第285話 秋の終わり
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ナリッシュ君からの手紙を開封し、十数枚にも及ぶ中身に目を通す。
いつも通りの挨拶から始まり、ダンジョン都市での出来ごとなどが書いてある。
いつもと同じ感じかな? と思っていると、イサオさんのことが書いてある紙を発見する。
どうやらイサオさんは人族の国と手を結んでダンジョンを攻略しようとしているようだ。
前の手紙にも書いてあったが、イサオさんはダンジョン都市では英雄扱いされているらしい。 と言っても人族限定での様だが・・・
強さを考えれば自然と攻略階層も1番になるし、英雄のように扱われるのもわかる気がする。
炎蛇というパーティは解散し、イサオさんと炎蛇の男性メンバー(クルト)の・・・名前なんだっけ? ぜんぜん思い出せない、が連れていた奴隷のウサギの獣人2人とサポートメンバーで攻略している様だ。
どういう経緯でウサギの獣人と2人で攻略しているのか解らないし、他の性格の悪い2人は何をしているのかさっぱり解らない。
ナリッシュ君たちも調べようと思ってくれていたようだが、獣人や魚人、爬虫人(蛇、トカゲなど)は人族の住む場所に入れないようだし無理だった様だ。
エルフとドワーフは一応入れるようなので、スートーグさんの愛弟子のエルフの戦士を派遣してもらったがぜんぜん見当たらないようで、死んだのでは? と言うことしか解らなかった。
死んだとしたらどういう経緯で何があって死んだのかを見極めたい。
イサオさんは、あんなに仲のよさそうにしていたパーティメンバーが死んだのに平然としていると言うのだから。
何らかの魔道具や魔法で操られていて、なんかの拍子に効果が切れて・・・などと言う想像も出来てしまう。
イサオさんもそこまで軽率な行動はしないと思うが、確かめたいとは思っている。
今のところ、ダンジョンの攻略は止まっているらしいので、ダンジョン都市に行ってから聞いても遅くはないだろう。
ダンジョン攻略がとまったのは、砂海と呼ばれているフロアのせいらしい。
なんでも、海のように砂に潜ってしまうエリアなんだと言うことだ。 砂が水の属性を手に入れたのか、砂自体がそういうものなのか全く解らない。
その砂海を渡れる船の製造され次第、攻略が再開される。
船は早ければ夏には製造が終わるようなので、春までにはダンジョン都市に行った方が良いだろう。
引き続き情報収集をしてくれるようなので、リョウさんにまた冒険者ギルドで指名依頼として発注してもらおう。
転移門を完成させ、モンステラの開発も大詰めを迎えていたころ。 俺たちは、新しい乗り物の発表をした。
そんなにすごい物ではない。 簡単に言うと完全自動で運行する大型の無人バスだ。
魔導バスとしてフラン様に1度紹介したこともあったので、鉄道よりも受け入れやすいのではないかと思いバスにしたのだ。
一般区画の壁に沿った内周や最近広げた農地区画の外壁の内周など外壁の内側を一定の時間ですでに走行している。
一般区画とソメイヨシノ区画と呼ばれている場所(ショッピングモールがある旧農地区画)は、中央線も完備していて乗換えを行えばどこにでもいけるようになっている。
最近広げた農地区画の各簡易門の近くにも駅があり、一般区画やソメイヨシノ区画の前の門(旧第1の門)までのバスも走っている。
走行する場所は道路の下、地下なので騒音もないし、乗り降りする際にしかバスへと繋がる通路への出入り口が開かないようになっているので事故の心配もほとんどない。
安全対策で走行路中にセンサーも大量についているし壊れたときにも自動修復出来るように、この地下道やバスも半マジックハウスになっている。
半マジックハウスとは、大きさは変えられない代わりに修復を自動でやってくれるようにしたものだ。
バスの料金は学園の運営費になる予定なので、学園の校舎の魔晶石と繋がっている。 メインである学園の魔晶石が半分を切るとサブ魔晶石として設定してある兵舎の魔晶石に繋がりそこからも魔力が流れてくる仕組みとなっている。
計算上では、生徒たちが補充してくれた魔力で賄えるはずだが、安全のため保険は必要だろうと思いサブを設定した。
両方の魔晶石の拡張も行っているので、魔力補充でいっぱいにするのは難しいだろうが・・・
これが出来たのもミスティの知識があってこそだ。 トレント素材の生かし方や特化魔道具の作り方などなど、本当に助かっている。
現在は、リョウさんの依頼でバリアを何とか出来ないものか実験中だ。
ミスティは、自分の固有魔法でバリアをはれるようだが魔法や魔道具にしたことはないようなので苦戦している様だ。
その後には、アカネちゃんから小型化の依頼も来るだろうし、俺のことは後回しにしたほうが良いだろう。
話だけはきっちりと聞けたので使えそうな知識を総動員して、カーボンナノチューブを自在に操るファ〇ネルいや有線だからイン◯ムの魔法陣の改良に取り組んでいる。
この作成は趣味なのでゆっくりとやっていこう。
バスの運行を始めたと同時に、駅周辺の地価が一気に上がり始めた。
駅周辺の土地は殆どがソメイヨシノ名義なのだが、少しだけ一般人の名義の所がある。
地上げのようなことはしたくないのでとりあえず放置で良いだろう。
そして、学校やショッピングモールなどが無い駅周辺には小さい駅ビル、その周辺にはアパートや銭湯を建てる。
そうすれば、便利になり買い物に困るようなことも無いだろうし、銭湯で体を清めれば風邪などの病気なども減るだろう。
そして、最近広げた農地区画には安価な宿屋と銭湯を一体化させたものを建てる。 食事については、自分で作っていくか買って持ち込むしかないのだが。
ほぼ計画通りに店や家などが建ち、移民の人たちもどんどん受け入れ多種多様な生活風景となっている。
移民の90%は、ソメイヨシノに雇われ体を鍛えるのにヒィヒィ言っている。
まぁ倒れたところを先輩達が世話をしてくれているので、感謝と羨望の眼差しを送っている。 つらい経験をして優しくされる・・・なんか洗脳のように感じるけど、仲良くなっているようだし結果オーライってことで。
宿屋などの建設は雪が降る前に一気にやってしまいたい。 なので、俺がこの人と思う人をピックアップしベトニアやセードルフに頼んで木材を加工しているところへ連れて来てもらった。
忙しいと思ったが、すんなりと了承をしてもらえた。 報酬は無しで・・・
無しと言っても、俺の技術ややり方を伝承しても良いと言う報酬があるので良いんだそうだ。
こっちとしては願ったりかなったりなんだが。
ミミリさんの所は今回は呼んでいない、ケイタ君から建設して欲しいものの依頼があったからだ。
1番技術が上なのがミミリさんの所なので、何とか自分達だけで作り上げて欲しい。
木材が均一の板になっているのは何でか、木目があまり無いのは何でか、木材を切っているときに色々聞かれる。
木目が少なくなってしまっているのは合板だから、出来るだけ木目が綺麗な所を前に出すと同じ木目になってしまう。
この世界の接着剤である樹脂はどの位の強度があるのか解らない。 なのでトレント材を使うときにのみ合板は使用している。
板が均一なのも、加工して板にしているからなど色々と教えていく。
木のかつら剥き加工風景を見せると、驚きの表情で固まってしまった。
建築ラッシュも終わった頃に、雪がちらつき始めた。 ぎりぎり間に合って良かった。
建築を手伝ってくれた人たちやその家族で小さな宴会を開き、今までの苦労を労った。 タダシさんの料理をはじめて食べる人もいたようで、涙を流して感動していた。
無料で手伝ってくれたので、加工肉や干し野菜などさまざまな物をお土産に渡し宴会はお開きになった。




