第280話 実験(2)
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俺とショウマ君は、通信機で少しやりたい事があるからと言ってオーク捕獲を任せ、集合時間を30分遅らせて貰い魔物と対峙している。
今目の前にいるのは、ジャイアントアントだ。 かなり弱めの魔物だが形状の違う魔物の攻撃やいなし方など全て把握するために、戦うことにしたのだ。
ショウマ君が戦い、その戦いを見て俺も動きを真似る。 真似た動きで魔物と戦うが、上手く立ち回ることが出来ない。
ショウマ君は何度か被弾をしたりしているが直に慣れ、次第に被弾も減り上手くいなせるようになっている。
たいして俺は、いなそうとすると蟻の腕? 足? を破壊してしまうし、気が付くと蟻の顎の攻撃が俺に当たり俺の動きに耐えられず蟻の頭が吹き飛んで死んでしまうこともしばしば。
俺のスキル、学習! 仕事してくれ!
結局、その後も上手くはならず要練習と言うところで皆が待っている場所に向かった。
「カナタさん、お帰りなさい。 折角なので色々な魔物を狩って来ましたよ。 ブラックビーフも数体ですがいましたし、良い感じではないでしょうか」
リョウさんは、コンビニに行ってジュースでも買うかのように言う。
「おお! ありがとうございます。 すみません、オークの捕獲もお任せしちゃって」
「いえ、壁を超えてから気分がすっきりして、やる気に満ち溢れているんです。 なので、勝手にやった事だと思って気にしないでください」
「そうですか? それなら良いんですけど」
「カナタさん。 オークの磔も終わりましたので、早速ですが実験を始めましょう」
ケイタ君がメガネの位置を直しながら言う。
そんなやり取りの後、実験を開始する。 まずは、オークの選別をする。
選別を終えたオークの足の付け根部分を切り取り、石化させ石で作った足を繋げる。
石化を解除すると、切断される前の足と寸分も違いない物が付いていた。 石で作りオークの足に変化した足を切り取る。
肉の無限増殖実験は成功・・・だが、結果は良くないものだった。
「オークの肉である事は間違いない。 だが、スカスカでパサパサ、栄養価も低いだろうな。 味は、たぶんでしかないが無いに等しいんじゃないか?」
「それは残念。 肉の安定生産が出来れば安価で美味しい肉を提供できると思ったんですけど」
俺は考え事をしながら呟く。
しかし待てよ。 こいつらに栄養を与え、足に栄養が行きわたれば無限ループが出来るんじゃないか?
「カナタ、そろそろ止めておけ。 オークを飼育し足の栄養が戻るかやってみたいんだろうが危険だ。 引き際が肝心だぞ?」
「あれ? 考えが漏れていました?」
「顔を見れば誰でも分かる。 何かあってからじゃすまないんだ、止めておけ。 もし本当にやるのだとしたら、無人島にでも行ってからやるようにしたほうがいい」
「それもそうですね。 今回はこの辺で止めて帰りましょうか」
もう1つの実験はまた今度で良いかな。 これが成功したら色々と面倒な事になりそうだし。
「カナタさん、もう1つの実験は良いのですか?」
ケイタ君はメガネを直しながら言う。
「え? 何で解ったの?」
「分かるも何も、誰でも思いつくと思いますよ? 別の魔物の石化素材で腕や足などが復活するかですよね?」
「まぁそうなんだけど、普通気が付かないんじゃないかな?」
「そんな事はいいんですが、やるんですか? やらないのなら気になるので1人でもやろうと思いますが」
「解ったよ、やってみようか。 でも危険があるかもしれないから、危険だと感じたら即刻実験は中止して
魔物を殺すよ?」
「それはもちろんです。 早速はじめましょう」
最初は、オークに石化ゴブリンで作った足を付けてみる。 問題なく足として機能しているようだ。
だが、やはり食用には向かない。 魔力量なのか強さなのか分からないが、ランクが低いと駄目なようだ。
次にオークに選別した石化エテグラットンで作った足を付けてみる。 これは、内包魔力量が大きくランクも高い魔物で足を作った場合はどうなるかの実験だ。
特に問題もなく足として機能しているようだが、太くなっている? 左右の太さが直径2cmほど膨らんでいる。
足を切って確認すると、食用になることが解った。 内包魔力量が上位の魔物であれば食用に出来るようだ。
エテグラットンの肉は硬く余り食用に向かないのだが、これなら食用にすることが可能そうだ。
こうなるともう1つのことが気になる。 食用じゃない石化魔物で作った足を付けたらどうなるのかだ。
流石に毒をもっている魔物は危険なので、30cm位のバッタのでっかい魔物を選別して、数十匹石化させ粉にして魔法で形を作りくっ付ける。
バッタのような魔物の内包魔力量とランクは1匹だとゴブリンよりも低いが、大量に消費したお陰でオークよりも内包魔力量は少し上と言うところだろう。
バッタは、大きさは30cmしかないし攻撃も体当たりとくっ付いての噛み付きしか無いので、ゴブリンよりも倒しやすい魔物として親しまれている・・・いや、豆知識はいいか。
結果は、成功? 足に変化させるのは成功したのだが、エテグラットンの時よりもかなり大きくなり筋張ってしまった。
タダシさんが足を切り取り確認すると、味は普通と言えなくもないがかなり硬いらしい。
バッタの使用個体数を減らして作っても大きさは変化するものの結果は同じだった。
食用じゃない魔物だと上手く出来ないのか? そう考えたが、ケイタ君の一言で結果が変わった。
「バッタに寄生虫がいたりとかしないんですか? その寄生虫の魔石が混ざってしまっていたりとか」
「ハリガネムシ! そう言えば、寄生虫がいるんだよね。 確認してみるね」
結果は寄生虫の魔石が石化素材に混ざってしまっていたようだ。
魔石の強さはバッタよりも弱いようなので、進化までにはいたらずくっ付けた部分だけ強くなったと言う感じのようだ。
寄生虫がいる素材を原料にしたくないので食料としては失敗と言えなくもない。
だが、ちゃんと選別をすれば食料になると言うことが解っただけでも良しとしておこう。
次は一応毒のある魔物の素材で足を作り付けてみた。
石化を解除すると足は石のまま。 つまりは失敗だ。
違いは毒の有無、毒を全部抜けば成功する可能性もあるんじゃないかと思い。 毒も全部抜き石化させて足を作り繋げて見る。
すると成功。 やはり毒が体内に残っていると拒否して回復しないのであろう。
今回の実験は、こんなところで切り上げ家路についた。
帰り道にいる魔物を遠回りして狩りながら帰る。 途中で遅い昼食を取ったり、合気の練習を皆でしながら帰ったので門へついたのは夜になってからだった。
色んな収穫があったけど、結局治療院の人達はどうするか・・・やはり作りやすい義手と義足かな。
次の日、色々終らせると全員で治療院へと向かう。
1日半空いただけだが、既に元気に走り回っている子供達の姿があった。
腕が無かったり1本足が無かったりしているのだが、関係なく走っている。
治療院のお姉さん達が頑張って追い掛け回して捕まえてたり、怒鳴ったりしている。
子供っていうのは、元気の塊だな。 でもこれじゃあ話も出来ないか。
「ストープ!! 朝ご飯、持って来たぞ~!」
直にピタッと止まり、自分からベットに戻ってテーブルの準備をする。
「ユカさん、配膳する場所の振り分けをお願いします」
「はい、解りました」
ユカさんの指示にしたがって子供達に配膳をする。 亜空間収納に入っている木で出来た給食のプレートを渡して行く。
そして渡す際に、義手などを作ってもいいかどうか聞く。 誰1人拒否する者がおらず作る事が決まった。
義手や義足はゴーレムの技術を流用した物を作る予定だが、大人も子供も魔力がかなり低い。
これでは義手などを自在に動かせても、魔力枯渇で動けなくなってしまうだろう。
そこでゴーレムの魔法陣の改良をする。 と言っても今回魔法陣を改良するのは、アカネちゃんとコノミちゃんだ。
2人も戦争などで傷ついた人を見て思うところがあったのだろう。
子供達が食べ終ると、アカネちゃんの悲鳴が響き渡った。
「ぎゃぁぁぁ!」




