第290話
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「あはははは。 ついに、ついに来たぞ。 俺の時代が!」
俺は何処かの卓球部の田辺さんをリスペクトした動きをする。
「あぁ・・・興奮して懐かしい動きをしてしまった。 おお! やっぱり凄い! 半自動で動くのはありがたい」
俺は、近くにいるゴブリンの首を切り落としたのが解り呟く。
俺はミスティと2人で外に出て、念願だったファ◯ネルを試しているところだ。
この◯ァンネルの見た目はフライフィッシングのリールの中心に魔晶石が付いたものを想像してもらうのが早いと思う。 回転部分は2つ付いていて2本のカーボンナノチューブを動かせる。
また、自分の分身のスキルを魔晶石に組み込む事で半自動制御で動いている優れもので、ずっと魔力を供給するわけではないと言う点も自画自賛したい。
ギフトの索敵とあわせる事で範囲の魔物を指定すれば勝手に狩る事は出来るし、狩った魔物を引っ張って亜空間収納の範囲に入れば自動回収も出来る。 マジックバッグを持たせれば遠くで回収する事も可能だ。
亜空間収納のギフトの範囲が自分を中心に2mくらいしか範囲がないためにこんな面倒な事になっている。
ファンネ◯に亜空間収納のギフトを付属させようとしたのだが、魔晶石の容量がいっぱいで入らなかったのだ。
その他のデメリットは、分身が動かしているカーボンナノチューブから魔法を使用すると、魔晶石に溜まっている魔力が無くなりカーボンナノチューブが全く動かなくなり、魔力補充を瞬時にしても再起動に1分ほど時間が掛かること。
ギフトの索敵範囲外から攻撃が飛んできた時は勝手に防御するところまでには成っていないので超遠距離からの不意打ちや隠伏などのスキルを持った魔物による死角の対策も必要となることだ。
ギフトの索敵の範囲の中に敵がいた場合は勝手に警戒してくれるのだが、魔晶石から前面に120°範囲から攻撃が来た場合でなければ自動で動き防御が出来ない。 この範囲設定は自分で決める事が出来るので、装着してから自分の動きを確認し調整しておこう。
先ほど考えた魔晶石の容量の話に戻ろう。
現在のスーパーダイヤが直径3cm位のラウンドブリリアンカットだ。 魔晶石の容量は大きさやカットの方法で容量が少し増えるようなのだが、増える量が本当に僅かなのだ。
カットの形を変えればもっと増える可能性がないとは言えないのだが、参考になる宝石がヨシさんが持っていた婚約指輪だけだったからこの形になったと言える。
結婚指輪を着けているのは見てわかっていたが、婚約指輪を何故持ち歩いていたのかはヒミツらしく結局聞く事が出来なかった。
話を戻すと、直径1m位の魔晶石を作り出せば亜空間収納のギフトを付属出来るようになる可能性もあるのだが、そんな大きなものをどうやって作ればいいのか見当も付かない。
今使っている3cmの物でさえ二月くらいコツコツと材料を作り出したと言うのに・・・
まぁいい、今のスーパーダイヤの魔晶石で動かせるカーボンナノチューブの数は2つ。 3つにしてしまうと全部の動きがぎこちなくなるので増やすのは得策と言えない。
最低でも後1つくらい魔晶石を作って4本を自在に操るようにしたいものだ。
「貴方様。 何かございまして?」
俺の隣にいたミスティが上目使いで小首をかしげて言う。
こう見ると本当に美少女なんだよなぁ。 まぁ自分で作ったものだから隅々まで知っているわけだけど。
「いや、あと2本くらいは操れるようにしたいなって思ったんだよねぇ。 あ、ミスティにも作ってあげようか?」
「いりませんわ。 ワタクシが同じような事をするとしたら、その辺にある木をそのまま使ったほうが効率良いんですもの」
「ああ、そういやそうだね。 木の精霊と言えるんだし、そのくらいは出来て当然だろうね。 他には土も操れるんだっけ?」
「そうですわ。 私が得意と言える魔法は土と木ですわね」
「そっか、他に適任とかいるかな?」
「それなら、アヤコ様が良いと思いますわ」
「アヤコさん? 何で? 植物の心を持っているヨシさんかタダシさんの方が良いんじゃない?」
「ヨシ様とタダシ様は確かに使えないとは言えないですけど、ワタクシと同じ事を既にやっているですわ。 それなら、アヤコ様に教えたほうが言いと思いますの。 植物を原料にした糸を使用して服を自在に作り出している方ですし、カーボンナノチューブも材料は植物、同じように思い込む事が出来れば使えると思いますの」
タダシさんとヨシさんは剪定作業の時枝を効率よく動かしたりなんだりをしていたなぁ。 そう考えるとアヤコさんのほうが良いかも知れないな。
「なるほど、カーボンナノチューブで服作ってもらった事もあるし出来なくはないかな」
現在アヤコさんが1番戦闘能力が低い。 戦力の底上げと言う事でもかなり有効だし、戦闘で迷惑をかけるかもと言っていたアヤコさんの悩みも解消できる。 まさにwinwinということだ。
しかし、俺以外スキルを覚えた人は1人もいないから分身は覚える事が出来ないかもしれない。
自分が操るカーボンナノチューブからなら魔法を送る事が出来るしリーチや戦闘の幅がぐっと増えるだろう。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「ええ、報酬を楽しみにしていますわ」
「前に食べた善哉でいいんでしょ? 俺のお餅が余っているから、それも入れてあげるよ」
「いいんですの!? 白玉善哉とお餅の善哉の両方を食べれるなんてまさに至福ですわ。 さっさと帰って作ってくださいまし」
「はいはい、屋敷に向けて出発」
駆け足で進み、門の前で雪かきをしている兵士に声をかけ労い門の中に入る。
門の中は火の魔法の練習で全て溶かしてから雪は全く残っていない。 今年は雪が少なかったと言うのもあるかもしれないが。
すれ違う人達に手を振り声をかけ屋敷に到着すると、人混みが出来ていた。 人混みに声を掛け通してもらうと、屋敷の前にはハーフプレートを着た騎士風の人と馬車が停まっている。
馬車についている旗は、剣に猛禽類の翼が書いてあるものだ。 獣人の国の貴族の紋一覧を書いてもらって一通り見ていたが知らない紋だ。
もしかしたら忘れているだけって可能性もないとは言えないのだが。
「すみませ~ん、ここで何をしてるんですか?」
俺は近くの騎士に尋ねる。
「ん? あぁ、ここに来たのは聖女様と呼ばれる方がいると聞きつけてきたんだ。 我等の導き手の聖人様が気になっておられてね」
騎士は丁寧に答えてくれた。
女の人の声? 騎士なのに女の人がなるってのは珍しいんじゃないか?
「ふ~ん、教えてくれてありがとう」
それだけ言うと、屋敷に向かって歩き出す。
「そこの少年! 少し待ってくれ」
少年? って俺? 不思議そうな顔をして振り返り、自分を指差して首をかしげる。
「そうだ。 君だ少年。 屋敷に向かって歩いていくと言う事は関係者か使用人だろう? 何とか聖女様と連絡が取りたいのだ、中の人に伝えてくれないか? 謝礼もする事を約束しよう」
なるほど、日本人顔は若く見られやすいのはここでも一緒か。 しかし、少年はないと思うけど・・・
「中にいたら聞くだけ聞いてきてあげる。 会う会わないは本人しだいだと思うけど」
「ああ、すまないが頼む」
馬車と騎士達の脇を抜け、屋敷の中に入るとセードルフが待ち構えていた。
挨拶をし話を聞くと、俺が出て行ったすぐ後ほどから馬車は停まっているらしい。 かれこれ3時間くらいか?
ユカさんは俺が帰ってきてから騎士達と会うつもりのようで待っていると言う。
結局、俺は巻き込まれるのね。 まぁ、聖女の名を借りて魔物を乱獲したりしてるから自業自得と言えるんだけど。
話を進めながら、サブも書いているので時系列が滅茶苦茶になったらスミマセン。
変なところがあれば教えてください。