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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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第274話 決着

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

 ショウマ君は、立ち上がり走ってきてテレフォンパンチを繰り出す。

 先程よりも、威力が上がっているのか風切り音が聞こえる。

 さっきの攻撃だけじゃ戦意を折れなかったのか! クソ! 戦闘再開かよ。


「ふざけんな・・・ふざけんなよ! こんなことするのは、ただの犯罪者だろうが! 断罪して何が悪い! あんたは、最強なるまで見殺しにしろとでも言いたいのか? 今の力でも止められるモノがあんだろうが!」


「今の力で止められるモノも確かにある! でも、一時だけだ! 相手国には相手国の法律があるんだぞ? 戦争での捕虜や一般人の扱いがどうなってるか解らないだろ! まして、人間は自分より不幸な人間を見ると安心する生き物なんだよ! だから、戦争やイジメが絶対に無くなる事なんてない! それとも、人間全部を殺すとでも言うのか!?」


「全部を殺そうとは思ってねぇ! 兵士を全部黙らせれば、酷い事をしなくなるかも知れねぇだろ! 戦争が無くならないなんて勝手に決め付けんな!」


「決めつけ? それで結構だ! 人は欲望きぼうを胸に抱いて生きている! 戦争なんかの極限状態なら欲望きぼうの赴くまま行動する! 今のショウマ君と全く一緒だろ! ただ怒りをぶつけたいだけじゃないか! 八つ当たりに行きたいだけなんだろ?」


「八つ当たり上等じゃねぇか! 因果応報って言葉もあんだろ!」


「八つ当たりで相手を殺し、ここにいる人達に仇取って来たとでも言うのか? そんな血塗られた手を見せられても迷惑なだけだ! 喜ぶ訳ないだろ!」


「それでも! それでも! 許せないモノがあんだろうが!」


 ショウマ君のパンチを避け、掌底で顎への1撃を加え服を掴み投げる。

 ショウマ君は投げられた瞬間に風魔法で体勢を無理やり変え、地面への激突を避け手を振りほどき距離を取る。


「おい! てめぇは、何で魔法を使わない? 使うほどの人間じゃないとでも言いたいのか?」


「今のショウマ君は弱い。 弱い相手にハンデは必要だろ?」

 俺はそう言うと、かかって来い! と言わんばかりに左手をクイクイと動かす。


「クソ! 本気であんたをぶっ殺してやるよ!」


 速度がどんどん上がっているのが解る、風切り音が鈍い音から甲高い音に変わっていく。

 攻撃を弾くが、思った通りに弾けない。 攻撃の重さも上がっているようだ。

 こりゃヤバイ! 1回喰らったら立ち上がれなくなる! これを魔法無しでしのぐのはキツイ!

 俺は腹をくくり、回避中心の立ち回りを行う。 しかし、回避が俺はそこまで上手くない。

 心技体の心がバラバラな状態でもこんなに強いのかよ! 本当にバケモンだな。


 くそ、このままじゃジリ貧だ。 どうする? どうすればいい?

 そんな事を考えていると、防御し切れずに自分の拳ごと顔面を殴られ倒れる。 痛ぇ!! そう思った瞬間影が動いたのが見え、転がって回避する。 ショウマ君の追撃で、地面に拳がめり込む。

 立ち上がる前に、右手に砂を掴む。


「どうだよ! 俺は弱くなんてねぇぞ? 無理しねぇで魔法使って来いよ?」

 ショウマ君は、どうやら当初の目的が変わってきているようだ。


「1回攻撃喰らっただけだろ? そんな事で勝ち誇っているのか?」


「そうかよ! ボコボコにしてやるよ!」


 ショウマ君は何も警戒しないで突っ込んでくる。 よし、素直なのは良いことだ!

 右手に持った砂をショウマ君めがけて投げる。 虚を突かれたのか魔法も使えずに土煙に入ったようだ。

 予定通り目の中に砂が入り、両目が開けれらないようだ。


「喰らえ! 鎧通し」


 その言葉を聞いてショウマ君は体を縮め、三戦サンチン立ちをする。

 俺は魔流眼を発動し魔力の流れを見て、ショウマ君の胸の真ん中に手を当て雷の魔法を使う。

 これで筋肉も魔法も一時だが使えなくなったはず。


「ぐがぁ」

 ショウマ君は倒れ、体が痺れて動けなくなっているようだ。


「卑怯だぞ。 魔法を使わないんじゃなかったのかよ!」

 ショウマ君は、地面に倒れたまま俺を睨んで言う。


「何を言ってるんだ? 俺は魔法を使わないとは1言も言ってないぞ? 恨むなら自分の弱さを恨むんだね。 いつもショウマ君が言ってる事だけど、敗者は勝者に従うで良いんだよね?」


「ふざけるなよ! 俺はまだ戦える! 負けてない! 強くなる、強くなるって約束したんだ! 負けられないんだよ!」

 ショウマ君は、無理やり起き上がろうとする。 だが、思うように力が入らず体を引きずるだけだ。


「無理だよ。 筋肉や神経、魔力の流れ全部にダメージが入るように電気を流した。 魔流眼できっちり急所に入るようにしたから、数分は麻痺してしまって動けないよ」


「クソ! 動けよ体! クソクソ! あ~チクショウ! クソ! クソクソ! ・・・今回は負けてやる」


「負けを素直に認めるのはいいことだ。 さっきも言ったけど敗者は勝者に従うで良いね?」


「ああ、解ってるよ。 言う事を何でも聞くさ。 クソ! でも、こんなに綺麗に負けたのはいつ振りだ? あ゛あ゛! 本当に、情けねぇな」


「人のために怒ったのは良い事だと、俺は思う。 ただ、怒りのエネルギーを変換して人の役に立つことに使って欲しい・・・」

 俺は何と無く「俺がやったような惨殺はしないでくれ」と続けることが出来なかった。


 ショウマ君は、何とか腕を動かし目を隠す。 ショウマ君は歯を食いしばり動かない。


「お、雨だ。 星が見えてるし天気雨だね」


 実際には天気雨ではなく、俺が雨を降らせている。 ショウマ君が泣いているように見えたからだ。


「天気雨か・・・なぁ、カナタさん・・・俺は弱かったか?」


「うん、いつものショウマ君より弱かった。 だって、攻撃に心がなかったもん。 でもさ、これで1つ強くなったんだよね?」


「あん? それは? どういうことだ?」


「自分の弱さを認められない奴は弱い、自分の弱さを認めそれと向き合うからこそ強くなれる。 ショウマ君が生徒達に言った言葉だよ?」


「ああ、そうか、そうだったな。 ジジィとの約束で強くなるって頑張って来たが、負けて強くなるなんて言葉もあったんだな。 ジジィにいつも言われていた言葉だってのに、言われるまで忘れていたぜ」


「そっか・・・そろそろ痺れも切れてきたんじゃない? 立てる?」


 俺はショウマ君の手を引き立たせる。

 ショウマ君は、手をとり立ち上がると自分のマジックバッグからタオルを取り出し全身を拭く。


「それにしても、最強で最高な存在か。 目指してみるのも悪くない。 おし! 鍛えなおさなきゃいけねぇな。 ケイタ、相手を頼む!」


 もう立ち直ったのか。 ショウマ君のいいところだな。


「君は馬鹿ですか? ここにいる人々の治療が先ですよ? 敗者は勝者に従うのでしょう? さぁいきますよ」

 ケイタ君はメガネの位置をクイッと直すと治療院の別館へ進む。


「んな事は分かってるよ! 全部終わったら鍛錬しようぜ」


「解りました。 その時はタクミも連れて行きましょう」


「お、いいな! 3人でバトルロイヤルか! 燃えるな!」


 タダシさんは、住民と兵士の人達に訓練だと説明してくれたらしい。

 まぁ、あんな大声で喧嘩をしてたら通報もされるだろな。 俺達だと解ると、即座に巡回警備に戻ったようだが。

 

 ケイタ君とタダシさんは少し汚れている程度のようだ。 本気でやりあったって感じじゃないってことなんじゃないか?

 ケイタ君は即一緒に行動すると言っていたが、ショウマ君1人でいかせるよりも一緒に行った方がって考えたのかな?

 ケイタ君とタダシさんの戦いの相性が悪いからな。 ケイタ君はスピードで翻弄する攻撃型、タダシさんは相手の力を利用するカウンター型だからね。

 俺も、皆の後について戻って行く。 その時タダシさんから声を掛けられる。


「カナタ。 もしかしてエルフの里での事を後悔してるのか?」


「え? ええ、まぁそうですね。 思考誘導されていたかもしれないと分かっているんですけど、もっと上手くやれたんじゃないかと考える事がありますね」


 ただ怒りに負けて、暴れ周りシャガ達に業を背負わせてしまった。 今の俺ならもっと上手く説得することが出来たかもしれない。

 過ぎた事を悔やんでも仕方ないのだが、そう考えてしまう。


「そうか・・・儂も人を殺めた事があるから気持ちはある程度分かる。 だが、過去を見ずに未来を見て進めよ。 殺めた人の数の何倍もの人を救えばいいんだ。 そのくらいの力はあるだろう?」


「そうですね、無理しない程度に頑張ります」

 俺は、タダシさんの言葉に苦笑しながら答える。



 数百人もいた人々の治療は明け方には治療を終えることが出来た。

 あとは心のケアだが流石にそこまで時間をかけられない。 治療院の人に頼んで皆で屋敷に帰って行く。


「今日は、お祭りですね。 なんかそれどころじゃ無くなっちゃった雰囲気ですけど」


「祭りの準備は、儂らだけやってたわけじゃねぇんだ。 中止になんかできねぇぞ?」

 タダシさんが、苦笑しながら言う。


「それはもちろんですよ。 折角だしパァーとやりましょう! なんたって俺達がここに来て1年なんですから」


「ああ、でも料金設定はあのまんまでいいのか? 少し高い気がするんだが」


「街の料理屋や生徒達、従業員達が出店を出すんですよ? 同じ料金にしたらそれこそ大変な事になりますよ」


 今日は鍛錬も学校もショッピングモールも全て休み。 その代わり、出店を出してお小遣い稼ぎをしたり、学園主催の劇に出たり、大道芸をしたり様々な催し物が行われる。

 夜には普通の畑で、キャンプファイヤーと手持ち花火のような光が弾けるスティックを持って踊る予定だ。

 貴族街の人達には悪いが、使用人を使って買い物でもしてもらおう。 

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