第297話
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「どうですか? 魔法が突き抜けないように発動距離で強制的に魔法が消えるように改良したんです。 その分魔力を使いますし周りへの防御に手が回らなくて殆ど無防備になってしまうんですけど、威力だけは凄くないですか?」
ミズキさんは嬉しそうに魔法の説明をする。
「いや、まぁ凄いね。 横に撃つとかなりの距離で地形を変えかねないもんね」
「ですよね、ですよね。 魔法を撃った後に強制的に吸収して消してしまう手も考えたんですけど、マイクロブラックホールだと吸収し切れなくて。 光に逆位相の波の魔法ををぶつけて消してるんです。 その所為で私でも1回撃つと魔力切れなんです」
「光が逆位相で消せたりするの? まぁそれは良いや。 しかし、魔力使いすぎで使い勝手が悪すぎでしょ。 それにしても、どうしようかこれ」
俺は溶岩のようになった地面を指差した。
「凍らしておけば良いんじゃないですか? そうすれば危険が減りますよ」
「うん、それはそうなんだけど。 原因ごと吹き飛ばしちゃったでしょ? 何が原因でアンデッドが出てきたかの検証出来なくなっちゃったから」
「あ!! そうですね・・・ど、どうしますか? 何とかなりませんか? カナタさん」
ミズキさんが慌てている。
「なんか変な魔物が出てこようとしていたから危険だと判断して撃ったのは理解できるから仕方ないと思う。 俺もなんでこんなにこつこつと敵を倒していたのか説明はしていなかったしね」
「カナタさんはこの騒動が人為的なものだと考えているんですか?」
「100%ではないけどその可能性があると思う。 昼間にアンデッドの集団が来るのもおかしいし、聖職者が来たタイミングってのもなんか変だよね。 聖職者ってアンデッド退治とか生業にしてそうだし」
「そう考えてみたらタイミングが良すぎますね」
「でしょ? だから人為的な物かどうか調べたかったんだ。 もちろん、何らかのモノが重なった不幸な自然現象って事もあるかもしれないけど何となくタイミングだけを見るとなんかね。 やっちゃったものはしょうがないから片付けをして、近くにいるアンデッドを狩りながら戻ろうか」
俺とミズキさんは溶岩を凍らせ周りをある程度索敵し、倒れているアンデットから魔石だけ取り固まった溶岩の上で死体を焼きウルフローナ方面へ空を飛び移動した。
そこでは大規模の戦闘が未だに行われているようだ。
「ミズキさん。 魔物が大量にいるけどなんか聞いてる?」
「いい機会だから兵士と冒険者で連携し戦闘訓練をすると大将軍(ウルフローナ王の兄)さんが言ってました。 なので正面に来ている敵だけは倒さないようにしています」
「そうなんだ。 ってか、俺に言わないと不味かったんじゃない?」
「言ってませんでしたっけ?」
「言ってないよ。 というか、こんなに取りこぼした覚えはないんだけど」
「アンデッドの所為で魔物が群れを成して人里に向ったみたいなんです」
「あぁ、なぜか魔物は人を優先して襲うからこうなったって訳か。 しかし、発生源が中心だと考えると円のように逃げる気がするけど、何でここにこんなに集まってるんだろう?」
「それは解りません。 敵の敵は味方とかそんな感じではないですか?」
「解らない物は解らないか。 とりあえず、あそこにヴォルスト(大将軍の名)さんとフラン様がいるから挨拶していこうか」
「カナタさん。 いつも思ってたんですけど、フランちゃんだけ何で様付けなんですか? 王様はティンバーさんって呼んだりしてましたよね?」
「命の恩人だからかな? 深い意味はないよ。 まぁショウマ君と付き合うっぽいから呼び方はどうにかしないととは思っているけどね」
「仲良いですよね、あの2人」
「ね。 さっさと付き合えば良いのに」
大将軍とフラン様に挨拶をして手伝った方が良いか聞きに行く。
近づくとエリカ・ストック・ムスカリ司教がケーミに乗り女騎士達と共にいるのが解った。
やはり魔物を大量に溢れさせ、魔物の討伐を手伝い信用させ便宜を図ってもらうと言うのが常套手段のように感じるが、どうなんだ?
オモチが調べられていたら良いが、緊急事態だからアカネちゃんの所に行っているだろうから望み薄なんだよなぁ。
大将軍とフラン様に挨拶をして、手伝った方が良いか聞くと手伝いは要らないとの事だったので、司教に挨拶に行く。
「こんにちは、ムスカリさん。 手伝いに来ていただけたんですね」
「え? え、ええ、手伝う必要は無かったようですが」
司教は驚きの表情をして答えてくれた。
「そうですね。 私も空から見てましたが連携もしっかりしていましたし、怪我をした人が交代するのも素早く無理をしていないのが良いですね」
「空から? ですか?」
「ええ、私達は全員空を飛べるんですよ。 魔物が現れている場所から飛んで帰ってきたんです。 ほら、飛んできますよ?」
飛んできたのはタダシさんの様だ。 タダシさんは、空を飛ぶのを嫌がっていたが1度飛んでしまえば楽しかったようでこっそり練習するのを見た事があったりする。
タダシさんに手を振ると気がついたのか降りて来た。
「カナタ、ミズキ。 無事だったか」
「はい、怪我も無く無事ですよ」
ミズキさんも「はい」と言いながら頷く。
「そうか。 原因はわかったか?」
「調べたかったんですけど、やばそうなのが出てきたから吹き飛ばしちゃいました」
「そうか、怪我がないのが1番だ。 儂は戻るが良いか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ戻る。 カナタ、ミズキ、出来れば通信機をALLにして皆に報告を頼む」
タダシさんはそれだけ言うと空を飛び門へ向う。
通信機、そういえば2人だけの状態にしてそのままだったっけ。 そんな事を思い、通信機をALLに変更する。
全員に中心を原因ごと吹き飛ばした事を報告し司教に話しかける。
「すみません、皆に報告していたので」
「え? あ、はい。 あの、それで連絡が取れるのですか? そんな小さい物で?」
「そうですよ。 使える人は限られますけどね」
「あの、どなたが使えるんですか?」
「ソメイヨシノの全員が使えます。 誰でも使える物も開発して何個かありますよ」
「それは買えますか? 欲しいのですが」
「販売はしてないんです。 マジックハウスと一体化してますし、他の魔晶石とも繋がっています。 しかも、取り外そうとすると魔法陣が消えるように作ってありますので盗む事も不可能です。 ウルフローナの街を丸ごといれる事が出来るマジックバッグがあれば話は別ですけど」
「そ、そうですか。 あと、中心を吹き飛ばしたと聞こえたんですけど・・・」
「ここから光が見えませんでしたか? その光が吹き飛ばした時に出た光です」
「え? え? 本当ですか? 魔法なんですか? そんな魔法あるんですか?」
「オリジナルです。 使い勝手は決して良くないですけど」
「そ、そうで・・・え? オリジナル? 魔法を作ったと言う事ですか? え? どうやって?」
「内緒です。 それで質問なんですが、アンデッドがここまで出てくる事ってあるんですか?」
「ダンジョンの氾濫ではたまにあります。 書庫で高位のアンデットやヴァンパイアなどでも同じことが起こったと言う記述がある書物もありましたが」
と言う事は、人為的の起きたか自然的に起きたかはますます解らなくなったって事か。 話しに矛盾もないし、表情も変な所はないし自然現象の線が濃厚って感じか。
「なるほど、そういう事もあったんですね。 今回のアンデッドは自然発生と思いますか?」
「そうかも知れませんが、余りにも魔物の数が多いので人為的に発生させたと考えられなくはないと思います。 アンデッドを生み出す魔道具や魔物を呼び寄せる魔道具などもダンジョンから発見されていますので」
「そうですか。 なら、中心地を吹き飛ばしたのは痛手ですね」
話にも矛盾も無く、表情や態度も変な所はない。 目の動きも過去を思い出す形となっているし・・・正直、司教達がやったとは思えない。
だが、状況的にはおかしい。 なんかモヤモヤするな~。