第1話 状況確認と自己紹介
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6/3改稿、加筆あり
「大丈夫ですか? 皆さん大丈夫ですか?」
男の声が聞こえてくる・・・
その声で、目を開ける。
あぁ、バスの運転手さんか・・・
「俺は、大丈夫です」
と言ったものの、体に怪我がないか確認しながら立ち上がる。
腕 頭 顔 体 足 OK。
目で見える範囲の怪我なし、痛みを感じるところもなし・・・だよな?
そう思ってると、他のところからも「大丈夫です」やうめき声のようなものが聞こえる。
バスの椅子に腰掛け、外を見てみる・・・
前方は・・・フロントガラス大破か・・・
ん? 白い竹? 白い木? なんだあれ?
右も白竹? だ。
あ! 実もなってる・・・どんぐり? かな? でかいけど・・・
左は森だな~。
後ろは壁? 崖下とかかな?
そして、バスの中を見回す。
すすり泣く声や、「どこだ?」「なに?」「え? え?」「異世界だ・・・異世界だ・・・」などと聞こえてくる。
おお! 結構な人数乗ってたな~、田舎なのに。
バスの運転手が一人一人に「大丈夫ですか?」と声をかけながら進んでくる。
あれ? なんか違和感がある? ん? なんだ?
「大丈夫でしたか?」
「大丈夫ですが、そちらは大丈夫ですか?」
「はい、怪我もないですので大丈夫です」
ん? ん? 待て待て!!
フロントガラス大破して無傷? え? おかしくないか??
「えっ? あっ、でっでも、ガラスが・・・」
「はい、でも奇跡的に無傷なんですよ、普通は大怪我するはずなのに」
「そうですか~運が良かったってことですかね」
ははは、と笑いながら会話を終わらす。
さて、思い出そう今日1日の行動を・・・
まず、久々の三連休だったから、1日目にやらなきゃいけないことすべて終わらして、後半は引き篭もる予定だったんだよな。
午前中に買い物をして、午後に車検通す車を取りに来てもらって・・・あと、掃除・洗濯などをして・・・そうだ! 夕方にジムに行こうと思って、歩きたくなかったからバスに乗ったんだった。
途中で、電気が消えたみたいに何も見えなくなって・・・
周りで悲鳴や「止まれ! 止まれ!」「何だよ!」とか「ふざけんな!!」とか聞こえてきたな。
一応だが、前座席の背もたれの裏に背中を当ててから、「何かにつかまれ! ぶつかるぞ!!」って叫んだんだよな。
真っ暗になったときでも触感はあった気がするな、今思うと。
まぁ、いいとして・・・その後、衝撃とドガァンって音が聞こえたような?
・・・よし! 解らないってことが解ったな、うん、諦めよう・・・と締めくくったそのとき
「安全のため、貴重品を持ち一度外に出てください」
と運転手さんの声が聞こえてきた。
その声に反応するように、「はい」とか「荷物どこだ?」などの声も聞こえてくる。
ああ、そっか、荷物の確認だな。
リュックの中身は・・・水2L 軍手 携帯 ジャージ 下着一式 ビニール袋二袋 財布 豚革の手袋 チョコ 飴 タオル二つ 鍵 薬か。
携帯はっと、思った通り圏外なのか。
そして、皆ゆっくりと、外に出て行く。
さて、どうなるんだろうな・・・そう思いながら外に出る。
チョロチョロと水の音が聞こえる。ちょっと暑いな~、日本だと秋だったのに・・・
そして、全員が外に出てバスの横に集まる。
自分も合わせて13人か、やっぱり結構いるな。
えっと、男性から見た目と第一印象は・・・
1人目:バスの運転手 同じかちょっと上くらい? いい人。
2人目:大学生? 社会人? イケメン さわやか 周りの人の様子を見てる、目があったら目礼された。
3人目:制服の高校生 グレーっぽい髪色 ヤンキーっぽい 手をポケットに入れてる。
4人目:おっさん メタボ 眉間にしわ寄せて、タバコ吸ってイライラしてる チラチラと美人さんを見てる。
5人目:制服の高校生 ポッチャリ オタクっぽい 汗を拭きながらキョロキョロしてる、どこ見てんだろ?
6人目:おじいちゃん 杖を持って大きな石の上に座ってる。
あと女性だな・・・
7人目:おばあちゃん おじいちゃんの隣に立って、手をほっぺに当てて「あらあら」と言ってる 昔美人だったんだろうな~
8人目:おばちゃん ふとtt・・・ぽっちゃり 肝が据わってるなぁ・・・ドンと構えてる感じ。
9人目:制服の高校生 ヤンキー君と同じところかな? バッグを持って下向いて泣いてる。
10人目:私服のお姉さん 巨乳 高校生の女の子に声をかけ続けてる いい人 可愛い。
11人目:私服のお嬢さん めちゃくちゃ美人 周りの様子を見てる そして綺麗。
12人目:制服の高校生 ギャルっぽい 今時って感じがする。
そう思っていると、バスの運転手から話し始めた。
「皆様、このようなことになり大変申しわけありませんでした。
皆様に怪我がないことが一番の幸運だと思っております、申し訳ありませんでした」
そう言い、深く頭を下げた。
「説明になってねぇよ!! どうすんだ? おい! ここどこなんだよ? ちゃんと説明しろよおおぉぉ!!」
イライラしてたおっさんが、すごい剣幕で詰め寄っていくが、掴み掛かることはないみたい。
「申し訳ございません、無線も繋がらず、携帯も圏外で、ここが何処なのかすら、全く解りません、申し訳ございません」
バスの運転手は、頭を深く下げる。
「だから! どうするんだよ‼︎ 助けは来るのかよ‼︎ どうなんだよ!?」
皆口々に「どうするの?」「助けは来ないの?」などと言っている。
仕方ない、助け舟をだすか・・・
「あ、あの〜」
おそるおそる手を上げる。
「ここが何処か、助けは来るのか、気になることだらけですが、とりあえず出来ることしませんか?」
俺は、皆にむけて言う。
「あぁ? だから! 今俺が! こいつに! 聞いてやってるんじゃねぇか!! だまってろ!」
イライラしていたおっさんが、俺とバスの運転手を交互に指差しながら言う。
チラッと他の人たちを見ると、皆あきれている。
ハァ・・・とヤンキー? 君が、おっさんに詰め寄り、ドスの利いた声で言い放つ。
「おい! おっさん、黙れ! 邪魔だ!」
不機嫌そうな顔して、ヤンキー? 君を見た瞬間、目をそらし黙る。
「おい! あんた、何か知っているのか?」
ヤンキー? 君が、言いながら俺を指差す。
「いやいや違う違うそうじゃない、ここがどこかは解らないよ、ただ、やらなくちゃいけないことを、何個か思いついてるだけだよ」
「あん? 助けを待てばいいんじゃねぇのか?」
「いや、自分から進むにしても、助けを待つにしても、やらなくちゃいけないことはあるんだよ」
「何をやらなくちゃ駄目なんだ? 夕方位には助けは来るだろ?」
「えっと、憶測で悪いんだけど助けが来れるとして一月は最低でもかかると思う」
「は? 日本にいるのに、そんなにかかる訳ないだろ?」
「ここは、日本だったとしたら樹海とか秘境と呼ばれてる場所だと思うよ? ほら、そこにある白い竹でドングリの実がなる植物なんて初めて見たよ」
俺はそう言い白い竹を指差す。
すると皆、白い竹を見ると黙ってしまった。
「とりあえず皆さん、自己紹介から始めましょうか、ね?」
俺がそう言うと皆を見渡す。
「じゃあ、言いだしっぺの私から、トラックドライバーをやってる榊原 叶奏です。よろしくお願いいたします」
俺は、言い終わった直後に頭を下げる。
「じゃあ、次は俺だな、高2の五十嵐 渉真だ、よろしくな」
ヤンキー? 君は、自分を親指で指差しながらいう。
「次は僕ですね、中山 敬太 大学4年生です。よろしくお願いします」
さわやかイケメンは、言いながら頭を下げる。
「では、次は私が自己紹介を、バスの運転手の田中 良次郎です。皆様、本当に申し訳ございません」
バスの運転手さんは、そう言い深く頭を下げる。
「次は儂か、元料理人の真田 忠だ、よろしくたのむ」
立ち上がりながら、おじいちゃんが言う。
「私は、妻の真田 佳ね。皆様、主人共々よろしくお願いしますね」
隣に立つ、おばあちゃんが言った。
「次はあたしかい? 斉藤 亜矢子、専業主婦だよ、よろしくね」
おばちゃんは、いい終わるとうなずく。
「あたしは、笹塚 茜衣高3、よろしく~」
ギャルっぽい子は、右手をちょっと上げていう。
「私は、大学1年生の片岡 瑞稀です、よろしくお願いします」
美人さんは、言いながら頭を下げる。
「私は、看護師の牧野 有華です、お願いします」
巨乳さんは、泣いてる子を支えながら、こちらに顔だけ向け言う。
「泣いててすみません、私は高校2年の岡本 好未です、よろしくお願いします」
泣いてる子は、言いながら頭を下げる。
ちょっと、嗚咽が混じってて、ところどころ聞き取りにくかったな・・・と思うが、仕方がないか。
「ぼぼ、僕は、さささっさとう、佐藤 匠です、高2です、よろ・・・・」
男子高校生は見るからに挙動不審な動きをしながら、声が震えた自己紹介になり、最後のほうは緊張なのか全く聞こえなかった。
「あぁ? 聞こえねぇよ! ちゃんと喋れよ! ちっ、俺は三沢 伊三雄、○○社で課長をやっている」
嫌なおっさんは、ドヤ顔をする・・・正直キモい。
これで全員の自己紹介は終わった。
白竹:竹と言っているが、樹木。 幹の部分は竹のように空洞になっていて、根っこは木の様になっていて、ハートの形の葉が付いている。