セードルフ3
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屋敷に着き、食事の準備をお手伝いしようとしたときにカナタ様からお声がかかる。
「セードルフ。 最近色々忙しいと聞いているから、休憩して来ていいよ?」
「ありがとうございます。 しかし私は執事なので」
「じゃあ、ネリウムさんと話して来てもらえる? なんか、心配事があるって言ってたからさ。 えっと、学園にいるはずだよ。 お使い頼んだよ」
「はい、畏まりました。 すぐに行って参ります」
このタイミングでこのような事を言われると言う事は、カナタ様は全てご存知なのだろう。 せめて期待に添えるように努力しなければ。
早速、お言葉に甘え学園のほうへと赴く。 入り口でネリウム先生とばったりと会い話し合いをする事に。
簡単に説明会の事をネリウム先生へ説明をする。
「なるほど、傘下に入りたいと言う商店が出てきたと言うわけですね。 それはいい事だと思いますが、何が問題なのでしょうか?」
「ええ、確かに傘下にはいるのは問題ありません。 問題なのは、何も失わずに入りたいと望む人の多さですね」
地図を出し、傘下に入りたいと願う商店の場所と名前を確認しながら説明する。
4割くらいは借金を既にしているので土地などを正規の値段で買い取り、それを越えた借金を肩代わりしすれば全て譲り、学園でもう1度学び直し店員として働くと言う事が確約してくれている。
しかし、他の6割は借金が無かったり少なかったりするため、傘下に入りたいが地位失いたく無いと言う。
「そう言う事だったのですね。 ならば、全商品の卸しなどは桜グループからのみとし、少し安い値段で商品を卸し全責任は経営者にすると言う契約をすればいいのでは無いでしょうか? もちろん、登録料として利益からも差し引くようにすれば」
「私もそれは考えました。 しかし、それではあまりにも横暴では無いかと考えたんです」
「それならば、数人の学生をアドバイザーとしてお店に立ってもらえばいいのでは無いですか? そうすれば人件費が少し浮きますし、不正を防ぐ事も出来るかと思います」
「なるほど、労働力と商品をこちらで持つ代わりに利益と経営方針などはこちらで管理すると・・・それでは、経営者の意味が無いのでは無いですか? どんなに売っても微々たる利益しか出る事が無くなりますから」
「何も失わずに手に入れられるものなどそんな物です。 それが嫌なら傘下に入る等言わなければいいのです」
「そうかも知れません。 ですが、それではソメイヨシノの皆様の名誉が傷つくのでは無いですか?」
「それを言われると痛いですね。 出来るだけ穏便に進めようと考えても、良い結果にはならないかと思います。 どうしますか?」
「全くアイディアが出て来ません。 カナタ様なら、どうするのでしょうか?」
「カナタ様なら、大商店と最初に話し合いをしに行ってしまう気がします。 年季(丁稚)奉公や店員を引き抜くか、そのまま潰してしまう可能性もありますし、仲良くなって桜グループに組み込む可能性も無いとは言えません。
1年ほど行動をみてきましたが、予想は全くと言っていいほど出来ませんね」
「私も全く予想が出来ません。 我々は我々の出来る事をするしか無いと言う事ですね」
「はい、その通りです」
「富をそのままと言うのがネックですね」
その後も話し合ったが良い答えは一向に出ず、明日の学園で話の続きをする事になった。
私の直属の部下でもある執事隊へ店舗を売ってもいいと言う4割の交渉を任せ、ネリウム先生と今後の事を話し合う。 だが、3日ほど経っても一向に良いアイディアが出て来ない。
大商店がおとなしくしているこの間に話を進め何とかしたいと言うのに・・・
「いっその事、土地の価値よりも高い金額を積んで買い取ってしまいますか? これ以上手を拱いているのは得策ではありませんし」
「そうですね。 もうそれしか考えが出て来ません。 売って貰える店舗は買い取ってしまい、売ってもらえ無い店舗は前の厳しい契約条件を提示してみましょう」
話し合いの結果、全体の9割が店を売り1割が厳しい契約条件飲む形となった。
その代わり建物の建て替えを望む場合は、半値を受け持つ。
学園に1度入りたいと言う場合は、冒険者と同じ扱いとなり1年間の朝食、昼食、住居の保障、実習も受けられる。 だが実習する店は選ぶ事が出来ない。
なので、自分の店を1度閉めるしかない。 この選択は経営者しだいとなる。
学園に入った経営者は、約半分。 学んでいく間に他の事に興味を持ち商人じゃなくなる経営者もいたが、大半は勉学に励んでいた。
もちろん、他の事に興味を持った経営者は商店を売り、お金にゆとりを持ち楽しそうに色々作っている。
最初は自分で努力し経営していた店舗の経営者が、自分の意思でお店を売った店舗の元経営者と話し、店を売りたいと言うまでそこまで時間がかからなかった。
それもそのはず、元経営者は時間給なので働けば働いただけお金になる。(残業は申請が必要)
一方経営者は、どんなに働いても売れなければお金が稼げない。 1月の給料を時間給として比較すると、明らかに経営者の方が低い。
同じ給料を手にしても、経営者は税金の支払いが必要になるし自分や家族、奴隷の食費、光熱費など限がないほどお金が出て行ってしまう。
それでも、大通りに面している店舗はそれなりの売り上げを出しいまだに頑張っているのだが。
大商店の動きはまだない。 出来るところまで行動をしておきましょう、そう思いソメイヨシノの皆様に土地をどのように使うかなど話をしたい旨を伝える。
すると、ソメイヨシノの皆様をはじめ、ネリウム先生、ゴラントさん、ミルッフル様、フランソワーズ様、ラスーリ国の姫サミル様(バス回収時に会ったネズミの姫)ウゥルペークラ国の姫リサー様(リョウタロウの恋人)、グンスット商会のリッグスさん(エルフの時の商人、借金奴隷)などの面々が集まった。
声を少しかけるだけでこれだけの面々が集まると言うのは圧巻だ。
「カナタ、そろそろ城に顔を出せ。 叔父上が寂しがっているんだ」
フランソワーズ様が言う。
「いや、寂しがっているんじゃなくて、俺がいないと未完成の自転車競技場にいけないからそう言ってるだけでしょ?」
「うむ、その通りだ。 だが、話したい事もあると言っていたぞ?」
「あぁ、了解です。 数日中には会いに行きますよ」
そんな他愛もない会話がそこら中から聞こえてくる。
大体の話が終わったあたりで、口を開く。
「お集まりくださりありがとうございます。 最近に手に入れた元商店の土地を何に利用するかの話し合いを始めます」
拍手から始まったが、全員がこの土地が欲しいだの何だのと言いあって収集が付かなくなりそうになる。
「待って待って、とりあえず土地の欲しい欲しくないは最後にして話を聞こう」
「カナタ様、ありがとうございます。 僭越ながら私めが、少し考えたものを申し上げてもよろしいですか? もちろん後で変更は出来ますので」
皆さんが黙って商店の跡地に何を建てるかを聞いてくださった。
やはり目玉なのは工場類だ。 ソースや醤油、味噌やトマトケチャップ、酒や薬など今はマジックハウスで作っているが、それを分け作れるようにしたい事を言う。
現在でも十分な生産量を確保出来ているし、特に大きな問題はない。
でも、昔にタダシ様が「色々な店舗で試行錯誤し独自の味を模索して欲しい」とおっしゃっていた事をやろうと思ったのだ。
時期尚早かもしれないが、出来るだけ早いほうが良い。 なんと言っても、カナタ様達はあと8年後のウェーブで勇者になり魔王を倒すと仰っているのだから・・・
「おお、俺達の要望の店だけじゃなくて、ラスーリのショップやウゥルペークラのショップも出来上がるんだ。 うん、これなら俺は異論ないよ。 新しく出来る道との兼ね合いもあるからリョウさんと話して詰めて」
「畏まりました。 リョウタロウ様、お願いいたします」
「じゃあ、一緒に王城へ明日行こう」
リョウタロウ様が笑顔で言う。