第301話
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皆で一気に片付けた事が幸いしたのか、かなり綺麗になっている。
リョウさんが折角ですのでと言って村よりも一回り大きな外周に土壁を作っている。 というかリョウさん、壁とか家の土台とかの大きな物から、石像や食器にいたるまで結構な頻度で作ってる気がする。
まさか、趣味になったんじゃないのか? お金もあるし好きにすれば良いけど。
壁の外が掘りになっていたので、跳ね橋を製作中だ。 ここら辺は俺の趣味と言えるかもしれない。
「カナタさん! 跳ね橋がちゃんと動くか確かめるんですから退いてください!」
タクミ君がチェーンを持ちながら言う。
「あ、ごめん」
跳ね橋の調子をタクミ君が確認している最中にショウマ君達狩猟組みが帰ってきた。
「お帰りショウマ君」
「おう、ただいま。 なんか要塞みたいのが出来上がってるな」
「壁だけね。 中の村はそのまんまだよ」
「ここまで来たら櫓も作ったら良いと思いますよね」
「うお! ビックリした!」
急に後ろから声をかけられ振り向くと、リョウさんがニヤニヤしていた。
「ビックリしたじゃないですか! 心臓止まりますよ」
「不意打ちですよ。 スキルに頼り過ぎないようにと、エミエミさん(ウルフローナの冒険者ギルドマスター)からの依頼です」
「他の人と話してる時にはやめてくださいよ。 リョウさんは壁作り終わったんですか?」
「はい、一通り作り終わりました。 後は掘りに水を入れるだけですが、ミズキさんに頼みましたので直ぐ終わりますね」
「じゃあ、ショウマ君の獲物の血抜きなんかを手伝ってください。 皆にも、使える血は樽に入れておいてって伝えてくださいね。 俺はタダシさんの手伝いに行って来きますんで」
全ての作業は終わっていないが、お昼になったので食事にすることになった。 卒業生達は、自分で持ってきた食事と自分で狩った獲物で食事を作っている。
俺達のわがままで道を変えて貰った訳なので、今回の食事を一緒に取る事を許可した。 だが、卒業生達は到着日に全員で食事したいと言い出し、満場一致でダンジョン都市に到着した日に食事する事が決まった。
と言うわけで、俺達は村人達と一緒に食事をする。 オーク肉を食べるのが初めての村人が殆どで、しかもタダシさん特製・・・美味しくないわけがない。
食べる前に遠慮していた村人も一口食べると一心不乱に食べ始めた。
食事が終わるとお礼に何かしたいと村人達が言い出す。 狙ったのと少し違うが、頼みごとが出来そうだ。
頼みごととは、決して難しいものではない。 ジャガイモを育てて欲しいというものだ。 ジャガイモはウルフローナで人気の食材になっているのだが、周辺の村で余り作っていない。
村では基本小麦を作り税として収めている。 自分達の食事は雑穀である粟や稗、キビ、蕎麦、燕麦などである事が多い。
それならば、ジャガイモにシフトし桜商店に売ってもらい現金で税を納めて欲しい。 その方が利益も大きいし何よりジャガイモの方が作りやすい。
色んな説明はタダシさんにお願いしておけば大丈夫なはずだ。
全部終わり、街道の街に向って移動の最中に皆と話す。
「今回の事で周りの村も見て回った方が良いという事が解りました。 その為、PTを3つに分けたいんですけどどうでしょう?」
「すまん、カナタ。 何故3つなのか教えてくれるか?」
フランさんが手を上げて言う。
「まず、卒業生達を守る本隊、街道の右側の村へ行く分隊と左側の分隊って感じですね。 街の数は違いますけどそこまで問題にならないと思います。 あと簡易テントとして作ってあるマジックハウスの数がこの馬車を含めて3個だと言う事と、余り分散してしまうと危険に対処するのが難しくなってしまう為ですね」
「ふむ、どこに誰が行くかは決まっているのか?」
「まだ決まっているわけではないですね。 ケイタ君ならどうやって分ける?」
「僕ですか? そうですね。 僕なら、男女で分けると思います。 その方が足並みも揃うと思いますので」
ケイタ君はいきなり振られ驚いたようだが、少し考え言う。
「そのメンバーは?」
「ショウマ、タクミ、タダシさん、リョウタロウさん。 ヨシさん、ミズキさん、コノミさん、アカネさんと言う感じでしょうか。 両方とも家を作れるメンバーがいないのでカナタさんに作ってもらって運ぶ形になりますが」
ミスティはヨシさんと、オモチはアカネちゃんと一緒に行動するようだ。
「了解。 今回建てた家を量産して渡すから明日の朝出発で」
その他にも必要な物を話し合いっている最中に街道の街まで到着した。
到着がいつもより遅く、夕方になってしまっていた。 直ぐに王族が乗るような馬車の中のゴーレムのための宿を取り、俺達は明日の準備に取り掛かる。
街の外に一旦出て、今日作ったのと同じような家を量産し皆のマジックバッグにしまってもらう。
皆が手伝ってくれたので、たいした時間も使わずに作る事が出来た。 もう一度、街の中に入り就寝する。
皆が寝ている最中に、農具などの小物を作っていく。 今日の村でも、農具が壊されたりしていたし必要となる可能性が高いしね。
次の日、朝の鍛錬もそこそこに村への分隊であるグループが出発する。
今回は卒業生がいないので、全部一気に魔法を使って出来るから昨日の復興に比べて時間は殆ど掛からないはずだ。
俺は、昨日の小物作りで寝不足になっているので仮眠を少し取る。
起きた時には、既にお昼くらいになっていた。 あら、思ったよりも寝すぎちゃったな。
卒業生達も出発し、次の街へ向っている。
「おはよう。 少し寝すぎちゃった、ごめん」
「いえ、特に問題ありません。 順調に街に進んでいます」
「盗賊出るかな?」
「まだじゃないですか? ダンジョン都市の前が一番狙われるという話でしたし」
「そういやそうだったね。 暇だし、チェスでもする?」
「チェスだと僕が圧勝してしまいますよ?」
「それはどうかな? 暇だしやろう」
俺が得意な戦術はコンビネーション(駒を犠牲にして自分に優位な形に持っていく戦術)だとばれているから、簡単に覆せるのだろう。
ケイタ君は俺に合わせいろいろな戦術を駆使してくる。 得意な戦術はないものの、最後の攻めでミスをしないのがかなりの強みだ。
俺の勝率は35%と言うところだろう。 俺が暴走した時に、皆を軍師として引っ張って欲しいと考えている事からもう少しケイタ君の勝率を上げたいところだ。
その日も襲撃も無く終わる。 村に行った二つの分隊は数個の村を移動したようだ。
盗賊から受けた傷跡はあるものの盗賊は見当たらなかったらしい。 ん~、どういう事だ? 村を襲える位の盗賊なら村の近くに塒などを作る気がするんだが。
しかも、村人が怪我しかしていないのも気になる。 村人を生かして食料の生産を滞らせるのが狙いとか? 盗賊がそんな事をするか? あ~解らん。
結局は考えがまとまらず、寝る事にした。
次の日、ダンジョン都市に一番近い街へ向う。 盗賊も襲ってくる可能性もぐっと高くなるため、俺かケイタ君がずっと外に出る事になる。
俺かケイタ君が外にいればどんな事もある程度対処できるからだ。
ただ歩いているだけと言うのも暇なので、魔道バギーを出して小物を作る。
今回作っているのは、銀のアクセサリーだ。 未だ彫金の心で止まっているので、折角だから上げようと思ったのだ。
バギーに乗りながらだと結構揺れるが、ギフトを上げるだけだし大丈夫だろう。
ペンダントヘッドやネックレスチェーン、指輪、ブレスレット、アンクレット、ピアス、獣人用の尻尾飾り、コンチョや食器などなど作っていく。
移動中だと魔力が流れやすくて作りにくいな。 まぁ、訓練だと思えば良いのかもしれないけど。
そんな時に、ケイタ君が外に出て来た。 交代の時間じゃないのにどうしたんだろう?
「カナタさん。 暇なので森の中へ狩りに行って来て良いですか?」
「うん、了解。 お土産期待しているよ」
特に何も無くダンジョン都市前に街に着く。 そこで、衝撃的な光景を目撃する。




