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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
348/406

セードルフ5

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

「はいは~い。 皆さんに質問ですが、何故販売網がいらないと言ったでしょうか。 解る人いますか? 解る人がいたら手を上げてください」

 カナタ様の言葉に誰しも黙ったままだ。


「誰も本当にわからないの? ヒントは、チェリーブロッサムの顧客達は誰かって事かな」

 カナタ様の言葉で、少しハッとした1番若そうな商人がいた。


「君、解ったっぽいね。 答えて見て」

 カナタ様が若い商人を指差して言う。


「え? ぼ、僕ですか?」

 若い商人はいきなり指差されて驚くが、カナタ様が笑顔で頷くと答え始める。


「お客さんの中に他国の貴族様がおり、その人を介して販売する事が出来るからでしょうか?」


「はい、正解。 王族貴族もいるし、人族の商人も結構来ているでしょ? 販売網が無くても、商売が成り立つんだよ。 あとは、噂が流れているかもしれないけど、ラスーリとウゥルペークラにもショッピングモールが建設予定なんだよね。 そうなるとモンステラに来れない国にも商品がいき渡ると思うんだよね」


 カナタ様の話を聞いて、商人達は誰しも言葉を失った。


「だとすれば、人族の商人ギルドへの紹介状ではどうじゃろう? 人族の国の商人ギルドへの登録は紹介状か多大な寄付金が無ければ登録すら出来ないのですじゃ。 商人ギルドに登録してない商人が商売をすると何をされても文句は言えない事になっているのですじゃ」

 元締めのような商人は苦い顔をして言う。


「商人ギルドへの紹介状か~。 特に欲しいと言うものでもないんだよねぇ。 だってさ、生産販売もこの国で間に合っているし、他国からも買いに来る人が多いからお金もかなり流入しているからね」


「し、しかし、考えてくだされ。 商人ギルドには様々な情報が集まりますですじゃ。 皆様が欲している食べられる魔物の情報や木の実、果物、穀物の情報など様々な情報が溢れているのですじゃ。 噂程度の物から確実に手に入る情報まで様々じゃが、皆様の力を持ってすれば確認する事はたやすいのではないじゃろうか」

 元締めのような商人が、慌てふためき声が裏返りながら言う。


「そうだね~確かに情報は魅力的だね。 でも、お金を払えば入れるんでしょ? ならさ、そこまでして入る必要ないんじゃない?」


「商人ギルドにもランクと言う物があるのですじゃ。 ランクが低い者は情報を渡してもらえず、土地を買うのにもかなり苦労するはずですじゃ。 その点紹介者がいた場合、ランクは紹介した人のランクの2つ下まで斡旋出来ますじゃ。 もちろん寄付金はかなりかかるのじゃが」

 元締めのような商人は汗を拭きながら言う。


「うわぁ・・・お金儲けが目的ですって言ってるようなもんじゃん。 益々入る気が無くなるね。 でも、人族の国で商店開くのやめれば関係ないかな・・・と言うわけで紹介状もいらないや。 これ以上代替案がないのならお開きにしない?」


「待って、待ってください。 ひ、人族は面白い研究をしていて、その研究を支援するパトロンになるは商人ギルドに登録するか人族の国の貴族である必要があるんです。 パトロンで無ければ研究成果を見る事は出来ない決まりでして・・・そ、その研究中にはかなり有用なものもあると噂されています」

 元締めっぽい商人の隣にいた身なりの綺麗な出来のよさそうな商人は、焦りながら言う。


「噂されてるって事は、実際に有用かどうかはわからないって事か。 でも面白そうだね」


「そ、そうでしょう。 そうでしょうとも、ですから紹介状があったほうが・・・」


「ん~、でもさ。 商人ギルドのランクが1番下でもパトロンにはなれるんだよね? それだと紹介状の意味が益々ないんじゃない?」


 カナタ様がそう言うと、本当に誰も何も言う事が無かった。

 お土産として、調味料一式と手紙の入った袋を手渡し帰宅していく商人を見て、何か嫌がらせがあるのではないかと考える。


「全く実りのない話し合いが終わったね」


「はい、お疲れ様でございます」


「何か嫌がらせとかあるって考えている?」


「はい、流石カナタ様、御明察でございます」


「たぶんだけど、そう言う事はないから大丈夫だよ。 一応釘も刺しておいたしね。 でも、用心に越した事ないから出来るだけ2人以上で行動するように注意しておいてね」

 カナタ様は、笑顔でそう言う。


「はい、畏まりました。 すぐに連絡が行き届くようにさせていただきます」


「うん、ありがとう。 でもさ、獣人の商人って全員あんな感じなのかな?」


「と、言いますと?」


「立場とか地位とか、そんなもんにおんぶに抱っこのような感じでさ。 この場所は俺の場所だ、誰も来させない! 居座るんだ! って感じの現状維持をしようとする意思がひしひし伝わってきて、やる気? 発展させる心意気? みたいな物が感じられないんだよねぇ。 良くあの商人達でこの国がまわっていたと思うよ」


「そうですね。 我々の情報をちゃんと集めていないようでしたし、何もかも中途半端と言えますね。 私が相手の立場なら、まず従業員を学園に行かせ情報を集め自分も行った方がいいのなら行き、学び自分の糧にします。 このような交渉の席では相手が欲しているものを調べ上げ、手に入れるか情報を仕入れ取引の材料にしたいと思います」


「うん、俺もそうする。 じゃあ、俺もしくは皆が欲している物は何?」


「そうですね。 確実に欲していると言える物は情報です。 ただの情報ではなく、ダンジョン都市のダンジョンで何が採取出来るかではないでしょうか? モンスターならば索敵で見つけられるでしょうが、採取となると話は別ですから」


「流石セードルフ解っているね。 冒険者ギルドや探索者協会ならある程度は調べられるとは思うんだけど、食べられないと思われている物もあるかもしれないから実際に行くか、探索している人に何があったか聞かなくちゃいけないんだよね。 それは楽しみと言えるけどね。

 セードルフ。 今回の事で工場の土地も手に入ったし、懸念が一つ減ったよ。 ありがとう」


「勿体無いお言葉でございます」


 そのような他愛もない話をして、家路に就いた。

 商人達が嫌がらせをして来ないと言った理由は、お土産に入っていた手紙のことだろう。 手紙の内容は私も知らされてはいないが何が書いてあったのだろうか。



◇◆◇


「くそ! くそ!! こっちが下手に出ているからって良い気になりやがって!」


 男は机を殴り椅子を蹴り、椅子をつかんで壁に投げつける。

 そんな時、書斎の扉がノックされた。


「はいれ」


「旦那様、お客様がお見えになりました」


「こんな時に・・・どこのどいつだ?」


「商会連合会長でございます。 供も連れずに息を荒げて至急呼び出して欲しいと」


「くそ! はぁ・・・解った、応接室に通しておけ。 汗をかいたので着替えてから向かう」


「畏まりました。 この部屋の掃除をしてもよろしいですか?」


「好きにしろ」


 男は、着替えを終えると応接室へ入る。

 商会連合会長が立ち上がり、男に頭を下げる。


「よい、頭を上げてくれ」

 男はそう言うと、商会連合会長の対面に座る。


「それで、何があったのだ?」


「いきなり御呼び立てして申し訳ありませんですじゃ。 しかし、緊急の要件じゃてお許しくだされ」


 商会連合会長がそう言うと、男は頷き話を続けるように促す。


「ソメイヨシノから貰った袋に入っていた手紙じゃが、読まれましたかな?」


「いや、読んでいないが何かあったのか?」


「ではまず読んでみる事をお勧めしますじゃ。 ここではなんじゃて、奥で読んで来てくだされ。 読んで貰えれば儂が何が言いたいか大体解って貰えると思うんじゃが」


 そう言われ、隣の部屋に入り手紙を読む。 そして、最初の言葉を見て驚愕する。

 商会連合会長を裏で操る方へ・・・そう書いてある。

 どうやって知った!? 周りに知られないように細心の注意を払ってやってきたのだぞ?

 裏切られた? 誰に? 解らん。 くそ! イライラするな!

 いっそ刺客を放つか? いや、もしかすると仲違いを狙っての策なのではないか? 踊らされるわけにはいかん。

 何をするにしても、先に手紙の全文の把握をしたほうが良いだろう。 そう思い手紙へと視線を落とす。


◇◆


 商店連合会長を裏で操る方へ


 この手紙を読んで、いただいてありがとうございます。

 内容としては2枚目以降を読んでいただければわかると思いますので、ここには書きません。

 見て貰って手を出そうと考える事はやめていただけますようにお願いします。


 では、末永くご健勝であられますように。


◇◆


 男は怪訝な顔をして2枚目以降に目を通す。


「こ・・・これは・・・」


 男は2枚目以降の紙の内容を知っていた。 厳重に魔道具の金庫に入っている帳簿の写しだったからだ。

 ただの帳簿ではなくいわゆる裏帳簿と言われるもので、裏金や国への水増し請求、文官への見返り金、脱税の証拠などである。

 これらは、相手への借りや貸しが一目でわかるように取っておいたものだ。


 脱税の証拠は処分した筈の物までも混ざっている。 国の資料室と帳簿と裏帳簿を照らし合わせて新たに作ったものだと推察できた。


「何・・・だと・・・奴は、いったい何なのだ」


 ポツリと1言呟くと最後の紙に『余りに目にあまる行為をした場合には物理的にも社会的にも潰します。 解ってると思うけど、民も王族も貴族もソメイヨシノの味方だよ』と書いてあった。


 商店連合はこの日を境に大きな動きをする事が無くなり、数年後には収入が激減し殆どが潰れる寸前になり他の商店と同じように桜商店に吸収される事になる。

 商業(商人)ギルドについて

 このギルドは世界全体で1つのギルドではなく、近くの国同士が商業の活性化を目的に作った団体です(TPPみたいな感じ?)。

 なので、エルフの国で人族のグンスット商会(エルフの国南の人族の国の商会)を傘下にしていてもウルフローナ近くの商人ギルドには入れてません。

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