第261話 陛下と書いてトモと読む?
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陛下達の会談が思いの外押しているらしく、部屋で給仕の真似事のような事をしていた。
自分で思っていたよりも俺が作った料理は人気だったようで、出す側から全部綺麗になっていった。
その際に、陛下がいつごろから元気がなくなったかなど有益な情報を教えて貰えた。
皆でお茶を飲んでいるときに、ノックが聞こえる。
ノックが聞こえた瞬間メイド達は青ざめ、あたふたし始めた。
「ちょっと待ってください! 皆さん、すぐ片付けましょう」
カップやテーブル椅子などをしまい、身なりを整え俺はソファーに座りオモチ(アカネちゃんの獣魔、二足歩行の白猫)新聞をソファーの前のローテーブルに置き扉を開けてもらう。
メイド達は入り口の前に並び頭を下げる。
「カナタ様、お待たせいたしました。 陛下がお待ちです」
ここまで案内してくれた執事が恭しく礼をする。
礼を終えるとほんの一瞬、1番の新人でお腹が鳴った子をチラッと見た。
なんだろうと思ったら、メイド服の胸の部分にパンのかけらがついていた。
あらら、後で怒られるフラグかな。 仕方ないフラグを折っておきますか。
執事に連れられて、外に出る前に振り返る。
「皆さん。 新しい料理への忌憚ない意見、そして服を汚してしまう可能性も考慮しないといけないと言う女性ならではの意見、大変参考になりました。 今後もより良い商品を生み出して行きたいと思いますので、よろしくお願いします」
俺は、そう言うと軽く頭を下げ外に出る。
料理自体は俺も教わっている側だから、開発なんてして無いけどね。
こんだけ言えば、胸の所の食べかすにも気が付くだろう。
そんな事を思って歩いていると、部屋から怒号のようなものが廊下まで聞こた。
「カナタ様、失礼いたしました。 後できつく言っておきますのでご容赦いただきたく存じます」
「いえいえ、妙齢の異性の方の料理への意見は中々聞けないので大変参考になりました。 その功績を鑑みて、注意するだけでお願いします」
「本当に、もったいなきお言葉。 皆にもお伝えします」
そんな会話をしていると、陛下の執務室の前に到着する。
執事はノックをし声を掛け、扉を開けると頭を下げる。
貴族とかってこんな風に自分で何もしちゃいけないんだろ? めんどくさいなぁ。 絶対なりたくないね。
「カナタ。 すまんな、会談が押してしまった」
「いえいえ、メイドの方達に色々話を聞けてよかったです。 なかなか直接話す機会がないので」
「そうか、それなら良かった。 して、今日は何用だ?」
「陛下の様子見ですよ。 あまりにも元気がなく、抱え込んでるって聞いたので」
「それが王の務めだろう? 様々な事柄を決めなくてはならん」
「それはそうですけど、ちゃんと休んでますか?」
「今ようやく良い波へ乗っているのだ。 休んでる暇なんてない、民のため国のため全力を尽くさねば」
「民のため国のためですか。 実際はどちらのためですか?」
「もちろん民のためだ。 国は民がいてこその国だ」
「うん、そうですよね。 国が滅んでも人は滅び無い。 国というのは人がより良く暮らすためのものですよね。 俺達は、陛下の意見に賛同して手助けしています。 それで、人のために何をしていたのですか?」
「法の整備や兵士の育成、検非違使の組織を作る事、税についてなどだが」
「良いと思います。 すごい大切なことです。 ですが、急務と言うほどの事ではないと思いますが何故そんなに急いでいるんですか?」
「それはそうだろう、犯罪件数も増え魔物の目撃数も増えている。 それを至急何とかしなければ」
「犯罪件数の増加の抑制で急いでいると、それはそうでしょう。 確か観光や買い物に来ている人の数だけでも10倍以上、移住希望者なんて100倍近いらしいじゃないですか。 犯罪件数が増えるのは当たり前です。 しかし、犯罪の増加件数は2倍にも満たないと言われています。 大きな混乱も無く大きな犯罪も無い、全く持って素晴らしいじゃないですか」
「しかし、魔物の目撃数は」
「魔物の目撃数が増えるのも当たり前です。 人の数が増えるに伴い目撃者が増えるのは当たり前です。 移動して来た冒険者の数を見ましたか? ギルドに入りきらないほど一杯ですよ? もちろん、兵士の強さもかなり上がっています。 それに伴い索敵の範囲も広くなって入るのは分かっているじゃないですか」
「しかし、早急に法の整備を」
「それこそ1人で考えるべきでは無いです。 文官の人も頑張っていますし、ケイタ君がそう言うのに詳しそうなので、1度話して見るのも良いかもしれません。 つまり1人でやる事などほとんどありませんよ?」
「だが、カナタ。 お前は1人で全て行っているではないか」
「え? 全然違いますよ。 俺は基本的に皆の作りたい物の橋渡しをしているんです。 その時に案を出してもらったりデザインしてもらったりしています。 なので、1人で何かをなした事なんてほとんど無いです」
「いや、しかし、何とかしなければこの先どうなるかなど」
「どうなるのか解らない、だからこそ備える。 それで良いと思います。 質問ですが、今強い魔物が現れたらどうしますか?」
「申し訳ないが、ソメイヨシノに依頼を出す」
「ええ、それが1番楽な解決法だと自分も思います。 次に、食糧難になった場合はどうしますか?」
「国庫の食料を皆に配る。 今現状の量でも1月は保つほど大量にしまってある」
「ちゃんと準備されてるじゃないですか。 それ以上に何が必要なんですか?」
「お前達は勇者になると言っていただろう? 出て行った後の事を考えると、言ったもの全て無ければ不測の事態に備えられん。 漸くここまで来たのだ、失うわけにはいかん」
「気持ちは分かります。 ですが、こんな言葉が自分達の世界にあります。 良いですか? 【政治の基本は妥協である】です。 こんな言葉があるのに1000年以上国として成り立ってるんですから、この国も平気ですよ」
(ずいぶん前に聞いた言葉ですが、本当に名言に載っていたので使用しました。 深い意味はないです)
「本当にそんな言葉があるのか?」
「ええ、そうです。 誓って嘘は言ってません。 それに比べたらこの国はかなりまともですよ。 今の現状では高ランクの魔物へ備えはきついでしょうが、その内強い冒険者か兵士が育ちます。 気長に待ちましょう」
「本当にそれでいいのだろうか?」
「いいんですよ、そのくらいで。 俺達がいない時に危機が訪れたら、民に頭下げて助けてくださいと言えば良いじゃないですか。 国滅び人が大勢死ぬより頭を下げたほうがましでしょう?
他には、今までの王達が何をしていたか調べて見るのも良いかもしれませんよ? 【温故知新】と言う言葉もありますから」
「なるほど、昔を訪ね新しきを知るか。 良いかもしれんな」
話をしていく度に顔色が少しずつ良くなっていたが、ここで一気にやる気に満ちた顔になった。
そろそろ安心かな? 自分より年上で立場が上の人に対して失礼だったかもしれない。
しかし、陛下が俺を友人として見ていると言ってくれた。 友人として話しているのならば、本当に良かったと思っている。
そろそろ戻っても大丈夫かな?
「元気になった様で何よりです。 ですが、根を詰め過ぎればいい物が出来ないのでちゃんと休んでくださいね」
「解っておる。 父は国を何とかしようと根を詰め仕事をし、病に倒れ無くなった。 あの時の自分は父上にもっと周りに頼れと言っていた事を今思い出した。 全く同じ事をしそうになるとはな。 情けない」
「親子って事ですよ。 良い王だったんでしょうね」
「そりゃあ、我ら兄弟2人の目標の人物だからな。 良し! そうと決まれば文官を呼び整理させ、兵士達の学園への修行の頻度をあげようではないか。 全ての作業を丸投げしてどこまで出来るか見てやろう。 他の溜めていた仕事も簡単なものは全部流すか」
「はっはっは、頑張ってください。 あんまり負担かけると文官の方達が泣いちゃいますからね」
普通の人ならこの位で復活などしない事は分かっています。
もっと長く1歩ずつ積み重ねをして・・・と言うのを書くか迷ったんですが、人の心理ほど難しいものは無く・・・復活させました。 すみません(;´・ω・`)ゞ