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努力の実る世界  作者: 選択機
第4章 ウルフローナ国 新王都モンステラ編
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第258話 リサー姫と良太郎

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

 俺はリョウさんの攻撃を捌き続ける。


「リョウさん、何故リサー姫がここにいるか考えてください! 何故、力を抜き殺されても良いと言ってるか考えてください!

 出来るはずです。 リョウさんなら・・・出来るはずなんです!」


 俺はリョウさんに対してギフトのコネクトを使い、リョウさんの心に直接語りかける。

 そうは言ってもぶっつけ本番で出来るかどうか分からない・・・しかし、やらなければならない。

 リョウさんの感情が解る・・・これは悲しみ? これを増幅させれば・・・


 攻撃が単調になり、力もどんどん弱くなっていく。

 攻撃を受け止め、リョウさんに語りかける。


「リョウさん! もういい・・・もういいんです。 涙を拭いてください」


「え? あれ? え? なんで・・・なんで・・・うわぁぁぁぁ」


 リョウさんは、自分が泣いていることに気が付いていなかったようで涙を確認すると子供のように泣き出してしまった。


 リョウさんが階段の中ほどで崩れ落ちた時、リサー姫はしゃがみ込み涙を流し「ごめんなさい」と何度も呟いていた。

 なんでこんな大騒ぎしたのに誰も来ないの? 誰か助けに来てくれてもいいと思うんだけど・・・



 結局誰も階段のほうに来ず、俺達4人は応接間へと戻った。

 応接間のソファーにリョウさんとリサー姫を対面に座らせ、椅子を亜空間から出して座る。

 そして思いだす・・・操られる可能性があるから、騒ぎがあっても一応静観して、と言ってた事に・・・

 俺、疲れてるんだな・・・建物系を建て終わったら休もう。

 ミランダには、タダシさんへの伝言でリサー姫の晩御飯を作って貰う事を指示をして、2人に話しかける。


「さて、リョウさん、落ち着きました?」


「はい、本当にみっともない所を見せてしまいました」

 リョウさんは、ソファーに座ったまま頭を下げる。


「リサー姫も、落ち着きましたか?」


「はい、大丈夫です。 お騒がせしました」

 リサー姫も、頭を下げる。


「リサー姫、リョウさん。 2人の離れた後の話をしてください。 何ではなれてしまったのか、何でここにいるのかをです。 良いですね? あ、聞かれたくない話があれば出て行きますので言ってください」


「じゃあ、私からお話しします・・・」


 リサー姫は窃盗団にいた事、結婚したいから抜けたいと言って殺された事などを話す。

 リョウさんは一言も聞き漏らさないように、時折相槌などをして真剣に聞く。

 リサー姫の話が終わると、大きなため息をつき喋り出す。


「ふぅ・・・そう言うことだったんですか。 私はてっきり・・・」


「窃盗をしていた事で罪を擦り付けられて、罰を1人で受けるのは構わない・・・と思ってたけど、まさか後ろから拳銃で撃たれるなんて思ってなかったし」


「あ、いえ、そう言う意味ではなくて・・・いや、それもあるんですが・・・私の話しもしますね」


 リョウさんの話・・・家に帰ると何もかもなくなっていた。

 銀行とクレジット会社に電話をしたので、手持ちだった現金と家具、家電の全てが無くなっただけですんだ。

 しかし、何よりも嫌だったのが親から託された指輪も無くなってしまったことだと語った。


「あの・・・リョタさん。 タイムカプセル郵便って覚えています?」

 リサー姫が、おずおずと言う。


「はい、知ってますよ? 確か何年後かに手紙などを届けるものでしたよね? 昔結婚したら5年後の自分達へ手紙をって話してましたね」


「そうです。 良かった覚えていてくれたんですね。 私に何があるか解らなかったから、指輪だけはお義母さんの所に届くようにしたの」


「本当ですか!?」


「ええ、遺書みたいなものも書くか迷ったんだけど・・・無事だった時に手紙を読まれたらって思うと書けなかったんだけどね」


「ありがとう、マリア。 それなのに私は君を疑って・・・」


「いいのよ、仕方が無いわ。 でも、ちゃんと話せてよかった」


「私も話せてよかった。 マリア・・・いや今はリサーだね」


 2人は2人だけの空間を作り始めた。 結局俺要らなく無い?

 へんなところに頭を使いすぎたのかもしれないな。

 2人の会う場所をセッティングして、出来る限り摩擦を少なくしようとしてたけど、手を出すよりもいきなり出会ったほうが色々ぶちまけられて良かった気もするし。

 それにしても、なんか忘れてる気がするんだよな・・・そうだ! 呪い! リョウさんなんで大丈夫なの? 呪い解除された? 実験してみるか?


「リョウさん、体調とかどうですか? リサー姫もスキルを持っていて、呪いとかで色々大変みたいなんですけど」


「そうだ! リョタさん大丈夫? 私の呪い、嫌らしい呪いなんだけど」

 リサー姫が、慌ててリョウさんに聞く。


「え? いえ、特に何も無いですね。 体も心も何かを受けてる感じもしませんし」

 リョウさんは、特に何も無いように体を見渡しながら言う。


「呪いが解けた可能性もありますから、一応実験してみましょうか」


 俺は、通信機を取り出しケイタ君に事情を話し、セードルフとミランダ、執事とメイド2人を呼んでもらう。

 暴走したセードルフや執事を抑えるのに女性を多くした・・・セードルフは少し怪しかったが、特に操られていると言う事は無いようだ。

 やはり、呪いが解けたと考えて良さそうだ・・・全員にお礼を言い、仕事に戻ってもらう。


「呪いが解けたようですね。 おめでとうございます。 リョウさんと話したい事があると思いますので、今日は泊まって行ってはどうですか?」


「いいの? 私は・・・」

 リサー姫は言いよどむ。


「ソメイヨシノの力を手に入れる・・・とか何とか理由がつけられるでしょう? 今日は泊まって行けばいい。 リョウさんも話したいと思いますし・・・あ、そうだ。 先ほどの契約もありますが、これを渡しておきます」

 亜空間収納から、ペニシリン効果中を出しテーブルに置く。


「これは何? え? まさか・・・」


「ペニシリンですよ。 入れ物に張ってある紙にも日本語で書いてありますが、効果は中なので末期までなら何とかなります」


「え? 何で持ってるの? この国の秘匿している物のはずよ?」


「あ、それについて聞きたかったんです。 ファウストさんと共同開発した人って名前なんて人だと聞いてます?」


「え~と・・・確かカニータ男爵って人だったはずだけど」


「誰?」

 俺は驚きの表情で言う。


「知らないわよ。 調べてもぜんぜん出てこなかったんだもの。 だから、ファウスト男爵の親友で冒険者であるソメイヨシノのリーダー・カナタに近づいたんだもの」


「意図的にか偶然か解らないけど、俺の名前はぼやけてるみたいだ。 まぁ動きやすくなったといえるからいいんだけど」


「ん? 何を言っているの?」

 リサー姫は、良く解らないと言う顔をして言う。


「ペニシリンを作ったのは、カナタさんなんです。 製法を陛下に売って、このクランに便宜を図って貰ってると言う事です」

 リョウさんは、嬉しそうにリサー姫に言う。


「え? え? えぇぇぇ!? まさか・・・そんなぁ・・・私は、何のために・・・」

 リサー姫は、頭を抱えて下を向いてしまう


「まぁ、そのおかげでリョウさんと再会できたんですから、良しとしてください。 まぁ貸しは返してもらいますけどね」


 貸しは、陛下を操ろうとした事な訳だ。 それによって死刑になっても文句は言えないはず。

 それを見逃してるんだから多少の無理難題は聞いて貰おう。 今の所は木綿を大量に欲しいって所かな?

 関係ない人だったりリョウさんが拒否した場合は、薬を取りに来た時に捕縛しても良いと考えてたんだけど要らなかったな。

 俺の考えすぎる癖も何とかしないとその内パンクするんじゃないのか?


「え? 貸し? 何の事か解らないけど、リョタさんの友人だし頼みごとなら何とかするけど」


 何の事か解ってない様子だが、まぁ説明も面倒だしいいか。


「さて、外の兵士はどうします? まだ外にいるんでしょ? なんなら、明日の朝まで話し合うと言って来ますか?」


「私が説明してくるからいいわ。 本当に泊まってもいいの? 隠蔽している事が多いんじゃない? 私が何かをするかもしれないわよ?」


「その時はその時考えますよ。 リョウさんを本当に裏切ったら、国ごと消えると思ったほうがいいと思いますけどね」

 

「何それ? 一個人がそんな事出来るわけ無いじゃない。 笑い話にしかならないわよ?」


 俺は苦笑しリョウさんを見ると、リョウさんも苦笑していた。


「明日の朝になれば解ると思いますが、先に力の一端を見せておきます」


 俺は、ブラッディルビーワイバーンの竜眼結晶を取り出しテーブルに置く。


「ブラッディルビーワイバーン・・・その瞳の結晶です」


「え? 御伽噺の存在の? あれって子供を躾ける為の話しじゃないの?」


「本物ですよ。 それをここに来てから1年未満で倒しましたよ? 今はその時より強い・・・信じないのは勝手ですが、後で後悔はしないように」


「信じるわ・・・あれ? そう言えば、皆は転生者じゃないっぽいけど何でなのかしら?」


「今更!? 後でリョウさんからでも詳しく聞いてください。 晩御飯を用意してもらってるので後で食堂に来て食べてくださいね。 最後に、外交問題にならないように同じ部屋で寝るのは止めてくださいね」


「「当たり前です!」」

 2人はハモって叫ぶ。


 そんな2人を置いて、俺はダイニングへと向かっていった。

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