事のある冒険者だと思い顔を見て考える。
少し考えると、八重桜学園で学んでいた冒険者だと言う事に気がついた。
たしか、行商人と一緒に来てそのまま王都モンステラに残った冒険者の1人。
まだ一年経っていなかったけど、卒業したって事は成績優秀だった様だ。
「そうですよ。 と、言っても有名なわけでもない影も薄いほうなので知らないかもしれませんけど」
そう言いながら、リョウタロウはマスクを外す。
「あ! リョウタロウ様じゃないっすか! 商売の神に合えるなんて、俺も運が向いて来たっすね」
「え? 商売の神? どういう事? ちょっと、こっちに来て邪魔になっちゃってるから」
冒険者と共に併設されている酒場に移動し、話を聞く。
八重桜学園でマーケティングや経営について少し話しただけで、商人を志す人から神のごとき見識と言われるようになったらしい。
日本人なら誰でも知っている知識なのだが、この世界では弟子にしか教えない商人だけの知識のようだ。
もっと問いただしたいと思ったが、時間もないのでライナの居場所を聞き情報料を渡しておく。
ライナがいる場所は獣人の探索者ギルドらしい。
獣人の探索者ギルドは種族など関係なく実力で探索者になれる。 ライナは、獣人登録として探索者になるようだ。
獣人の探索者ギルドへ移動する。 獣人の街に入ると人族の街から比べると汚れていないし、排泄物が落ちていないのも良いところだろう。
マスクを外すと、人族だと分かったのか良い顔はされなかった。
思ったとおり、人族は余り良い感情をもたれていないようだ。 だが、迫害をしていないのだからまだ良いと思う。
様々な種族の物乞いが多すぎるのが気になるところです。
ユカさんがここに来た時にどんな反応するか、その事を考えるだけで頭が痛くなる。
カナタさんも大まかな道筋だけではなく細かい事もやってくれると助かるんですけど・・・たぶん丸投げされるでしょうから手を打っておきたいですが、時間がないので諦めますか。
獣人の探索者ギルドに着き、中を見渡すと驚くほど人が多い事が分かる。
その中にも見た事がある顔があり、その全員が完全に武装していので登録待ちと言う事なのだろう。
その中の一人にライナの事を聞くと、模擬戦中なのでもう少しで帰ってくると聞かされた。
昼食がまだだった為、食事をして帰ってくるのを待つ。
程なくして、ブレイブソードの三人が訓練場から帰ってきた。
三人とも笑顔なので合格したのだろう。
「ライナ君、ようやく見つけた。 少し話したいんだけど良いかな?」
「ん? リョウタロウさんか、どうしたんだ?」
「ソメイヨシノからの依頼です。 詳しく話しますのでこちらへ」
「解った。 登録を先にやって良いかな?」
「了解です。 あっちで待っていますね」
ライナたちの事を話し、盗賊の捕縛をお願いする。 盗賊の殲滅ではなく捕縛なので、報酬も破格にする。
雇用する強さなどライナ達に一任して、何人でも雇用しても良いとも伝えておく。
これでリョウタロウは、カナタに頼まれた1つは完了した。 次は兵士達に声をかけなきゃいけない。
あとは夜までにイサオの事、レティア教の事、冒険者ギルドの事、街の事など調べなければならない。
時間など全くないと言って良いほどだ。 早々に探索者ギルドを出て兵士がいる所へ。




