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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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第282話 義手・義足の作成

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

 この混雑は、俺たちの責任と言うことが解った訳だ。 抜けなどがないように丁寧にスピーディに教えていこう。

 納期のある仕事は夜にコツコツとやっていたり、全員で手伝い一気に終わらせて教わりに来ているとのことだったしね。

 最初は素材となるトレントの特性などの座学をして、こちらで用意したトレントの加工をしてもらう。


 大工道具などは持ち込みでやってもらっていたが、トレントの素材を加工するには切れ味が足らない。

 急遽タクミ君に大工道具を作ってもらうように依頼する。 タクミ君が作ったものはナンバリングして完全に回収。

 生徒たちにも同時に作成してもらい、こちらは販売することにした。


 今まで木工に従事していたこともあり、皆筋がいい。 1体目は基本に忠実に作ってもらう為に細かく見ていたが、2体目は同じものを教えずに作ってもらう。

 ほとんどの人が合格し、3体目に自分のオリジナルのものを作ってもらった。 不合格だった人は魔方陣が上手く彫れていないだけなので直ぐに修正できるだろう。 もう1度作ってもらうと今度は全員合格となった。

 魔法も使わず、良くこんな綺麗に作れるものだと感心する出来の物もある。

 全員が3体目のオリジナル作品を作り終わると、テーブルに飾り自由に見てもらうと同時に俺が採点をし改善点などを書き出し渡していく。

 義手義足の魔方陣が完成し生徒たちに覚えてもらうまで1月ほどかかったが、そのおかげで木工師たちのゴーレムに関して何もいうことがない位になった。


 卒業の証ではないが、俺が本気で作ったトレント素材の全長40cmのボール関節ゴーレムと、ジリコテさんに貰った木材評価表の写しを木工所ごとに渡す。

 渡した木材評価表のザックィンムは特殊すぎるので写さずに、サウザンドエルダートレントまでの物にした。

 義手や義足の作成は、各木工所の規模にあわせてに発注し、木工師を目指している生徒たちもそこに振り分けられることになった。

 魔方陣の刻み込みは魔道具作りをしたいと言う生徒たちに丸投げし、俺達がいなくても出来上がるようにアカネちゃん達が指導してくれたようだ。


 怪我の程度が軽い人から順に義手義足を、寝ながら嵌めて動かす練習をする。 動かせるようになって来た所でリハビリに入る。

 義手義足をつけた人が手摺りに捕まりリハビリとして歩いているのを見て、ようやくここまで来たんだな・・・などと思っていた。

 義手義足は、そのままでも広まっていくと思うので商人志望の生徒数人に調整などを行わせ俺たちはお金を払うだけとなるようにした。

 もちろん、そのお金自体も本人の借金となるし死病の薬も借金と言う扱いになる。

 しかし、奴隷に落とさずきっちり勉強し実習の時に支払う金額から差し引く契約にしている。

 今までと同じように、衣食住は提供しているし差し引かれてはいるもの少なくはない給与は一月ごとに必ず渡している。

 他のお店などと比べたらかなり高く設定している。 差し引かれた給与だけでも独身ならば裕福に暮らせる金額を渡し、借金を抱えた2人が結婚し共働きするなら家族で暮らすことも十分出来る。


 働く人が増えたので日本で言うところの団地のようなものが工場の脇に建設された。 これは、独身のための社員寮と家族で住むための社員寮だ。

 社員寮は、全棟マジックハウスとなっている。 しかも、使用魔力量を計算し表示して各部屋ごとに徴収する。

 最低ラインを割り込んだ場合は一時的に、魔力を管理人が貸して後で返還して貰う。

 返還が出来なければ、会社からも社員寮からも出て行ってもらう決まりとなっている。

 魔力は訓練のお陰もあり、皆余り始めているので特に問題はないだろう。



 話を戻すが、当面の問題は心の傷だといえるだろう。

 ナショウやルーリン達に今までの経緯を話してもらったり、シャガ達に自分の境遇と今思っていることを話してもらったりしてくれている。

 ユカさんが、ルーリンやシャガに話すと快く引き受けてくれたのだと言っていた。

 自分の体験など思い出したくもないだろうし、多くの人にわざわざ広めるような事はしたくもないだろう。

 それなのに快く引き受け、皆に話してくれた勇気。 本当に頭が下がる。

 俺の勇気なんかと比べると、土星とゾウリムシ位の差があるだろう。


 ナショウやルーリン達は盗賊の命を奪わず、怒りを矛としなかった。

 シャガ達は、俺が扇動したこともあり、怒りを矛とし復讐を遂げた。

 この2組の話しはぜんぜん別物になるかと思ったのだが、なんとなく同じような話になっていた気がする。


 まずは、ナショウとルーリンの話。

 復讐をとげないでこのモンステラ(王都の名前)に来れたから、色々な道を探求することが出来た。

 最初は自分は汚れどうしようもないと何度も思っていたが、綺麗だと汚されてなどいないんだと皆温かく心の底から言ってくれた。

 その人の・・・その人達ために自分が汚れてると思うのはやめよう。 このまままっすぐ進んで、ここにいる人達に行動で感謝を伝えよう。 そう思っています。

 皆さんもいろいろな物を見て触れて、ゆっくり考えてみてください。


 そのような話だった。

 それぞれ事情を理解して受け入れて貰った事で、前に進んでいける様になったんだろう。

 今も皆で集まって仲良く一緒にお酒とか飲んでいるようだし、全員付き合っている人がいるようだしね。



 次はシャガ達は、自分の生い立ちなどを話し聞かせ。

「僕達は、ここにいる皆さんのことを羨ましいと思っています」

 この宣言で始まった。


 生い立ちを聞かせてなければ、反発されていただろうが特に何の抗議なども無く話は進んで行く。

 僕は、カナタ様の手助けを受け復讐をとげました。 自分で選んだんですから、そのことに関しては後悔をしていません。 いえ、後悔をしてはならないのだと思っています。

 自分の家族が目の前で殺され何も出来なかった。 泣くことも怒ることもない屍だった僕にカナタ様が手を差し伸べてくれました。


 そして目の前に仇が来たとき、この手で復讐できるんだと言う歓喜が僕を包みました。

 ですが、復讐が終わった僕達は空っぽになっていたんです。 これで終わってもいい、死んでもいい、家族や兄弟の元へ・・・そんな感情しかなかったんです。

 カナタ様から次の目標を言われなければ、僕はここにいなかったかも知れません。


 もう1度言います。 皆さんが羨ましい。 復讐と言う道に入らなければ、道が無数にあるからです。

 ここなら・・・このモンステラならば、どんな事もできるようになるでしょう。

 僕たちも復讐の前にここを知っていたら、思いとどまっていたかもしれないと思うほどに素晴らしい場所です。

 復讐をとげた僕達に皆さんの復讐をとめる権利はありません。 ですが、ここで学び色々なことをしてからもう1度考えてください。

 皆さんの前の道を自分で無くさないことを願います。



 今直に決められなくても、2組の話は十分に伝わっただろう。

 俺も、人を大量に殺しているから復讐を止める権利はない。 しかし、思い留まって欲しいとは願ってしまう。

 かなりの矛盾なのだろうが、そう願ってしまうのだ。

 時間が過ぎれば自分の気持ちもの整理もつくだろうし、俺達はサポートしか出来ない。

 今はそっとしておくしかないだろう。



 俺達もこの1月ほど遊んでいたわけではない。 タダシさんとヨシさんは、新しく地球に無い種や苗を育て農家に栽培方法などを教えたり、料理の開発などをしている。

 料理の開発は、基本的に俺達の舌に合わせた料理となっているが料理人達が絶賛しているので大丈夫だろう。 もちろん、保存食なども同時に開発している。

 冒険者の食事事情も改善して行くだろう。


 アヤコさんはリサー姫と共に木綿での服や寝具などを開発している。 羽毛布団の開発も進んでいる。

 デスバードの雛の羽毛で、作ってみたのだがかなり好評だ。 だが、少量しか取れないし無理やり取ったりすると雛が傷ついてしまうので今の所販売はしていない。

 俺達が住んでいるお屋敷はマジックハウスなので寒いとか暑いとかは余りないので、真冬になったときに使う位だ。

 しかし、貴族や王族は城で暮らしているので底冷えするらしく羽毛布団を渡すと大層喜んでいた。

 城をマジックハウスにしてしまうと、木のお城になってしまうので見栄えが良くない。

 マジックハウスを室内に建設したとしても、魔力が少ない獣人だと管理が厳しいだろう。


 見栄えを気にする貴族としては、羽毛布団は救世主と言えなくもないのかもしれない。

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