第255話 調整
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リョウタロウさんと共に部屋を出ようとしたときに、アカネちゃんから声をかけられる。
「カナちゃん、ちょっとい~い?」
今日のアカネちゃんの服装は、サマーニットに膝丈のタイトスカートを着ており、黒縁メガネをかけている。
何というか、今日のファッションは先生的ななにかなのかな?
昨日は、ニットワンピースにショートパンツで、はいてない!? と言う感じになってたしセクシー担当と言える気がする。
「うん、いいけど何かあったの?」
「何かあったって訳じゃないんだけど~、腕輪の解析遅れても良~い?」
「うん、別に良いよ。 でも、他に何かする事が増えたの?」
「そ~、何とか隔絶スイッチ? だっけ~? を見せてもらえる事になったんだ~」
「隔絶スイッチ? 何それ?」
「空間隔絶装置、言うなればバリアですね。 初代ウルフローナ王が神から渡された魔道具です」
リョウタロウさんがさりげなくフォローを入れる。
「そうそう~、でね、それを応用できれば~、兜を付けなくても普通に歩けるでしょ~? あと~、鎧も最低限のもので何とかなるようになるはずだし~」
アカネちゃんは、笑顔になり嬉しそうに言う。
まぁ、兜を取りたいって気持ちは分からなくはないな。
「オシャレ装備用魔道具か・・・いいんじゃない? 確かバリアを張る魔道具って、王しか触れないはずだよね? なのに良く調べさせてくれたね」
「あ~、そういえばそうだね~」
アカネちゃんは、首を傾げぽつりと言う。
「それについては、私が頼んだんです。 バリアを張れる土地の広さは決まっていますので、緊急時に他の土地を放棄し無くてはならない。 折角ここまで来たのですから、バリアを増設したいと思いまして」
「確かに、ここまで発展した物を放棄するのはもったいないですね。 それにしても、やっぱり土地が足らないんですか?」
「そうなんです。 それに付いて話そうと思いまして・・・」
「あの~、研究に行ってもい~い?」
アカネちゃんが、メガネのつるをクイッとあげながら言う。
「あ、ごめん。 いってらっしゃい、腕輪は後でも良いからね」
「は~い。 ミズキン、コノミンいこ~」
「あ! ミズキさん! コノミちゃん! 状態異常回復の魔法出来上がった?」
ミズキさんとコノミちゃんは止まりこちらを向くと首を傾げる。
「それですか。 どんな形で魔法がかかるのか分からないので、状態を軽減する形になっています。 それで良いですか?」
「うん、時間が無いからそれでいいよ」
「解りました。 ただ回復魔法と同じく効果時間が短いので、自動でかけられるようにしなければ使えません。 魔法やスキル等がかけられた時に自動的に発動させると言うのが難しく、魔法陣にはまだなっていません」
「そっか、出来るだけ急いでもらって良い?」
「はい、3日以内には出来上がる予定です」
「そっか、ではお願いします。 リョウさん、俺達も場所を移しましょうか」
「はい、解りました。 資料室へ行きましょう」
リョウタロウさんは、そう言うと歩き出す。
俺もその後ろを付いて行く・・・というか、資料室ってどこ?
資料室は、俺達が転移して来た時に荷物置き場に使っていた部屋だった・・・未だにゴブリンの青銅の剣などが壁に掛けられてる。
うお! 懐かしいな・・・最初は潰そうかと思ったんだけど、初めて倒した魔物の持ち物だし取っておく事にしたんだっけ。
「カナタさん、とりあえず地図を見てください」
「あ、ごめんなさい。 ゴブリンの剣が懐かしくて・・・他の装備も潰さないでとっておけば良かったかな?」
「その気持ちは分かります。 ですが、問題を解決してからにしましょう」
「はい、了解です」
まず、ソメイヨシノが保有する貴族区画の土地が約300,000㎡と広大なのだが、大半が駐車スペースなので土地の無駄と言えなくもない。
これは二階建てのマジックハウスにして、1階を駐車場、2階を商店、3階をレストランにして解決しよう。
商店に簡単なギャンブルでも置けば時間つぶしにもなるはずだ・・・が、何を置こう? それは要相談って事でいいか。
一般区画にあるのは、工場各種、宿屋、薬草園、商店などだ・・・結構転々としてしまって1つの土地というわけじゃないので大きさの合計は解らない。
薬草園と各工場は隣り合った土地にあるので、変えるならそこを変えたほうが良いだろう。
マジックハウスの中で野菜なども栽培出来ると書いてあったし、薬草園と薬工房は一緒にしちゃってもいいとして・・・他はマジックハウスにして土地の使用を抑えれば少しは良くなるだろう。
「カナタさん、マジックハウスの材料は足りてるんですか?」
「うん、物凄いいっぱいありますよ。 エルダートレントでもサウザンドエルダートレントでも腐るほどです」
「ザックィンムでしたよね? それは使わないんですか?」
「ザックィンムは特殊素材みたいなんです。 自分達で使う分には良いと思うんですが、ここに残しておくと武器として使用されると思います」
「そんなに凄いものなんですか?」
「はい、かなり扱いにくいんですが威力を1番に求めた場合、2~3倍程の魔法が使える様には出来ますね。 魔力消費量も抑えられて、発動速度、効果範囲も広くなります。 木材加工技術がものすごく高くないと出来ませんし、錬金についても詳しくないと・・・と言う感じですが」
「壊れた性能ですね・・・しかし、性能を鑑みると使わないほうが良いと言う事が良く分かりました。 サウザンドエルーダートレントを使う、と言う事で良いですか?」
「そうですね。 魔晶石の容量も魔石利用法で解決してますから、でかいのを建てましょう」
「はい、通路も大きくして動く歩道を作り移動も楽にしましょう。 しかし、誰でも入れるようにする事は出来なかったんですよね?」
「出来ませんでしたね。 その種族だけを入れるようにする事は出来るんですが、全員を入れるようにすると言うのは出来なかったんです」
「では、門番を付けるしかないって事ですね」
「はい。 でも、ゴーレムを門番にして扉を開けるって事は出来るんですよ? ゆくゆくはそうしたいですよね」
「そうですね。 ケイタ君にゴーレムのソフトウェアを開発してもらいましょう。 最後に、魔力補充をどうするかを考えなくてはならないですが、良い考えなどはありますか?」
「やはりそこにたどり着きますよね。 今の材料と加工法だと1年に1度、帰ってくれば良い計算です。 帰ってくれば良いとも考えられますが・・・行動範囲が広くなれば難しいですね。 発電所のような物を作って魔力供給するって事が出来ればいいんですけど」
「発電所ですか・・・犯罪奴隷を殺さず魔力だけを搾り取るという形になりますね」
「そうなんですよね。 結構エグイ事になる気がするんですよ。 魔石の魔力をただの魔力として取り出せる技術か、魔素を集めて無理やり魔力として使う技術・・・そんなものが欲しいですね」
「魔素は無理かもしれませんが、魔石から魔力を取り出し自分で使うと言うのは出来るかもしれません。 たしか、どこかの国の人族が魔石を解析して力を取り出したと言う噂があったと思います」
「魔道具を介さずに使ったって事ですか!? 本当にそんな事が出来れば・・・すみません。 その人を探し出せば、何とか出来る可能性があるって事ですね」
「まずは、その噂が本当かどうかを調べる必要があります。 陛下にお願いしてみましょう。 最後の確認ですが、どこから作成しますか? コンクリートを敷くのに最低でも2日は欲しいですので」
「やっぱり貴族区画からじゃないですか? 馬車が長蛇の列を作ってるのを見てやばいと思いましたし」
「そうですね。 他の土地を1度借りてレストランとショップを移転し、コンクリートを張り作成した大型ショッピングモールを設置する。 と言う事でよろしいですね?」
「はい、俺はショッピングモールを作りますので調整はリョウさんに任せてもいいですか?」
「大丈夫です。 基本的な街作りは終わってますので、後はゆっくりと独自に発展するでしょう」
こうして、発展計画第2弾が始動した・・・が、外は大雨で心が折れそうになる。
そして加工場所・・・ミミリさん(木工を最初に教えてくれた人)の工房は家等の発注が多く場所が無い。
その他の場所では狭すぎて加工が難しい・・・学園の校庭に土魔法で柱を作り、大きなグラフェンを屋根にして木材を加工する。
設計図は、エルフの出身星にあった大型施設を流用して内装は、ショッピングモールやアウトレットを参考にすればいいだろう。
学園の敷地で木材の加工をしていると、見た事のある木工師たちが見学に訪れ始める・・・いや、見てるんなら手伝ってくれればいいのに・・・