子供だけの旅(2)
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ザワザワしているのを軽く静止され、説明が始まる。
「皆さんに渡したお金は、この学園を作ってくださったソメイヨシノの皆様からの贈り物です。 今夜の夕食代と身の回りのものを買うのに使ってください。 これから、桜商店ショッピングモールと言われる超大型商店に行きます。 迷わないためにも遅れずについて来てください。 この国で迷えばここに帰ってこれない可能性もありますからね」
誰しも大金を手に入れ浮ついていたが、帰ってこれないと言われ大人しくなる。 確かにこの国で迷えば、建物が大きすぎて方向も解らず帰ってこれないかもしれない。
変な声を出して倒れた寮母さんと説明をしていた寮母さんの2人以外が僕達の前に並ぶ。
僕達は前に立つ寮母さんに振り分けられていく。
3人兄弟や姉妹なども居たがちゃんと1つのグループとして振り分けられる。 人数が報告などで解っていたのかもしれないが、到着してから間もない時間で兄弟姉妹を把握し寮母さん1人に対して均等に一瞬で振り分けられると言う事に僕は驚く。
これが出来るのが商品の数の把握や販売数の把握など数字にまつわる商人ならば解る、しかし商人ではない。
まさかとは思うけど、この国ではこれぐらい出来て当たり前の事だとでも言うのか?
教育にお金をかけている国は出身国が1番だとお父さんが言っていたはず・・・僕は平民だけど貴族様と変わらぬ英才教育を受けてきたと言う自負があった。
そう、自負があったんだけど・・・教師じゃなく寮母さんが僕の受けた教育のさらに上をいっている?
あれ? それよりも、なんでウェーブからこんなに早く復興しているんだ?
被害が少なかった僕の国ですら困窮に喘いでいるのに、1番被害を受けたとされているこの国が復興し、こんなにも大きな街になっているんだろう?
「ねぇねぇ、お兄ちゃん、お兄ちゃんってば! みんなあっちへ行っちゃったよ? 大丈夫?」
「え? あ!」
僕は声をかけられ、ハッとし周りを見回すが寮母さんや同じ学生の姿が人ごみに紛れて消えてしまっていた。
「ごめん、考え事してた。 どこに行ったか分かる?」
「う~ん、確かこっち行ったよ?」
年の離れた妹に助けられるとは情け無い、もっと周りに気をつけないと。
妹の案内で道を進み人が多く出入りしている大きな建物の前に出る。
「桜商店ショッピングモール? ここが言っていた所なのかな?」
「ショッピングモールって言ってたし、合ってると思うよ。 ほら! お兄ちゃん、早く行かないと」
ショッピングモールの中に入ると、まず温度の変化に戸惑う。
「ここも暖かいね。 寮の中も暖かかったけど」
妹は嬉しそうに言う。
「ああ・・・そうだな。 もしかしたら、この建物もマジックハウスなのかもしれない」
「へぇ~、お金持ちなんだね」
「あ、あぁ・・・そうかもな」
お金持ちと言っていいのかすら解らない。 僕達獣人は魔力量が少ないんだぞ? マジックハウスなんて作ったら保持するだけでどれだけ魔力を使うんだ?
まさか・・・まさかと思うけど、僕達移民をしてきた人たちの魔力を無理やり? いや、でもそれで事足りるような量なのか?
犯罪奴隷を多く囲っているとか? 解らない、どうなってるんだ?
僕は妹に手を引かれ移動しながらずっと考えていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんってば!」
「ん? 何かあったのか?」
「もう! 全く聞いてないんだから! でも、ここどこだと思う?」
周りを確認すると馬車や自転車と呼ばれている乗り物が並んで置いてある場所だった。
自転車は盗まれるんじゃないかと思っていたが、鉄の手すりみたいなのから出ているチェーンに巻いておいて置くのか。 これなら盗まれる心配も減りそうだな。
「ここは、たぶん馬繋場の近くなんじゃないかな? 馬車もいっぱいあるし」
「ケーミいるかな? 見たい!」
「居るかも知れないが、見てたら本当に帰れなくなるかも知れないぞ? 先に皆を見つけなきゃ」
「え~・・・見たかったのに」
妹が膨れっ面をしたのを見て僕は苦笑する。
「お前達、もしかして迷子か?」
僕達は、いきなり声をかけられ驚きビクッとなる。
「ああ、驚かせたのなら悪い。 俺は冒険者で切り刻む風と言うPTのモンジ(バス回収時に洞窟であった冒険者)と言うものだ。 こんな所で2人でキョロキョロしてたから、迷子なのかと思ってな」
「わたし迷子~。 ケーミ見に来たの」
妹の言葉にモンジと言う冒険者は首をかしげる。
「す、すみません。 僕達今日着いたばかりで、学園に連れてこられて、迷子で」
僕は、気を悪くさせちゃいけないと思い必死で喋る。
「あぁ、今日中に移民が到着するって言ってたあれか! グループから逸れて迷子って事なんだな」
モンジさんは、納得した顔で指差して言う。
僕達は、肯定して頷く。
「じゃあ、案内してやるよ」
「ありがとう! ケーミ見たい!」
妹は物怖じせずに、笑顔で言う。
「ああ、そんな事言ってたな。 じゃあ、ケーミを少し見ていくか」
かなり大きな馬繋場の中にいる様々な大人しい魔物を見てから、僕達はフードコートと呼ばれる場所に来た。
そこは屋台が立ち並んでいるかのごとく活気があり、様々な見た事すらない料理が売られていた。
料理について色々説明されたがどれもこれも美味しそうに見え話半分でしか聞けなかった。
「なぁ、金は持っているのか?」
「はい、学園から移動する前に渡されました」
「そうか、ならここで食事にしよう。 このショッピングモールで買い物するときは問題ないが、外の露天だとボッタクリやバッタモンなんかも多いから気を付けろよ?」
「「はい」」
モンジさんは、近くにある空いている席を取っておいてくれると言う事で僕達2人は、悩みながら売っている料理を遠めで見る。
お勧めは、コロッケうどんだったっけ? コロッケは別置きでさくっと食べてもうどんでしっとりさせても良いと言っていたけど。
僕達は、全く決められずお勧めされたコロッケうどんにする事にした。
並んでいると、ある事に気がつく。 料理人が若い。 僕と同じか少し上くらいだろう。
「はい、お待たせ。 注文は何にする?」
僕と同じ位の女の子が、元気良く聞いてくる。
「2人ともコロッケうどんで」
「お! 初めてに見えたのに良い所にいくね。 コロッケうどんは1番人気メニューさ」
「そうなんですか? 冒険者さんにお勧めされて」
「ああ、やっぱりお初だったのか。 じゃあ、サービスもつけといてやるよ。 番号は8376番だ。 この木札を持って離れた所で待ってな」
僕達はモンジさんが座っている席に手招きされ移動する。
「こんな遠いところしか空いてなくて、すまんな」
「いえ、本当にありがとうございます。 でも、何でこんなに良くしてくれるんですか?」
「ああ、簡単に言うと恩返しだ。 俺は、ソメイヨシノのカナタさん達に直接命を救われた事があるんだ」
モンジさんは簡単に自分が助けられたエピソードを話す。
「他にも助けられたやつがいっぱいいる。 それで、俺達冒険者は休みの日に勝手に街の中を巡回していざこざが無いかどうか等見回っているんだ」
話しが一段落したタイミングで番号が呼ばれ、僕達はうどんを受け取りモンジさんの所へ移動する。
頼んだコロッケやうどんと言う物がどれだか解らないが、かなり大盛りだと言う事は見ただけで解る。
トレイと言うものに乗っていたのは、天カス、葱、肉カス、コロッケ、うどんだったらしい。
料理を頼むとあれば無料で少量貰える物だったようだが、今回はかなり大盛りらしい。
モンジさんも食事を買ってくると言う事で、僕達は先に食事をしている事になった。
僕達は、一口食べると驚きの美味しさに顔を見合わせ無言で食べていくのだった。