セードルフ4
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リョウタロウ様との話し合いで、これからのモンステラの道筋を自分なりに理解できたと思います。
この先、人の往来や移住などによってモンステラの街のレイアウトが変わることがある様なので、レイアウトは予定なのだと心に留め、ある程度参考にしてどこに何を建てるかなど考えていかなければなりません。
しかし、話し合いに陛下自ら参加されるとは・・・カナタ様がいらっしゃったとは言え、驚きのあまり声が裏返ってしまったのは今考えても恥ずかしい限りですね。
話が変わりますが、エルフと技術提携の話も進んでいるようでした。
土地の不足を補う為に街の建物のマジックハウス化を進めようとしていることも聞きました。 ですが、私に話して良いことだったのでしょうか?
商店や昔から住む農家などは土地を多く所有しているのですから、そこを譲っていただくか、リョウタロウ様が作った壁と堀まで住宅を広げれば良い気もするのですが・・・このような疑問など私などが、考えても意味は無いでしょうから胸の内にしまっておきましょう。
話し合いのときにリョウタロウ様のご提案で、アンテナショップという他国の特産品を置くお店を開く事になりました。
他国の特産品という知らない物も手に入り、物や人を通じて観光の案内まで出来ると言う両者に得しか無い物なのだと仰ってました。
この国だけでは無く他国にも利益が渡る様に考えるなど、本当に皆様は流石でございます。
あまり国交が盛んでいない国にも冬の間に使者を送り話し合う事となるようです。 どうなるのかは解りませんが成功して欲しいとは思います。
マジックハウスの木材の調達の為に、エルフの国へリョウタロウ様、ケイタ様、アカネ様、ユカ様の4人が行かれるようです。
軽く観光をして帰ってくると言う事で1月くらいを予定しているようですが、もっと早く帰るかもしれないとも言っていましたしその心積もりでいましょう。
帰っていらっしゃる前までに、商店の解体を速やかに終わらせなければいけませんね。
大きな土地の場所は物が少し飛んでも大丈夫でしょうから冒険者達に依頼を出し、小さい場所は木工師に頼む事にしましょう。
確か木工師で仕事が欲しいと言っていた所があったはず、明日にでも執事隊の誰かに行って来てもらいましょう。
そんな事を考えているとき、ノックの音がなる。 訪ねていらっしゃったのはカナタ様だった。
「夜遅くにごめん。 先にこれを渡しとこうかと思ってね」
カナタ様は、腰に付けるタイプの八重桜学園のマークが入ったポーチ(スマホケースのような形)を片手で渡しながら仰る。
感謝を伝え、ポーチを受け取る。 見てみてと言われポーチを観察すると、内側の装飾に目が行きこれがマジックバッグである事に気が付く。
驚きの表情をしてカナタ様をみていると、カナタ様は笑顔で仰る。
「セードルフとミランダと俺以外に使えないマジックバッグなんだよ。 いつも色々な資料とかを持ち歩いてて大変でしょう? それがあれば助かるんじゃないかと思ってね」
「しかし、これは・・・」
私は、こんな高価で貴重な物を・・・と考えてしまう。
「大丈夫、セードルフやミランダにはお世話になっているから、作れるようになったら渡したいと思って作ったんだよ。 せっかく2人のためだけに作ったんだからちゃんと使ってね。 あ、でも無理はしないように、何かあれば相談に乗るからさ」
「なんと感謝の言葉を言えば良いか解らぬほどでございます」
私は、膝を着き頭を下げる。
「ほらほら、立って。 こっちが勝手にしたかったんだからそんなに畏まらなくていいからね。 あと、ミランダにも直接渡したほうがいいよね? 呼んでもらっても大丈夫?」
「はい! 妻もまだ起きてますので」
私達はカナタ様から直接マジックバッグをいただき、感動に浸っていると妻から声がかかる。
「これで貴方の憂いも一瞬で解決しますね」
「ん? どういう事だ?」
「だってマジックバッグがあれば、資材置き場や畑予定地などに商店などを一気に持っていけるでしょう? そしたら木工師に解体をお願いすればすぐに解決なんじゃないかしら? 容量はまだ使ってないから解らないのだけど、カナタ様が小さいものを渡す気がしないもの」
「そ、そうか! なるほど、カナタ様の意図はそう言う事だったのか! 早速明日にでも試してみるとしよう」
マジックバッグの容量はかなり大きく家を数軒一気に移動する事が出来るものだった。
私と妻の2人がかりなら、1週間(5日間)で全部門の外へ移動できる。 最近寒くなって来たので雪が降る前に終わらしてしまおう。
全軒の移動が終わり、木工師と冒険者に均等に仕事を振り分け解体作業をしている。
リョウタロウ様達が帰るまでに、学園の教科書の改定や学園で使い備品の発注の見直しなど色々な雑務をこなしてしまう。
そんな事をしている時に、大商店が不穏な動きをし始めたようだ。
しかし、いまだに私達に被害がないため大きく動く事は出来ない。 被害が大きくならないように色々準備を始めるとしましょう。
執事、メイド隊に大商店の情報を再度集めるように指示を出し、1人で行動しないように学園の生徒や働いて貰っている店員に注意喚起をする。
先手を打って色々しておきたいが何かをやったわけではないし、事を荒立てるわけにはいかないので後手に回るしかない。
さて、どのような事をしてくるのでしょうか。
身構えていた私を馬鹿にするように、大商店の連盟はごくごく簡単な要求をしてきました。
それは、カナタ様との会合。 正式に手紙として送られてきていたものですから無視するわけにもいかず、日取りを決め会合へと至った訳です。
「つまり、何を言いたいわけ? 難しい言葉を使って解り難くしないで端的に説明してもらえる?」
カナタ様は、渡された資料を読み話を聞き少し不快そうな声で言う。
「我々は連携を強化し、新たなものを開発しこの国だけではなく他国にも販売網を延ばしています。 そんな我々がここに来たのは、ソメイヨシノ様にも利益を授受出来ると自負しているからであり、皆様の期待に添えられるものと考えたからであります」
「いや、そう言う事を聞きたいんじゃなくて、要求を単刀直入に簡潔に言って欲しいと言ってるわけなんだけど」
「我々一同は皆様が作るものに感服し利益を享受願いたく思います。 われらから差し出す物は網状組織の一端ではいかがでしょうか?」
「何でそんなに解り難い言い方するかなぁ。 商品を売る足がかりを用意するから、技術や料理のレシピをよこせって言ってるのかな? それとも商品を卸せと?」
「我等の抱える技術者及び料理人ならば雲外蒼天と思いますので、同じ様な物が作成可能かと存じ上げます。 ですが、一寸光陰でありますしなかなか難しいかと存じます」
「はぁ・・・そろそろいい加減にしない? 話す気がないとして会合を終わりにするよ?」
カナタ様が不快な顔をし、怒気の含んだ声を出すと話していた商人の動きが止まる。
後ろにいる商人達も何も言えずに止まっている。 1番後ろで腕を組み話しの成り行きを観察していた商人がたまらずに声を上げる。
「お、お待ちくだされ。 我等と手を組んでいただきたいと言っているのですじゃ」
他の商人達が、話し始めた商人を見て少し驚いているところを見ると元締めと言える商人なのかもしれない。
「最初からそう言ってくれない? で、さっきの話だと販売網の一端を渡すから・・・って聞こえてたんだけど。 合ってる?」
「はい、その通りですじゃ。 その代わりレシピを渡していただきたいのじゃが、すぐに開発出来るようなものではないのは承知していますじゃ。 なのでその間は商品を卸していただけないかと思うとるしだいですじゃ」
「ふ~ん、販売網を貰えるのは結構いいかもしれないね。 だが、断る!」
カナタ様の宣言に、商人一同固まってしまった。