第277話 キャンプファイヤー
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最後に訪ねてきたのが、ベトニアとユリのセットだ。
友人の屋台を手伝うと言っていたが、落ち着いたのだろう。
この屋台は未だに賑わっている。 というか、リピーターが多すぎる。
特にエルフ! パルメントさんから頼まれて里に持って帰ろうとしているのは解るが、マジックバッグの中に全部しまうんじゃない!
「カナタ様? 疲れているようですが、大丈夫ですか?」
ベトニアが心配そうに言う。
「いや、大丈夫。 単純作業だから疲れちゃっただけだよ。 それで2人はどうしたの? 並んでないってことは、買い物じゃないんだよね?」
2人は「ユリ、言って」「ベトニアちゃん言ってよ」とコソコソ話し始める。
ここはユリの園でしたっけ? そんな事を考えてる場合じゃないか。
あれ? ちょっと2人の表情が暗い気がするけど、大丈夫かな?
「今晩一緒に、キャンプファイヤーに行きませんか?」
ユリが、意を決したようにいう。
「あ~、ごめん。 さっきミルッフルさんが来て約束しちゃったんだよね」
「え? ミルッフルさん? ミズキ様じゃなくてですか?」
ユリが首を傾げながら言う。
「え? そうだよ? ミズキさんは、あっちにあるカキ氷屋で氷作ってるよ」
「あの、あの。 もし仮に私達が先に来てた場合は、私達と一緒に行動してくれたってことですか?」
「うん、当たり前でしょ? 先に約束してたら一緒に出かけるよ」
「そうですか・・・あのもう1ついいですか?」
少し泣きそうな顔で俺を見る。
うん? 俺何かやったっけな? 全く身に覚えがないんだが。
「うん、どうぞ」
「ミズキ様と付き合っていると言う噂があるんですけど、本当ですか?」
「え? 何それ? いや、出鱈目だよ。 俺はミズキさんと付き合っていないよ」
「じゃあ、ユカ様やコノミ様ははどうなんですか?」
「何でそこでユカさんとコノミちゃん? 全く付き合っていないよ。 というか何なの? どこでそんな噂が立ってるの?」
「かなり大々的な噂になっていますよ。 私は、周りの皆が気を使って教えて貰えなかっただけで」
その言葉を聞いて、俺は頭を抱えたくなった。
「大々的? それは面倒臭いな。 とりあえず俺はミズキさんと付き合っていないし、誰とも付き合ってないよ。 完全に噂だよ。 と言うか、出来れば否定したいが難しいかな」
俺が否定しても隠してると思われる可能性もあるし、我慢するしかないかな。
「解りました。 私達が噂は間違ってたと広めたいと思います!」
ユリとベトニアは、力強く拳を握る。
「うん、よろしくお願いします。 無理しない範囲でいいからね」
2人は、少しスッキリした表情になり去って行った。
はぁ・・・人の噂はなんとやら・・・面倒なことにならないことを祈ろう。
この混雑は夕方近くまで続き、用意した全商品が完売した。
何故か乾き物も全部売れ、残すはカキ氷のみとなっている。 カキ氷はシロップが無くならない限り売り切れないので、店じまいとした。
手伝ってくれた全員にお金を支払い、解散させ俺達は簡単に片づけをして折角なので、周りの店舗も見て見る。
知らない料理などがあるかもしれないと言うことで、商店などを営むところの屋台や料理屋の屋台を見てまわる。
様々な料理が売っているが、基本ソメイヨシノで売っているソース類をただかけただけ・・・いや、混ぜたものが多かった。
焼いた物にソースやケチャップをほんの少量かけ、あとは塩でごまかしている。
しかも、かなりの高値。 俺達の串焼き2本分の値段となっている。
俺達の串焼きでさえかなりの高値なのにその2倍ってボッタクリすぎだろ。 これじゃあ売れないのも良く解る。
生徒達の出店は、焼きうどんやかけうどん、お好み焼き、大判焼き、シャーピン、パスタなどなど色んな出店が並んでいる。
後少しで完売ですと叫んでいるところも多くあるので結構売れているようだ。 値段もそこそこで味も美味しいのだから売れて当然だな。
店員として働いている八重桜学園の生徒達に声を掛け、労いをしていく。
そして、歩いているだけで冒険者や兵士達の様々な人からも声を掛けられる。 なんとなくアイドルや芸能人のようだと思ってしまった。
その後、ミルッフルさんと合流し少しぶらぶら歩いていると何故かラジオ出演をすることが急遽決まりラジオのブースへ。
ミルッフルさんも強制参加させてこのお祭りについてや、この後のキャンプファイヤーの話をして何とかやり過ごした。
せめて事前に言って貰えれば話すことの準備をしたってのに、タイミングが悪かったとしか言い様がないな。
キャンプファイヤーも始まり、皆に何の変哲もない枝に魔法陣を刻んだ手持ち花火風の魔道具を渡し、思い思いに踊ってもらう。 この魔道具は1回限定で3時間位しか持たないし、魔法陣も特に難しいものを使用してないので広められても痛くはない。
俺も、ミルッフルさんと一緒に良く解らないダンスを2人でして楽しく過ごした。
誰もが笑顔で、今日と言う日を楽しんでいる。 魔物がいる世界でも、やはりこういう所は変わらないんだな、と思いながら少し遠目で見ていた。
次の日から、部位の欠損を何とか治せないか話し合いが行われる。
ワープを作ろうという話しをしていたが、それよりも先に・・・と言うミズキさんの提案だ。
今の手持ちのもので何とか治すすべを考えないと・・・ お祭りの終わった次の日、片付けを朝の訓練として行い。
木の燃えカスは、完全に燃やして肥料に混ぜて使うことにしたのでそこまでゴミとして残っていない。
固めた地面も綺麗に直し、畑も元通り。 まだまだ野菜が作れるし冬に収穫出来る野菜も植えていきたい。
地球で見た野菜類にかなり似た物が多くあるので、鍋料理などを流行らせても良いかもしれない。
この世界に住む人は、肉好きが多いので鍋は野菜も摂れるからいいと思う。
〆はうどんかな? ご飯はあんまり食べられていないようだし。
こんな現実逃避をしている場合じゃないか。
今日は、全員で工場の中にある会議室に集まり話し合いが行わる。
「まずはユカさん、エムジンさん(奴隷を連れて来るようにお願いしている奴隷商)にポーションと軟膏を持って行って貰ってありがとうございます。 お金は足りました?」
「お金は、余っているそうですよ。 1度返したいと言われたんで拒否しておきました」
「それなら安心ですね。 あと、解毒薬とか色々出来たって聞いたんですけど」
「はい、そうですよ。 えっと、全ての物質は有毒であると言う言葉を知っていますか?」
「いや、知らないけど。 それがどうかしたの?」
「急性毒の解毒薬は大体知ってますよね?」
「うん、作った事はないけどレシピなら大体覚えているよ」
「今回作ったのは遅行性の毒の対抗薬です。 説明しますね。 水の入ったコップにどんどん水を入れていくと溢れますよね? こぼれない様にするために、コップの下に桶を置くのが対抗薬です。 あ! えっと、毒が水、コップが自分で分解出来る毒の量だと思ってください」
「なるほど、副作用としては毒を分解するのに時間がかかるって所かな?」
「そうです。 それと、分解が終わるまで毒をくらわない様にしなければならないんです。 少しでも体内に入ってしまうと、分解する時間が倍位になります。 腹痛の人が誤って、食べてしまった事で分かったんですけどね」
「そっか、副作用があるって事か。 まぁ、それはそれで仕方ないかもね。 目標にしていた万能薬って作れそう?」
「今は無理ですね。 薬を混ぜると違う効果が出ちゃいますし、人によって症状が違いますから、魔法や薬使って1つずつ解決していった方が安心出来ます」
「そうですね。 やっぱりダンジョンに潜って万能薬や部位欠損を回復出来るポーションを探すのが1番早いかな」
「そうなると、戦争で手足を失った人々はやっぱり義手・義足とかになりますか?」
「一応、2個は治せるんじゃないかって方法を考えたんだけど、成功するかどうかは未知数なんだよね」
「そうですか。 それが何なのか聞かせて貰ってもいいですか?」
「先に言ってもいいんだけど、出来れば先に皆の意見が聞きたいんだよね。 良い?」




