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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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side story セラン編 (3)

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

 僕達が戻ったころ、既にオークとの戦闘が始まっていた。


「皆、一旦隠れよう。 なんかオークの動きがいつもと違って変だ」

 僕は皆を止めて木の影に隠れる。


 いつものオークと動き方が違う。 なんか統率されている気がする。

 キャンプにはショウマ様達がいる。 何があったとしても何とかしてくれるはずだ。

 敵に会った時、まずは観察。 どんな動きでどんな攻撃してくるのか、倒した事がある敵でもいつもと変わりないか確認する。

 それが出来ない時は、全力を持って逃走する。 それも出来ない場合は、全ての力を持って全力で殲滅する。

 つまり、現在の最良の選択は逃げる事と教わっている。 でも、仲間をおいて逃げるのは最低だ。


「なぁ、あの少し大きい奴が指示を出していないか?」

 ランムが、一回り大きいオークを指差していう。


「うん、そんな感じがするね。 動きを見ても上位種なのは解るし、この位置取りなら挟撃に発展させられる・・・けど」

 皆を見渡すと、力強く頷いてくれる。


 そうだよね、皆を見捨てる事なんて出来ない。 学園の生徒達全員でここまで来たんだ。

 僕達は武器を構え、音を立てないように気を付け背後に周り一斉にオークに切りつける。

 流石ギルドマスターの教えてくれた技術だ。 切りつける瞬間まで相手に気が付かれなかった。

 左足と右手、腰から大量の血を流し怒り狂う統率しているオークと僕とランムが対峙する。

 首への1撃は避けられてしまった。 首を取れれば戦いが決したと言えたのに。

 他の4人は邪魔が入らないように周りでオークと戦っている。


 統率していたオークの指示が無くなったためかオーク達は隊列が崩れ、学校の仲間達は攻勢に出始めた。

 このまま時間を稼げば、僕達の勝ちだ! そう思っていた。

 右足を軸に左手だけででかい斧を振るうオーク。 武器で弾き受け流そうとしたが無理! 当たった瞬間押し込まれる、咄嗟に盾を自分の武器に当てがい何とか自ら後ろに飛んで難を逃れる。

 危なかった、そのまま力で対抗してたら切られるか、どこか骨が折れていたかも。

 僕の攻撃の死角を利用しランムがわき腹の鎧が無い部分に剣を突き立てる。 だが、皮を切っただけで弾かれる。


「おいおい、さっきと違って固いぞこいつ! セラン、どうする!?」


 ランムのほうをオークが向いてくれたので、難なく立ち上がり出来る限り観察する。 手足から血が流れ続けているが、腰からの出血の量が減っている気がする。

 もしかして、筋肉を締めているのか? 少し観察したが、明らかに上半身の動きが鈍い。


「ランム! オークが筋肉を締めて出血を防いでるみたいだ! 上半身の動きがかなり鈍い! 足を使って動き回れば勝機はある!」


「了解だ! リーダー!」


 僕達は敵を挟んで向かい合い、オークが後ろを向いたら手や足を切りつける。 ただ、オークも振り向くと同時に攻撃し、また振り返り攻撃をしてくるので油断は出来ない。

 殆どこちらを見て無い大振りだけど、気を抜いたらやられる!

 チクチクチクチクと攻撃をし、全身が血にまみれたオーク。 未だにオークの武器を振るう威力は衰えていない。

 武器を落としたら手数が減るはずだよな? 剣を鞘に戻しソメイヨシノ製の護身用の棍棒に持ち替える

 ランムは僕のやろうとしている事に気が付いたのか、大声で挑発し鋭く槍を突く。

 オークは左手に持った斧を使って防御する。 僕はオークの左手側に回り、両手で棍棒を持ち渾身の一撃をオークの左手首に打ち込む。

 ブルォォォアアア・・・左手首が砕けた感触と共に、血まみれのオークが武器を落とす。

 よし! これでかなり楽に倒せるはず! 武器をまた剣と盾に換えチクチクと戦い始める。


 武器を落としても、このオークは強い。 拳が握れてないのに腕を振り下ろし、短い足だが蹴りを放ってくる。 回避が間に合わず盾を構え受けたのだが、どの攻撃も物凄い威力だ。

 ランムの槍も腕の振り落としを受けた影響で少し曲がっている。 魔鉄製の武器を曲げるなんて、どれだけ馬鹿力なんだ。


 ランムも僕も疲労困憊。 いつ集中が切れてもおかしくない。

 周りの皆は、他のオークを近づけないようにとまだ必死で戦っている。

 よそ見した罰が当たったのか、血まみれのオークの腕が上から下に振りおろされる。

 とっさに盾を上に掲げ防御の体勢になる。 やばいやられる!


 ゴン。 


 かなりの音がしたのに衝撃が軽い事に驚く、盾で防御したとはいえ全くと言って良いほど威力は無い。

 まさか! そう思いオークを見ると全身から血を滴らせ、肩で息をして目も虚ろな状態になっていた。


「あと少しだ! もう少し踏ん張れ!! 生き残れば勝ちだ!」


「おう!」 「ああ!」 「「はい!」」 「了解だ!」


 皆も息も絶え絶えだが、元気に返事をしてくれた。

 全ての物事で終わりが見えない事ほど恐ろしい物は無い、だったっけ? ケイタ様の言う事は難しくて解らない事が多いんだよね。 でも、今回の戦いでなんとなく解った。

 何度切っても倒れない敵って言うのは本当に恐ろしい。 二度とこんな戦いはしたくないとさえ思う。

 オークが足をもつれさせ、前に倒れた。

 その隙を見逃さず、僕とランムは首に武器を突き刺し捻り距離をとる。


 ランムが槍で無理やり仰向けに転がし、首にもう1撃加えたが反応が無い。


「大将を討ち取ったぞ! あとは普通のオークだ! 最後まで気を抜くな!」


 僕が大声で叫ぶと、何かが飛んでくるのが見えた。

 咄嗟に盾を構え飛んできた物体を防御する。 下に落ちたのは、木製の棒手裏剣だった。

 倒した後にこそ気をつけろだったよね。 本当に危ない! チラッと見えて無かったら地獄の特訓が待っているところだった。


 切り刻まれたオーク、薪や野草なども全てリョウタロウ様が持って行って下さる事になった。

 マジックバッグか~、うらやましいなぁ。

 リョウタロウ様の所へオークを運んでいたショウマ様が、僕達の所へ来てオークを片手で持ち上げ笑顔で言う。


「おう! お前ら良くやった! こいつはお前達のものだ。 売るなり武器や防具に加工するなり好きにしたらいい」


 え? 倒した魔物は、ソメイヨシノで買って全員に均等割りのはずじゃないのかな?

 でも、ここまで苦戦したオークの素材を貰えるのは嬉しいけど・・・チラッと、ショウマ様を見ると笑顔で頷いている。

 本当に貰えるんだ! やった! すっごい嬉しい!


「はい、ありがとうございます!」


 オークを貰ったのは僕達だけでは無かった。 オークリーダーが数体いて、PT単位で倒したところにそのまま渡すことになったようだ。

 僕達だけだったら特別感あったんだけど、皆に悪いし良かったと言えるかな。


 帰り道でオークをどうするか話し合いをし、全員一致で売ってお金に買えて武器や防具を新調しようと言うことになった。

 確かに、僕達の武器は折れ曲がり刃こぼれをし次の戦闘では使えないだろう。 武器を買うと高いし、性能が良い訳でも無い。

 やっぱりタクミ様の所で教えてもらっている鍛冶師見習いに打ってもらうか。

 ケイタ様かタクミ様かカナタ様が武器を作ってくれたらなぁ。 いや、無い物ねだりは止めよう。


 いつも武器を作ってもらっている人族のワイグロの所へ行き武器が壊れた経緯を話す。


「あぁ、なるほど。 つまり壊れにくく切れ味がいい武器が欲しいと?」


「そう、出来たりしない?」


「あのなぁ。 前回の片手剣もやっとタクミ様にOK貰ったんだぞ? そんな俺が作れると思うか?」


「いや、思わないかな・・・あ! ごめん、そういう意味じゃなくって」


「はぁ・・・まぁいいさ。 切れ味が悪くなっても良いというなら、アイディアが無い訳じゃないぞ」


「本当!?」


「ああ、簡単な方法だと片手斧にする」


「そっか・・・でも、斧は使ったこと無いから剣か槍で何とかしたいんだけど」


「うん、解っているさ。 2つ目の方法は、小さい騎士槍を開発する」


「騎士槍? あの馬上で使う?」


「ああ、そうだ。 それならば、突きで出血を狙うことも出来て、打撃を行うことが出来る。 切ることは出来ないが、突きと打撃の2つを持ち替えをしなくても使える。 打撃武器に近い形状だから、かなりの耐久性も見込める」


「なるほど! それは良いアイディアだと思うよ」


「だが、デメリットもある。 大型になるから重くなるんだ。 どうする?」


 結局は、騎士槍を地上で使えるように改良する事に決めた。 斧もなんかの時のために少し練習をしていこう。

 冬に入ったら、魔物もほとんど大人しくなるし武器調整や体を鍛えなおすのにはちょうど良い。

 折角新しく作った武器なんだし、体に馴染ませないとね。


 この武器の効果で、第1回の競技会を勝ち抜くことが出来た。 しかし結構ぎりぎりの戦いだったので精進しなければ。

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