第275話 お祭り
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俺達ソメイヨシノのメンバー(猫の従魔のオモチ除く)は、全員寝不足だ。
だが、回復魔法を使えば眠気が取れる。 5日は寝なくても何とかなるとミズキさんは言っていた。
そこまで起きて居たいとは思わないが、今日1日は皆への還元祭を兼ねているから頑張らないとな。
屋台の準備をし始める。 と言っても、屋台自体は出来上がっているのでパーテーションを立てるだけなのだが。
流石に俺達だけだと屋台と言えど廻すのが難しいと思ったので、お手伝いを頼んである。
お手伝いは、お金のない冒険者と西の村の少年少女、屋敷で働いているメイド&執事達だ。
料理の注文は数字と本数で解り易くし、お手伝いの冒険者達でも解るようにした。
今回は出来上がっているものを渡すだけなので、そこまで大変じゃないはず・・・そう思いたい。
既に屋台の前には長蛇の列と言って良いほどになっている。 祭りの開始は正午からと告知されているはずなんだが。
これ以上の人数が並んでしまうと、他の屋台の邪魔になってしまう。
しかし、だからと言って勝手に時間を早める事はしたくない。 そんな事をしてしまえば、出店をしてくれたお店からクレームが来てしまうだろう。 今も周りのお店からのクレームはあるわけだし。
屋台をもっと奥にずらし、その分パーテーションを長くし対応する。 1番奥の屋台だしこの区画全部がソメイヨシノの屋台なので特に問題はないはずだ。 かなり奥まってしまったが、仕方ないだろう。
しかし、これ以上長くするのは無理だな。 次にやる場合の教訓にしよう。
ぶつかっただの何だのと言う喧嘩に発展しそうな位のトラブルはあったが、何とか正午前には開店準備も終え本番となった。
ラジオのスピーカーからの放送で、お祭りが開始となった。
さすが料理の神と称されている真田夫妻の料理、止まることなく売れ続けている。
現在俺が担当しているのは、串焼きの屋台(安価)だ。 1人1回買える数を最大60本と決めている。 1人でお金にものを言わせて買占めなどされたらたまったものじゃないからな。
セントバードの串焼きだけでもかなりの種類がある。 安価なもので、もも、胸、ささみ、手羽、軟骨、ぼんじり、砂肝、みさき、レバー、ハツ、かわなど多彩だ。
高いものだと、さえずり、セセリ、背肝、ハツモト、ハラミ、ゲンコツ、ソリなどがある。
他にもオークやブラックビーフ、ラムダーマトンの肉などもあるし、この肉も部位ごとに分けて販売している。
野菜の串焼きも多数あるし、味付けも塩、タレの2種類。 これだけでも数回並んで全部買えると言うところだろう。
俺の仕事は亜空間収納から、肉の種類ごとの大皿に串を大量に補充するだけと言う簡単なもの。
簡単に言うと、冷蔵庫? 保温機? 代わりと言えるポジションだ。
隣の店舗は揚げ物で、こちらもかなりの種類を取り揃えてある。 コロッケ、メンチカツ、とんかつ、ささみカツ、から揚げ、フライドポテトなどだ。 こちらは1回の買い物で6個までとなる。
その隣は菓子パンの出店。 テーブルロールやコッペパンやホテルブレッド、バゲットなどのパンから、アンパンやメロンパン、マーラーカオ(蒸しパンの一種)、トレスグリエールなども置いてある。
ここの買い物も6個までとしてある。
その隣はスープの出店。 コーンポタージュ、オニオンスープ、豚汁、ミネストローネなどの暖かいスープや、ビシソワーズ、かぼちゃの冷製スープなどの冷たいスープがある。
次は、カキ氷の屋台だ。 氷とシロップで出来るので生徒か商人にやって欲しかったが、氷を魔法で作るのは魔力を使いすぎるため誰もやらなかったからの自分達の出店となった。
ここは、制限などは設けていない。 氷などいつでも出来るので制限するのが馬鹿らしいし、少し暑いのでせめて氷で涼を取って欲しい。
その隣にあるのは、保存食としても携帯できる乾き物。 ポテトチップやポップコーン、乾し肉やドライフルーツなどが並んでいる。 ここも買い物は基本自由、いつもショッピングモールで販売しているものと変わらない。
最後は少し離れた場所にあるお酒やドリンクの屋台。 氷なども合わせたセットやボトルやコップ1杯からの販売をしている。
販売金額はいつもと変わらないのだが、ドリンクもかなりの種類を取り揃えてあるし物珍しいカクテルもあるのでかなりの大行列となっている。
1番の行列になっているので、コップで買う列とボトルで買う列の2つに分けたようだ。
ボトルと氷のセットが人気となっているみたいだな。
他の人の行動を観察して見ると、最初は6人パーティ全員で違う場所に並び、買い終わると近くのテーブルで雑談しながら食事を取ったりお酒を飲んだり楽しそうにしている。
食べ終わると、ジャンケンのようなものでもう1度並ぶ人を決め他のメンバーは他の店を見てまわっているようだ。
作業分担が出来ていて効率もかなり良さそうだ。 負けた人が、ぶつぶつ文句を言っているが。
チェリーブロッサムで働いている料理人や王宮で働く料理人、料理人を目指す生徒達も並んでいる。
料理を食べ、ノートに必死に何かを書いている。 焼き加減や味付けなどを書いているのだろう。
他にも生徒達や親達、ショッピングモールで働いてくれている店員なども並んでいる。
皆食べると口々に「美味しい」と呟いているし、俺が作ったわけじゃないが本当にやって良かったと思う。
貴族の人は、ここに並んでいる人はいない。 だが、使用人や護衛の兵がかなり大勢並んでいるのは分かる。
結局お金による人海戦術と言えるのかもしれない。 まぁ、1種類2本以上買っているし、つまみ食いしているようなので特に問題はないはずだ。
そんな時知り合いが何人も買い物に来てくれた。
最初は、切り刻む風と言うパーティのモンジさん(バス回収の際に会ったPT)、イラクサさんとセンレンさんは違う場所に並んでいるようだ。
モンジさんに注文が終ると中に入るように促し、話をする。
「カナタさん、これは土産だ。 塩の迷宮の第3層で取れた塩だ」
「おお! ありがとうございます。 遠慮無くいただきます」
「あと、申し訳ないがタクミさんに後で会えないだろうか?」
「え? 大丈夫だと思うけど、何かありました?」
「ちょっと、武器の相談をしたいんだ。 自信がついてきたから武器を新調したい。 出来れば長物が欲しいんだが、武器についての知識が乏しくてな。 もちろん、ちゃんと正規の金額で金は払う」
タクミ君は豊富な武器の知識を生かして、その人に合った武器を選ぶ事をしている。
たしか、武器の調整やカスタマイズのアドバイス、鍛冶職人への繋ぎもやっているはず。
「了解、タクミ君には言っておくから夕方過ぎにでも訪ねてきて、俺がいなくても言付けを頼んでおくから」
「いや、本当にすまない。 じゃあ、行かないと2人に殺されるから」
モンジさんはそう言うと早足で立ち去って行った。
次に来たのは、エルロッタさん(ミズクサの街で麦を買いに行くときに会った商人)。
モンジさんの時と同じように中に入ってもらい話す。
「カナタさん、お久しぶりです。 お忙しいようで挨拶が遅れてしまいすみません」
「いえいえ、かなり服装も変わってますね。 商売の方も順調そうで良かったですよ」
「ええ、お陰様でかなりの儲けを出させていただいています。 それで、少し相談なんですけどいいですか?」
「はい、いいですよ。 無理難題じゃ無ければ」
「無理難題じゃないですよ。 ラッコングさんの自転車工房に、自転車の技術を使った馬車を作って貰っていいですか? ちゃんとお金払いますので」
「ラッコングさんが良いと言ったら良いですよ? 自転車の技術なんて、その内真似されちゃうと思いますし」
「ラッコングさんが、カナタ様に聞いてくれと言ってたんですよ。 お願いします」
「あぁ・・・なるほど。 今一筆書いて判を押します。 ちょっと待ってください」
許可証を渡すと笑顔になり、しきりに頭を下げていた。 シャツの襟からブラが見え、逆にありがとうと心の中で言っておいた。
やっぱり、サラシなんかよりブラの方がいいね。 絶対世界中に広めよう! と心の中で誓う。




