第299話
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先頭を走っているのは、入学前から成人していて一年間修行に耐えた冒険者達とスートーグさん率いるエルフの集団。 大荷物をしょっているのに身軽で既に見えなくなってしまった。
二番目を走る俺の依頼を受けた大商店連合と護衛の冒険者達と兵士も速度が速い。 護衛の全員が騎獣のケーミに乗っているので当たり前と言えば当たり前なのだが。
三番目の歩きで向う冒険者や普通の馬車に乗っている行商人や護衛も中々の速度で向っている。
三番目の集団に置いて行かれない様に頑張っているのは他国で成り立ての商人や他国の冒険者達だ。
他国の商人や冒険者は八重桜学園に通っていたわけではないので、他の人たちよりも遅くかなり必死に付いて行っている。
八重桜学園に通う事を勧めたが、授業で一年+冒険者活動や商人活動などで1年の合計2年、ウルフローナ国に拘束される事を嫌って通わなかった人達。
少し前は、八重桜学園に通うと拘束されると宣言していたが書面の契約で特に罰則も無く拘束力は無かった。 だが、俺達がダンジョン都市に向う事をきかっけとして、法が整備され魔法契約をする事を宣言されて施行された。
俺達がいる間に法の改正をしたかった様で、かなりバタバタとした物になっていた。
しかし、今でも一週間は体験入学は出来るのでかなりの人が他国から訪れている。
口減らしがあったり様々な理由で捨てられる子供や行く所がない家族の受け皿にもなるように、冒険者ギルドへ護衛を年に二回だが未だに依頼している。
この依頼はかなり人気があり奪い合いのようになる事もあるらしい。 依頼料が結構高いというのもあるが、チェリーブロッサムでのお食事無料券が付くのも理由のようだ。
先ほど言った他国の商人や冒険者が、必死に走っているのにも理由がある。 卒業生達に近づかないように言ってある為だ。
訓練だからと言う理由だったのだが噂が一人歩きをし、一緒に行動すれば叩き潰すという事になっているらしい。 面倒だから訂正していないし些細な事だ。
話を戻すと、俺達がいるのは最後尾。 金箔で装飾した王族が乗るような馬車の後ろで、移動用マジックハウスの中だ。
俺達の馬車には万が一を考え戦闘用ゴーレムを御者の席に二体置いてあるし、一定距離まで魔物が近づけばアラームもなるように設定してあるのである程度は大丈夫だろう。
未成年で入学し学園を卒業した卒業生達(以下卒業生)は、王族が乗るような馬車を護衛しているので俺達の少し前にいる。
「カナタさん。 馬車の窓から覗いてきたが、ありゃあ騙されるな」
ショウマ君が面白そうに言う。
「ん? 馬車の中のゴーレムの事? それともケーミ型ゴーレム?」
「両方だよ」
「良い出来だったでしょ! 人形劇用にゴーレムを大量に作ったし、教師用ゴーレムや訓練用ゴーレムも作ったから、かなり腕が上がってると思うんだよね」
「本当に驚いた。 生きてるみたいに見えたぜ。 中のゴーレムは戦ったり出来るのか?」
「ある程度なら可能だよ。 オークにタイマンで勝てるくらいの強さかな? 戦闘用に作ってないけど、ある程度の力ならあるはずだから」
「そうか」
馬車の中はカーテンで見えなくなっているが、中に入る人型のゴーレムは作ってある。 しかも旗はウゥルペークラ(狐の獣人国)の物を使用している。
ウルフローナだと有名になりすぎて襲われない可能性があったので許可を取って付けたのだ。
ラスーリ(鼠の獣人国)の物を使っても良かったのだが、ウゥルペークラのリサー姫(リョウタロウさんの婚約者)の方が弱みを握っているので気兼ねなく使える。
外のケーミ型ゴーレムと御者は、馬車を引くためと敵が襲ってきた時のセンサーを搭載したゴーレムなので戦闘力はない。
センサーで戦闘音を感知するか、魔物が一定以上近づけば俺達の馬車に乗っている戦闘用ゴーレムが起動し戦う。 戦闘用ゴーレムが傷ついた場合に俺達の馬車の中のアラームがなる。
そんな仕組みになっている。
移動1日目で何かあるわけも無く、無事に街に到着した。
王都から近い事もあり、しっかりした町並みで商店など結構な賑わいを見せていた。
珍しい食べ物は無く、景気もよさそうなので買い物をする必要もないだろう。 生徒達は色々買い食いをしているしね。
冒険者ギルドの出張所に寄り珍しい魔物の情報などを聞いて見る事に。
冒険者ギルドに入ると数人の冒険者が酒を飲んでいるだけだった。 カウンターでいそいそと書類を整理している受付嬢に話しかける。
特に面白い魔物の情報は無く、適当に街の周りを探索し1日目が終わった。
2日目の移動もつつがなく終わり、街に到着する。 まだ夕方にもなっていない時間だが、今日はこの街に泊まる事になっている。
王都の景気が良い所為でこの街の景気もかなり良いようだ。
冒険者ギルドに向い、面白い魔物の情報を聞いてみる。
「おい、あんちゃん。 流れか?」
受付で話を聞いている時に顔中傷だらけの男に声をかけられる。
耳は殆ど無くなってしまって顔を見ただけじゃ何の獣人かはわからない。 尻尾を見ると猿の獣人のようだ。
「そうですね。 ダンジョン都市に向う冒険者達に紛れて移動して来たものですよ」
「なるほどな。 王都にいたのであれば、結構な腕なんだろ?」
「クランのメンバーの中だと5番目くらいですかね」
「そりゃ強いのか弱いのかわからねぇじゃねぇか。 どの位の強さなんだ?」
「ん~ちゃんと測った事ないですけど、この国を1人で滅ぼせるくらいですかね?」
「は? がっはっはっは。 そう言う冗談は嫌いじゃないぜ。 今からホワイトキャベッジのレアをもう1度調査ついでに狩りに行くんだが、一緒にどうだい? 報酬は働き次第って事で」
「ここら辺にホワイトキャベッジがいるんですか?」
「ああ、最近芽を出して配下のホワイトキャベッジを増やしながら移動している。 俺達が第1発見者で第1回目の調査の報告に来たって訳だ」
そんな話をしていると、冒険者ギルド出張所の奥の扉から厳つい獣人が出て来てカウンターの前に出て来た。
傷だらけの男と冒険者ギルドの所長が話している。 王都に助けを求めると言う事で決まりそうだ。
「あの、ホワイトキャベッジを俺達に回してもらえませんか?」
「ん? 君は誰だね?」
冒険者ギルドの所長がしかめた顔で言う。
「私は、こういう者です」
俺は笑顔で冒険者ギルドカードを出す。
「「はぁ? 1級?」」
2人は声を揃えて驚く。
「まぁ、それはたいした事ではないので良いんですけど」
「大した事だろ! バカ野郎! あ、いえ、スミマセン」
傷だらけの男が突っ込みをいれる。
「それは気にしないでください。 冒険者ギルドとしても1級なら申し分ないはずです。 発見していただいた貴方にはそれなりの代金を支払います。 これで誰も傷つかない! 良いですね」
2人は特に異論は無く、傷だらけの男は魔物の所まで案内してくれる事となった。 代金は帰ってきてから所長が渡してくれるらしい。
移動中ずっと暇だと呟いていたショウマ君、フランさん、危ない魔法を作ろうとしていそうなミズキさんを連れて魔物狩りへ出発する。
フランさんが気づかれると面倒だと思ったので、いつもの装備じゃないのを着て来て貰っている。 そのお陰で気がつかれる事はなかった。
走る事1時間ほどでホワイトキャベッジ数体と交戦している冒険者を発見し、手助けをし殲滅する。 怪我をした冒険者には回復魔法をかける。
傷だらけの男のパーティメンバーだったようで、受けた恩は必ず返すと言って非常に感謝された。
足手まといになるからと、傷だらけの男のパーティーは街まで戻るようだ。
「今回の組み合わせを発表します。 俺とショウマ君、ミズキさんとフランさんでいきます。 俺とミズキさんが発射されたキャベツの勢いを殺し、ショウマ君とフランさんは回収。 キャベツ全部回収し、敵を殲滅。 キャベツは全部発射させてから回収します、良いですね?」
ホワイトキャベッジは巨大なメキャベツのような見た目の魔物で、攻撃方法は2つ、キャベツ砲と根を尖らせて地面に突き出すものだ。
近距離にいれば根の攻撃しか来ないので、1体ずつなら楽に狩れる。 しかしキャベツが生った状態で倒すと、キャベツが萎れて食べられなくなる。 無理やりキャベツを取っても同じだ。
つまり遠距離から攻撃をして飛んできたキャベツを取るしかないが、飛んでいるキャベツは魔力がコーティングされかなり硬いし何かにぶつかると駄目になる。
つまり余り出回らない高級食材で、ダンジョン都市の攻略が終わった時に取りに行く予定だった食材だ。 取りつくしてやる!