第288話 ミスティ改造
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「その服みたいなものは脱げたりしないの? 着ているだけに見えるけど」
俺はミスティをまじまじ見ながら聞いてみる。
「これはワタクシの外皮、人で言うところの肌なんですのよ? 脱げるわけ無いじゃありませんか」
「じゃあ、俺が弄ってしまって良いの? 何らかの不具合が出たりとかしないの?」
「この胸の扉の奥にある魔晶石を壊さなければ特に問題ありませんわ。 壊してしまったとしても、貴方様なら直せると思いますわよ? ミズキ様が作っていたダイヤ? モンド? というのとほとんど一緒のものですし」
「肌をやわらかく作る方法とか知らないんだけどやり方は教えてもらえる? あと、そこにあるゴーレムのようにボールジョイントにしても良い?」
「肌と同じように作る方法は特に秘匿している訳ではありませんし、教えても良いですわよ。 ちょっと、このゴーレムに入ってみてもよろしいですの? 動きとかやって見ないと解りませんもの」
「ああ、それは構わないけど。 このゴーレムだとちっちゃくない? 大丈夫?」
「私の精神体の質量は約21gですわ。 その重さが乗って崩れてしまうなんてことは無いと思いますわ。 貴方様が作ったゴーレムなのですから」
「あ、上に乗るとかそういう感じなのね。 じゃあ、一回入ってみて」
精神体が中に入り、準備運動の体操のようなことをする。 飛んだり跳ねたりバク転したり、ダンスをして見たりしているようだ。 何故かダンスがブレイクダンスだ。
ブレイクダンス踊れるとパンツ見放題だぜ? と言われてやってみたのはいい思い出だ。
いや、そんな事はいい。 ミスティを見ると今までの体よりも動きやすそうに見える。 だから、色々しているのだろう。
とりあえず腕などを少し触って見た。 見ただけじゃわからないけど、ミスティの体の表面プニプニしているが肌の奥側に硬いものを感じるので唯の削れ出した木人に皮を被せた物のようだ。
ミスティがゴーレムの体に飽きるまでミスティの体を隅々まで確認する。
服と肌などの表面を確認するとゴムかシリコーンのようなものに感じる。 作り出すのは難しいかもしれないが、俺でも色々といじる事が出来そうだ。
魔晶石も確認すると、保存魔力量や運動能力などは十分すぎる性能があるようだ。 と言うか、この魔晶石の性能はザックィンムの魔石で作った魔晶石よりも上じゃないか?
どうやってこんな魔晶石を作ったんだ? あれ? 頭にも扉があるぞ? 中を見ると様々なセンサー系の魔晶石が入っている。
なるほど、こういう構造やセンサーにすれば擬似的に色などが把握出来るようになるのか。 しかし、どんな魔法陣かどうかわからないな。 あとでコノミちゃんとアカネちゃんに調べてもらうか。
そんなことを考えていると、ミスティが体に戻る。
「このボールジョイントはすごいですわ。 今まで無理やり力と魔力で動かしていたのですが、スムーズに動きますわ。 これなら細かい動きも出来ると思いますわ」
「それは良かった。 骨格自体はザックィンムで出来ているようだし、この外皮の作り方を教えてもらえればいじる事が出来そうだよ。 魔晶石も十分な強さがあるようだけど、この胸の魔晶石ってどうしたの?」
「この魔晶石は全て貰い物ですわ。 確か、ドラゴンの魔石を複合した物とドラゴンの成体の魔晶石と言ってましたわ」
「そっか、これだけの魔晶石を作ったって訳じゃないのか。 じゃあ、皮膚の作り方などを教えてくれ」
「解りましたわ。 と言っても、そんなに難しいことは無いですわよ。 ワタクシの樹脂とこれを混ぜればいいんですもの」
「これって何? 黒に近い茶色い粉にしか見えないんだけど?」
「これはワタクシの葉や花びらを乾かして粉にした物と果実、種の中身、ワタクシの枝や葉を炭にした物などを混ぜたものですわ。 同じ強さのトレント族は悪意でくっ付くのでワタクシの素材で作られていますの」
「アクイでくっ付く? アクイって何?」
「えっと、こちらの星では魔素と呼んでいるんですわね」
アクイ? 悪意? 悪衣? 悪い心とかそんな感じなのか? でもくっ付くって? どういうこと?
「ごめん、アクイについてもう少し詳しく教えてくれない?」
「ワタクシもそこまで詳しいわけではありませんの。 もしかするとケットディアであるオモチさんが知っているかもしれませんわ」
「ん? 何でオモチが知ってるの? アカネちゃんが呼び出した・・・いや、生み出した従魔でしょ?」
「そうとも言えますわ。 でも、違うとも言えるんですの」
「どういうこと?」
「オモチさんは、元管理神だと思いますわ。 うろ覚えとなってしまうんですけど、確かケットが猫で、ディアが神って意味だったと思いますわ」
「え? マジで?」
「ええ、ケット・シーにしては強すぎますし、何よりシンパシーを感じますの。 魂そのものが力に引き寄せられて、復活したと言う可能性が1番高いですわね。
えっと、私達管理神も死んだら同じく輪廻に入るんですの。 でも、力が強すぎて光で中々魂が分解されないんですの。 そんな時に引っ張ってこられたんじゃないかと思いますわ。 貴方様達の力ならそんなことがあっても不思議では無いんですの」
「俺達が異常だと自覚はしてたんだけど、神様を従魔か・・・敬ったほうが良いの?」
「ワタクシも、生まれたてとは言え管理神となっているんですのよ? それなのに、敬われたときが無いんですわ。 オモチさんを敬うのなら、ワタクシも敬っていただいても良いんですの」
「あぁ、ミスティは敬えないな。 かなり知識を教わって感謝もしてるんだけど、最初の出会い方が悪かったからなぁ」
「最初の出会い? 何かありましたかしら?」
「肥料が貰えるなら何でもしますわ。 ワタクシの体を使ってみてくださいまし・・・みたいなこと言ってなかったっけ?」
「あぁ、そんなことも言ってましたわね。 それよりも、ワタクシの体を直してくださいませんこと?」
「そうだな。 アクイのことやオモチが元管理神であるってことはちょっと引っかかるが、切羽詰っているわけじゃないし明日でも良いかな」
「今の所問題が起きていないんですし、ゆっくり考えたほうがいい答えが見つかると思いますわ。 あと、ワタクシも従魔にしてくださらないかしら?」
「はぁ? 何で? 特に今のままでも問題ないんじゃないの?」
「街の中や皆様の近くにいる時は良いんですけど、今のワタクシだとオークを倒すのがやっとと言う所なんですのよ。
魔力の大半を体を動かすのに使っているからというのが理由なんですの。 従魔契約をすれば、魔力を貰うことが出来るんですわ。
なので、従魔契約をしてくださいまし」
「ん~、タダシさんとヨシさんの従魔になるってのはどう? 2人は草木の心得を持っているから相性も良いと思うんだけど」
「それでも構いませんわ。 ワタクシはそのゴーレムに入っていれば良いんですの?」
「うん、それで構わない・・・あ、待って」
「どうしたんですの?」
「これちょっと見て見て貰って良い? 相性結構いいと思うんだけど」
俺は、ザックィンムの素材で作ったカーボンナノチューブを取り出して渡す。
「こ、これ凄いですわね。 前に見たスーパーダイヤといってたものよりもきれいに整ってる感じがしますわ。 しかも魔素や魔力で自動修復・・・本当に何でもありなんですわね。 こちら、基本はワタクシと同じですし使えると思いますの」
「そっかそっか。 じゃあこの素材を肌の下にも入れる?」
「出来れば肌の外にして欲しいですわ。 肌の下ですと傷ついた時に修復が楽になりそうですもの」
「外か。 出来れば肌の下にして欲しかったんだよね。 服は俺達と同じ物を作ろうと思っていたし」
「その特殊な鎧を作ってくださるんですの? それは嬉しいですわ」
「あ! ミスティって血液無いよね? 無いとこんな風には出来ないんだけど」
あぁ、やっちまった。 ミスティの本体は木だもんな、ミスティの魔剣の鎧版はあきらめるか。




