第284話 転移?
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う~ん、これはかなり良いぞ。 ミズキさんは着やせするタイプだったのか。
て事は、聖騎士風の鎧をつけると胸が苦しいんじゃないかな? 後で改良した方が良いか? でも、胸のサイズに合ってないから調整しますってのも変だよなぁ。
でも、魔法使いの鎧しか着てないから別に調整しなくてもいいのかもしれないよなぁ。
そんな事を考えていると、ミズキさんが離れてしまった。 少し・・・いや、かなり残念だ。
「すみませんでした。 興奮してしまって」
ミズキさんは顔を少し赤くしながら言う。
おお! かなり可愛い! 最近、俺に対してミズキさんが暴力的だったからギャップ萌えって奴なのかな?
でも待てよ、見た目はかなり可愛いんだよなぁ。 やっぱり、ただ単に可愛いと思っているだけなのかもしれないな。
「いや、大丈夫大丈夫。 でも、大成功だよ大成功!」
「はい、そうですね! これを研究していけば個人の魔法でも転移が出来るかもしれません」
あら、結局魔法で再現するためだったのか。 でも、魔法で転移が出来るようになればかなり便利だしいいけどさ。
そんな事を考えていると、転移門の中の色が黒から灰色に変わっていく。
「ミズキさん!」
「はい! 後方に移動し、魔法を準備します。 カナタさんも気をつけてください」
「了解! 危なかったら逃げるからね!」
「はい!」
何が出てくるか解らないが、武器を構えて転移門を注視する。
人間の手の様なものニョキっと出て来る。 何があるか解らないので、油断無く様子を伺う。
狭い場所を無理やり通り抜けるように出てきた手を扉の縁につき、通ろうとする。
出てきたものは、ミスティだった。 出てきたと言っても未だに半分も出て来ていないが。
「ぐぎぃぃぃぃ。 あら、また嵌ってしまいましたわ。 あ、貴方様。 ワタクシを引っ張ってくださらないかしら?」
ミスティは、最初に会ったときと同じように全身を後ろに引っ張られた状態でこちらを見ながらいう。
「本当にミスティか? 魔物が変化したものだとかは言わない?」
「ワタクシはミスティですわ。 前のように引っ張ってくださいまし」
俺は、ミスティの手を握る。 その途端後ろにジャンプする。
「うわぁぁ! あれ? 何で? 柔らかいんですけど」
「この体は、人の体を模したゴーレムになっていますの。 人の肌のようにプニプニですわ。 あの、いいから引っ張ってくださいませんこと?」
目の前にいるミスティが本物かどうかはわからないが、嘘はついていないようなので試しに2,3個質問させてもらった。
もちろん安全マージンとして、ミズキさんは武器を下ろさないでいてもらった状態でだ。
ミスティでしか知らないであろう前に訪れた星の名前やザックィンムのことなど全問正解。
これでようやく助けることにした。
「ふぅ・・・ようやく信じてくださいましたわね。 本当に用心深いんですわね」
「まぁ、癖だと思って諦めてくれ。 ところで、どうやってここまできたんだ?」
「そんなこと簡単ですわよ。 この素材は元ワタクシの体なんですから、精神を入り込ませられない道理はないですわ」
「ん? じゃあ、転移ゲートに無理やり介入してってことか?」
「そうなりますわ。 ですが、移動魔方陣の力が弱すぎて途中で引っかかってしまったんですわ」
「弱すぎた? じゃあ、このゲートは完成していないって事か?」
「力で無理やり通ることは出来るほど・・・と言ったところですわ。 なので、このままでも変なところへ出てしまうような事故みたいなことは起こらなかったと思いますわよ。 せいぜい魔力の消費量が倍になるとか位ですわ」
「魔力が倍か・・・その位なら安心だな」
「引っ掛かってしまった迷惑料と情報料して、前にいただいた肥料と白い粉を渡してもらいますわ」
「ああ、その位なら渡すけど、どうやって持って帰るんだ? 本体は向こうの星なんだろ?」
「ここにある移動魔方陣を強力なものに改良して、私の星のキーを入力して持ち帰ろうと思っていますわ。 もしかして、改良したら駄目ですの?」
「いや、そうじゃない。 そうじゃないんだが、ミスティが改良できるの?」
「ええ、勿論ですわ。 ワタクシは結界や移動の力が得意ですし、中を通った事で改良点も幾つか解っていますし」
「そりゃすごい。 あ、あと質問なんだが、その星のキーを入力すると俺たちもミスティの星に転移できるのか?」
「ええ、もちろん出来ますわ。 ワタクシの星はそこまで離れていないんですの。 そこまでの移動なら、貴方様方ほどの魔力量があれば何の問題にもなりませんわ」
「じゃあ、ミスティの星に俺たちの転移のスポットを作っても良い?」
「転移スポット? ですの?」
ミスティは小首を傾げながら言う。
「今作成しているこの転移ゲートは、2個の魔道具が対になっていて1箇所ずつしか繋ぐことが出来ないんだ。 だから、ミスティの星に転移ゲートを大量に起いて経由地にしたい」
「そう言うことでしたの。 もちろん構いませんわ」
「ありがとう助かるよ」
「ただ肥料と白い粉を定期的に貰いますわ。 この2つのお陰でワタクシ強く立派に育ってますの」
「ああ、御礼として渡すことを約束するよ。 ただ、白い粉って呼び方はやめなさい」
「どうしてですの? 白い粉は白い粉ですわよね?」
「あれは石灰と言う名前なんだよ。 白い粉と言われたら、俺たちの国では良くない物をさす言葉として使われたりするから」
「へぇ~解りましたわ。 じゃあ、改良に取り掛かってしまいますわ」
「あ、待って。 皆がいるところでやってもらって良い? 出来れば解説付きで」
「それは構いませんわ。 もとより、そうする様に言われてきたんですわ」
「言われてきた? 誰に?」
「もちろん全様ですわ。 結界のことや移動魔法陣の事などを教えてあげて欲しい。 と言ってましたの。 全様によっぽど気に入られているんですわね」
「ゼン様と言う人は知らないが、ただで教えてくれるって言うんだから教えて貰うよ」
「誰もタダで何て言ってませんわ。 ちゃんと肥料とかいただきますわ」
「解ってるよ。 ちゃんと渡すから安心してくれ」
その後移動の魔法陣を改良し、転移の魔道具を作り上げるまで約5日間かかった。
組み上がった転移の魔道具の実験でミスティの星まで転移が可能になった。
ミスティの星は、ほとんどが荒野と化しているので目印としてミスティ本体の木のある場所の近くに転移の魔道具を置くことにした。
地震も無く、雨もあまり降らないそうなので魔道具置くにはもってこいの場所だと、長年住んでいるミスティからお墨付きをもらったと言うのもあるが。
そして、王都にある俺達しか使わない設備はミスティの星へとお引越し。
お屋敷の中にある設備の半分位とマンション型畑などを移動させる。
「あ、ミスティ。 この星って魔物出るの?」
「出ますわよ? でも、この近くには出ませんわ。 ワタクシがいるんですもの」
「近づいてきたら養分にしちゃうとか?」
「そうですわ。 養分と言っても本当に微々たる物なんですけど」
え? 適当に言っただけなのに 当たった? マジで?
でもまぁ、こんだけ根が大きいと養分も相当必要だろうし仕方ないのかな。
「じゃあ、魔物の種類は?」
「殆どがゴブリンですわ。 稀にオークがやってくる事もありますけど」
「なるほど、了解。 じゃあ、この星で狩りをする意味はないんだね」
いい魔物が全くいないし、さして強くもないだろうしね。
引越しを終え、お屋敷のダイニングでささやかなパーティが開かれた。
パーティと言っても情報交換や新しい技術の話だったり、義手・義足についてだったりを話した。
義手・義足に慣れた人は、既に治療院を出て社員寮で過ごしているようだ。
これで1段落と言うところか?
「そう言えばカナタさん、ナリッシュ君から手紙が届いてましたよ?」
リョウさんが亜空間収納から手紙を出す。
いつもの定期連絡かな? そう思いナリッシュ君からの手紙を受け取る。