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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
372/406

第304話

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

 もっと食べたそうなフランさんを無視して話をする。


「食事の中に特製のポーションを混ぜていますので、じきに効いてくると思います。 それまで話し合いは休憩としましょう」


「うむ、そうだな。 私もその方が良いと思う。 姉さま、少し休んできて下さい」


「解りました。 1時間ほどしたら再開する。 それでよろしいかしら?」


「うむ」


 ヘデラ侯爵が立ち上がった瞬間に俺が声をかける。


「ちょっと待って下さい」


「何かしら?」


「食事の対価をいただきたいのですが良いですか?」


「やはり人族ね。 対価は金貨で良いかしら?」


「いえ、お金ではなく情報が欲しいのです。 執事さんやメイドさんから話を聞いてても良いですか?」


「ふん、好きになさい。 アスター、英雄様と話しをして、1時間後に迎えに来なさい」


 ヘデラ領主が部屋を移動すると、監視をしていた一番の使い手が移動して行った。

 移動したのに音が聞こえないってのは本当に腕が良いのだろう。


 迎えに来てくれた老紳士の執事さんはアスターさんって言うのか。

 アスターさんは、ヘデラ侯爵に畏まりましたと言い頭を下げる。 アスターさんは俺達の向かいの椅子の脇に立ち自己紹介を始める。

 ただの執事ではないとは思っていたが、内務官を兼務しているようだ。 今回の事情も全部知っている可能性が高い。

 アスターさんに話を聞くため、前の長いすに座って貰う様に促す。

 まず、何故俺達を出て行かせたくないのか。 フランさんの強権を使用して本当の理由を聞く。


「マーテルマルベリー国が戦争の準備を始めているからです。 ソメイヨシノの皆様が人族であるため相手国に行くかも知れない。 それを危惧してリーダーのカナタ殿の身柄を拘束したかったのではないかと」


「なるほど、なるほど。 しかし、ダンジョン都市がまだ健在ですし、戦争にはならないのではないですか? 国同士の魔法契約でダンジョン都市がどちらかの所有にならなければ、ダンジョン都市周辺での大規模な戦闘が出来ないはずですよね?」


「その通りなのですが、マーテルマルベリーにはイサオと言う英雄がついているので攻略も時間の問題と聞いています」


「あぁ、イサオさんか。 1人でも攻略できなくはないかもなぁ」


「お知り合いなのですか?」


「元ソメイヨシノメンバーです。 それは良いとして、攻略するための船の完成は初夏と聞いていますが?」


「早まったとの噂です。 船が完成した報とはまだ届いておりませんが」


「その噂の出所は何処なのですか?」


「ダンジョン都市から来た商人や冒険者達です。 あちらでは、戦争があるという噂も立っているとか」


「そうですか。 しかし、なんでそんな噂が立ったのでしょうね」


「どういう事でしょうか?」


「私がマーテルマルベリー国の人間なら戦争の準備など絶対に知らせたくないです。 急にイチャモン付けて一気に攻めたほうが簡単に落とせると思いませんか? それなら何故噂が立ったのかと思ったんです」


「それは、兵站の関係ではないでしょうか? 戦争の前では一気に兵站の材料でもある食料の値段が急騰しますから」


「そう言うものなんですか?」


「はい、兵を動かすにはかなりの食料が必要になります。 それは何処の国でも同じ事です。 立ち寄れる街で食料を補給すると言っても限りがあります。 そうなれば、国中から食料を集める事になり値段も上がるのです」


「では、急に食料の値段が上がったという裏付けも取れているという事ですか」


「その通りでございます」


 食料の値段の動きで先を予想したって事か。

 食料の値段って結構大切な・・・あ! ウルフローナって食料超インフレ状態じゃん! それを見て勘違いして相手も戦争の準備したって事はないか?


「他の理由と言いますと、家人の数名が入っているレティア教からのリークです」


「レティア教?」


「ええ、最近レティア教の司教殿が王都へ伺ったと聞きましたがお会いにならなかったのですか?」


 ああ、やっぱりムスカリ司教の事か。 でもなんでレティア教がそんな事を言うんだ?


「会いましたよ。 忙しいらしく直ぐに帰ってしまいましたが」


「そうでしたか。 レティア教は、魔物の襲来などの話も信者に広めている所はご存知だと思います。 戦争についても何度か報を広めて信者を救っているのです。 しかも、その的中率はかなり高い」


 ああ、自作自演の魔物襲撃は結構なところでやってたのか。

 そうなると戦争も自作自演? なわけないな。

 そうなると、どうやって戦争をしかけてくるのが分かったんだ? 兵站のために食料が高騰しているだけで言うのもなんかおかしい気がする。

 やっぱり、自ら何らかの工作をしているから分かるって言うのが普通だろう。 いや、予知出来るスキルって線もあるか・・・教会なんだし、神が教えているって線も無いとは言えないよな。


「未来が見通せているって事なんですかね?」


「いえ、そのような事は聞いた事がございません。 人族の殆どがレティア教に入信しているので、そこで出た話ではないでしょうか。 王族にも敬虔な信者がいるという話ですので」


 未来が見通せているわけではないのなら、何らかの工作の線で間違いないみたいだな。

 となると、俺達の足止めの為か? いや、それは無い。 余りにも準備が早すぎる。

 そう考えると、獣人によるダンジョン攻略の遅延が目的か? そんな事をしなくても船さえ出来れば攻略出来ると思ってるんではないのか?

 う~ん、分からん。


「迷宮の攻略が終わり次第、戦争を吹っかけてくる。 それは食料の値動きとレティア教のリークによって予測している。 ここまでは分かりました。 でも、それだけで俺達を拘束しようと思ったんですか?」


「いえ、それだけではございません。 周りの村も盗賊に襲われ、食糧の需給が少ないのが現状です。 ソメイヨシノの皆様は農学にも明るい方が多いと聞きますし、特殊な肥料をお持ちだと言うのも聞き及んでいます」


「ああ、そう言う事ですか。 戦力と食料をいっぺんに手に入れられる最良の手ですね。 そういえば、盗賊が出始めたは何時ごろなんですか?」


「戦争の噂が流れる半年ほど前からになります。 その頃より冒険者達が商人と一緒に移動してくる事が多く、かなりの利益が出ていたので覚えております」


「そこから、食料の高騰が加速したと?」


「はい、その通りでございます。 他にも近隣の魔物が一気に狩られ、冒険者ギルドの壁に長く張ってある依頼も無くなりました」


「それは良いですね。 この近辺の魔物は食べられるものが多いのですか?」


「いえ、殆どゴブリンですので食べる事は出来かねます。 なので、ダンジョン都市からの物資が滞れば食料がますます高くなります。 しかも、近辺の村が盗賊に襲われ始めたのです」


「なるほど、盗賊の登場で食料がますます高騰したってことですか」


 なんか、驚くほどタイミングが良い盗賊だな。 完全にタイミングが良すぎて怪しすぎるだろ。

 そういえば、村人を傷つけるだけで命は獲ってないとか言ってたな。


「その後、人族の商人の食料を購入するしかなくなり資金繰りも怪しくなってきているのです」


「ああ、それで人族が嫌われているって感じなんですね」


「ええ、そのような事で怒ったとしても意味はないのですが」


「今の所判明しているのはこんなものですか? 他に懸念材料などがあれば言って欲しいのですが」


「いえ、今の所はそれで全部になります。 主人になり代わり、お願いがございます。 どうか、どうかスノードロップ領に滞在して下さい」

 アスターさんは椅子の横に移動し土下座をしながら言う。


 俺が苦笑しながらアスターさんを見ている時、通信機にメールが届く。

 メールはリョウさんから全員への一斉送信のようだ。


 盗賊の分隊と遭遇し、盗賊全員確保。

 話を聞いたんですが、盗賊ではなく新人の冒険者と言う事が判明しました。 なんでも、ダンジョン都市で探索者になる為には、お金を納めるか奉仕をしなければ駄目なようです。

 お察しの通り奉仕は、盗賊家業をする事のようです。 先にダンジョン都市に向う予定でしたが、全員ダンジョン都市の1つ前の街に集まりませんか?


 メールを読み終わると、頭を抱えため息を吐く。


「はぁ・・・面倒な事になってるな・・・」

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