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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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白い悪魔(2)

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

 本当にガリガリで色気もそっけもなかったあの女が、ここまで綺麗になるとは・・・

 まじまじと全身を見て、また驚く。 本当に綺麗だ・・・


「あ・・・あの・・・あのね。 挨拶、そう挨拶したかったから声かけたんだ。 そ、それじゃあ」

 そう言うと、後ろを向き走って行ってしまった。


 走って追いかけ引きとめようと考えたが、この後の話し合いを聞かなければならないと思い、留まる事にした。

 全員食事を終えたタイミングで、話し合いと言うよりも俺達の質問に答える説明会に近いモノが開催される。


「まず、ここがどこなのか気になっていると思うので、それから話そう。 ここは、人の住む街だ」


 代表の言葉で俺達に激震が走る。 人の住む街、それは俺達魔物とは違う種族。

 魔物は、人に倒され安寧を得られるとされているが真実は解らない。

 少なくても俺は殺されたいと思った事などない。 たぶん、皆もそうに違いない。

 しかし人は俺達を殺すときがある。 食べるためではなく、自身が強くなるために。


「ここが人の街だとして、何故俺達は狩られていない? 人は俺達を倒すと力を得られるんだろ?」


「確かに私達は生まれたときにそのような知識を得ている。 しかし、ここの人は・・・いや、女神様は我々と共存を望んでいるとの事だ」


「女神とは? 人が崇めていると言う羽付き人の事か?」


「いや、女神様は白き獣を使役なさっているお方だ」


「白い悪魔!?」 「やばいんじゃないか?」 「どうなるんだ?」

 周りがザワザワと騒ぎ出す。


 俺もその言葉を聞いて驚きを隠せない。 確かに俺達は殺されずにここに連れて来られた。

 しかし、相手の気分しだいでどうにかなってしまうと言う事だ。 そんな曖昧な場所に居たいとは思わない。

 それを看過しているこいつらはどうかしている。


「相手の気分で殺されても文句は言えない・・・などと考えているんじゃないのか?」


 代表は俺達が危惧した事をピタリと当てる。 そのくらい出来なくては代表とはいえないだろう。


「その点は大丈夫だ。 女神様や他の人達は、我々が生むダミー卵を欲している。 我々がダミー卵を産めば衣食住、魔物や人から受ける脅威から守ると約束している」


「その約束が反故される可能性はないのか?」


「可能性は絶対に無いとは言えない。 だが、今までのように我等を食らうゴブリンのような魔物に怯え、ただ殺してくる人に怯え、食料も少ない壁の外で暮らすのか? 私は第2世代でここの暮らししか知らないが外の暮らしは聞き及んでいる。 どうするかは暮らしてから決めれば良い」


「待て! まさかと思うが外に出れるのか?」


「出れないわけが無いだろう? 人達は我々を保護しダミー卵を欲している。 無理やりに監禁したりはしない。 どうしても外に出たいと言うものも居たんだ。 外に出て1日も経たずに人に縋り運よくここに帰りついた者もいた。 大半の者はどうなったかは解らないが」


「人に殺される可能性を無視してでも、ここに帰って来たいと言う者が後を絶たないユートピアだと言いたげだな」


「その通り、ここはユートピアなのだよ」


「簡単に言うと軟禁じゃないか。 それがユートピアとは聞いてあきれる」


「そう思うのは勝手だが、実際にそうなのだから仕方がないだろう? それとも、魔物の流儀に従い強い者が正しいと解らせたほうが言いかな?」


「外の世界で生き延びた事もない甘ちゃんが、いっぱしの口を利くじゃないか。 いいぜ、その挑発乗ってやる」


「ふ・・・こちらの準備は既に出来ている。 準備が出来次第声をかけてくれ」


 魔物の脅威も人の脅威もないこの地で生まれ育った甘ちゃんが強いわけがない。 だが、代表だと名乗っている以上、他の奴よりは強いと言えるのだろう。

 準備を怠ってしまって足元をすくわれる事もあるだろう。 腹ごなしも兼ねて入念にストレッチをして羽や体毛を整える。

 そうやっていると、彼女がこっちにやってきた。


「ねぇ、あなたが強い事は皆知っている。 だって、ゴブリンを追い返した英雄だもん。 でも、そんなあなたでも彼には勝てないわ」


「そうか」


「え? 何で勝てないか聞きたくないの?」


「聞いてどうする? 外の世界では急に戦わなくちゃいけない事も多く、相手の特徴や得意技など知らない事が普通だろう?」


「あなたってば本当に・・・(どうしようもない魔物ね)」


「本当に? なんだ?」


「いいえ、何でもないわ。 貴方が勝てる事を祈っているわ」


「ああ、美しい女神に言われたら負ける訳にはいかないな」


「も! もう! じゃあね!」


 彼女はむくれながら行ってしまった。

 少しユーモアが過ぎて怒らせてしまったかな? まぁいい、体をほぐす事に専念しよう。


「待たせたな。 戦闘はここで行うか?」


「いや、向こうに広場があるそこに行こう」


 場所は森のすぐ前の広場、相手が参ったと宣言するか、気を失うか、戦闘が継続できないと判断されるまで行われる。

 審判は2匹、おっちゃんと第2世代と行っていた奴の1匹。 自分の方が強いと思っている代表は不正などはしないだろう。

 俺が立ち位置を決め、戦闘は開始となる。 俺は後ろにジャンプし構える。


「口だけいっぱしで怖気づいたのか!?」

 代表はそう言うと、かなり速い速度でまっすぐ此方に駆けて来る。


 やはり強さに自負はあるようだ。 速度を見る限り身体能力はこちらの方が不利であろう。

 そう、だからこそ! だからこそ隙が出来る! 俺が先ほどいた場所を通った瞬間、足をもつれさせ代表は転ぶ。

 そう俺は足元に小さい穴を何個か掘り、相対していたのだ。

 転んだ隙を逃さず、俺は近づき飛び蹴りを放つ。 代表は羽で防御をし横に転がって逃れようとする。

 俺は嘴で突きを連続で放ち、何度か相手にクリーンヒットした。

 余り深追いすると手痛い仕返しを受けるのも知っている為、距離を取る。


 代表はブレイクダンスをするように、羽を開き回転して立ち上がる。

 危ない、あれに巻き込まれたら痛手を食らっていただろう。


「まさか短時間で罠を仕掛けるとは思っていませんでした。 私も驕っていたようです。 いいでしょう、本気で相手をさせていただきます」


 俺と代表は同時に走り羽を打ち合わせる。 すると、羽に痛みが走り打ち負けた。

 代表は俺の攻撃で多少は怪我をし力が少し入り難い筈だが、それでも身体能力に差があると言う事なのだろう。

 では、どうする? どうしたら勝てる? 答えは簡単だ、自分が戦いやすいフィールドに引き込めば良い。

 戦いながら森へと移動する。 如何に力が強くともどんなに速く動けたとしても、木が乱立する森では戦い慣れていないはずだ。

 思った通り、代表は木の根や木の幹に阻まれ動きが遅くなる。 俺は、木の幹を蹴り三角蹴りをしたり木の幹を盾にしたりしながらチクチクと攻撃する。

 さて、代表よ。 どう出る?


 すると、代表の動きが変わった。 これは、俺の動き・・・この短時間で俺の動きを真似たとでも言うのか!?


◇◆


「オモチちゃ~ん、デスバード(鶏)がここら辺にいないんだけど、何か知ってる~?」

 デスバードの餌やりや卵回収などを一緒にやるため、オモチと一緒に入った子供の1人が言う。


「奥の方で騒いでいるように見えるにゃ。 皆は餌やりと卵取りをしてて欲しいにゃ。 わっちは様子を見て来るにゃ。 頼んだにゃ」

 オモチは、奥のほうを一瞥すると子供達を見て言う。


「は~い、終わったらお母さん達に渡せば良いんでしょ? 任せといて~」


 オモチは争っている2匹の所に着くと木の上で様子を伺う。


◇◆


 俺も代表もボロボロで後1撃でどちらかが倒れるだろう。

 俺と代表は咆哮をし最後の1撃に力を込め打ち合おうとしたとき、足が縺れ俺の攻撃が外れ代表の攻撃が俺の頭に当たるコースになってしまった。

 これは、死んだな・・・短い鳥生だった・・・

 そう思って覚悟を決めたとき白い影が間に入り、気が付くと宙を舞っていた。

 地面に叩き付けられると、白い影のほうを向く。 代表も同じく白い影のほうを向いている。


「それまでだにゃ。 両者とも矛を収めるにゃ」


「オ・・・オモチ様、何故このようなところに?」


 代表は白き獣オモチに今までの経緯を話している。 白き獣を初めてマジマジと見たが、勝てるはずがない。 昔見たグランネッツよりも遥かに強い。


「ふむふむ、では、両者の引き分けとするにゃ。 文句があればかかってくるにゃ」


 我々の種族は見ただけで自分との強さの差がわかる・・・誰も逆らう事など出来ない。

 中途半端だが、俺達はここで暮らしていく事になった。


◇◆


「あの、オモチ様、質問をよろしいですか?」


「何にゃ?」


「話し方が変わられたようですが何かあったのですか?」


「アカネ様が、そっちの方が可愛いと仰られたにゃ」


「ああ、なるほど。 女神様が・・・」

と言うわけで、デスバードの話でした。 本当はもっと長いモノを想像しちゃったんですが無駄だと思って割愛しました。

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