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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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第292話

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

「ムスカリさんもいかがですか?」

 俺はテーブルの上にお皿を戻して言う。


 俺の物言いに少しピクリと反応するが、すぐに返事をする。 やっぱり、様もしくは役職で呼んだ方が良かったみたいだな。

 自己顕示欲が強いのか?


「ありがとうございます。 いただきます」

 司教は軽く頭を下げさらにゆっくり手を延ばす。


 司教は手を皿の縁にコンと当ててからプチシューを取って口に運ぶ。

 ん~、動きから言って目が悪いのか? 1人で歩けるから盲目って事はないと思うが・・・


「美味しいですね。 周りはサクサクしていて中にはトロッとした物が入っている。 こんなに美味しい物がここにあるなんて」


 美味しい物がここにあるなんてか。 この国を下に見ていたって事は把握できたな。


「最近売り出したものなんです。 材料が日持ちしないので持ち運べないのが難点ですが」


「持って帰れないのですか、残念です」


 反応から見るに、持って帰りたかったのか? 家族がいるとか? 待っている人がいるとかか? まぁ宗教と孤児院切り離せないから、誰かしら待ってる人がいるって考えたほうが良いだろう。


「パルメントさんがマジックバッグを販売し始めたので購入できれば持ち帰れると思いますよ」


「そうなんですか!? 情報提供ありがとうございます」


 詳しく聞いて来ないな。 聞いた方が早いと言うのに、何を考えているのか解らん。

 お茶を取ろうと手を延ばし、1度失敗した。 やはり目が悪いようだ。


「早速話を進めますが、何をしにここへ?」


「単刀直入に言いますと、ユカ様を迎えに来ました」


「迎えに来た? と言う事は強制的につれて帰ろうとしているわけではないのですね」


「ええ、強制的に連れて帰ろうと思っているわけではありません」


 うわぁ、思考が読めない。 目線も変わらないし口調も一定で本当にやりにくいな。


「そうなんですか。 しかしユカさんは迷っているようなのであなた方の国の事を教えていただいても良いでしょうか?」


「はい、喜んでお教えします」


 教えてもらった話しは長かった・・・要約するとしよう。

 まず、レティア教は国ではない。 人族の国の殆どと各国に信者がいる大きな団体のようだ。

 教会本部があるのは人族の国の中心付近にある国で各国に支部のようなものがあるらしい。

 そう、各国に支部がある・・・鹿人族が暮らしていたところを侵略したアーテルマルベリーにもあるってことだ。


「マーテルマルベリー国から鹿人の国への侵攻についてお訊きしたいのですが、レティア教としてはどのように考えているのでしょうか?」


「人々が苦しむのを見るのは大変心苦しく思います。 しかし、私どもはどのような方にも平等に接するようにしていますので、マーテルマルベリー国を含めた各国に何かを言う事が出来ません」


「今の仰りようだと、救済はしないと聞こえますが?」


「そのような意味ではありません。 逃げてきた人々の保護はしますが、抗議などをして咎める事はしないと言う事です」


 逃げてきた人を保護か。 簡単に言うと黙認していると言えるかもしれないな。 まぁ、俺達も自分で探し回って何とかしているわけじゃないから何も言えないが。


「では何人ほど保護しているのでしょうか?」


「支部は各国にあるので何人かまでは把握しておりません。 時間をいただけるのでしたら人数を確認する事は可能ですが」


 本当に淡々と言うな。 まるで俺が何を質問するのか解っているみたいじゃないか。


「そうですか。 こちらでも奴隷に落ちたりしている人をここに呼んでいるのです。 家族などの可能性もありますので、迎えをそちらに向かわせれば引き取ってもよろしいですか?」


「どの位の人数がいるのか、ちゃんと鹿人の国の者か確認するのにかなりの時間がかかりますので直ぐには無理かと思いますが、出来る限り尽力する事は出来ます」


 なんだろう? なんかイライラすんだよなぁ。


「では、お願いし・・・」 「ヒィ!」


 俺がお願いしようとした時に司教が短い悲鳴を上げ自分の体を抱きしめガタガタと震えだした。 一瞬キョトンとしたが、すぐに何が原因かわかった。


「セードルフ、今日の封印解除しての鍛錬はタクミ君とショウマ君とコノミちゃんとアカネちゃんで良かったっけ?」


「はい、その通りでございます」


「この感じはタクミ君だと思うんだ。 封印をちゃんとしているか聞いてきてくれ」


 セードルフが出て行って数分で大量の魔力の流れが収まった。 この反応からして、ムスリカ司教は魔力を感じれる人、もしくは魔力眼などのスキルを持っていると推測できる。


「もしかして、魔流眼もちですか?」

 俺は微笑みながら司教に聞く。


「どどど、どうしてそれを?」


 動揺が激しいな。 予定にない問いなのか、ショックから立ち直っていないのか。


「私とユカさんも持っているんです。 便利ですよね。 魔素の流れもある程度解りますし」


 魔流眼は視界が完全に遮断されても、霧の中を見ている感じである程度なら形を確認する事が出来る便利な能力だ。 まぁ、視界が完全に遮断されているとなんとか2m程度先が見えると言うところなので万能って訳じゃないけど。

 未だに驚くほど動揺しているな。 いきなり馬鹿でかい魔力を目の当たりにしたからだろうけど。


「ずっと疑問に思っていたんですが、何故この時期に無理をしてまで来たんですか? まだ道に雪が残ってますよね?」


「え? え、あ、はい。 急いでいたからです」


「急いでいた? ユカさんを連れて帰れるか解らないのにですか?」

 俺はにっこりと笑い聞く、司教はしまったと言う顔をする。


「その顔から察するに、ここに来る目的が複数あり1つがユカさんを連れていく事だったと言う事ではないすか?」


 俺の問いにますます顔色が悪くなる。 ユカさんに会いに来ると言う名目で、この国を調べに来たと言うところか?


「ユカさん以外でこの国の視察となると・・・新薬ペニシリンですか?」


 司教はピクッと動き反応する。 解りやすいな、折角だし色々質問するか。


「エリカ司教様。 体調が優れないようなら退席された方が良いのではないでしょうか」


「そ、そうですね。 ユカ様も迷っているという事ですし今日はお暇させていただきます。 1週間ほどは滞在しますので何かあればご連絡ください」


 そそくさと部屋を出ていく司教達。

 最終的にはバタバタしたけど依頼達成で良いのかな?


「オモチ、出てった奴らの馬車の会話を聞いて報告して。 アカネちゃんには俺から言っておくから」


「了解ですにゃ」


「すっかりオモチちゃんは、カナタさんの従魔のようになってますよね」


「まぁ俺達に何かあればアカネちゃんにも被害が来るから良いんじゃない?」


 俺の言葉にユカさんが苦笑していた。


◇◆


「あぁぁぁぁぁぁ、失敗した失敗した失敗した失敗した」


「エリカ司教、落ち着いてください」


「落ち着けるわけないじゃない! ランジアになんて言えば良いのよ!」


「まだ全てを知られた訳ではありません。 最低でもこの国との流通の確保をできればいいのです」


「解ってるわよ! でも、あんな化け物がいるなんて聞いてない! 何なのあの魔力量、最低でも成龍クラスはあるわよ。 しかも、魔流眼を持っていてあんなに落ち着いているなんて・・・下手すればソメイヨシノ全員があんなのの可能性も考えないと・・・」


「そこまでですか? リーダーは、胡散臭いとは思いましたが」


「リーダーのカナタだっけ? 私もニコニコしてて、いけ好かないと思う。 でも、ああいう奴はヤバイよ。 目線や行動を逐一観察してくる奴なんて初めて会ったもの」


 司教の話しに押し黙る騎士。


「にしても、1番楽だと思った聖女の篭絡が失敗するなんて・・・考えを改めないと駄目ね」

携帯で書いたものを直して投稿していますので変な所があれば教えてください。

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