第300話
ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。
ホワイトキャベッジのキャベツ捕獲作戦は、俺とミズキさんが飛んできたキャベツの勢いを殺しフランさんとショウマ君が受け取る。 という作戦とも呼べないものだ。
フランさんは、ミズキさんと組んでもらったのには訳がある。 それは、魔法技術の差だ。
俺は減速なら出来る位の魔法技術だが、ミズキさんはほぼ勢いを殺す事が出来る。
俺も勢いを殺す事だけを考えれば出来なくはない。 だが、大量の飛んでくるキャベツを傷つけずに勢いを殺せるかと言えば難しい。 解る通り、この差はかなり大きい。
俺の相方はショウマ君なので、そのまま受け取る事も出来そうだし大丈夫だろう。
「と言う感じで良い?」
皆に簡単な説明をすると、全員が頷いた。
ここは、メキャベツ畑なのか? そう思えるほどのメキャベツが蠢いている。 そう、蠢いているのだ。
このキャベツどもは地面の上に根を出し移動している。 移動速度は驚くほど遅いのだが。
少し近づくと、メキャベツたちの一斉キャベツ乱射が始まった。
「ショウマ君、俺達は少し左へ行こう」
「おう!」
勢いを殺したキャベツたちをマジックバッグに入れながらショウマ君と左へ移動する。
それを感じ取ったのか、ミズキさんとフランさんは右へ移動する。
自分達への攻撃のキャベツがどのキャベツだか明確になり、効率も上がる。 しかし、狙い通りに撃ってくるキャベツもいれば、少しずれるキャベツもいる。 これはわざとか? それとも、個体差か? どっちでも良いか。
どんどん回収すると、キャベツが殆ど飛んで来なくなる。 あぁ、なるほど、後ろのホワイトキャベッジは前のホワイトキャベッジが邪魔で撃てないのか。
カーボンナノチューブのリールを出し、一本にナイフを持たせてキャベツを撃たなくなったホワイトキャベッジの魔石を抜き取る。
魔石を抜き取られたホワイトキャベッジはシナシナと倒れ、後ろにいたホワイトキャベッジに踏まれる。
魔石を取ると驚きの勢いで枯れるんだな。
あのホワイトキャベッジの残骸って肥料に使えないかな? 使えるならミスティの星の土地改良に使いたい。
完全に肥料にしちゃうとミスティがこっそり集めちゃうから、肥料が使えないんだよねぇ。
そのまま置いておくだけで、腐葉土みたいな感じになったら良いんだけど。
「カナタさん! もう少し勢いを弱めてくれ。 でないとキャベツが傷つく」
「あ、ごめん。 ちゃんと集中してやります」
大量のホワイトキャベッジは一時間も掛からず倒された。 一番大きいレア種は、ひときわ大きいキャベツを発射して来て驚いた。 ただそれだけの感想しか持てなかった。 最後の1体だったから、俺とミズキさんが二人で魔法を使ったってのが大きいけど。
レアのキャベツは大きく、水で洗ってそのまま食べたが歯ごたえもシャキシャキで瑞々しく驚くほど甘かった。
「かなり良いキャベツだね。 タダシさんに頼んでロールキャベツにしてもらおうか」
「俺は回鍋肉が食いたい」
ショウマ君が言う。
「お好み焼きも良いのではないか?」
フランさんは笑顔で言う。
美味しい食材を手に入れ、笑いながら街へと帰る。 なんか、部活帰りのようだな・・・俺は青春と程遠い学生生活だったけど。
「そういやカナタさん。 あの紐使うのってなんだ? 新しい魔法か?」
新しい魔法と言う言葉にミズキさんがこちらを見る。
「これ? これはカーボンナノチューブを操っているものだよ。 新しい魔法じゃなくて樹の魔法の延長、ミズキさんにもやり方教えたでしょ?」
「はい。 でも、4本も操れないですよね?」
ミズキさんは首を傾げて言う。
「4本は俺でも操れないよ。 この魔道具のおかげなんだ。 簡単に言うとスキルの分身の思考力をゴーレムコアに入れてAIのような擬似人格を作ってるって所かな」
「なるほど、確かに私達では無理かもしれませんね」
「そうだね。 でも、いらないんじゃない? ミズキさんならこんなの使わなくても高火力で薙ぎ払えるでしょ?」
そんな話をしていると街へ到着した。 報告をするために四人で冒険者ギルドへ。
「そんな・・・こんな数を討伐したのですか? 報告が来てたのはほんの数時間前ですが・・・」
受付にいる男性は驚愕した声を出す。
「私達は、いつもこんな風に狩りをしていますので気にしないほうが良いですよ? 所長への報告もお願いしても良いですか?」
「え? あ、はい。 レアもちゃんと討伐記録に残ってますので大丈夫です。 お、お疲れ様でしゅた」
受付の男性は、軽くアマガミをしながらも頭を下げる。
受付の男に近辺の村などの様子や魔物の情報を聞き、冒険者ギルドを出る。
馬車に移動し中に入ると、ダイニングにいる皆に事の顛末を話す。 食べられる魔物だったと言うと、魔物自体より皆は素材に興味があるようだった。
他のメンバーにメキャベツのでかいのを狩って来たと言われたとしたら、俺でも魔物自体の興味をなくすから仕方ないか。
そして、今夜は時間がないので明日にキャベツ料理をする事となった。 食べたい料理名を三位まで書き、一位3ポイント、二位2ポイント、三位1ポイントで1位になった物を明日の晩御飯にすると言う事だった。
早速書いて、皆の答えを見ていく。 ギョーザ、キャベツ入りメンチ、焼きそばか、なるほどメイン食材じゃない物でも良かったのか。
和風ロールキャベツってなに? 味付けが違うだけだからロールキャベツで良いんじゃない? まぁいいや。
そして栄光ある第一位は、ロールキャベツ。 二位は回鍋肉、三位はキャベツの千切り。 和風は圏外だった。 キャベツの千切りは思い付かなかったから書いたようだが、まぁ仕方ない。
その後の夕食でも、キャベツの話をして就寝した。
いつもの時間に起きるとタダシさんが、4つの鍋でロールキャベツを大量に煮込んでいた。 ヨシさんも、後ろの作業台で大量の千切りや様々な大きさに切られたキャベツがザルに入れられている。
「おはようございます。 今日は早いですね」
「おう、おはよう。 なに、折角だから全員のマジックバッグ用に作っておいたほうが良いと思ってな」
タダシさんは、嬉しそうに言う。
奥からヨシさんの挨拶も同時に聞こえてきた。
「俺も手伝いますか?」
「ああ、ならば焼きそばを作ってくれるか? もちろん卵麺から頼む」
「あぁ・・・了解です」
俺は苦笑して卵麺を作り始めた。
朝ご飯はパンとジャムとコーンポタージュで軽く済まし、馬車が出発して料理の手伝いを再開する。
朝ご飯後はアカネちゃんも合流し、4人で料理をし始める。 アカネちゃんの料理の腕が見ない内に上がっている。
なんでも、俺がいない時とかチョクチョク手伝いをしていたようだ。 花嫁修業かな?
そんな事を思いながら馬車は進む。
今回向っているのは街道から少しはなれた村、襲撃があったとの噂を聞きつけ、卒業生達と一緒に訪問しに行く。
馬車は村に到着し、話をすると村長の家の前の広場に通される。 馬車を村長宅前に付け、俺達は村長と軽く話し村長宅を出た。
卒業生の皆は直ぐに動けるように武器や防具を用意して整列して待っていた。
「村長からの了承が得られた。 俺は簡易的な家を建てるから、皆は怪我人をユカさんの所に集める手伝いと近辺の探索、畑の整理や瓦礫の撤去などお願い。 卒業生達は俺以外のソメイヨシノのメンバーに出来るだけ均等に分かれて一緒に行動して欲しい」
「「「「はい!」」」」
全員が揃って声を出す。
これじゃまるで軍隊だね。 俺は少し苦笑する。 他の皆は、自分が何をするのか大きな声を出し卒業生を集め移動して行く。
俺は、亜空間収納にある乾いた木材を取り出し家を作り始める。
今回作る家は、プラモデルのように枠を作り壁を貼るだけ。 これなら直ぐに作る事が出来る。
一応、長く住んでしまう人がいるかもしれないので柱だけは頑丈に作っておこう。
見る見る家が建っていくので村の人たちが驚きの声を上げている。
瓦礫をどかしてくれた場所を魔法で固め家を置く。 その光景を見た村人達は拝み始めてしまった。
あぁ・・・村人に頼みたい事あったけど、逆に頼みにくいな。