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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
345/406

セードルフ2

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

「説明は以上です。 質問ある方は今から受け付けます。 こちらから指しますので、手を上げてください」

 セードルフは、壇上から商店の店主達に言う。


 大店舗の店主と思しき身なりの良い商人が1人手を上げる。

 商品を横流しされてしまった中小商店しか呼んでいないはずなのに、なぜ大商店の者がいるんだ?

 しかし、1人だけしか手を上げる者はいない。 面倒な事になったものだ。

 手を上げた商人を指すと、立ち上がり話し始める。


「言っている事は解りました。 しかし、騙されたと言うのなら補填をしてくれてもいいのでは無いでしょうか? 補填された分は、通常通り販売しますので」


「先ほども言いましたが、ちゃんと価格を守り販売している店舗もあります。 それなのに補填をしろと言うのは、些か問題があると思われます」


「些かなのであれば、販売していただいてもいいのでは無いですか? もちろん、ここにいる我々だけではなく販売価格を守った店舗にも同じ金額で同じ量を卸していただいて構いません」


「そうだそうだ」 「配ってもいいだろう」 「利益を分配しろ!」

 商人の言葉に周りから同意の声が響く。 こんな陽動のサクラまで用意しているとは、なかなかですね。

 しかも、こちらが話すであろう内容まで予測し話し合っていたと考えて良さそうですね。


「そうですね。 次回に卸す分に関して、騙す側に回った店舗の商品を無くし、騙された側の店舗にすぐに卸してもいいかもしれませんね」


「セードルフさん。 それでは、平等にどのような店舗でも同じ金額で同じ量を販売していくと言う、ソメイヨシノの皆様のお言葉を無視する事になるのでは無いですか? 主の言葉を拡大解釈しているようにしか思えませんよ?」


「そうだそうだ」 「横暴だ」 「路頭に迷わす気か!」

 などと言う野次も飛んでくる。


「ソメイヨシノの皆様の意思を拡大解釈しようとする事はありえません。 最初に注意事項はお話したはずです。 何があろうと自己責任である・・・と。

 ですので、決定事項は変更出来ません。 よって、次の卸す日まで3ヶ月間です。 その間、何とか切り詰め利益を少なくして、大商店の分配分のソースなどを置けば何とかなるはずです。

 自分で考え売ってしまったんですから、何とかしていただく他は無いんです」


「それは解っております。 しかし、現在いろいろなものの物価も上がっているんです。 仕入れひとつでもなかなか難しいのが現状なんです 我々のような、小規模店では対応が難しくなっているのはご存知のはず。 このままでは潰れてしまうのも時間の問題です。 何とか出来ませんか?」


 物価の上昇したのはこちらの責任でしょと間接的に言っているわけか。 この男は何が目的だ?

 なぜここまで食いついてくる? 波風を立たせないためには、どうすれば良い?


「先ほども言いましたが、注意事項は説明したはずです・・・何があっても自己責任なのだと。

 しかし仰るとおり、それでは潰れてしまうところも出てきてしまい平等とは言え無いと思っての最大の譲歩なんです。

 もう一度言いますが、騙した店舗の次回に卸す分のみを騙された人たちに均等に分けると言うのでどうでしょう? 大商店であれば、1回補充されなくても潰れる事は無いでしょう。 どうですか?」


「セードルフ殿もわかっているかと思いますが、大商店の分を分けたところで1店舗に配られる品は、本当に微々たる物です。 それでは焼け石に水、結局経営が見通せません。 なので、騙し取られた分と同じ量だけ回していただけなければ・・・」


「そうですか。 ならば、販売価格と同じ金額で同じ量を優先的に販売いたします。 それならば、利益は出なくても何とかなるのでは無いでしょうか?」


「それでは、ただただ横に流しているだけで利益が全く入りません。 売れ残った場合などのコストを考えると、そのような事が出来ない事はわかるはずです。

 セードルフさん。 我々商店を全部潰す気なんですか?」


「いえ、潰す気など全くありません。 ただ騙されたのはこちらに責任などは無い筈ではないです。 ですが、騙すほうが悪いと私も思います。 なので、先ほどから言ってるとおり最大の譲歩としての提案をしているのです。」


「それならば大商店に話をして頂き、出るはずだった利益を渡していただける様に交渉して頂きたいです。 ソメイヨシノ様が交渉していただければ、大商店も無視が出来ないでしょうから」


 あぁ、なるほど、目的がようやく見えてきました。 つまり、ソメイヨシノの皆様と顔合わせがしたいと言う事ですか。

 最近交渉ごとには、ネリウム先生か私しか席についていないからですね。

 それを見越してこんな大掛かりな事をしでかしたと言う事は賭けと言う事なのか。 それとも・・・


「ソメイヨシノの皆様は経営に既にかかわっていません。 ある程度の指示をしていただける事はありますが・・・なので、大商店と交渉するのは我々と言う事になります」


「しかし、それでは大商店側は納得しないのではありませんか? 経営者が自ら交渉しないのですから」


「経営者ですか・・・ソメイヨシノの皆様は勇者を目指し旅立たれる事は決まっていました。 その前に経営などを全て我等に譲渡していただいております。

 しかも、今まで稼ぎ出した利益は学園を無償で経営させるためのストックにしたり交通の整備に使っています。

 他にも幼稚舎及び保育舎の設立やシングルマザーへの保障対策、女性の社会進出増進や均等雇用、冒険者ギルドが行う全ての冒険者の学習、移民の受け入れや仕事の斡旋、公園の整備、公衆浴場の設置、コインランドリーの開発、劇や人形劇の劇場の新設、自転車レース場の建設など他にも上げれば数限りないほど建設したり、寄付しているんです。 これ以上ソメイヨシノの皆様へ何をしろと言うのですか?」


 私が、こういうと誰も声を発する事が無く時間だけが進む。 当たり前だ、利益を捨て立場も捨て人の為に行動していると言われ、全てを目にし何を言えるのだろう。

 自分で言った言葉だが本当におかしいくらいの国や国民への貢献だ。 噂は知っていたのだろうが、本当に皆様が行った事だと知ればかなり強い衝撃を受けるだろう。

 国からも信頼され、国民からも支持されそんな方達が作った商店なのだから利益が1番出るのが当たり前なのだと解ってしまう・・・いや、解らされてしまう。 そして、ここにいる全ての者達・・・いや、近隣諸国の全ての民が少なからず恩恵にあずかった事があるはずだ。


 特に移民の受け入れや仕事の斡旋。 これは国が行う大事業と言える、それをたった1つのクランが行うなど傍にいる私でさえ未だに驚く。

 しかも、商店を含むいろいろな事をし始めて約1年半でここまで来てしまっている。 こんな異常な事など人では到底出来無い。 やはり、噂どおりカナタ様達は別世界の神なのだろう。

 記憶を無くして(記憶を無くしてここに来たと言う最初の設定)この世界に来たのは、我々を憂いて導いてくださってるからに違いない!

 皆様の行動は逐一記録し後世へと伝えていかなければならないだろう。

 そう! それを行う皆様をまとめ、調整し、皆さんの進む方向を同じようにしているカナタ様の行動を出来る限り詳細に事細かく。

 そんな事を考えていると、1人の若い女性の商人が手を上げる。


「指すのが遅れてすみません。 そちらの貴女どうぞ」


「私は、夫が残した小さい商店を経営しているものです。 売り上げも落ち経営も苦しいです。 ですが、夫が残した物を手放したくはありません。 まことに勝手だとは思いますが、そのまま傘下に加わると言う事は可能でしょうか?」


「今すぐに答えを出す事は難しいですが、何とか調整してみようと思います」


「ありがとうございます」


 この女性の商人が傘下に入りたいと言った事を皮切りに傘下に入りたいと言う言葉が続く。

 最初はどうなる事かと危惧していたが、ある程度まとまり個別の話し合いへと移行する。

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